勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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「そろそろ仕事するか」

拠点の司令ともあろう者が無能なわけないだろ!
という偏見から出来たお話


 狭間

「申し上げます!

長距離からの短文暗号ですっ!」

 

「…それはどちらか?」

部下の報告に私は確認を行なう

 

「タイプ照合。イエロー!

大西洋連合軍かと」

 

「連合軍?

…そう言えばヘリオポリスの件に連合軍が関わっているとの話があったな。私は与太話だと思っていたが」

アルテミス要塞司令ジェラード・ガルシアは不愉快そうに情報を口に出して整理する

 

「識別信号に該当艦なし

アンノウンです」

ガルシアの考えを補足する報告がなされると

 

「…艦名を確認せよ

それすら明かさぬなら、残念ではあるが『傘を開く』訳にもいかぬ」

ガルシアはそう命じた

 

 

 

----

 

ヘリオポリス崩壊から避難民を増やし、クルーゼ隊との戦闘を行なった事でアークエンジェルの物資は危険なレベルまで低下する事となった

 

此処に至って艦長ラミアスも最寄りの友軍であるユーラシア連邦のアルテミス要塞に向かう事を決断する

ラミアスは技術士官である為に、やはり友軍とはいえ機密の塊であるアークエンジェルやストライクを見せたいと思っていなかった

 

 

それに友軍とは言っても、水面下では技術の奪い合いが起きているのをラミアスは良く知っているからこその判断

 

 

とは言っても、仮にもうひと会戦しようものなら物資不足でマトモな抵抗すらできない可能性もあったのだ

 

バジルールや休息を終えたフラガに説得された事でアルテミスに向かう事が決まった訳だ

 

 

が問題があった

アークエンジェルは最新鋭艦であり、処女航海すら終わっていない

故に所属している大西洋連合軍にすらアークエンジェルの識別コードは存在していなかったのである

 

言うまでもなく、自軍でそれなのだ

友軍であるユーラシア連邦軍にあるはずも無い

 

 

それ故にフラガは彼等ユーラシア連邦制と月面グリマルディにおいて共闘した時に使用していた短文暗号を使用する事を提案した

所属不明よりは大西洋連合軍所属である不明艦の方が少しはマシだと考えたのだ

 

 

そして、その苦労は報われる

 

「アルテミス要塞より、本艦の一時的な寄港を認める

との通信が!」

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

フラガのため息混じりの言葉が艦橋内に響いた

 

 

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「ようこそアルテミス要塞へ

私はこの要塞を預かるジェラード・ガルシアだ」

 

「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアス大尉です

この度は本艦を受け入れて下さり感謝しております」

 

「アークエンジェル機動部隊隊長ムゥ・ラ・フラガ大尉

正直申し上げるとダメかと思いましたよ」

 

「アークエンジェル副長、ナタル・バジルール少尉であります」

 

「ふむ、フラガ大尉と直接会うのは初めてだな

グリマルディでは君の活躍に励まされたものだよ」

 

「おや、閣下もあの時」

 

「ああ

戦線は別だったがね。多くの部下を失ったものだ」

ガルシアは無念そうに目を閉じる

 

 

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ザフトは宇宙における地球軍に対する圧倒的な優位性を確保する為に地球軍の宇宙拠点の早期制圧を企図せねばならなかった

 

その為、月面クレーターへの侵攻と同地に存在する連合軍の撃破を行うべく大軍を差し向ける事となる

 

 

それがのちに言われる『グリマルディ戦役』と呼ばれる戦い

 

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「司令!我が方の部隊並び、大西洋連合の部隊が壊滅的被害を受けております!

このままでは」

 

「ザフトの新兵器

まさかこれ程のものとは」

当時世界樹攻防戦などによりザフトの新兵器MSの存在は確かに確認されていた

が、生産ラインの確保やそもそもMSについての基礎技術が存在していなかった事

それに加えて、生産側である企業の事情などもあってそれらを自陣営で揃えよう

といったものは未だ風潮としてなかったと言って良かった

 

 

それ故に当時艦隊司令であったガルシアもその性能や脅威を正確に把握しているとは言い難かったのである

 

 

だが、だからとてむざむざと負ける訳にはいかない

 

 

 

しかしそのMSに対抗する為の機動戦力を既にガルシアはおろか、同じ戦線にいる大西洋連合軍すら失ってしまっていた

 

「…やむを得ない。撤退する」

このままではむざむざ敵の餌食となるばかり

それよりも艦隊を何とか残す事でザフトに対する宇宙での抑止力とならんとしたのである

 

