「…『真のコーディネーター』がオーブにで凶刃に斃れたそうだ」
「これで地球軍の足並みも更に乱れるな
プラント移住を希望している者の一部をオーブに留め置いた甲斐があったというものだ」
「…さて、忌々しい足付きと件の人物は決して無関係ではない
オーブとしては出来る限りこの情報を秘匿したいだろうが、そうはさせん」
プラントにおいて、カズイが凶刃に斃れた事を
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『
これこそが地球軍、そしてブルーコスモスの本音なのだ!
我々コーディネーターをナチュラルは利用する事はしよう!
その後我々がどのような最期を迎えるのか、その実例と言っても過言ではない』
プラントより全世界へ向けて発信されたこの放送は世界の至る所において混乱を引き起こす
…プラントの思惑通りに
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「…どうなるのでしょうか、これから」
「……分からない。と言うよりも完全に見通しも立たなくなった
ラクス嬢には少し休んでもらっているが、ハーネンフース君。君は大丈夫なのかね?」
「正直しんどい部分はありますが、今デュランダルさんやアマルフィさん達だけに任せきりにする訳にもいかないと」
アメノミハシラからオーブ本土に向けてシャトルを用意してもらい、次の本土との打ち合わせ次第で本土に向かう事となっていたラクス達
だが、先の爆発事件や今回のカズイ襲撃により完全にその予定も崩れ去っていた
なんとか体調を持ち直したラクスであったが、カズイの負傷。しかも命の危険すらある程の重傷との事を受けてショックを受ける
無理もない。元々誰かを傷付ける事と無縁な日々を送っていた彼女
しかも生まれ育ったプラントを離れざるを得なくなり、慣れていない船内での生活やオーブ側との交渉(なお交渉材料は皆無)。相手の好意に縋るしかないというのは善性である彼女にとって大き過ぎる精神的負担となっていたのだ
加えて自分達の中からオーブ側に対して被害を出す者が現れてしまう。その上での交渉の窓口となっていた筈のカズイの報を聞いたのだ
心労で伏せるのも無理はないだろう
現在ニコルもなんとか起き上がって母親のロミナと共に市民の説得にあたっている
が、明らかに不満を持っている者の数が増えておりいつ暴発するかデュランダルやシホは戦々恐々
加えてラクスが心労で伏せっている事も彼等市民の不満を高める要因となっていた
が、デュランダルやシホはこれでもオーブから温情を受けている自覚があるだけに何も言えないのだ
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「どういう事だ!カズイを1人で帰宅させるなんて指示を私もミナも出していないし、護衛指示を取り消した訳でもない!」
「…そ、それが」
カガリとミナはカズイが襲撃された件について調査を行なっていた
…本来ならカガリやミナが動くわけにもいかなかったのだが
「…先の騒動の負の影響、か」
オーブにおいてウズミ・ナラは支持されていた。そのシンパは国防軍内にも多く、実際に動いた者だけではなく動きこそしなかったがカガリとミナに内心反発する者がそれなりにいたのである
無論その辺は2人も理解してはいたが、まさか与えられた任務を放棄する真似をするとは思っていなかった
カズイには本来なら、クーデター騒動の時に彼の指揮下に入った者達を付ける予定だった
だが、とある高官は
「一尉にはまだ理解者が多くありません。このままではいざという時連携に支障が出ないとも限りませんので、その辺を考慮した人選をしたく思います」
とミナに進言し、ミナも全てを強権で押し進めるのは問題があるとしてそれを受け入れた
ところが任された者は
その為、カズイに対する護衛の数を
「オーブ国内でこれ以上何か起きる訳もなかろう
馬鹿馬鹿しい」
との判断からだった
まぁそれでも額面上はキチンと護衛に人数を割いているという
当然だが、カガリやミナはアークエンジェルからの通報を受けて護衛任務に就いている者達の上司に連絡を入れた
「バスカーク一尉が襲われる可能性がある
厳重に護衛してくれ」
と
此処に至って護衛の重大性を理解した上司だったが、時既に遅く。カズイの護衛に就いていたはずの者は実はオーブ国防軍官舎にいたのである
更にトダカ等が救護している所に護衛任務を命じられていた者が現れ、唯でさえ緊急事態なのに自身が搬送すると言い出して少なくない時間を浪費していた
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「…つまり何か?命令を受けていながら、貴官の勝手な判断でバスカーク一尉の護衛には誰も就いていなかったと?」
「いえ、その」
ミナとしてはこんな
「驚く話だな
つまり貴官は軍務において受けた指示よりも自分の判断を優先すると言うのだな?
