そう言っても、現実は非情である
人の命があっさり消える戦場で、少年は何を思うのか?
今回から本格的にキャラ崩壊のタグが仕事を始めます
予めご了承の上、ご覧ください
「今、なんと?」
「…フラガ大尉から連絡があった。どうやらヤマト少年も軍に志願したらしい」
…分かってはいた事だ。寧ろ私達はそうなって欲しいと願ってさえいた
だが、いざそうなってみると本当に私達軍人の情けなさが憎らしくなる
先程まで連合軍の軍規などについて真剣に話を聞いていた伍長だったが、その話を私がした瞬間に顔から表情が一瞬だが抜け落ちた
恐らく伍長もある程度理解していたのだろうし、覚悟も決めていたのだろう
…軍規や条約において『民間人による戦闘行為』の正当性は何処にも明記されていない
つまりそれはその組織それぞれの判断によるものとなるのだろうな
それを伍長は必死に探していた。そんな中でヤマト少年が軍に志願したというのだ
彼が何を思ったのかは分からないが、かなりショックを受けている事だけは分かる
「軍人になれば世界が歪んで見える」
とは私の同期の言葉だったが、本当にそうなのだと今更ながらに思い知る
中立国の民間人が多く住むコロニーに此方の新造艦や新型を持ち込めばこうなる事は分かりきっていたのに
ならばせめてこの少年を無事に国へ帰す為に私はどんな事でもしよう
それが少しでも戦争に巻き込んでしまった少年達の為になると信じて
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ダメだったか。いやマジでどうするかねぇ
こうなると連鎖的にトール達も志願、するんだろうなぁ
正直、アーガイルとアルスターはノーセンキューなんだが
そうもいかんだろうな
や、アーガイルとアルスターがセットなら別に問題ないし、そうでなかったとしてもアーガイルがアルスターを制止出来るならさして気にする事はない
はっきり言えばアルスターがおかしくなったのは間違いなく父親の死からだろう
なら非情な事になるが、アルスターをあの時ブリッジに入れなければ良い筈だ
…まぁもう一つ腹案があるにはあるんだが、あまりやりたい方法ではないんだよなぁ
多分、シンやマユちゃんにバレたら無茶苦茶怒られる
…いや下手したら泣かれるかも知れん
しかし我ながらやっちまった感があるのは間違いないな
まさか俺が仕官した事でキラ達もそれに続く事になるとは
某中佐も言っていたが
「予想外の事は起こるもの」
いやマジで真理だわ
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となると、クルーゼ隊との全く楽しくない追いかけっこをしなきゃならん訳で
ホント勘弁願いたいな
相手は現在のところナスカ級『ヴェサリウス』のみ
だが、この作戦の時にはローラシア級『ガモフ』が合流したはず
戦力差は明らか
しかも強奪されたGには『フェイズシフト装甲』が採用されており、特殊戦仕様のブリッツ以外に対して実体弾による迎撃は現実的ではない
砂漠の虎曰く
「フェイズシフト装甲も実体弾を命中させ続ければ抜ける」(超意訳)
らしいが、流石に
それがしたいのならば、別の世界線にいる半ばエスパーじみた人間を連れて来るべき
かと言って
某赤い少佐も言っている様に
「当たらなければどうという事はない!」
という事ですね、分かります
まぁ、唯一の救いがあるとすれば一番厄介なブリッツの対応方法をこちら側が持っているという事だろう
いやマジどうするのかねぇ
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「カズイ、あの、その
僕のせ」
「はいストップ
要らない事を言うお口はこれかなぁ?」
「
キラも連合軍の軍服着て俺と会うなり、明らかに
…おお、良く伸びるな
これは俺のお気に入りであるシンにも匹敵する伸びの良さだ
残念な事に俺は昔ほど伸びないからなぁ!
逆襲しようとしても無駄なのだよ!キラ・ヤマトくん!!
とは言えほんのり涙目なので、そろそろ解放しないといけませんね
…残念
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い、いきなりカズイに謝ろうとしたら頬をつねられたんだけど
しかも普段の仏頂面からは想像出来ない位笑顔だった
…輝く様な笑顔ってこういう事を言うのかな?