ユーラシア連邦軍の宇宙拠点であるアルテミス要塞

この難攻不落の拠点にユーラシア連邦の艦隊が存在する

 

それだけで、ザフトは宇宙に戦力を残さねばならなくなるのだから

 

 

 

しかしそれはユーラシア連邦軍にとって有効なものである以上、敵であるザフトにとっては何が何でも阻止せねばならないという事でもある

 

「ザフトのMS、急速に接近!」

故に彼等は何としてでも撤退しようとするガルシア達を倒さねばならなかったのだ

 

 

勿論ガルシアの率いる艦隊や同じくこの戦域を離れようとしている大西洋連合艦隊も可能な限りの対処はしている

 

所謂『ボックス隊形』と言われるものであり、艦を規則的に布陣させ各艦の打ち上げる対空弾幕のエリアを意図的に合わせる事で濃密な弾幕を形成できるものだ

 

だが、直線的な動きになってしまう戦闘機と異なり、スラスターの角度を変える事により急激な軌道変更すら可能なMS

弾幕を形成する者達にとって、その動きは正しく未知のものであった。その為効果的な反撃方法となり得なかったのである

 

「…ここまでか」

ガルシアや艦隊の者達に諦めの気持ちが蔓延した

 

 

 

 

 

だが

 

「っ!

友軍機多数接近!」

 

「味方だと!?誤認ではないのか!」

 

「いえ間違いなく我が軍の戦闘機部隊です

数二十!」

 

もう少しでガルシア達の艦隊を捉えられる

そう確信していたジンのパイロット達は弾幕を避ける事とどうやってあれだけの艦隊を沈めるか?

 

と無意識のうちに考えていた

 

 

その為、突如として艦隊側面から現れた戦闘機部隊への対処が一瞬遅れる

それだけならば、彼等が負ける事はなかっただろう

 

 

しかし、彼等はそこで迷ってしまった

 

いつでも容易く落とせる戦闘機か?

それとも後々まで自慢となる敵艦隊を沈めるか?を

 

 

確かに彼等の考えは正しいだろう

今まで彼等が相対してきた戦闘機部隊は容易く蹴散らせたのだから

 

 

 

 

 

しかし、彼等は失念していたのだ

 

この戦争は『ナチュラルとコーディネーターの生存戦争ではない』という事を

 

 

----

 

『ガルシア閣下。遅くなり申し訳ありません』

 

それは苦戦する別の戦線に送った戦闘機部隊だった

彼等はみなコーディネーターであり、ユーラシア連邦艦隊に編成されていながら、どの艦隊司令も好んで使おうとしなかった者達

 

ガルシアとしては、単純に戦力増強となるから彼等を引き受けたのだ

 

 

はっきり言えばガルシアとてコーディネーターは好んでいない

いや、寧ろ邪魔だとすら思っている。しかしそれはジェラード・ガルシアという一個人の意見であり、ユーラシア連邦軍人ガルシアとしてその様な些事(・・)を軍務に差し挟むつもりはなかった

 

故にガルシアは彼等を『ユーラシア連邦軍人』として扱った。それだけだ

 

 

 

しかしそれは彼等にとって、それは何よりも欲しかったもの

だからこそ、彼等は『此処で死ぬ事』を選ぶのだ

 

 

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『我等が敵の足を出来るだけ止めます

その間にどうか離脱を』

その言葉にガルシアは

 

「馬鹿な事を言うな。その程度の数で足止めになると思うのか?」

と思わず反論する

 

『足止めは出来ます

我等はコーディネーター。奴等からすれば仲間なのですから』

その言葉にガルシアは言葉を失った

 

 

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『バカな!何故地球軍にコーディネーターがいるんだ!』

 

「お前らが俺達の居場所を奪ったからだろうが!」

 

ガルシアの率いていた艦隊の出身者は旧ロシア地区の者が多く、彼等もまたそこに住んでいた

 

 

気温が低く、電気の存在無くして時期によっては命すら脅かされる極寒の地

 

例年よりも暖かくなるのが遅れるだろう

 

 

 

そんな時にアレは宇宙(そら)から落ちてきた

 

 

 

 

オペレーション・ウロボロスにより地球各地に落とされたNジャマー

プラント理事国であり、地球における有数の軍事力を持つユーラシア連邦

 

そこをプラントが狙わない理由はなかったのだ

 

 

----

 

「おい!しっかりしろ

…くそっ、何か持ってきてやるから待ってろ!!」

 

時期も悪かった

4月の頭であり、例年ならば少しずつ暖かくなる時期

 

