勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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前回の疑問点の答えと各陣営の動き


 (掲げるもの)の意味

「何故ですか!納得出来ませんよ!」

 

「…確かに人数を減らしたのは私だ

だが、貴官もバスカーク一尉の護衛任務に就いていながら護衛していなかった。結果として一尉は襲撃され、最悪の事態こそ免れたが今なお意思不明の重体だ

貴官、何処で何をやっていた?」

 

ミナにクビを言い渡された人物は最後の仕事となる自身が護衛任務に付けた人物に対する処分(・・)を言い渡していた

が、本人は全く納得のいっていない様子であり半ば口論になりかけていたのである

 

「私や貴官の胸中はどうあれ、件の人物はオーブの人間だ

護衛任務を言い渡されておりながら、その任務を放棄した貴官だぞ?そんな人物に任せられる任務があると思うのかね?」

言葉を紡げば紡ぐ程に自身にも刺さってくる言葉の刃

だが、言わねばならない

 

 

「はっ、あの餓鬼が一尉?

所詮大西洋連邦軍の新造艦に乗っていただけの小僧が?」

男は鼻で笑う

 

彼はウズミの思想に感銘を受け、オーブを守るべく日々職務に邁進してきたという自負がある

 

…確かに今のオーブもアスハが代表をしているが、所詮はサハクなどの操り人形(傀儡)

そこに守るべきオーブの理念など欠片も存在しないと男は思っていた

 

 

 

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実のところ、男ほどではないが現代表であるカガリを中心とした新体制に対して不満や内心反発するものは決して少なくない

…その殆どというか、ほぼ全てがオーブ国内から出た事のない軍人ばかりであったのだが

 

 

軍において旧アスハ派にやや押され気味であるものの、ある程度の勢力を有しているミナやギナが束ねるサハク派

彼等の多くはアメノミハシラに入れ替わりで任に就いている

 

故にこそ『オーブが世界からどの様に思われているか?』について少ないながらも理解していた

 

本来軌道上にあるアメノミハシラは大西洋連邦を始めとした地球軍にとって艦隊を駐留させるに好条件が揃っている

中規模程度の艦隊ならば受け入れられる宇宙港に開発や生産拠点として運用可能な工廠群(ファクトリー)まで存在

 

大西洋連邦軍宇宙艦隊の根拠地が月面クレーターのプトレマイオスであり、ユーラシア連邦軍宇宙艦隊の拠点がアルテミス要塞である事からも地球周辺宙域を制する為にはこれ以上ない好立地。それがアメノミハシラなのだ

 

元々軌道エレベーターの滞在用拠点として構想されていたのだが、諸般の事情から中断され、結果としてアメノミハシラが軌道上に存在する形となったという経緯がある

 

 

第八艦隊がクルーゼ隊と交戦した時

東アジアが宇宙艦隊を再編成し、アルテミス要塞に入港させた時

ボアズ攻略に大西洋連邦軍宇宙艦隊が動いた時など幾らでもアメノミハシラに対してアクションを取る機会はあった

 

 

ところが何れの組織もアメノミハシラに対して一切のコンタクトを取ろうとしなかったのである

 

特に新型であるGの開発に協力したはずの大西洋連邦軍からすらも声が掛からなかったのは当時アメノミハシラに駐留していたサハク派のオーブ国防軍士官達からすれば異様とすら言えた

 

「…ふん、我々は信用されていない

そういう事だろう」

当時アメノミハシラにいたギナは心底不愉快そうに呟いた

 

とはいえ、である

 

少なくともその連邦軍の新型の技術を無断使用(・・・・)して作り上げたオーブ初のMS(アストレイシリーズ)がある時点で問題しかなかったりしたのだが

 

 

 

オーブ(自分達)はプラント理事国いや地球軍からよく思われていない」

それを当時アメノミハシラにいた者達は理解した

 

故にこそ、彼等サハク派の者達は当時の状況が如何に危険なものであとのかを理解しようとしたと言えるだろう

 

 

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ザフトによるヘリオポリス襲撃とそれに伴う新型機強奪。それを防ごうとした大西洋連邦軍新鋭艦アークエンジェルと唯一残されたG、ストライク。そして襲撃犯であるザフト

双方の戦闘によりヘリオポリスは崩壊

 