…もういい、分かった。ならば明日までに辞表を提出しろ」
そんな人間にかける時間も労力もミナにはないし、用意するつもりもない
勿論そんな人物に預かる権限や兵力もオーブ国防軍には存在するはずもないのだ
ミナはそう判断した
…
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「アズラエル様、どうしましょうか?」
「全く面倒な事ですよ。今頃連合事務総長が動くなんて」
一応プラントとの全面的な武力抗争に突入する少し前に発足した地球連合
旧世紀における国際連盟や国際連合程度の権限すら持ち得ないアズラエルやロゴスのメンバー、プラント理事国政府からすれば寧ろ『邪魔』とすら思える組織
あくまでも軍事的意味合いにおいて地球連合軍は有効に機能している
が、それとて地球軍と言いながらもその実情は大西洋連邦軍、ユーラシア連邦軍、東アジア共和国軍などと指揮系統は完全に分かれている
政治的な意味においては、プラント理事国である大西洋連邦、ユーラシア連邦に東アジア共和国。親プラント国であったアフリカ共同体や南アメリカ合衆国。親プラント理事国である南アフリカ統一機構が参加しており、統一的な行動などとてもではないが出来たものではなかった
今はプラントに対してのスタンスをプラント理事国に合わせているが南アメリカ合衆国やアフリカ共同体に大洋州連合(後に加盟)はプラントとの和平を言い出している始末
とてもではないが、政治的な意味において有効な組織とアズラエルは見做していない
更にアズラエルが不信を強める理由が、連合外交官としてマルキオ導師を起用している事にある
どうにも現在問題となっているジャンク屋問題にもこの人物は口を挟んでいるらしく、ジャンク屋による公的組織を作り上げようと目論んでいる節がある様にアズラエルには見えていた
「ジャンクなんて言いますが、兵器ですからね
知識があればそれを修理する事も出来るでしょう。改良だって出来てもおかしくはありません
…流石に許容できるものではありませんよ」
事実、北アフリカにおいてバルドフェルド隊を始めとした部隊をユーラシア連邦軍を主体とした部隊が攻略した『北アフリカ解放作戦』
一連の戦闘によりザフトの数多くのMSの残骸が北アフリカに横たわったのだが、ユーラシア連邦軍の調査によると『明らかに数が少ない』との事
加えて現地住民からジャンク屋が現地に居て何らかの行動をしている事が確認されている
ユーラシア連邦政府はジャンク屋をまとめる組織として作られて間もない『ジャンク屋連合』に速やかに当該地区で手に入れたジャンクの
たかだが一介の外交官が一つの公的機関の設立に寄与したなどというのは明らかに問題だろう
…恐らく事務総長あたりも動いているのだろうが、戦争の火種を消そうとしているプラント理事国政府からすれば正しく余計な事でしかない
今回恐らく混乱している各国の情勢を鑑みて動いたのだろうが、たとえ事務総長の提案であっても各国政府特にプラント理事国政府が承認していない案件など考慮するにも値しない
が、プラント側からすれば事務総長個人の意見を『地球連合全体の総意』と解釈できる余地があるのは非常に問題だろう
仮に
もし仮に今互いに武器を置いたとして、双方が納得できる形になるとは思えない
確かにプラントは助かるだろう
だが間違いなく時間をかければ彼等は再び牙を磨き上げ、そしてその牙を剥くだろう
地球連合にとって、いやプラント理事国を始めとした国家にとって終わりの道筋の見えていたものをいきなり勝手な理由で止められるのだ
下手をすれば地球連合そのものの意味すら揺らぎかねない
そしてアズラエルは思う
「…余りにもタイミングが良過ぎると思うのはボクの気のせいですかねぇ」
と
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「代表、国内でコーディネーター住民の不満が」
「…分かっている
しかしどうすれば良いんだ!」
カガリは国内の問題に対応する為に単身議会の有力者との会合に臨んでいた
オーブ国内においてカズイの襲撃とその重体が伝わると、急激な反ブルーコスモスの空気が蔓延してしまう
だが、コーディネーター根絶を掲げて動いているのは寧ろ今のブルーコスモス内で圧倒的少数派だ
軽々その様な運動が起きてしまっては後々の禍根と成りかねない
…更に気掛かりなのは
「旧アスハ派の将兵達の中にも協力者がいるかもしれませんぞ、代表」
議長の言葉に
「あり得ない!