故に各家庭はそろそろ春を迎える為に準備を少しずつ行なっていた。古着の処分や傷んだ布団やシーツなどを春のものへと取り替える

 

 

そしてそれは落ちた

 

暖かくなると言われていたが、まだどちらかと言えば冬の気候

故に電気は必要不可欠。ところが、Nジャマーが正常に機能した為、旧ロシア地区の電力をまかなっていた原子力発電所がその機能を喪失

 

当然電力供給もストップしてしまい、古きはフランスの皇帝。ヨーロッパの独裁者の侵略を防いだ冬の寒さが彼等に牙を剥く事となる

 

 

此処でコーディネーターとナチュラルの新陳代謝などの差が現れてしまう

 

寒さにより自身の死が避けられないと理解した彼等は自分達の友人にせめて生きて欲しいと、自分達の物を差し出したのだ

 

「お前さんはまだ大丈夫だろ?

…なら外にある俺の車と妻の車にある、燃料で何とか生きてくれ」

そんなコーディネーターに未来を託す光景があちらこちらで見られたのだ

 

コーディネーターだからではない

友人だから、生きて欲しいから

そう願われて

 

 

 

その時、後を託された彼等の胸に去来したのは一体何だっただろうか?

 

何も出来なかった無力感か?

他の者達に助けられて生き残ったという敗北感か、屈辱か?

 

それとも

こんな優しい世界を壊した連中に対する怒りか?

 

----

 

 

だが彼等に待ち受けていたのは『他の住民が死に絶えておきながら生き残ったコーディネーター』という十字架だった

 

それでも彼等はプラントで喚いている自分勝手な連中に亡くなった者達の無念を叩きつけてやろうとユーラシア連邦軍へと志願する

 

 

 

漸く掴めたまたとない機会

 

それを用意してくれたガルシアに彼等は心の底から感謝していたのである

 

 

----

 

『我等は此処で全滅するでしょう

…ですが、我等の献身を奮闘を誰かが覚えていてくれるなら

いつか我々も地球の一員として認められる日がくる

私はそう確信しております』

 

ガルシアは声も出せなかった

 

つまり彼等はこう言っているのだ

 

『自分達の血や犠牲で地球に生きるコーディネーターの未来を何としても守りたい』

 

「…お前達の奮戦。このジェラード・ガルシア一生忘れまい

さらばだ、誇り高き勇者達よ」

 

『閣下、御武運を』

 

 

そうしてガルシア達はユーラシア連邦の誇り高きコーディネーターの犠牲により何とか生き延びたのである

 

 

----

 

あの鮮烈な光景は今もなおガルシアの胸の奥に色褪せる事なく残っている

ガルシアはその後敗戦の責任を取り、艦隊司令からアルテミス要塞司令に異動となった

 

まぁ、殆ど左遷のようなものであるのだがガルシアは全く気にする事はない

今のガルシアの元には少なくない連邦のコーディネーターがいる。彼等はアルテミス要塞の守りをより強固なものとしたり、隙あらばプラントへの攻撃計画を策定していたりするが、それはまた別の話となろう

 

----

 

「しかしフラガ大尉ともあろう者が軍人の本分を忘れたとは、嘆かわしい事だ」

 

「返す言葉もありません」

あれ以来、ガルシアは死んでいった彼等に恥ずかしくない自分であろうと己を見つめ直し、己を磨き上げていた

故にこそ民間人の多く住むコロニーでの戦闘を行なったザフトやその原因を作った大西洋連合に対して怒りすら抱いている

 

「君たちの話によると、オーブの子供すら戦わせているそうではないか?

それが君達の軍人としてあるべき姿かね?

私は軍人の責務とは守る事であると思っているのだが」

 

ガルシアの痛烈な言葉に誰も言葉を発せられない

 

「…まぁ良い

補給についてはある程度しておこう

その代わり条件がある」

 

「条件、でしょうか?」

ガルシアの言葉にラミアスは少し戸惑う

 

「ヤマト准尉とバスカーク伍長、だったね

彼等と少し話をしてみたい」

ガルシアの言葉に目を丸くするラミアス達だった

 

 

----

 

「すまないな、突然呼び出してしまって」

 

「え、えっと」

 

「いえ、お初にお目にかかります。ジェラード・ガルシア司令殿

小官はカズイ・バスカーク伍長。こちらがキラ・ヤマト准尉です。私どもに用があるとお聞きしましたが」

ガルシアの態度に困惑するキラと居住まいをただそうとするカズイ

…尤も儀礼的にはまだまだであったりするが、それはそれで好ましいものとガルシアには映った

 

「ふむ、緊張せず楽にしてくれ

と言ったとしても難しそうだな」

 

「お言葉有り難く。しかし小官は伍長兵でヤマト准尉はそもそもこの様な場に慣れておりませんので」

 

「…ねぇ、カズイ。それって少し僕を馬鹿にしていない?」

苦笑を浮かべるガルシアの言葉に何とか返そうと必死になるカズイ。何せこの男の本質は小心者なのだから仕方ない事ではある

が、それに対してキラが不満を露わにしたのだから、さぁ大変!