法律上問題ないとしても、敵側の理屈ならば襲撃しかねない状況を作り出したオーブ上層部に対して不満を爆発させた先のオーブ外交担当者

 

 

彼が職を辞した事により、各勢力の外交担当者はホムラ(ウズミ)政権には危険な水準に達しかねない問題があると察した

故に後任となったウナトに対する態度は冷淡と言っても過言ではないものであり

 

 

「自国民すら守れない、守る気のない政府と軍隊

…失礼ながら、それが役に立つとは思えないのですよ。その様な者達が同盟国や友好国を守ると誰が思えましょうか」

 

ウナトが何とか会談を行なえた某国の外務担当者はそうストレートにウナトへと言ったほど

 

 

 

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そこまで他国から敵視されつつあったオーブ

だが、完全にアスハを除くのは不可能だ。何せかの一族はオーブ成立時から多大な貢献をしてきたのだから

故にミナやギナ、コトーらは不本意ながらアスハの小娘(カガリ)と結ぶ事を選んだと言える

 

 

そしてオーブに突きつけられた刃は喉元に突きつけられていた。いつ地球軍が艦隊を動かすかすらも不透明だったのだ、あの時は

 

国民や議会に対して、国防軍に対して懇切丁寧に説明する様な悠長な事をするだけの余裕など有りはしなかった

 

 

仮に

もし仮にあの時、ウズミやホムラ。2人を支持する者達にこの事を告げたとしていったいどれだけの者がそれを本気で信じただろうか?

 

 

 

 

オーブにおけるカガリ、サハクらによるクーデターが起き何とか早期決着出来たものの、全くもってオーブに余裕はなかった

 

あくまでもオーブに対する悪感情は多少薄れたとはいえ、未だ同盟関係を構築する事は叶わず、友好国として大西洋連邦との関係を修復する事に現在オーブの外交関係者はリソースを傾けていたのだから

 

 

 

オーブが地球軍によって滅ぼされる未来があった事を国民や軍人達が知れば、どの様な問題が噴出するか分かったものでもない

 

 

 

今のオーブ政府首班は議会、国民、国防軍、大西洋連邦を始めとした諸外国に配慮せねばならない不自由な状況だったのである

 

 

 

故に決定的な失態を犯したものに対しても厳罰に処する事が出来ないのであった

 

 

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とは言え、階級が上がれば上がるほどに見える景色は広くなる

 

 

だから彼は最後に自分と共に処罰されねばならない部下を軍から退役させねばならない

 

…とは言え、恐らくは軍を辞した自分や部下に未来はない(・・・・・)だろうが

 

 

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男は目の前の上司から言われる事に納得出来なかった

確かに護衛任務を放棄したのは自分の落ち度だろう

 

 

だが、そもそも正規の士官教育を受けてもいない。国防軍に志願してもいない、しかも自分よりも年下でコーディネーターと仲良くす(媚を売)る者

そんなの(・・・・)が自身よりも階級が上?

その上護衛対象?

 

冗談ではなかった

しかも同僚から聞くところによれば一尉とやらは先のクーデター騒動に積極的に協力していたというではないか?

 

 

 

つまりこのガキは『オーブの平和を壊した』大罪人なのだ

 

 

 

だから、死んだとしても問題はない

平和なオーブを脅かした者には其れ相応の報いがあるべきなのだから

 

 

 

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『プラント最高評議会は事務総長の提案を呑むつもりはないそうです』

 

「…そうかね。今ならばこの戦争を終わらせられると思ったのだが」

 

地球連合事務総長オルバーニはプラントに向かわせたマルキオからの連絡を受けて表情を暗くする

プラントとの武力衝突の時期に発足した地球連合だったが、世界的組織であった国際連合と比較しても余りにも影響力も何もかもが不足している

 

「各勢力が思い思いの考えのもとで動いていては、いつまでも平和は訪れない

旧世紀においても、再構成戦争以来も皆が『自身の都合』を追求し過ぎた結果いつまでも戦乱は終わらぬのだ」

オルバーニは今なお続く戦争に対して嫌悪感と危機感を覚えていた

 

『プラントも追い詰められているとの事務総長の読みは外れていないと思ったのですが』

マルキオも難しい顔をする

 

 

オルバーニとしては全面衝突以前の地図に戻った

つまりプラントはコロニー群を

地球連合各国は地上に

 

それぞれ文字通り『棲み分け』ができるのならばコーディネーターとの共存も叶うのではないか?と思っていたのである

 

 

 

…この考えが間違っているか、或いは正しいか?

