勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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という訳で遂に全てが終わる時が迫ってまいりました


信念や想い
様々なものを巻き込みながら、戦争という名の歯車は回り続ける



それが止まるのはいつの話だろうか?


 時、来たる

「…そうか

奴等は遂にそこまで堕ちたか」

 

「如何されますか?」

ユーラシア連邦宇宙艦隊司令となったガルシアは艦長の問いかけに

 

「作戦に変更はない

今後投降してくる連中に対しては注意する様に

余りにも酷いならば構わん。投降など認めぬ」

ガルシアが守るべきはユーラシア連邦の市民やユーラシア連邦の兵士達に友軍の人間であって、敵対しているザフトの人間を助ける謂れはないのだ

ましてや、最低限のルールすら守らない獣の為に部下達を危険に晒すなどと許容できるものではないのだ

 

 

既にガルシア率いる艦隊はアルテミスを発し、ザフトの哨戒網を警戒しながらジェネシスへと迫りつつある

 

「それで例のものの準備は問題ないのだな?」

 

「は、閣下。コスモパンジャンドラムは既に投射の時を待っております。必ずや結果を出せるものと」

 

「いや待て、コスモパンジャンドラムではないだろう?

スペースパンジャンドラムの筈だ!」

 

ガルシアの問いかけに技官は自信を持って頷くが、もう1人の技官がその言葉を訂正しようとする

 

 

実はこのパンジャンドラム

正式名称は『パンジャンドラムC.E仕様』であり、コスモパンジャンドラムは開発時にあった候補の一つに過ぎなかった

 

 

ところが、それをどこで勘違いしたのかスポンサー(出資者)がコスモパンジャンドラムと呼び始めた結果、あたかもコスモパンジャンドラムが正式名称であるかの様な流れになりつつあったというめんど、もとい複雑な事情があった

 

 

 

「先人に敬意を払わぬなど貴様それでも技術者か?」

 

「なんだと!」

と技官同士の殴り合いに発展したりしたが、まぁそれは放っておこう

 

 

 

 

「その辺は君達で議論したまえ

私が気にすべきはこの作戦が上手くいくかどうかだ。君達も少しは弁える様に」

 

「は」

 

「失礼しました、閣下」

ガルシアの言葉に技官2人は素直に頭を下げた

 

----

 

 

「偽降などと何を考えているのだ、ザフトは?」

 

「この際、降伏を受け入れぬ方が良いかも知れませんな、閣下」

月面のプトレマイオス基地を発進した大西洋連邦宇宙艦隊は当初の予定通り、ボアズに対する陽動攻撃に当たろうとしていた

 

艦隊旗艦メネラオスには大西洋連邦軍の量産型MSストライクダガーの発展系であるロングダガーが搭載されており、ネルソンにはストライクダガーがドレイクにはコスモグラスパーかそれぞれ搭載されている

 

更に艦隊後方にいるマルセイユⅢ世級を始めとした輸送艦には無人制御のミストラルやメビウスが搭載されており、艦隊の(きっさき)となる事になる予定だ

 

 

ハルバートンとしてはザフトの偽降というものに薄ら寒いものを感じずにはいられなかったが、副官のホフマンが言う様に安易な降伏受諾は味方への危機と判断せざるを得ないのも事実

 

「…仕方あるまい

各部隊に通達。敵の降伏については偽りのものである可能性が高い

それを念頭に行動せよ」

 

「は」

 

(戦争のルールすら意味をなさなくなるか

本当にどうしてこうなったのやら)

ハルバートンは内心重苦しい感情をどうにか飲み込んでいた

 

 

 

 

 

 

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「…アズラエル様、これを」

ラクス達との話の最中、アズラエルの秘書が何かを彼に手渡した

 

「…やれやれ」

それに目を走らせたアズラエルは苦虫を噛み潰した様な顔をしている

 

「その様子だと碌なものではないみたいですね?」

 

「ええ、最悪の知らせですよ

ザフトは偽降を選んだ様ですね」

カズイはアズラエルの言葉を聞いて

 

「遂に狂いましたか?