…と言いたいところだが、そう言い切れないのが悩ましいところだろうな」
アスハ派というか、ウズミ派と言うべき者達は現実よりも理想を重視する部分があり、結果として現実路線の人間達を倦厭する所がある
…まぁ自分にもそういった部分がないとは言えないのがカガリの密かな悩みであったりするのだが
オーブは今ホムラ=ウズミ体制からの移行に伴い、軍民政何れにおいても少なからぬ混乱が起きている
カガリの本音としては、先ず其方の問題解決に全てのリソースを振り分けたかったのだが、中々そう上手くはいかない
元々現体制に移行した大きな要因の一つは
崖に辛うじて手をかけていた状況から、崖の端に追いやられる程度に状況は良くなったとも言えなくもないが、それとて最悪が悪いに変化した程度のもの
どの道まだオーブの道は険しいままなのだ
そんな窮状故に本来ならば、アークエンジェルから降りれば民間人となる道もあったであろうカズイ達を巻き込んだのである
「…バスカーク一尉の容体は」
「…未だ予断を許さぬ、と」
その結果がコレでは余りにも救いの無い話だろう
(私が言えた義理ではないけど、カズイ。死なないでくれよ)
カガリは政務をこなしながらカズイの回復を祈った
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「ジャンクの回収の禁止!?
なんでだよ!」
『…プラント理事国政府やプラントからかなり圧力が強まっている
君みたいにオーブ側からMSの所有を黙認されている人間はまずいない。殆どのジャンク屋や傭兵はザフトのMSや連合の兵器を戦場跡から回収、改修して運用しているのが現状だ』
ジャンク屋であるロウ・ギュールは通信を受けて抗議の声を上げる
彼は崩壊したヘリオポリスにてオーブのMSである『アストレイレッドフレーム』を手に入れた
同じく手に入れた『アストレイブルーフレーム』は傭兵である叢雲凱に渡しているが、本来両機はオーブの所有物であり一介のジャンク屋や傭兵に所有権など主張できるものでも無い
加えて『ジャンク』ならばまだ多少抗弁も出来ようが、MSとして起動出来る完成品
ジャンク屋独自の
が、両フレームを回収しようとしたオーブの氏族、ロンド・ギナ・サハクが駆るゴールドフレームと交戦
ロウと凱の実力を認めたギナは2人のアストレイ所有を黙認する事としたのである
まぁこれは明らかに特殊なケースであり、本来であれば実力をもってロウはアストレイから降ろされたとしても不思議では無い
ロウが主張するのは、法に基づくものではないのだから
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「…てか大丈夫なのかよ?」
ロウは最近ザフトがジャンク屋や傭兵を募っている事を耳にしている。リーアムや樹里、プロフェッサーらと話し合った結果ロウ達は関わろうとしていない。しかし、プラントや地球軍はジャンク屋の跋扈を可能な限り防ごうとしており傭兵はそうでもないが、ジャンク屋の中には開戦当初に比べてかなり生活が苦しい者もいる
そういった者達がザフトの高額な報酬に釣られてザフトにつくのはあり得る話
別にそれ自体は問題とならないだろう
そうロウは判断していた
なおプロフェッサーは
「…どう見てもロクでもない思惑があると思うけど。それを選ぶなら仕方ないでしょうね」
と突き放している
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ロウが気にしているザフトに協力しようとしているジャンク屋や傭兵達であったが、彼等の扱う物の多くはザフトのジンであり、ザフト司令部からすれば忌々しいものでしかなかった
何せ彼等が大手を振って運用しているそれらが自分達の手にあれば、ザフトの戦力の立て直しも予定より早く行なえるだろう
…寧ろそれだけの戦力となり得る物があるのならば、或いは地球軍との戦いにおいてももっと別の結果があったのではないか?