でもその目は僕に言っていた
「謝んな」
と
だから僕は
「カズイ、ありがとう」
そう彼に伝える事にする
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やっぱりキラも察しが良いわ
言いたい事をしっかりと理解してくれる
…いや、察しが良過ぎるんだろう
だから背負わなくても良いものまで背負おうとするのかねぇ
感受性が豊か過ぎる
だからこそ、キラは戦場に出るべきではない
感情のコントロールは特に戦場みたいな非日常空間に身を置く時には必要な
ニコル・アマルフィもそうだ
確かにアスランを慕っていたし、仲も良かっただろう
だが、その身を盾にしてまで誰かを守る
それは余程の覚悟が無ければ出来る事ではないだろう
少なくとも、俺に出来るとは思えない
が、はにかんでお礼を言う事はないと思うのですよ。カズイくんとしては
なんかフラガ大尉はニヤニヤしてるし、ナタルさんは見てはいけないものを見た様なリアクションしてるし
ナタルさんってホント純真だからなぁ
フラガ大尉はもう少し自重して、どうぞ?
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いや、ホント良かったと思う
坊主はどうにもバスカークが気になっているらしく、沈んだ顔をしてたんだがあっさり表情が明るくなった
というか、バスカークの奴なんか手慣れてる気がするんだが
…っといけね、バスカークの奴こっちをジト目で見てるわ
やっぱり俺や艦長、少尉じゃどうにもならなかったかもな
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「え?じゃあカズイって本土にコーディネーターの知り合いがいるんだ」
「そうだな。知り合いってかそいつの生まれた時から知ってるから殆ど弟みたいなもんだが」
カズイと艦橋に向かいながら少し話をする
僕とカズイは同じカレッジのゼミにいたけど殆ど話をしなかったから
「まぁ、なんだ
何があれば話くらい聞くからな?
1人で抱え込んでも辛いだけだ」
カズイは艦橋に入る直前、僕にそう言った
カズイにとっては何気ない一言だったのかも知れない
…でも僕にとってその一言がどれだけ嬉しいものだったのか
多分
いや絶対カズイは分かってない
ごめん、カズイ
多分そう言われたら僕は遠慮しないと思う
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「つまり艦とストライクを囮にして敵母艦を狙うって事ですか?」
驚いたわ
フラガ大尉の提案を聞いたカズイ君はそうあっさりと言ってのけた
「お?分かるか」
大尉は少し驚いた様な顔をしている
「まぁ、歴史好きなので
割と戦史関係を調べると色々ね」
戦史研究になるんじゃないかしら?そこまで読み込むなら
と思ってしまうが口には出さない
「…ほう、伍長は本を読むのか
それは中々珍しいものだな」
少尉も少し表情を和らげている
「…えっと」
キラ君は戸惑っているみたいだけど
「まぁ、スペースが限られたコロニーなら仕方ないって
…
どうにもバスカーク君と話していると年上に感じてしまうのだけど、気のせいよね?
あと少尉が頭痛そうにしているのだけど、分かっているわよね?
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…一応作戦会議中なのだがな
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「…キラ」
格納庫でストライクに乗り込もうとする僕にカズイが声をかけてきた
「死ぬんじゃねぇぞ?
この
…忘れんな」
「…うん、ありがとう」
カズイはそうぶっきらぼうに言うと格納庫から出て行った
…アスラン、ごめん
僕にも守りたい人がいるんだ
僕はそう心の中で親友に別れを告げた
なお仮にカズイがそれを聞いていた場合
「いやいやいやいや
カズイさんにそこまで気を遣わなくてよかですよ?」
と顔を盛大に引き攣らせてキラの考えを訂正しようとするだろうが
手遅れである(無慈悲)
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「ジン、接近!」
「対空!」
戦闘中バスカーク君が何やら少尉に耳打ちをしていた
そして
「…悪いな、こっちも死にたかないんで死んでくれや」
彼の呟きの少し後
「ジン、撃墜しました!」
驚くべき報告があがった
「死地に飛び込んでくるなら容赦は無用」
「バスカーク伍長、任せる!」
「…みぃつけたぁ」
恐ろしい呟き声と共に対空砲火が放たれる
敵を殺す為に
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『おいおい
作戦と全く違うじゃないかよ』
なんだ、アレは
ディアッカの呆れと少しの恐怖が混ざり合った言葉に俺も同意したくなる
事前の作戦ではストライクとやらを俺達が抑え、その間に敵の新造艦をジン部隊が落とす
というものだった
だが
『またやられました!