偽降などすれば、降伏すら受け入れられなくなるでしょうに」

心底呆れ返った

 

「これが事実だとすると面倒ですね」

 

「全くです。これでラクス・クライン達に対する対応も厳しくせざるを得なくなりました」

現在話し合いは少し休憩としており、アズラエルは大西洋連邦などに

カズイはカガリやミナ達にそれぞれ経過報告と受け入れについての話し合いをしている

 

 

が、何れも決して好意的とは言えず苦労している状況

そこにプラントの無法が伝わったとなれば引受先が決まると思えない

 

一つに押し込めるのは危険だろう

少なくとも、プラントのコーディネーター達はそれで牙を剥いてきたという実績があるのだから

 

 

「勘弁しろって

どうしろってんだよ、俺なんかに」

カズイが胃の辺りをさすりながら、頭を抱える

 

「…大丈夫ですか?」

そんなカズイを気の毒そうにアズラエルは労わる

元々オーブで暮らしていた民間人であるカズイ

 

…アズラエル個人としてはそれ自体が俄かに信じられない話だが、遺伝子検査もしたが彼がナチュラルである事は証明されている

 

倒れられても困るし、ましてや死んでもらっては間違いなく混乱の元となるだろう

多少感情的な部分があるものの、基本理性的な人物である事やあくまでも軍に対しての警戒を解かない辺りもポイントが高い

 

(本当に立場が違えば、大西洋連邦の首脳部に居ても不思議ではないと思うんですがねぇ)

ブルーコスモスの事を『環境保護団体』と評した事や組織の統制の難しさにも理解がある

人の痛みを自分のものとして受け入れられる

 

それは得難いものだろう

 

 

だからこそ、アズラエルはカズイ・バスカークに対して出来る限りの便宜を図るのだ

 

何なら自分の補佐役として付けても良い

コーディネーターの秘書とナチュラルでありながら『真のコーディネーター』との声望を集める人物であれば、アズラエルとしても歓迎できる人事となるだろうから

 

勿論彼の持つ人脈もまたアズラエルにとって非常に有用なものだろう

オーブの代表となったカガリ・ユラ・アスハにオーブを動かす立場となったロンド・ミナ・サハク

 

自身が非常に高い能力を持つシン・アスカ

オペレート能力に適性のありそうなマユ・アスカ

 

大西洋連邦の外務次官であり、ザフトによってその命を失ったジョージ・アルスターの一人娘、フレイ・アルスター

 

アズラエルの調査で興味深い事(・・・・・)が判明したキラ・ヤマト

大西洋連邦軍の最新鋭艦を無事に地球まで動かしたマリュー・ラミアスを始めとしたアークエンジェルクルーにグリマルディで名を馳せた『エンディミュオンの鷹』ことムゥ・ラ・フラガ。軍人の家系であり、自身もまた優秀な軍人であると同時にカズイに対して『そう言った感情』を持っているであろうナタル・バジルール

更に調べたところでは宇宙艦隊の司令であるハルバートンやユーラシア連邦宇宙艦隊の司令官であり、アルテミス要塞の司令でもあるガルシアとすら面識があると言うではないか

 

 

加えて非凡な弁舌や広い視野と年に似合わない豊富な知識

 

これで重用しないと言うならば、その人物は大凡組織人として向いてない

とすらアズラエルは考えている

 

(さて、胃薬はアルスター嬢が用意していると聞きますし、栄養剤くらいは用意しますかね)

アズラエルはだからこそ、カズイにある程度の配慮をする

 

(貴方の仕事は寧ろ戦後になるんです

…死なないで下さいよ?)

公人としてではなく、個人として

ムルタ・アズラエルという1人の人間としても彼の行く末には興味があるのだから

 

 

 

 

 

 

----

 

『どうするのだ?カガリ・ユラ』

 

「いや本当に勘弁してほしいんだが

…ロンド・ギナ、これは間違いないのか?」

カズイが胃痛に苛まれていた時、オーブの代表となったカガリとその補佐役として定着しつつあるミナは頭を抱えていた

 

というのも、サハク家当主であるロンド・ギナ・サハクからの通信がもたらした情報があんまりなものだったのだから

 

「…ギナ。念の為にもう一度聞くが、ザフトは偽装降伏をしたのだな?」

 

『その通りだ

全く笑えない話ではないか?自分達の優秀さを謳うコーディネーターが奴等の言うところの『劣等種』の慈悲すら利用せねば勝てなくなったのだからな

これを笑わずして、何を笑えというのか?』

ギナは心底愉快そうに笑う

 

