「さて、君ともう会う事はないだろう」
「…ラウ、考え直してくれないか?」
「君にはまだタリアがいる
そして、レイを任せられるのは君以外にいない
私はもう何処へ行ける訳でもない
せめて友人である君とレイを助けたいのだ」
プラントのとある宇宙港でクルーゼとギルバートは今生の別れを惜しんでいた
「クルーゼさん」
「…ラウ」
タリアとレイも暗い表情でクルーゼを見るが
「もう時間は残されていないだろう
行くんだ。私が掴めなかった明日を掴み取る為に」
クルーゼはそう言って身を翻すとヴェサリウスに戻って行った
「ニコル、ロミナを頼む」
「父さん、でも」
「…あなた」
「ラクス・クライン
貴女に様々なものを背負わせる事になってしまい、申し訳ない
…一応貴女に渡したものはオーブのアメノミハシラへの入港許可証だ
今となってはどれだけの効果を持つかは分からないが」
「…はい」
ユーリ・アマルフィは息子であるニコル・アマルフィと妻であるロミナ・アマルフィ
そしてラクス・クラインの見送りに来ていた
ラクスと何度か話をしたユーリは彼女が足つきで出会ったオーブ出身で大西洋連邦軍に所属している人物に僅かな可能性を見出すしかないと判断
戦前に発行されていたオーブの軌道上の拠点アメノミハシラへの入港許可証を何とか用意して彼女に託す事とした
「これとて、関係が拗れる前ならばいざ知らず
今となっては唯の紙切れとなっているかも知れません」
「わかっています
…どうしても、共に行く事は出来ないのですか?」
ラクスとデュランダルを始めとした現在のプラントに危険なものを感じる者たち
それ等をこの短時間でまとめ上げ、しかも旧式とはいえ輸送艦を用意したユーリの負担はラクスやデュランダルが思う以上のものであっただろう事は容易に想像出来る
それでも彼はなんとかやりくりしてこの形を作り上げた
「…ハーネンフース。君には間違いなく厳しい道を歩ませる事となってしまった
すまない」
「いえ、このままではプラントは間違いなく負けるでしょう
聞いた話が正しいならば、もうプラントに力添えをしてくれる国家はないのでしょうから、仕方ないかと」
この輸送艦唯一の機動戦力がシホの乗るディープアームズだ
シホ自身優秀な技術者であり、兵士でもある
が故にこそ、反戦主義ともとれる言動が問題になりつつある事をユーリは知っていた
そして、現在険悪な関係となっているオーブのアメノミハシラに向かう以上、武装艦では間違いなく門前払い
最悪撃沈される可能性すらあった
だが、非武装艦でアメノミハシラまで向かうのはかなりの危険が伴う
地球軍やオーブ軍ではない
傭兵やジャンク屋の名を持つゴロツキ達である
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ジャンク屋や傭兵と言うが、当然ながらはその質は玉石混交である
中には非武装艦と見れば、海賊行為を働く様な者もいるのだ
プラントやザフトが確たる戦力を有している時は動かなかったが、此処まで著しく弱体化してしまえばその限りではないだろうとユーリは判断している
「よろしくお願いします
ラクス様にデュランダルさん」
シホは出航した輸送艦の艦橋で艦の責任者として事前に聞いている2人へと挨拶していた
別にシホ自身ラクスにそこまで心酔している訳ではないが、プラントの歌姫として活躍していた彼女に対して一定の敬意は持っている
デュランダルについては以前話をした時に言われた為に改めた形だった
「此方こそ宜しくお願いします
ラクスで良いのですが」
「…いつまでも沈んでいる場合ではないだろうな
状況を整理すべきだと思うが、どうかね?」
ラクスはシホにもう少し砕けた話し方をして欲しいと頼むが、デュランダルは先ず状況の整理をすべきと言い、状況整理をする事とした
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プラント最高評議会としても流石にこの様な状況となれば、最早自分達から和を言い出さねばならないとの結論に至ろうとしていた
…ところが
「待ってもらおう
それでは我等『プラントのコーディネーターの名誉』はどうなるというのだ?」
と口を開いた者がいた
シーゲルやユーリ、カナーバ等からすれば
「何を馬鹿な事を」
と言った意見だったが
「市民の認識では現在のザフトは地上にて優位に立っている
そういうものだ
となれば『何故我々から戦争をやめねばならんのか?』とならなくはないだろうか?