このままじゃ』
『くそっ!』
敵艦の放つ対空砲火に絡め取られ爆発四散するジン
当たる筈のない対空砲火が何故ここまで当たるのか?
分からないからこそ、俺達も迂闊に動けなくなる
更に
「っ!
こちらの気が緩んだと見れば敵艦の砲撃が飛んで来る
『もう一度僕が行きます!』
『ダメだ、ニコル
さっきそれで危なかっただろう!』
「ちっ、ストライクを抑えるのに集中しろ!
敵艦は今相手する訳にもいかないだろうが!」
これが戦闘だとでも言うのか!
混乱しそうな思考を何とか冷静にするべく俺は声を張り上げた
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ナチュラルの浅知恵とでも思ったか?
先人の知恵。経験や犠牲から生み出された戦法や戦略を軽く見たんだ
精々その対価を払っていけ
…対価はお前達の命、だがな
やっている事は簡単だ
此方を圧倒的弱者と見下しているプラントのコーディネーター様だからな。本当に笑える程無様に落ちてくれる
…そろそろかね?
「…そろそろ時間ね
陽電子砲、目標敵ナスカ級
てーっ!!」
アークエンジェル最強武装だ
たっぷりと味わってくれよ、ラウ・ル・クルーゼさんよ?
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「敵艦より高エネルギー反応!」
「機関全速っ!かわせー」
此方はヴェサリウスとガモフ
しかも増援のジンまで合流していた。更に強奪したGもある
何処かで私も油断していたとでも言うのか?
敵母艦の思いがけない奮戦により、既にジン部隊は撤退に追いやられていた
さらに唯一あちら側に残ったストライクの奮戦により、此方の作戦目的は何一つ達成されていなかった
…待て
ストライクと足付き
ならば奴は何処に
私はその考えに至った瞬間、背筋が凍った様な感覚を覚えた
「敵機反応!艦底至近!!」
これが奴等の本命か!
「機関全速!ピッチ上げ7
急げ!!」
…まさか此処までやるとは
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「ったく、漸く退いたか」
艦底部にかなりの損傷をうけたヴェサリウスが離脱していく
それに追從するローラシア級と奪われたG
…いや待て、イージス半壊してないか?ありゃ
本来指揮官機としての活躍を期待されていたイージスは他のGより頑丈な筈
それがあそこまで破壊されているなんてな
フラガの視線の先にはブリッツに殆ど曳航されているイージスの姿があった
しっかし、伍長には驚いたもんだ
「伏兵として大尉とメビウスゼロを使うならば、このアークエンジェルも活用しないと厳しいでしょう」
「何かあるのか?」
「此処は
あの時の伍長の顔は少尉や艦長ですら顔を引き攣らせてたよな
…の割には坊主はなんというか、頼りになる
みたいな顔してたのが少し気になるけどな
ま、アークエンジェルもストライクも俺も無事だから構いはしないか
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多分未来の俺があの場にいたなら、全力で殴りつけただろう
「馬鹿!そんな訳ないだろうが!!」
と
だが、この俺はそれで満足してしまったんだ
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アスラン、悪いけどもう僕は決めたんだ
仲間に助けられる様に撤退するイージスを見ながら僕はその背を見送った
その両脇にいるデュエルとバスターがこっちを警戒している様に見えたけど、君達にはあまり興味がないんだ
アスランは言ってはならない事を言った
『キラ!何故お前が地球軍にいる!
お前はコーディネーターだ、僕たちの仲間なんだ』
「僕だって、守りたい人が
力になってあげたい人がいるんだ!」
『何故だ、どうして?
そいつらはお前を利用しようとしてるだけなんだ!』
と
「アスラン?」(
誰が誰を利用しようとしてるって?