 

優秀と言うなら好きにすれば良いし、コーディネーターが優秀である事自体にはギナとて否定するつもりはない

が、なれば自分達が負けた(優秀ではなかった)事くらいは受け止めるべきと考えている

 

 

見下しはするが、見下される事は許せない

殴り(殺し)はするが、殴ら(殺さ)れるのは我慢ならない

 

などと言うのならば、子供のわがまま以下であろう

 

 

ギナは自身が優秀である事を疑わない

だからこそ、その自分と戦い生き延びた者達に対する敬意を払う事は忘れない

 

でなければ、余りにも情けない

そうギナは思っているのだから

 

 

『聞くところによると、プラントでクーデター(政変)が起きたそうだ。現在プラントを動かしているのはシーゲルやパトリックですらなかろうよ

奴等ならばもう少しマシな方法を取るだろうからな』

 

「ああもう!何でこんな急に色々変わるんだよっ!」

カガリは思わず頭を掻きむしる

 

「プラントは終わると思うか?ギナ」

 

『これで終わらぬと言うならば、それこそシーゲルとパトリックがした事は無意味だろう。先ず保つまい』

ミナの問いかけにギナは苦笑を浮かべる

 

「…ミナ、緊急の会議を召集する準備を

あと明日議会を臨時に開く」

カガリは決意を宿した強い瞳でミナとギナをそれぞれ見ると指示を出す

 

「やむを得んか

分かった。直ぐに取り掛かろう」

 

『ふん、漸くか』

ミナは疲れた顔で

ギナはやや不満そうな顔でそれぞれ応じた

 

「オーブはこれより地球軍と連携して、暴走しつつあるプラントを止める。ミナにギナ。力を借りるぞ」

 

「それがオーブの民のためならば構わぬ」

 

『国を滅ぼす愚か者にはならぬ様で安心したぞ』

 

 

全ては動き出した

 

 

 

 

 

 

 

----

 

「やれやれ

どうやら前議長達よりも余程性質(たち)の悪い連中が権力を握った様だな」

 

「その様ですね、隊長」

クルーゼはザフトによる久しぶりの勝利の報を聞いて、余りの情けなさにもはや開戦当初のザフトは無くなったのだといっそ笑いたくなった

アデスもまた「此処までザフト(自分達)は堕ちたのか」という苦い感情を持つしかなかった

 

 

 

 

確かに勝利はしただろう

 

が、その勝ち方が何とも情け無い物なのだから笑えない

 

 

クルーゼとて、今のザフトにおいて恐らく一、二を争うであろう優秀な指揮官なのだ

故に彼に対して協力的であり、今のザフト首脳部に対して不満を持つ者達が集まるのは寧ろ当然であるとすら言えるだろう

 

「…ふん

妻と子供の無念を果たそうと思って見れば、何とも無様なところを見せつけられたものだ」

クルーゼとアデスと共に現状を憂いている人物

 

彼の名はサトーといった

 

 

----

 

サトーは所謂パトリック・ザラの支持者であり、ナチュラルを滅ぼすべしと考えている強硬論を唱えている人物だ

 

だが、妻と息子を喪った怒りと嘆きをナチュラル共に思い知らせてやりたいと思っているからと、そのために今を生きているプラントの人間の未来を贄に差し出したいとまでは思っていない

流石のサトーとて、やって良い事と悪い事の分別はつく

 

 

仮にもサトーと彼の部下達はジン・ハイマニューバを与えられている精鋭であり、ともすれば他の部隊に対して指導する立場にある

 

 

考えられない仮定であるが、もしも『プラントを裏切った挙句、地球軍にもプラントにも属さない様な連中』が戦争を終わらせた

などという事があったならば、或いはサトー達もザフトの指揮下を離れるやもしれない

 

 

だが、そうではない

そうではなかったのだ

 

 

自分達よりも若く、経験の少ない者達が多く地上へと赴き

そして死んだ

 

マルコ・モラシム隊長の様に自身の身内をあの忌まわしきユニウスセブンに対する核攻撃(血のバレンタイン)で喪ったものばかりではない 

 

 

