やはりナタルさんの内面もそろそろ深掘りしないと
相変わらずのクオリティと設定などの乱舞です。それでもと思われるならばどうぞ
困った
どうしたものか
大西洋連邦軍中尉であり、アークエンジェルの副長を務めているナタル・バジルールは困り果てていた
今はナタルの交代時間
言ってしまえばオフの時間である
とはいえ、アークエンジェルは現在オーブに停泊していると言ってもオーブへの上陸許可は降りていない
元々軍艦である。故に上陸許可は必要である。加えてオーブという他国に今アークエンジェルはいる以上、艦長であるマリューの一存のみで決められるものではない
オーブへの上陸となれば、大西洋連邦軍上層部ないしは大西洋連邦外務機関とオーブ側の許可がなければ実現するものではないのは自明だ
ヘリオポリスで自由に彼女達が動き回れたのは、あくまでもオーブ側やヘリオポリス側の許可があっての事
はっきり言ってアレはかなり特殊なケースであったと言えるだろう
しかし、今のオーブと大西洋連邦の関係はお世辞にも良いものとはいえない
そんな状況下で上陸許可が降りるとナタルも考えていないのだ
では、何故気落ちしているかと言えば
「私の部屋に料理本などというものはない」
という事だ
いや、分かっていたことではある。軍艦の私室などという限られたスペース
しかも今でこそ自分は中尉だが、当時は少尉
勿論アークエンジェルの正規クルーが殆ど死亡してしまったからアークエンジェル副長になっているに過ぎない
一介の少尉に与えられる空間などそこまで広いはずもなかった
戦場というかなり精神的に疲弊する所に恒常的に身を置くとなれば、自身のメンタルケアに重点を置くのはごく当然の事であり、自身にとって縁遠い料理本などというものがそこに混ざる筈もない
故に自分が好きな本やいざと言う時に役立つ戦略関係の書籍や医療関係の書籍になるのは自然であろう
元々軍人である以上、浮ついた気持ちで任務にあたるなどというのは自身のみならず仲間達の命すら危険に晒すものとして戒めてきた
だが、何の因果か一介の少尉でしかなかった自分に部下が出来たのだ
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カズイ・バスカーク
つい少し前まではこのアークエンジェルにおいて自分や艦長、機動部隊の隊長であるフラガと共に苦楽を共にしてきたオーブの民間人の少年
「…此処は地球軍、いえ大西洋連邦軍の戦闘艦の中だと思ったのですが違うのでしょうか?」
新型機を操縦していた少年がコーディネーターである事を知った格納庫に集まっていた軍人が一斉に銃を向ける中、彼は冷ややかな言葉と共にヤマト少年の前に進み出た
そして、私達を睨みつけると
「昨今ブルーコスモス環境保護団体という名のテロ組織が地上では流行っていると聞きますが驚きましたよ
まさか正規軍の中にすらその支持者がこんなにも居るとは」
「あなた方大西洋連合軍が何を考えて中立国のコロニーで新型機を開発していたか、なんて知った事ではない
確かにこの艦の中は大西洋連合軍のルールが通るんだろう
でも、ヘリオポリスは、アンタらが戦闘していた場所はオーブなんだよな。オーブではコーディネーターだろうが、ナチュラルだろうがその程度・・・・の事を気にする奴ばかりじゃない」
「アンタらの
軍人のルールで戦争したいなら、民間人を巻き込まない所でやってくれない?」
そう言い放った
今思い返せば、当時私達はストライク以外を奪取され、艦長をはじめとした基幹クルーを失った事でかなり動揺していたのだろう
と言っても騒ぎを起こしたのは事実。結果彼も一時的にとはいえ営倉入りする事に同意した
…それこそ私達が戸惑うくらい素直に
そんな歪な価値観を持っていた彼に私は少なくない興味を持つのはまぁ仕方ない事だと思う
良く杓子定規と言われるが、知識や知見を広げたいと私はいつも思っていたのだから
そして、何故か彼は伍長として私の部下になる
…正直な話、余りにも危なっかしい部分が多いと見えたし、彼の目はここでは無い何かを見ている様に思えたからだ
…フラガ大尉やラミアス艦長の言う様な感情は無かったな
あの時は
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アルテミス要塞へと向かう途上、ザフトのクルーゼ隊による追撃をフラガ大尉は予想し、それに対する対策を考えた
流石は歴戦のパイロットだと感心したのだが、そこに彼は少しばかり追加する事で更なる効果を上げようと意見してきたのは驚いた
「そりゃ、死にたくはありませんからね
キラもトール達も死なせる訳にゃいかんでしょう」
ブリーフィングのあとに話を少ししたが、その時彼は間違いなく理解していたのだ
これから人を殺す事を
他のクルーが火器管制システムのコントロールを代わろうとしたが
「俺なりのケジメです
申し訳ありませんが、やらせて頂けませんか」
と頭を深く下げて断っていた
「…俺達何やってるんですかね、本当に」
「まだ学校に通っている年齢の子供に負担を押し付ける