そこで此方から『休戦』を申し出る
間違いなく地球側に伝わったとしても、一蹴されるだろう」
「…つまり君はこう言いたいのだな?
『我々プラント側は平和を求めたが、地球側がそれを拒絶した』
そんな形を作るべきと」
パトリックは不愉快そうな表情を隠そうともしない
「そうすれば、プラントの正義は守られるだろう
奴等とて、ボアズやヤキンを抜くにはかなりの戦力を動員しなければならないのだろう?
そこで奴等に犠牲を強いる事で講和の席に就かせる」
「…パトリック、どうだ?」
「出来なくはないだろう」
そしてカナーバは自分達の下らない
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この話を聞いたデュランダル
ユーリから聞いたシホはプラントに未来がない事を確信してしまった
結局のところ、自分達の都合でしか物事を考えていない
最高評議会はプラントの意思決定機関として機能している
となれば、その権限に見合った責任を負わねばならない
それすら出来ないと言うならば、今すぐ最高評議会の席を空けるべきであり、この様な状況下ですら保身第一というのはいっその事事笑い話にしかならないだろう
クルーゼがデュランダル達を逃す決断をしたのはもう一つ理由があった
動員年齢の更なる引き下げ
である
これによりもう1人の自分とも言えるレイまでもがこの狂った世界の犠牲になろうとしていた
だからこそ、クルーゼは決断したのである
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「しかし本土はどうなってんだろうな?」
「何でもやっとウズミの独裁体制が終わったらしい
今はカガリ・ユラがミナ様たちの支えを受けて体制を作り直しているそうだぞ」
アメノミハシラのオペレーター達は本土で起きた出来事について話をしていた
なにせほんの少しの間にオーブの指導者や首脳陣が殆ど入れ替わったのだ
加えて、国防軍の中で武装蜂起したとの話すらある
…にも関わらず、それは僅かな期間で終息し、今新たなオーブの国づくりが始まっているのだから彼等の困惑も仕方ないだろう
とはいえ、彼等とてオーブ国防軍の一員である
自分達の関知しないところで決まった事だとしても、それに従う義務があるのだ
勿論多少の不満が無いわけでも無いのだが
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「!
レーダーに反応あり」
「なんだって
…識別コードは、なし!
直ぐに地球軍のデータと照会する」
「なら俺はプラント側のデータを!」
アメノミハシラは突如接近してくる所属不明の艦艇に大した緊急即応体制を発令すると共に、オーブ本国へと急報を届ける事になる
「プラントの輸送艦だ」
「マジかよ、なんで此処に?」
「…おい待て
通信?」
これが絶望と希望の宴の始まりとなる事を彼等は知らない
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「なんだと!
それは本当なのかミナ?」
「間違いない
アメノミハシラにプラントの輸送艦が来ており、現在のアメノミハシラへの入港を求めているそうだ」
カガリはミナからの報告に
「どうすれば良いと思う?」
「…受け入れるべきだと思うが。仮に受け入れないとして
その場合面倒な事になるだろう」
ミナもカガリからの問いかけに頭を抱えたくなる
何せ輸送艦に乗っているラクス・クラインはカズイとのやり取りを求めているのだから
理屈は分かる
カガリもミナもカズイから軽くではあるがこれまでの事について話を聞いており、彼女はアークエンジェルにいた事があると聞いている
既にオーブ以上に孤立無援なプラントの人間として考えれば、カズイは数少ない藁にも等しいものに思えるのだろう
が、2人としては元々病み上がりであり健康面に不安のあるカズイにあまり無理をして欲しくない、というのが本音だった
既にブルーコスモス盟主であるムルタ・アズラエルとの会談を頼んでいる
これ以上の
頼み事をするのは気が引ける
というか、だ
単純に怖いのだ
カズイがもう一度倒れる事もそうだが、明らかに殺気だっているキラとフレイ
それよりも怖いのが
笑顔でいるシンとマユ
とはいえ
溺れるものは藁をも掴む
という
もしカズイと彼女を会わせてしまうと、間違いなく今の比ではなく負担が増えるだろう事は疑いようの無い話だ
「どうすれば良いんだよ」
「難儀な事だな」
オーブの未来を担う2人は頭を抱える事になる
という訳で1番重いものがやって来ました
これから大変ですね(他人事)
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
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いる
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いらん
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それより本編でしょう?
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ifstory補完しろよ