勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

68 / 131
誰もが明日を
光を望んだ


誰も間違えていない
これが最善だと信じ歩いた


正解なんて何処にもなく
こぼれ落ちるものを救う(掬う)手立てすらない



皆何処へ行くのだろうか?


 暗き道を歩む者達

「何がオーブが終わるだ、大げさな」

上官との無意味な話し合いを終えた男は上官の部屋から出てくるなら不愉快そうに吐き捨てた

 

『貴官のした事は下手をすればオーブを割りかねない事であったのだ

…無論私のした事もまた許されるものではなかろうが

 

……もう一度だけ聞く

貴官は辞すつもりはないのだな?』

 

そう言っていた上官の事を思い出すと

 

 

 

「なんでこの程度の事で処分されなきゃならん?」

そう忌々しそうに呟く

アスハを潰そうとした()を結果的に始末できたのだ。寧ろ自分は誉められて然るべきではないのか?とすら男は本気で思っていたのである

 

 

が、オーブの窮状を理解しているサハクに与する者達やカズイが歩んできた道の困難さと歪さを知る者達にとって

オーブ(この国)が平和の為にこれから困難な道を征く事を知る者達にとって

 

身勝手極まる理由で守るべき者を守らなかった人物を許す理由などありはしない

 

「…少しいいかね?」

 

そんな男にそう声をかけてくる人物がいた

 

 

 

 

 

 

 

そして、その後男の姿が出てくる事はなかったのである

 

 

更にその翌日、男に護衛指示を出していた人物は自室にて自ら頭を撃ち抜いて死亡しているところを発見される

 

現役のオーブ国防軍人の死亡

本来ならばセンセーショナルなニュースであったが、ある事実がそれを容易く沈静化させる事となった

 

そう

『カズイ・バスカーク一尉の護衛任務の責任者』であるという事

 

 

当初、オーブのメディアもすわ

「国防軍内における旧アスハ派と現在の主流派との暗闘によるものか?」

と世間の注目を集める話題と(期待)されたが、蓋を開けてみれば手を触れるべきではない話題(ジ・アンタッチャブル)であった事からメディア各社もそこまでおおごとにする事はなかった

 

 

と言うのも、カズイがブルーコスモス関係者と思しき者達に襲われた際一部マスコミ関係者は捜査線などの情報をつぶさに報道している

この情報が実行犯達を取り逃した大きな要因の一つではないか?

と今更ながらに(マスメディア視点)各方面から批判されている

まぁ、政府からは元々かなり問題視されていたのだが

カズイが重傷を負った件について彼等が沈黙を保っていたのは同じ様な事をもう一度繰り返す訳にはいかなかったから、という事情もあったりする

 

加えて、国内のコーディネーターのコミュニティにおいてはそれこそウズミ元代表よりも高い期待と知名度を持つとされるカズイが襲撃され、しかも未だ意識不明の重体

それがオーブ軍人の意図的なサボタージュによって引き起こされたという部分がある

等と知られてしまえば、下手をすると暴動にすらなりかねないとの危機感が報道局の上層部にはあった

 

…まぁ、それについてはプラントいやザフトによりある程度市民に知られてしまってはいるのだが

 

 

----

 

 

「アメノミハシラにおけるテロ未遂。そしてオーブにおける現役の軍人に対するテロ!

これ等を見るにプラント(敵性コーディネーター)と和する事は勿論、下手に譲歩するのが危険であるとはっきり分かりましょう!」

 

「全てのプラント市民がその様な過激な思想を持っている訳でもない!多くのプラント市民はこの戦争を早く終わらせたがっている!

そもそもオーブ本土での件がプラントの手によるものだと確定した訳でもありますまい!」

 

「では伺いたい。件の騒動から僅か1日程でザフトはあの様は放送を流したのです。加えて現在のプラントに渡航する事は原則禁止(・・・・)されているはずですが?地球軍によって

更に申し上げるならば、何故連合事務総長による和平案を一蹴したのですか?

和平案を全面的に受け入れられないとしても、うまく妥協点を探る事こそが交渉であり外交ではありませんか!」

 

「プ、プラントとしては事務総長の案ではどう考えてもプラント理事国の風下に立つ事は明らかです。それを嫌ったのでは?」

 

「元よりプラントというのは生産工場としての機能にそこに住む者達の生活の為に必要なインフラを整備したものに過ぎません!