こんな大人にはなりたくなかったよ俺は」
と操舵手のノイマンとトノムラは嘆いていたのをよく覚えている
そして、戦闘が終わるまで彼の顔色は
戦闘が終わって、クルーゼ隊が離脱していくのを確認すると彼は私達に一言かけてからブリッジを離れている
…何があったか、など聞くまでもない
私達のような正規の軍人であっても、恐ろしい程の負担のかかる
覚悟はあったとしても、実際に感触がなかったとしても
…いや、『人を殺した』という事が余りにも無機質的に捉えてしまうからこそ、その犯した罪の重さと現実の落差に人は打ちのめされるのだろう
新兵の多くが最初の戦闘で心を折られるとも聞く
確かに彼は『志願兵』だ
だが、まだあの時点でならば引き返せれた
…そんな訳は無いか
ヤマト准尉がいる以上、彼は軍にいなければならない
そう彼自身が思い定めていたのだから
そしてそれを望んだのは私達なのだ
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それ以降、私は機会を見て彼の様子を見る事にしたし、休みが合えば色々話をする事もした
そこで分かったのは彼がかなり自分に対して無頓着であり、『友人を失う事』いや『親しい人を悲しませる事』をかなり恐れている事だった
「こんな俺を兄と慕ってくれる可愛い弟分と妹分が本国にいるんです
せめて連絡の一つでも取れればとは思うのですが」
胸をつく話だった
だが、アークエンジェルは大西洋連邦軍の新鋭艦であり、その存在や所在は軍機扱いとなる
故にそれは出来ない事だった
「…いえ、忘れてください
詮無い事を言いました」
そうやって彼との関わりを重ねる内に少しずつだが、彼も『普段の顔』を見せてくれるようになった
だが、それを彼が気付くと必ず心を閉ざしてしまう
『私は君の支えにはなれないのだろうか?』
何度そう口にしようとしたのか分からない
だが、言えるはずもない
彼をこの道に縛り付けたのは他ならぬ私なのだから
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アークエンジェルのクルーが彼女に何かをするとは思えないし、思いたくもない
だが、その時アークエンジェルにはヘリオポリスの避難民もいた
ヘリオポリス崩壊の原因の一つであるプラントの最高評議会議長の娘である彼女に何かあっては困ると私や艦長にフラガ大尉は彼とヤマト准尉に彼女を任せる事にする
また、彼に負担を押し付ける
それを知りながらも、有効な方法が分からなかったからと言い訳をして彼に任せた
そして彼女を人質にして窮地を脱した
…その時何があったのかすら知ること無く
ラクス・クライン返還の際、彼は笑った
歪で、とても見ていられないような笑顔
自慢の弟分や妹分。好きな本や歴史などの話をしている彼を知っている私はその表情をとてもでは無いが見ていられなかったのを今でも鮮明に覚えている
私はいるかどうかも分からない神に祈った
(どうか、何も無く終わります様に)
と
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ザフトが動いた事で私の願いは儚く散る事になった
が、そんな事はどうでも良い
ヤマト少尉の安全を確保しなければ彼はまた無理をする
私はそう半ば確信していた
だが、遅かった
「艦長に少尉。少し借ります」
と私達に断ってから彼は戦域全てのチャンネルに向けて言葉をつむいだ
『親愛なる蛮勇を愛するザフトの兵士達にご挨拶を申し上げる
ユニウスセブンの悲劇を嘆きながら、民間人のコロニーヘリオポリスを崩壊させた君達の事
…さぞや気分がよかった事と思う』
それはザフトの
プラントの者達の戦意を叩き折る為に拵えられた言葉という名の刃
その切れ味故に本人すらも傷付けてしまいかねない正しく諸刃の刃
恐らく彼の中にある理不尽への怒りや友人を戦場に送り出さねばならない自身へのやり場のない怒りもあったのだろう
戦略的に見るならば、此方は何の犠牲を出す事なく敵を撤退に追い込んだ。しかも使ったのは通信のみ
何も知らない者からすれば正に画期的で理想的な勝利だっただろう
だが、私は全く喜ぶ事が出来なかった
これで彼の人生は大きく狂ったのだと理解出来るから
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だからこそ、私は自身の裁量でフレイ・アルスターを軍属とする事にした
このまま彼が走り続ければ、その先には破滅しか待っていない気がしてならなかったから
彼に抱く感情が親愛なのか、慕情なのか、それとも憐憫なのか
それはあの時の私自身分かっていなかった
だが、それでも一つだけ断言出来ることがある
彼を死なせたくない
という思いは間違いなく私の胸の中にあったのだ
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その後、私はアルスターから色々話を聞きつつ、私も可能な限り彼との交流の回数を増やす事にした
このままでは彼が壊れるのではないか?