少し前にトールから聞いた事がある
カズイは弟の様に接しているコーディネーターの少年を助ける為に大怪我をしたって
僕は直接聞いた事がないけど、一度お風呂でトールと会った時言っていたそうだ
『片肺を失う大怪我をした』と
僕を庇おうとした時だって下手をすればマリューさんや格納庫で撃たれていてもおかしくなかった
でも、カズイは躊躇わなかったんだ
何も
カズイの事を何も知らない
思わず暴れ過ぎてエネルギー切れになったけど
『仕方ないなぁ、キラ太くんは』
と直ぐに換装用のパーツを遠隔操作で送ってくれたんだ、カズイは
だから
だから思う存分イージスをボコボコにした
…流石にビームサーベルやビームライフルで攻撃するのは躊躇われた。
だから、アーマーシュナイダーで向こうのバッテリーが切れるまでボコボコにして、手足を切り落としておいたんだ
…コックピットには何もしてないから大丈夫だろう
…多分
邪魔をするからブリッツの片腕を思わずビームサーベルで切り捨てたけど問題ないと思う
----
ダメだった
カズイから
「ただでさえ物資が少ないんだから、無駄遣いすなし」
と怒られてしまった
それもこれも全部アスランが悪いと思う
でも、カズイは肩に手を置いて
「…無事で良かった
怪我はねぇよな?」
と言ってくれたのは本当に嬉しかった
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僕は大西洋連合軍に絶望した
なんで
なんで
なんでっ!
カズイと同じ部屋じゃないんだ!!
と
艦長であるマリューさんが言うには
「貴方は曲がりなりにも准尉なのよ?
…言いにくいんだけど、伍長のバスカーク君とは」
なら僕も伍長にすれば良いじゃないか!
「いやいやいや、現有する唯一のMSストライクのパイロットなんだが、キラは
流石にそれは無理があると思うんだよ」
そんな!
カズイまでそんな事をいうなんて!!
僕は裏切られた気持ちになってしまう
「いやキラ
尉官と伍長で扱いが違うのは寧ろ当然なんで」
でも
…それでも
それでも守りたい世界があるんだ!!
「…いや、ねぇから」
「あう」
少し(キラ視点では)興奮している僕の頭をカズイは軽くはたいた
「とにかく戦闘で疲れただろうから、休めっての
…大尉も笑ってないでさっさと休んでは如何ですか?」
とカズイはジト目でムゥさんの方に視線をやった
「いやな、坊主と伍長のやり取りを見てると微笑ましくて、つい
もっとやってても良いんだぞ?」
とのムゥさんの言葉にも
「…はぁ
宜しいですか、フラガ大尉。貴方はこの艦の艦長と並ぶ最上位階級の人間です。加えて機動部隊の指揮官でもある
バジルール少尉やラミアス艦長から今回の作戦についての詳細な報告を求められているのですが?
一応ヤマト准尉もいますので、少しその報告について待ってもらう様に小官はお2人を
…その様子なら直ぐ今後の話し合いをした方が宜しいでしょうか?」
「っと、そりゃ悪かった
よし、坊主。さっさとシャワーを浴びてスッキリするとするか!」
カズイの言葉にムゥさんはあっさり自分の言葉を翻して僕の背中を押しながらシャワー室に向かおうとする
「…ああ、そうだ
ヤマト准尉については戦闘の疲労も考えてしっかり休息をとる様に
そう艦長から指示が出ていますので悪しからず」
と扉が閉まる直前にカズイはわざとらしく付け加える
----
…やれやれ
やっと行ったか
俺はフラガ大尉がキラのメンタル面を心配してあの様な態度だった事を知りながら、2人を休憩させる様に芝居をうった
と言うのも、これからとても面倒な事をしなければならないから
「ったく、軍属となった以上文句は言えないが愚痴は言いたくなるなぁ」
そうぼやいてある場所に向かった
----
「…んで、決意は変わらないと?」
「ああ、カズイやキラが必死になって戦ってるのに俺は何もしない
なんて言うのは我慢ならないからな」
「…ミリアリアもそうなのか?」
「うん、そうね
やっぱり友達が命の危険を顧みずに戦ってるんだから」
「…アーガイルもか?」
「ああ」
、
俺が向かったのはトール達の元だ
元々戦闘前からトールやミリアリア。アーガイルは軍に志願したい
そう言っていた