本来ならば、自治権などと言い出せる立場ではないのですが?」

 

大西洋連邦議会は大荒れの様相を見せていた

元々ザフトによる偽降。ボアズの無力化、ジェネシスの破壊にヤキンの防衛戦力の払底

 

その様な状況となって、プラント侵攻の是非を問うべき

と言うのが本来この臨時招集された議会の役割であった。ところが、プラント破壊は非人道的である。或いはプラント市民に対する攻撃は問題ではないか?

などと言った意見が少なからずあった為にプラント侵攻作戦についての審議となった様なもの

 

そこへアメノミハシラにおけるプラント市民による爆破テロ未遂

それにより、更に会議は紛糾する事となってしまう

とどめにカズイへの襲撃

 

 

全世界に対する放送のタイミングなどを考えればプラントが全くの無関係とは思えない。それがプラント侵攻作戦…いやプラント破壊を是とする者達の意見

 

 

「人道的なのは大いに結構!

だが、その為に連邦軍人の命を危険に晒す程の意味があるとは私には思えません!

あなた方はプラント市民と我が連邦市民、どちらの命を優先すると仰られるか!」

 

「…ぐっ」

 

元より軍事オプションについて最高指揮権を持つ大西洋連邦大統領が口を出すのすら御法度ともいえる

仮に議会がプラント破壊を否決したとするならば、ではどの様な作戦をもってプラントとの戦争を終わらせるつもりなのか?

 

アーヴィングを支持する者達の考えはこれに尽きる

が、仮に現政権がプラントとの戦争に勝利すれば間違いなく現在の野党側は数年、いや下手すれば10年以上政権奪取が叶わない可能性すらある

故に野党側も退けないのだ

 

 

とはいえである

振り回される連邦軍からすれば勘弁願いたい話であったのだが

 

 

 

 

 

これに関しては思想面などで反目し合っている親ブルーコスモス派のまとめ役であるウィリアム・サザーランドと反ブルーコスモス派のまとめ役であるドゥエイン・ハルバートン両名も通信にて

 

 

「…という訳でまだまだ結論が出るには時間がかかるかと」

 

『……ふぅ

政治の都合があるのは理解してはいるが、その辺りの事は全て終わらせてからにしてもらいたいものだな』

 

「全くですな。方向性を明確に定めて貰わねば、批判の的になるのは閣下や我々になりかねません。実に困ったものです」

とぼやく程であったりするのだから、如何に連邦軍にとって足枷となっているのか多少なりともお分かり頂けるだろうか

 

 

サザーランドにせよ、ハルバートンにせよ戦争を終わらせられるならば最悪自分達の立場が失われたとしても問題にするつもりはない

が、それを『軍による暴走』などと政府の判断(蜥蜴の尻尾切り)をされたとあっては悪き前例と成りかねない

 

 

元々ユニウスセブンに対する核攻撃とて、東アジア共和国軍の独断でもないしブルーコスモスによる暴走でもない

正式な軍事作戦と政治的判断に基づくものであったのだ

 

…ところが、プラントによる報復(エイプリル・フール・クライシス)による凄惨な被害を受けて東アジア共和国政府はこれを『軍による独断』と喧伝。結果東アジア共和国軍やブルーコスモスは悪名を背負う事となった経緯がある

 

----

 

その事を知るが故に、地球軍関係者は政府に対して不信感を抱いていたのである

 

 

一応、大西洋連邦政府大統領アーヴィングを始めとした政府首班はそれなりに理解があるので東アジアよりはマシ。だが、あまり楽観視出来るものではないだろうとサザーランドにせよ、ハルバートンにせよ判断している

問題としては、野党側は政権与党内の反体制(アーヴィング)派による盛大な足の引っ張り合いが予想された

いや、既に起きているので手遅れかもしれないが

 

 

そもそもプラントとの武力衝突自体が政治の致命的とも言える失敗に因るところが大きい

サザーランドは政治に対して多少なりともブルーコスモスという組織を介して関わっている。逆にハルバートンは旧世紀以来の不文律(シビリアン・コントロール)を良しとしているが故に政治からは距離を取っている