その是非はともかくとして彼は一つ大きな見落としをしていた

 

確かに地球連合という組織の影響力を拡大する事でもしかしたら、国家間の紛争や対立を抑止出来るのかも知れない

 

 

しかし、彼は事務総長とはいえ組織の一員である

が、間違っても地球連合は統治機構としての機能を期待されていない。どちらかといえば調整機関としての機能を求められていると言えるだろう

 

オルバーニにまた真剣に未来を憂いている

 

 

が、彼のやり方は大西洋連邦を始めとした地球連合主要国にとって顔を顰める様なやり方

 

 

「アレのやり方にせよ、アレの信任する男にせよ我々とは相容れないものだ

地球連合構成国と言えど、各勢力にはそれぞれ思惑があり調停するにせよ双方の意見や立場を理解し、吟味した上でせねばならん

それを怠るならば誰もそれに従う事もなかろうに」

アーヴィングとしても別に連合の地位向上自体には思うところはない。寧ろ今までの歴史を踏まえるに国際的組織にある程度の権限を与えるのは吝かではない

 

が、連合である以上は意見の調整なども必須であろう

今回の様な先走った様な行動をするのであれば

ジャンク屋達を公的な組織としてまとめ上げようとするならば

 

今の連合のやり方を認めるつもりはない

 

 

「我々は未来(さき)を示さねばならん

が、そこに至るまでの過程(道のり)を無視する事は認められない」

マルキオとやらの思想

『SEEDを持つ者』

 

「世界を動かすのは一握りの人間やも知れない

が、そうでない時もあるのだ」

大西洋連邦という世界に大きな影響を与える国家のトップであるアーヴィングであったとしても所詮は1人の人間なのだ

 

アーヴィングがもしもの時(緊急事態)に備えて懐に入れているモノ

それを自らに向けたならば?

 

或いは誰かがアーヴィングにそれを向け、放ったならば?

 

 

それだけで容易に世界は変わる

…変わってしまうのだ

 

 

それを理解出来ない者が権力を持てば、この世の地獄となるだろう

 

アーヴィングは常にそう意識している

 

 

 

 

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「カズイ

…畜生!」

シンは病院の廊下でひたすら自分の迂闊さを呪っていた

 

 

 

「シン。お前一先ずおじさんとおばさんとマユと話してきたらどうよ?」

 

「どういう事だよ?」

 

あの時カズイは何を思って自分に声をかけたのだろうか?

 

「多分これから無茶苦茶忙しくなるだろう。…全く歓迎出来ないけどな

俺も一度家に戻ってタイミングが合えば親父達と話をしてくる。一応連絡はしてるがな」

 

「まだ終わらないんだな?」

俺は険しい顔をしているカズイにそう確認した

 

「一度始めた戦争や紛争なんてのは早々終わる事はないもんだ

プラントの目標が分からんのもあるが」

 

「目標?」

 

「そう。プラントとしては完全自治を求めるのであればNジャマー敷設というのは余りにも悪手に過ぎる

アレがなければプラントの独立について市民レベルならば多少なりとも賛同されたのかも知れないが」

そうカズイが苦い顔で言っていたのを思い出した

 

----

 

 

カズイは転生者或いは憑依した(自身の前世を認識している)者だ

 

 

だからこそ、人の善性や人の好意というものについて懐疑的

 

『人は悪いと知りながらもそれを行ない、そして自身に害が及ばないならば平然と他者を踏みつける』

 

 

生前?のカズイは人の輪から外れていた

まだ幼い頃『悪目立ちした』そんな理由で

 

 

最初は1人から追いかけられるだけだった

しかし、学校内で教師や学友が止めないのを見た者達の中から、それに加わる者が現れ始める

 

 

それでも周囲はそれを咎めずに、またカズイ自身も大事にしたくなかったからと口を閉ざした

 

するとどうだろう

その者達は自重するどころか、更にエスカレート。遂には殴る蹴るに至る様になり、時には階段から突き落とす様な事にまで発展

 