そう思えてならなかったから
第八艦隊に合流し、安心したのが悪かったのか
アーガイル少年の志願をきっかけにケーニヒ少年とハウ嬢の志願を認めてしまった
これは今までの彼の苦労を台無しにするが如きものだ
元々ヤマト少年とアルスターのフォローだけでも既に手一杯なのに、これ以上の負担となれば彼にかかる負担は限界を超えるだろう
故に私は艦長達と話をして彼等の配属先をブリッジ以外の所にするしかなかった
幸いと言うべきか合流したキャリー隊は隊長であるキャリー少尉を始めとした隊員達も問題ない者達ばかり
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ところが私達達に与えられた任務は更なる苦労を強いる事になる
本来ならば総司令部のあるアラスカや北米地区に降下すれば良かった
だが、アークエンジェルの目的地は北アフリカ
何でも『オーブの姫君』とやらがそこでゲリラ活動をしているとの事
耳を
正気を疑った
生きる為に
友人達を守る為に武器を取らねばならない者がいるのに、それ等を将来的には守らねばならない立場の者が他国でゲリラ活動をしているなどと
保護した時、彼女はやはりと言うべきか彼にくって掛かっていた
だが、彼女は知っているだろうか?
私は勿論、アークエンジェルのクルーの殆どが彼女に対して冷たい視線を向けていた事を
戦闘は無くなった
つまりヤマト少尉が死ぬ事は無くなったという事
それだけ彼の負担も減る
そう私は安堵していた
…だが、そうはならなかった
アーガイルが彼と揉め事を起こしたり、オーブの姫君が何度となく彼の手を煩わせたり、挙句オーブの外交官との交渉役までする事となっていた
アルスターも
「もう少しカズイの仕事減らせないんでしょうか?」
とかなり気にかけていた
私自身も彼との時間を過ごすより、休んで欲しいと願うしかなくなってしまう
…何度かは私の部屋で寝落ちする事もあった
それ自体私は問題視する事はない
どの様な形であれ、休んでくれるならばそれに越したことはないのだから
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そして、オーブへ着くとしばらく後に彼やアルスター、准尉はオーブ国防軍への出向が決まった
出向と言っているが、殆ど移籍の様なものだろう
表向きは除隊という形を取る事になったのだが
そして私と彼はあの時別れを告げねばならなかった
そこで彼から望まれたのが
『私の手料理』
だった
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言うまでもないが、私にその様な心得はない
だが、好意的な想いを抱いている彼に変なものを食べさせたいとも、気を遣わせたいとも思っていない
だからこその料理本なのだ
艦長を頼ろうかとも思ったのだが、料理本を貸して欲しいと頼み込めば必ず理由を聞いてくるだろう
割とその辺りの話題の食い付きの良いラミアス艦長の事だ
根掘り葉掘り聞かれる事だろう
自分の内心を赤裸々に語るというのは流石に、その
恥ずかしい
異性、しかも年下ともなると以前の私にとっては完全に想像もしていなかった事だ
恐らくヘリオポリスにいた頃の私が知れば
「お前は何をやっている!」
と叱責されそうなものだが、今の私はそれでも良いとすら思えてくるのだから人とは変わるものなのだと思う
カズイが私に対して何かを求める
それが完全なプライベートとしての願いなどというのは初めての事だ
私の女としてのプライド云々よりも、カズイに喜んで欲しいと思う
だが、私は男女の仲を深める方法など知らないし、家庭的であると思っていない
どうもカズイは化粧をあまり好まないらしいので、最低限の化粧しかしない私にとって有難かったのも事実
…そういえば、カズイの好きな料理を聞いた事がなかったな
「本当にどうしたものか」
ナタル・バジルール
最新鋭艦の副長という望んでも手に入る事のない立場にありながら、年下の少年の事を想ううら若き女性であった
という訳でカズイに対してかなり心配しているナタルお姉さん(御年ぴー歳)でした
そろそろ物語も佳境に入りますがまた宜しければお付き合い下さると有難く思います
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
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いる
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いらん
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それより本編でしょう?
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ifstory補完しろよ