 

 

水と油

 

そう称して良い程同じ大西洋連邦軍に属していながら、サザーランドとハルバートンは異なる考え方をしていた

 

にも関わらず『政治への不信』という一点においては両者共に共通の意見を持つのだから、どれだけ面倒な事になっているかこれだけでも分かるかも知れない

 

 

 

----

 

『しかしオーブは中々纏まらない、か』

 

「無理もないとは思いますな

名目はどうあれ、現体制に至ったのはクーデターという非常手段。ともなれば逆もまた然るべきかと」

サザーランドの言葉に

 

『武力蜂起、か』

ハルバートンは重々しく呟いた

 

 

----

 

先のホムラ政権を武力によって打倒した現在のカガリ政権

これにより、国防軍内における親ウズミ派の一部は

 

「我々がオーブの理念を守るべきではないか?」

と気勢をあげつつあった。勿論現政権に協力すべしとの考えを持つ旧ウズミ派が何とか抑えてはいたが

 

 

だが、良きにせよ悪しきにせよ

『前例がある』と言うのは問題であろう

 

人は自ら道を切り拓く事には躊躇するが、一度誰かが通った道をなぞる(した事を真似る)というのは存外心理的抵抗が少ないものだ

 

 

事実、原作において核攻撃はボアズに対して、プラントに対しては二度も

ジェネシスという忌むべき大量破壊兵器、いや終末兵器。その被害を、それのもたらすものを知っていながら、僅か数年後にはレクイエムを作り出した

そして、それを破壊した側がまたそれを平気で運用する

 

 

 

初めての事ならば誰しも躊躇うだろう

しかし、前例があるならば

ましてやそれに対する罰すらなかった、或いは被害に対して罰がそぐわない程に微少なものならば?

 

人はまた同じ事を繰り返すのだろうか?

 

 

----

 

 

軍人などというもの程罪深い仕事はないと多くの軍人は思っている

自分達は有事の為に存在しているが、戦争や紛争などというものがなければ無用な存在となろう

 

だが、現実問題として抑止力としても軍隊というものは必要となる

 

 

武器が争いを生むのか?

人という生き物が争いを求めるのか?

 

 

恐らく永遠のテーマの一つではなかろうか?

 

 

 

一部の例外を除いて、誰も人を殺したくはない

殺さねば守れないから殺しているだけなのだ

 

 

『…そうなるとまた地上が騒がしくなるのではないかね?』

 

「甚だ不本意ではありますが、な」

サザーランドはハルバートンの言葉に心底不快げに答える

 

 

事実、大西洋連邦軍司令部はユーラシア連邦軍司令部や東アジア共和国軍司令部と既に話し合い(作戦協議)を行なっている

 

「プラントは名目上とはいえど、理事国の所有するもの

故に政府の判断を仰がねばならない。が、仮にオーブで今一度政変が起きるならば大統領の指示があれば動かねばならん」

既にアーヴィングは万が一の事態に備えて東アジアのカオシュンに部隊の集結を命じていた

 

勿論、東アジア政府と協議した上でだ

 

 

ユーラシア連邦側にも連絡しており、母港であるウラジオストックに帰投していた『ユーラシア連邦太平洋艦隊』は準備が整い次第カオシュンへと向かう事となっている

 

 

「全く、指示があれば部隊をすぐ動かせると思っている政府や総司令部には辟易するものですな」

 

サザーランドは嘆息する

 

サザーランドは前線指揮官ではなく、後方において作戦立案や兵站管理などを行なう側の人間

先のオーブ侵攻艦隊を編成した時すらかなりの手間がかかったと言うのに、新たな作戦となると補給などについての試算などからやり直さなければならなくなった

 

部隊はオーブ侵攻艦隊から転用できるだろう

そう容易いと思う政府関係者などはいる

 

 

が、南アメリカに対する軍事作戦も既に秒読みとなっている現状、如何な大国である大西洋連邦軍であっても余剰兵力は然程に多くない

南アメリカに対する今回の作戦は南アメリカの攻略が目的ではなく、その圧倒的軍事力を見せつける事により、南アメリカ政府や市民の心を挫くのが目標だ

 

故に過剰とすら言える程の戦力を集結させている

 

 