だが、戦闘前という事で艦長やフラガ大尉、少尉はこの話について一時的に保留としていたのだ
無理もないだろう
先程の戦闘とて、少し何かが間違っていればこの艦やキラ、フラガ大尉が無事でなどという事は無かったのかもしれないのだ
そして流石に教育を受けていない人間をいきなり複数人。それらを艦橋に入れるというのは余りにもリスクが高い
先ずは
それが艦長であるラミアス大尉やバジルール少尉の判断
残念だが、貴重なストライクを動かす事の出来るキラはどうやっても外す事が出来ない
となれば、俺とて石に齧りついてでも軍人としての価値を示さねばならなかった
一連の戦闘後、俺は直ぐにトイレで戻している
例え自らの手で誰かを殺めた訳ではないにせよ、間違いなく自分自身の考えの元にザフトの人間を殺したのだから
辛くない
などと強がるつもりはない
しかし、それでも自分自身が決めた道なのだ
そこを譲る様ならば、いっその事死ぬべきだろう
知っていながら俺は何もしなかったのだから
艦橋に戻った俺に対して少尉は一言
「やれるか?」
とだけ聞いてきた
有難い事だと思う
ここで
「大丈夫か?」
などと言われてしまっては弱い俺だ。その優しさに縋ってしまうかも知れなかったのだから
既に俺の手は血に汚れている
だからこそ、キラを独りぼっちにする事はない
…それで良い
何よりも怖いのは
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カズイが俺達の所に来た
…気のせいかも知れないが、カズイの奴やつれている様に俺には見えた
ミリィに視線で問いかけると、彼女もそう感じたみたいだった
という事はこの短時間でカズイがやつれる様な事があった
そういう事になるんだろう
「…俺が言うのも本当におかしな話だと思う
が、それでも友人として言わせて欲しい」
カズイは俺達を真剣な目で見つめると
「本当に
…本当にその選択を後悔しないのか?」
そう問いかけてきた
----
カズイ・バスカークという私やトールと親しい友人はズレた所がある。…でも、本当に必要な時にはどれだけみんなが熱狂していようとも、そこでブレーキ役になる事を躊躇わない人だ
そのせいか、それともいつも
あまり親しいといえる人物は少なくとも私やトールの知る限りではいなかった
私とトールにとって共通の親しい友人キラもそんなカズイに興味はあった様だけど、話しかける事が出来なかった
トールは特にカズイの内面を他の人達より知っていた事もあってか、キラに何度もカズイと話す機会を用意しようとした
…まぁ、それでもキラは話しかける事が出来なかったのだけど
そのカズイが今まで私達が見た事のない真剣な顔をして私達に問い掛けた
「それで、良いのか?」
と
----
カズイは自分の手を俺達の前に出し、手袋を外した
その手は細かく震えている
「…俺はさっきの戦闘でザフトの人間を殺した
皮肉なもんだが、MSという人型だからこそはっきりと人を殺したという実感がある」
「誰かを殺した。なら俺もまた誰かに殺される事もあるだろうよ
…なぁトール」
カズイは俺に問いかける
「お前がもしミリアリアと結ばれたとして、だ
仮にお前が軍にいたとなると、下手すればお前とミリアリアの子供にすらその怨みを向けられる事だってあり得るんだぞ?」
それは俺達が全く想像していない話だった
「確かに現状では俺やキラが地球軍に属している
だから、それに対する負い目があるのだとは思う
でも、戦うだけが闘いではない。俺はそう思う」
「どういう事だよ」
サイが怪訝そうな顔をしてカズイに問う
「戦わねば守れないものもあるんだろう。現に俺やキラはそれを選んだ。でも、戦わないからこそ守れるものもあると俺は思っている
…頼む、トール、ミリアリア、サイ」
カズイは俺達に向かって頭を下げる
「結論を急がないでくれ
大袈裟でも何でもなく、この選択がこれからの人生の行く末を左右するものなんだ」
「…分かった。もう少しみんなで話をしてみる」
此処まで
なら、俺達は時間をかけて答えを出すべきなのだろう
俺はそう思った
コーディネーターとナチュラル
その溝は少年達が思うより深い
でも
それでもと誰かを信じようとする心
それは果たして弱さなのか?
次回
『狭間』