勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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という訳で(?)

合流回です


 刃

「なんだって」

バルドフェルドは耳を疑った

それもそうだろう

 

コーディネーター排斥運動を主導している組織ブルーコスモスの盟主の秘書がプラント生まれのコーディネーターなどと誰が想像出来ると言うのだろうか?

 

「いやぁ、僕としては命の恩人である彼女に感謝こそしてましたが、内心ではプラント出身のコーディネーターという事であまり良い気分ではありませんでしたね」

 

「ですが、アズラエル様は私を重用なさっておられます

貴方が居られなければ、私はそこら辺で息絶えていたでしょう

本当に感謝しております」

アズラエルと秘書の女性は当時の事を思い出しているのか楽しそうに笑っている

 

「『人に歴史あり』って事ですね

なんだアズラエル理事も良い出会いをされていたんじゃないですか」

 

「ま、そうなりますかね

お陰で色々とわかったこともありますし」

カズイの言葉にアズラエルは笑みを深くする

 

 

バルドフェルドにはその光景が信じられなかった

 

 

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「プラントでも明確な指標があります

『能力の優劣』というものが」

 

「それは普通だと思いますが、どうやらその仰られ方だとそれだけではない様ですね」

 

「それはそうでしょう

プラントの二世代コーディネーターともなれば『親の期待』という名の重石が最初からあるでしょう

ましてやコーディネーターに能力を与えるのだって決してタダではない。となれば結局のところ資金力がものを言うのでしょう

…ゾッとしない話です。それは端的に言えば『人の価値を金で決める』事にも等しいのですから

だからこそ、私達ブルーコスモスはコーディネーターについて疑義を呈さねばならなかったのです

『人が人の命の価値を容易く定めて良いものか?』とね」

アズラエルは苦い顔でそう語った

 

「『万人が平等であるべき』なんて私もいうつもりはありませんよ?

でも、遺伝子操作により才能を決められてしまえばそれは即ちその人物の人生すらも決めるものではないでしょうか?

それでは余りにも傲慢に過ぎると私は思うのです」

 

「加えて生まれ持った才能(性能)を誇るのではなく、他者を下に見る為に使う者が多いのも事実でしょう

…アンドリュー・バルドフェルド。貴方の知るプラントのコーディネーターにそんなものは一人もいない

そう断言できますか?」

アズラエルの言葉と秘書の言葉がバルドフェルドを射抜く

 

「加えて言えば、プラント住まいのコーディネーターは往々にして自分達のルール以外について無頓着にすぎる様な気もしますね

だからこそ、40年代に地球でありとあらゆる部門においてコーディネーターがトップクラスの活躍をした時彼等はプラントへと追われたのだと思いますが?」

カズイも自分なりの見解を述べる

 

「既にコーディネーターとナチュラルの『種族的な差』については市民達もある程度受け入れていると思います

もしかしたらオーブだけなのかも知れませんが

血で血を洗ったとしてもこびりついた赤は取れませんよ

というか『黒衣の独立宣言』

アレについては正直なところ正気を疑いましたね、俺は」

 

 

 

黒衣の独立宣言

 

ユニウスセブンに対する核攻撃により亡くなった者達の国葬を行なっていた場においてシーゲル・クライン議長が行なった宣言だ

 

クライン議長は国葬という死者を悼むべき場において、プラントの独立を一方的に宣言

あわせて地球連合に対する徹底抗戦の意思を示したのである

 

 

黒衣とは喪服の事であり、彼等は死者への追悼を行うべき、厳粛たる場において戦争の意思を示した事になる

 

 

「私からすればやりかねないと思っていたので然程驚きませんでしたが」

 

「いや、僕も彼女から言われていなかったら何が何だか分からなかったと思います

本当に良い補佐をしてくれますよ、彼女はね」

 

 

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「人が人の価値を生まれた瞬間に

いえ、生まれる前に定める世界

それが貴方達砂時計の連中の目指す世界だ!

答えなさい!アンドリュー・バルドフェルド!!

その世界が本当に正しいと、希望を持てる世界と思うのか!」

 

彼女とて自分が出来損ないである事は本当に申し訳ないと思っていた

だが、どうにもならないのだ。遺伝子という鎖でコーディネーターは雁字搦めに縛られているのだから

 

地球のコーディネーターの多くはそんな事に拘らない親を持つ者が多い。彼らにとって『困難に立ち向かう力』は与えられるものではなく、手に入れるものなのだから

才能があったとしても、それが必ずしも本人の望む道とは限らない

それでは結果を出せたとしても、『そこに本人の幸せがない』のでは意味がないと考える

 

故にこそ、地球にいるコーディネーター達はコーディネーターというもの自体を否定する

 

 

 

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これは、キツイなぁ

バルドフェルドは内心顔を顰めていた

 

何せブルーコスモスの盟主や『真のコーディネーター』相手なら多少なりとも上手くいく自信はあった

 

だが、そんな事はなかったばかりかよりにもよって、プラント生まれのコーディネーターという特大の爆弾に火をつけてしまった

 

 

何というか、今のプラントみたいな状況だとバルドフェルドは内心で自嘲する

 

 

 

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「自由にも責任が伴う

責任なき自由なんてものはただの身勝手だと俺は思うけどな

生まれながらにして遺伝子に縛られる人生

人によってはそれもまた良いのかもしれないけど、俺は嫌だなぁ」

 

「僕も嫌ですよ

余りにも窮屈に過ぎるじゃないですか

というか、それは装置のあり方であって間違っても人としての在り方ではないと僕は思いますけどね」

 

「私もごめんですね

そんな箱庭の中で生きるというのなら、最初から自由なんて知らなければ良いでしょう」

 

「…ボクもそんな未来は欲しくないね」

この一点においては4者共に共通の見解をみたのである

 

 

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「さて、多少話がズレましたがアンドリュー・バルドフェルド

あなたはこれからどうしますか?」

 

「選択できるのかな?ボク達は」

アズラエルの問いかけにバルドフェルドは疑問を返す

 

「ある程度なら、此方も対応しますよ?