ただ、ザフトの

プラントの掲げる正義の名の下に多くの命が散っていった

 

 

そして、それらの帰りを待つ市民達の何と情けなく惨めなものか

 

それでも勝てる可能性を求めてシーゲル・クラインやパトリック・ザラ達は懸命な努力を続けた

 

そう、賢明ではない懸命(・・)な努力だ

 

 

最早この戦争において、プラントの勝利は望めまい。それを彼等が理解していないとはサトーは欠片程にも思っていない

 

それに、それは少なからず自分達にも責があるだろう

 

 

守るべき子供すら戦争に駆り出したのが評議会だとしても、その決定に至る状況としたのは自分達ザフトの大人達なのだ

そして今また更に子供達の命を捧げようとしている

 

 

 

----

 

 

サトーにとって、ザフトは生きる道標だった

だが、妻と子供は生きる理由だったのだ

 

 

其れ等が失われた事でサトーは復讐に狂ったのかも知れない

…だが、だからといって他の者達にまでこの様な仄暗い感情を抱いて欲しいなどとは一度とて思った事はない

 

『もう誰にもこの様な想いをさせてなるものか!』

それこそが、サトーの戦う意味だったのだから

 

 

 

しかし、今のプラントは間違いなくおかしな方向に進みつつある

 

 

シーゲルとパトリックを排しながら、パトリック率いる強硬派のNo.2であるエザリア・ジュールを新議長にし、ユーリ・アマルフィやアイリーン・カナーバら穏健よりの主張をしていた議員は軒並みその職を追われている

唯一残っているのがダッド・エルスマンだ

 

その不自然な人事を聞いたサトーは一つの噂話を思い出す

 

『エザリアとダッドがナチュラルと結んでいる』

という荒唐無稽な噂話を

 

 

噂という事は少なくとも、それに準じたものがあった可能性やその根拠となる『何か』があった筈

サトーは部下達と協力してこの話について調べようとした

 

 

だが、新体制が発足する前から彼等は入念な準備をしていたらしく、その噂話について詳しい話を掴めないまま時が過ぎようとしていた

 

 

しかし、思わぬところからサトーの望む情報が手に入った

 

「…あの、サトー隊長?

それなら、なんでもイザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンが地上で負傷してプラントに送還されたって聞いた事がありますけど」

とサトーの部下として配属されていた新兵であるルナマリア・ホークから話が聞けたのである

 

 

それにより、漸くサトーの中で一つの唾棄すべき結論が生まれた

 

…そう

子供の命を人質としているという到底サトーには許せない事が

 

 

それ故にサトーは部下達に新兵であり、少女であるルナマリアを守らせると共にパトリック・ザラの腹心であるクルーゼと協力して今のプラントをどうにかすべきと動いていたのである

 

----

 

クルーゼとしても、機動戦力であるクルーゼ隊旗艦ヴェサリウスと僚艦ガモフは取り上げられている事から実働戦力はないに等しかった

そこにジン・ハイマニューバやサトーにはジン・ハイマニューバの改良型であるジン・ハイマニューバⅡ型を有するサトー隊が加わった事で出来る事の範囲が急速に広がったといえるだろう

 

ましてや、サトー達は『ナチュラル共の殲滅を掲げる者達(強硬論者)』である事から新体制側は自分達の仲間と信じて疑わない

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

----

 

「閣下、そろそろですな」

 

「…うむ、各艦機動部隊の発進を開始せよ!

各艦はこの位置に待機。こちらに対して攻撃してくるザフト軍に対して艦砲のシャワーをくれてやれ!」

ボアズにはハルバートンが

 

 

 

「…そろそろだな

良し!パンジャンドラム全機投射開始!

各艦と機動部隊は接近するザフト軍を迎撃せよ!」

ジェネシスにはガルシアが

 

 

それぞれの艦隊を率いて攻撃を開始したのだった

 

 

 

 




という訳で本作においてはサトーも味方ポジとなります


まぁ、明確に地球側と共闘するわけではありませんが




ところで皆様?
前話において多数の感想を頂いたのですが、偽降をザフト軍が行った事に対する意見の殆どが納得なのは何故なんでしょうか?

鞍馬エルとしては割と意外だったのですが

え、なにこのザフトに対する負の信頼は?

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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