 

(ちょっ!場を考えろよ、いやマジで)

 

「ふ。なるほど

どうやら君達は仲の良い友人の様だな。バスカーク伍長、構わんよ。楽にしたまえ」

キラの言葉に明らかに慌てた様子のカズイに一層柔らかい笑みを深めるガルシア

 

「は、はい。ではお言葉に甘えて」

これで楽にしていると言い張るのだからカズイも大概だろう

 

「ところで閣下」

 

「何かな?」

カズイの言葉にガルシアは興味深そうな声を出すが

 

「私とキラは未成年ですので、それは飲めないかと」

 

「…おお、そうだったな」

カズイの指摘にガルシアは思わず声を出して笑った

 

 

----

 

「すまないな。なにぶん君達の様な年齢の者と話す機会が殆ど無いものでね」

 

「いえご厚意感謝します」

ガルシアから手渡されたのはロシアンティーといわれるもの

 

「えっと、いただきます」

紅茶とそれを置くソーサーにジャムの置いてあるガルシアにとっては馴染み深いもの

 

流石に子供と話すのに酒はマズイとガルシアはカズイの指摘により気付いたのだ

 

 

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「…そうか、友人を守る為に」

キラがストライクに乗った経緯を話し終えるとガルシアは複雑そうな顔のままにそう口にした

 

「となるとバスカーク伍長、君もかね?」

 

「ほぼ同じと考えていただけると」

 

ガルシアはかなり複雑な気持ちになったが、そこは堪える

 

「その気持ちは大切にすべきだと私も思う

…だが、その選択はいつか君達自身を殺す事になる事もあるだろう。それでも進もうというのかね?」

 

「それが選んだ責任

自分はそう思っています」

 

「僕はそれでも守りたいと思う人達がいるんです

だから」

 

ガルシアを顔をしっかりと見返してカズイとキラはそう答える

 

 

「…そうか

君達が進もうとしている道は間違いなく険しいものになるだろう

特にヤマト准尉。君は恐らく『裏切り者のコーディネーター』とザフトから目の敵にされるだろう

バスカーク伍長もそうなる事はあり得るのだ

…気をつけて行きなさい。軍人としては情けない限りだが、1人のジェラード・ガルシア個人として君達のこれからに幸せがある事をねがっているよ」

 

そうガルシアは締め括った

 

 

----

 

「アークエンジェルより通信文

『アルテミス要塞のご厚意に感謝する。御武運を』です」

 

「返信せよ

『未来を守る為に貴官らのこれからの働きに期待する』とな」

 

「はっ!」

アークエンジェルはその半日後、アルテミス要塞より出航して行った

 

 

 

「さて、随分と小煩い連中がいる様だな」

 

「は、どうやらアークエンジェルを待ち伏せするつもりの様で」

 

「要塞砲で少しばかり脅してやれ

此処は奴らの庭ではない。我等の庭なのだと言う事を思い知らせろ」

 

「了解!

要塞砲スタンバイ急げ!」

 

「アルテミスの傘、部分解放いけます!」

 

「若人達の旅立ちの祝砲だ。盛大に打ち上げてやれ!」

 

「はっ!!」

 

 

アークエンジェル追撃の任についていたクルーゼ隊所属ローラシア級『ガモフ』はアルテミス要塞からの長距離砲撃の余波により、艦の航行に支障をきたす損害を受け、一時プラント本国へと帰投する事となる

 

 

 

 

 

 




アクセス数やお気に入り、評価まで増えて嬉しい嬉しい

とはいえ、やはり投稿する時は怖いのです
楽しんでもらえると嬉しいのですが、なにぶんSEEDの二次創作は良いものがかなりありますからね



次回、ついにあの女が動く!
いやマジでどうしようか?

 本作のヒロインは?

  • 大天使ナタル
  • 妹系少女マユ
  • フレイ
  • 猪突猛進娘カガリ
  • キラ
  • シン
  • その他
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