 

それでも教師はそれを問題視する事なく、学友や先輩に後輩達も見て見ぬふりを続けた

 

異性からは罵詈雑言を日常的に受け、最早存在する事自体があたかも罪であるかの様にまで言われる事となる

 

 

 

だが、面白い事に中学に上がったカズイを慰める者達が現れる事になった

 

「大丈夫か?」

 

「…大変だよな」

 

そう声をかけてくる者達に対してカズイが抱いた感情は好意ではなかった

声をかけてくる者達はカズイが小学校で受けた仕打ちを知っていたのである

 

『はん。……今更だよ』

カズイの胸中にあったのは虚しさとほんの僅かな怒りのみだった

 

 

 

「正論が常に受け入れられるわけでは無い

相手に自分の意思を通そうとするならば、それ相応のやり方を選ばねばならない」

それが後にカズイ・バスカークとなる人物のたどり着いた一つの結論だったのである

 

『人は誰しも他者からよく思われたい。愛されたい

だから、みな仮面を着ける(建前を言う)。安易に人を信じれば容易く裏切られる』

 

それがカズイとなる前の〇〇〇〇と呼ばれていた頃から彼の心の奥底にヘドロの様にへばりつくものだったのである

 

 

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「地球連合からの提案、受け入れるべきではなかったのですか?議長」

 

「…受け入れたとしてどうなると言うのだ

部分的に自治を許されると言ったところでそれに対する決定権を持つのはこの提案をした事務総長でも連合でもない

プラント理事国なのだぞ」

 

地球連合事務総長オルバーニからの提案を一蹴したエザリアらはそのまま今後についての話し合いへとシフトしていた

 

(私とて、終わらせられるならば終わらせるべきと考えている

…だが、その為に我が子を犠牲にするなどと)

 

確かに我が子を戦争へと駆り出す愚かな母親だと自分すら思っている

 

…しかし

だが、しかし

 

全身が包帯だらけで、しかも顔面に大きな傷を受けた息子を見たエザリアが最初に思ったのは安堵ではなく恐怖だった

 

----

 

 

自分の夫つまり息子イザークにとっての父親は自由黄道同盟時代に亡くなっており、自身の両親については考えたくも無い

だからこそ息子イザークはエザリアにとって唯一の家族であり、決して失いたく無いものなのだ

 

息子の命を盾にされてそれに従う自分は間違っているのだろう。シーゲル・クラインやパトリック・ザラの様に和戦両論ではなくザフトによるプラント勝利など最早望むべくも無い事である事。時間をかければかける程にプラントの未来が閉ざされつつある事も理解している

 

…だが、それでも

自身の息子を戦場に送り出す様な愚かな母親であろうとも

 

息子を喪う事だけは出来ないし、受け入れられないのだ

 

 

 

戦争(武力による解決)を選んだ時点で、プラントの未来は歪んだのかもしれない

だが、既に例え最高評議会議長であっても一個人の力で止められる状況にはなくなっているのをエザリアはこの立場になって漸く思い知った

 

 

プラント市民やザフト司令部、果ては最高評議会内においてすらも戦争(地球軍)を甘く見る風潮は未だ根強いのだから

 

 

 

 

 

----

 

 

「舐めるなっ!ナチュラルどもが!!」

 

サトーは愛機であるジンハイマニューバⅡ型に搭乗して部下達と共にボアズ付近に展開している地球軍を撃退しようと奮戦していた

 

…だが

 

『隊長!ボアズ守備隊に動きがありません!』

 

「…ぐっ、やむを得ない

全機撤退するぞ!」

 

サトー等が救援に来てなお、ボアズ駐留部隊に動きはなかった

それはつまり、ボアズ駐留部隊は抗戦の意志を完全に折られたか?或いは動かない状況にある

と言う事だろう

 

(クルーゼの部隊を解散させておらねば、まだやりようもあっただろうに)

顔を隠している(素性の知れない)男ではあるが、クルーゼの戦略眼や指揮能力。1パイロットとしての実力は疑いようの無い人物である事は間違いない

だが、今のザフト司令部はクルーゼの足つきに関する任務の尽くの失敗により部隊の解散を命じている

 