ザフトの司令部はそう本気で思っている
「地球側が足並みを乱している今が好機
…速やかに
ザフト司令部は戦力としてプラントに招いていた傭兵やジャンク屋を特殊部隊で強襲
彼等の持つMSなどの兵器群を手中に収めた
そして
「最早ジェネシスの修復を目指す余裕はない」
として、ザフトは戦略の根本的な見直しを議論する事になる
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「…このタイミングでか」
大西洋連邦大統領アーヴィングは自身の執務室で頭をかかえる
ただでさえプラント侵攻作戦についての議論が長引きそうだというのに、先のアメノミハシラの騒動に続きのコレ
実行犯と思しき者達は逃走しており、オーブの国外へのルートは即座に封鎖したとアスハ代表から連絡もあった
にも関わらず、未だに下手人を捕捉すら出来ていない
加えて被害にあった人物以外に目もくれることなく逃走した事から無差別ではなく、襲撃された人物を狙っての犯行である事は明白
更に件の人物がコーディネーターのコミュニティの中でかなり注目されていた事もまた問題を複雑化させている
野党や
更に面倒な事ではあるが、ブルーコスモスのスポンサーでありロゴスの一員であるロード・ジブリールが消息不明となっておりユーラシア連邦では少なからぬ経済的な混乱も起こっている
カズイの襲撃についてはプラントが態々全世界にそれを発信した為、オーブに対する不信感も高まりつつあった
これはコーディネーターとナチュラルの根強い不和を解決するための方策の一つとしてカズイの事をある程度ぼかして広報していた為
故にその様な人物に今一度凶刃が届いた上に、既に1日以上経過しながら何一つ犯人に繋がるものを出せないオーブに市民の中に不信感が高まりつつある
最有力犯人候補であるブルーコスモスのアズラエル側からは
「冗談じゃありませんよ
今彼を害する理由なんて何一つない事を大統領閣下もご存知でしょうに」
と否定されている
まぁアーヴィングとしても『今カズイを切る』と言うのは選択肢にないので予想された反応であったが
この上面倒極まるのが
「…オルバーニめ
余計な事をやってくれる」
地球連合事務総長であるオルバーニは『オルバーニの譲歩案』を連合外交官であるマルキオ導師を通じてプラント側に提出したのだ
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国際連盟や国際連合といった世界規模の組織は過去にも存在していた。だが、それらの組織は
現在の地球連合は組織として余りにも若過ぎる上に、大西洋連邦を始めとしたプラント理事国の意思が反映されるものとなっており調整や調停組織としては機能など全く意味を成していない
しかし、ザフトの偽降から始まった一連の騒動によりザフト、地球軍の直接的衝突は小康状態になっている
そして、ザフトというプラントの武力が折れかかっている現状ならばプラントも譲歩できるだろうし、一刻も早く戦争を終わらせようとするプラント理事国の意にも反しないだろう
そして調停出来たならば、地球連合事務総長の権限もある程度認められるだろうとの考えもあった
それ故の動きだったと言える
が、この譲歩案の内容が問題だった
プラントは理事国の管理を受け入れながら、ある程度の自治権を有する
というもの
プラントはともかくとして理事国側からすれば
「今更何をいっているのだ?」
と冷笑を浮かべる様な内容であり、少なくともプラント理事国政府はその様な案を受け入れるつもりなど欠片もない
そもそもプラントに対して自治権を与えるつもり理由など微塵もない。仮に彼等プラント市民が
地球連合は理事国に対して内心不満を募らせている南アメリカ合衆国やアフリカ共同体、大洋州連合も加盟している
恐らくはその辺りの支持を受けてのものだろうが
「残念だがオルバーニ事務総長
話し合いで終わるラインはとうの前に越えているのだよ」
そもそもオーブの一個人であるマルキオなる人物を地球連合外交官とする時点でプラント理事国政府はオルバーニを信用などしていない
今回の明らかに時期尚早とも言える動きを見せた時点でアーヴィングを始めとした理事国政府は地球連合に対する見方を悪い方へと変えた
「…この際だ
膿を出すなら一度で徹底的にやるべきかも知れん」
そうアーヴィングは呟くと通信機を起動させた
事態は更に混迷の度を深めながら、誰もが制御出来ない方向へと向かい始める
その果てにあるのは
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
-
いる
-
いらん
-
それより本編でしょう?
-
ifstory補完しろよ