元々地球におけるプラント勢力は激減しており、それもユーラシアや東アジアが主体となって駆逐する予定

国土を荒らされた両国故に、ある程度の実績が必要とされているのだ

 

 

大西洋連邦軍太平洋艦隊(本拠地ハワイ)司令部などは

 

「余剰戦力などある訳ないだろう!」

とサザーランドに話しており、大西洋艦隊(本拠地ワシントン)は余剰戦力こそあるものの、その移動には基本的にパナマ運河を使用する他ない

 

がパナマ運河は旧世紀以来修繕や補修などこそ行なわれているものの、大規模な拡張は行われておらず、大規模な戦力を移動させるとなるとその特異性と狭矮な地理的要件から時間がかかる

 

何せ太平洋、大西洋を繋ぐガトゥン湖は両大洋よりも26メートルも高い位置にある。故に水の移動によってしか通過出来ない

しかも小型船舶であっても2隻がやっとの長さしかないので戦闘艦艇ともなると一隻ずつしか通過出来ない点もマイナスだろう

加えて、両洋を行き来出来る数少ない場所であるが故に船舶の往来が頻繁にある。その為、例え艦隊であっても占有する事は叶わないのだ

 

 

さりとて、北米大陸の北端を回るルートは好ましくない

南米大陸の南端からのルートは元より敵地となるので論外だった

共に時間がかかり過ぎるが故の判断

 

加えてオーブにおいて軍事蜂起がいつ起きるのか?すらも定かではない。しかし、放置する訳にもいかない上に可及的速やかに戦力を抽出せねばならなかった

 

 

----

 

 

サザーランド達からすれば

 

「指示をころころ変えるな!」

と声を荒げたくなるものであったが、軍事的行動もまた政治の延長線である以上やむを得ない所があるのも承知してはいた

 

 

 

特にオーブ侵攻艦隊の編成についてとその後の南アメリカに対する作戦は政治色の強い作戦である。新型艦であるアークエンジェルを未だにオーブに留め置いているのもそうだ

 

軍としては数々の武功を挙げた殊勲艦であるアークエンジェルを留め置かれるのは好ましいものではない

加えて、アークエンジェル二番艦であるドミニオンすら現在オーブに留め置かれている

 

加えて、新型機であるストライク。そのストライクを更に発展させた『第二世代』とでも言うべきレイダー、フォビドゥン、カラミティ

何れもオーブにあるというのは如何にアズラエルの意見であっても顔を顰めるに足る話であった

 

が、この状況下においては有効な一手であると渋々ながらハルバートンも認めざるを得ない現状でもあるのだろう

 

 

 

 

----

 

 

『…貴官は何も知らないのだな?』

 

「知らんよ。現在の状況が好ましいのは明らかだろう?

それを軽々覆すつもりなど私達にはない」

ハルバートンの問い掛けにサザーランドは心底疲れた様な声で返答する

 

確かにサザーランドは大西洋連邦軍はおろか地球連合軍内においても有力なブルーコスモスのシンパではある

が、軍人として踏み越えてはならぬ一線を弁えない程に軍人として腐り切ってもいない

 

サザーランド自身この報を聞いて速やかにアズラエルへ連絡したし、軍内の自身の手の届く範囲でこそあるがブルーコスモスの動きを確認した程だ

 

 

そこで判明したのは、少なくとも大西洋連邦軍におけるブルーコスモスシンパの中ではオーブに渡航したもの。或いは当時オーブにいた者はいないと言う事実だけ

寧ろ在地球コーディネーターの暴走を止める事で手一杯であり、そんな余裕と余力も存在していなかった

 

 

『…となると、プラントか?』

 

「可能性はあるでしょうな。余りにもタイミングが良過ぎたのは事実でしょう」

ハルバートンとサザーランドはモニター越しに視線を合わせると無言で頷き

 

「…ハルバートン提督。お気をつけを

どうやら余程自分達の思想に泥を塗られた事に対しては憤懣が溜まっている様ですからな」

 

『…ああ

そちらも警戒を怠らぬ様に

…どうやら、我々が向き合わねばならぬ相手はまだ居た様だからな』

そう意見を交わした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦乱は未だ終わる気配を見せず、人々は闇の中に明日を見出さねばならなかった

 

 

 

 

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。