しかしながら、自分や残った数少ないマトモな(ベテラン)指揮官等はそうは思わない

 

(クルーゼ)がやってなお、どうしようもなかったのならば誰がやってもさして変わらないだろう」

とすら思っている者が殆ど

 

そしてサトーなどが不満を抱いているのはクルーゼの件や先のクーデターの事だけではない

 

 

----

 

『…どうするサトー

あんな事(・・・・)までしても戦争を続けるべきなのだろうか?』

部下からの言葉にサトーは即答できなかった

 

 

それはザフトに協力の意思を示していたジャンク屋や傭兵をザフト司令部直属の部隊が強襲。彼らの所有していたMSや艦艇を接収した事である

 

確かにジャンクとは言え元はザフトのものが殆ど

戦場で活躍して日銭を稼ぐ傭兵は勿論の事、ジャンクで頻繁に諍いのあるジャンク屋とて性能の低いものばかりでは色々問題たろう

 

故に傭兵やジャンク屋の武装はザフトのジンをベースとしたものが多い。それを取り返すという意味ならば多少理解できなくも無い

 

が、その様な理屈を振り翳して良いものか?については法律などに明るくないサトーからすれば軽々に発言するべきでは無いと思っている

 

「…分からんと言うのが俺の本音だ

だが、戦争というのは敵を討つのも必要だろうが味方を増やす事や敵を減らす事も必要だろう。とは思うがな」

確かに感情に身を任せる事で一時的な爆発力を得る事もあるだろう

 

 

しかしである。それが長続きしない事は他ならぬサトー自身がよく知っている

 

妻と息子を亡くした自分だ。確かにユニウスセブンの事があってしばらくの間は激情に任せて普段よりも実力を出せたのかも知れない

その後自身を襲ったのは強烈な虚無感だったのもまた事実

 

 

幾ら敵を殺したところで、妻や息子が戻って来る訳でもない

日々自分の中で虚しさと共に、妻や息子と過ごしていた日々の記憶が朧げなものとなっている事に愕然としたものだ

 

妻は

息子は

今の(手を血に濡らした)自分を見てどう思うだろうか?

 

 

優しい妻や息子の事だ

たとえナチュラル()であろうとも殺す事を喜ぶとも思えない

 

 

選んだ道に後悔はない

だが、本当にこの道しか自分達にはなかったのだろうか?

 

少なくとも、今自分は胸を張って妻や息子、それに亡くなった多くの同胞達に向き合えるとは思えなかったのだから

 

ボアズから撤退していくサトー達

その胸中には昂揚感など一つとてなかった

 

----

 

 

「…隊長。どうやらイザークとディアッカは別々の医療施設に入れられているとの事ですが」

 

「…アデス。私は既に隊長ではないと思うが」

プラントではクルーゼやアデス達がこの状況をどうにかしようと密かに動いていた

 

「私にとっては今も貴方は隊長ですので」

アデスのその頑なな言葉に

 

「…お前も大概頑固なものだな、アデス

まぁ好きにすれば良い

ところでルナマリア。君の同期達はどう思っているのかね、今のプラントについて」

 

「…正直に言うと余り良くは思っていないと思います

勿論中には「ナチュラルなんて一捻りだ」なんて言うのも居ましたけど」

クルーゼは苦笑するとサトーから任されているルナマリアに声をかける

 

何せ本来ルナマリア達の年齢の若者はまだアカデミーで教育を受けているべきなのだ

それを前倒しにしている時点で状況が決して良くない事は分かるのだろう。少なくとも目の前の少女の様に考えている者はそれなりに居るのだとクルーゼは彼女の言葉から受け取れた

 

 

「どうにもならん

などと悲嘆に暮れるのは市民に任せるとしよう

我々はザフトに属する者であり、プラントを守る責務を負っている

今何が最善なのか?そして誰に協力すべきか?

そこを見誤らない様にしなければならないだろう。…私の予想だが、決して残された時間は長くないだろうからな」

 

クルーゼの言葉にアデスやルナマリア、そしてこの場にいる元クルーゼ隊の者達は頷いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理想を追い求めた者達

武器を取り、明日を求めた者達

 

誰もが、より良い明日を目指すのだろう

その果てに何があるのか

 

 

それは誰にも分からない

 

 

 

 

 

 

 

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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