プラントに戻りたいと言うのなら輸送艦の一つくらい用意します

…まぁ、それで撃沈されたとしても此方に文句を言うのは無しですが」

 

「資料で受け取りましたが、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマン()丁重にプラントへと送り返したと

とはいえ、だからこそあなた方のその先については何一つこちら側の関知するところではない

…そういう事ですよね?アズラエル理事」

アズラエルの言葉を苦笑いしながら補足するカズイ

 

内容はバルドフェルドからすれば苦笑い程度で済むものではなかったが

 

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イザークとディアッカのプラント送還にはいくつかの狙いがあった

 

 

先ずは単純に人道的配慮

まだ未成年を同じ様に扱うのはいつの世もうるさい連中が騒ぐ可能性がある。その為のもの

 

次にザフト内の分断

イザークとディアッカは最高評議会の構成員の息子であり、またザラ国防委員長のお気に入りとされるクルーゼ隊の人間

故に助かった

そう思わせる事で最高評議会に対する不信感を高め、クルーゼ隊との連携を難しくさせるもの

 

 

更に最高評議会内における分断

クルーゼ隊にはイザーク、ディアッカ、ニコル、アスランがいる事を既に地球軍は掴んでおり、ヘリオポリスにて彼等の同期であるラスティ・マッケンジーが戦死している事も調査の結果判明している

 

そして唯一の戦死者であるラスティの父親ジェレミー・マクスウェルは彼の死をきっかけに強硬論へと傾いた

 

 

…さて、そんな人物ならばこう思わないだろうか?

 

『私の息子は死んだのに、何故ジュールとエルスマンの息子は送り返されたのだ?』

不満は疑念を呼び

疑念は不和を招く

 

イザークの母親エザリアはパトリックら強硬派の実質的No.2

ディアッカの父親ダッドは中立寄りの考え方をしている

 

 

そんな立場の違う2人の子供が最低限とは言え治療されプラントへと送り返される

『こいつらは地球側に通じているのではないか?』

と思わないだろうか?

 

最高評議会の面々の主張は何かをきっかけとして変わっている事もまた調べ上げられている

そんな感情に振り回される者達がどうなるか?

 

地球側は冷笑を浮かべながらプラントを見つめているのだ

 

 

 

プラントに送還された捕虜というのは実のところ、2人が初めての事

大半は降伏する事なく最後の最後まで抗い続け、そして死ぬ

 

ごく一部の者は降伏し、虜囚の身となるが態々プラントへ返してやる義理もない

死ぬまで捕虜収容所で過ごすか?

ユーラシアや東アジアの様に鉱山などでの重労働を課せられるか?

 

どちらにせよ、さして良い未来ではないだろう

 

極々一部の者はプラントやザフトのやり方と現実の差に絶望して、地球側に加わる事もある

その場合は『コーディネーター矯正マシーン』との異名を持つ様になったシュミレーターで一度そのプライドを根元からへし折るのだが

 

 

 

そんな状況下において、バルドフェルド達が『目立った傷もない』状態のままプラントへ送還されるとなれば、どうなるだろう?

 

 

 

間違いなく碌な事にならない

それはバルドフェルド自身確信をもって断言できるのだ

 

 

----

 

「そういう事は分かっていても黙っておくものですよ?」

 

「どうせバルドフェルドさんも分かっているでしょうから構わないでしょう?」

アズラエルの言葉にカズイはとぼけた表情で返す

 

(これが戦争か

どうやら本当にボク達は間違えていたみたいだね)

 

力が無い者が必ずしも敗北するわけでは無い

それが何千年もの間続いてきた戦争というものなのだ

 

 

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プラントやザフトのやり方の基本は

『優秀な兵器や兵士のスペックで殴りつける』

というものであり、この手の搦手じみたやり方には理解が進んでいない

 

 

陥穽にはまる方が間抜け

 

地球の戦い方はそう言ったある意味では泥臭いものがある

それに適応できない時点でプラントの敗北は決まっていたのかも知れない

 

 

(これは負けたな)

バルドフェルドの中に僅かだが残っていた戦意は今折られてしまったのである

 

 

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「失礼します

カズ、いえバスカーク一尉に至急との事で」

急ぎ足で入室してきたナタルはそう言ってカズイに通信端末を手渡す

 

「…嫌な予感しかしないんですが」

 

「奇遇ですね。僕もそう感じますよ?」

カズイが引き攣った顔で通信に応じると

 

 

『突然の連絡、すまないな

実はラクス・クライン等がアメノミハシラに避難してきた

…どうやらお前と話をしたいそうだが、どうする?』

ミナから衝撃の報せがもたらされた

 

「勘弁しろよ、もう」

カズイは更なる面倒ごとの気配を感じて、天井を仰いた

 

 




これからカズイは死亡フラグの地雷原を突破してもらいます

勿論バッドエンド要素はてんこ盛りとなりますのでお楽しみに

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