勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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見果てぬ夢を追い続けた者達の話


 妄念

室内は重い空気に支配されていた

 

「SEEDを持つ者こそが時代を動かす。その筈だったのだが」

 

「オーブはともかくとして理事国はおろか、赤道連合や汎ムスリム同盟なども血眼になって我等の尻尾を掴もうとしていると」

 

彼等は混迷の中にある世界。それを正しき方向へ導く存在として『SEEDを持つ者』を探していた。だが、未だに見つかっておらずコーディネーターとナチュラルの溝を埋めかねない人物については色々な方向から圧力を加えて暴走する様に促した

それ自体は成功を収めたし、現在件の人物が収容されている医療施設にもそれなりの問題人物を用意している

 

彼等としては別にオーブが滅びようが、プラントが無くなろうがさして気にするつもりはない

欲を言えば地球とプラントという対立構造は残しておきたいと言うのが本音ではあるのだが

 

 

「事務総長まで動かして後方撹乱を行なったというのに、まさか仕留めきれなんだとは」

 

「マルキオも最近は動くのを自重する様にしているらしく、こちらから積極的に動くのはちと不味いか」

彼等は苦い表情を一様に浮かべた

 

 

現在多忙を極めるアズラエルの代わりにロゴスメンバーが各国政府と連携してカズイ襲撃の犯人やその背後関係を洗おうとしていた

無くなれば利用出来ないが、自分達の中でそれなりの利用価値を見出していたカズイを殺そうとした代償は支払わせるつもりだったのだ

 

なお、混乱に乗じて譲歩案をプラント側に提示したオルバーニについてはプラント理事国首脳から絶対零度の視線を向けられる事となっている。今回の件で国内の秩序を乱された事も相まってオルバーニの解任については赤道連合、ムスリム同盟、アフリカ統一機構政府首脳とも協議した上でほぼ決定事項となっていた

 

更に言えば、数少ないマスドライバーの一つギガフロートの所管などについて現在進行形で揉めているジャンク屋連合についての是非も併せて議論される予定だ

ジャンク屋連合設立に際して重要な役割を果たしたマルキオだが、あくまでも『事務総長付き外交官』に過ぎず、オルバーニが職を追われた場合彼の立場も自然消滅するだろう

 

 

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「思想家に権力を渡して何とする

思想と政治は分けて考えねばならん。たとえ本人がそうであるとしても、だ」

仮に大西洋連邦大統領であるアーヴィングが過激な思想に染まっていたら?大西洋連邦軍司令部がそうであったならば?

間違いなくその思想によって国家や軍が動かされる事となろう

 

 

真空や純粋な真水に生き物は住めない

だが、そうあろうとせねばならないのだ。人というものは歩を進めるにつれて負うものを増やす

いつまでも赤子の様な純粋無垢とはいかぬだろう

 

 

ウズミの影響の強いオーブ

ナチュラル蔑視の強いプラント

 

何れも問題を多く抱えている

 

 

 

 

思想家は理想だけを口にする

為政者は理想に向けて少しずつ積み上げていく。権力はその為にあるべきなのだ

 

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SEEDを持つ者

キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、カガリ・ユラ・アスハ、ラクス・クライン

そしてシン・アスカ

 

だが、彼等それを求める者にとって不幸なのは、未だ彼等彼女達が目立った活躍をしていない事

 

 

 

キラはストライクのパイロットとして活躍した

だが、カズイという名声の高い人物がそばにいるが為にあまりそれが目立つ事はなかった

 

アスランは北アフリカの戦闘により虜囚の身となり、あくまでもプラント前国防委員長の息子でザフト・レッドという以上のものはない

 

カガリはオーブ代表としているものの、決してその地位は盤石とは言えないし下の者がついて来ているかと言われると疑問符が付く

 

ラクスに至っては現状唯の亡命者グループのまとめ役に過ぎず、その隠された資質を開花させる機会が巡ってくるのかさえも怪しい

 

シンはカズイというある種の防波堤があった為、そこまで注目されておらず彼等も未だ気付いてすらいない

 

 

色々支援しようにも支援のしようがない者や立場の者しか居らず、彼等としては頭の痛い問題であった

 

 

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「…いっそオーブを攻撃させて、その中で活躍させるというのはどうか?」

 

「…確かに

今のオーブにSEEDを持つ者は揃っている。となればそれも選択肢の一つになるか」

 

話はオーブ戦において、キラやカガリ。叶うならば捕らえられているアスランを解放して活躍させる方向へと向かいつつあった

 

「しかし、それは早計ではないか?」

 

「…というと?」

それに疑問をぶつける者が現れるまでは

 

 

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「仮にオーブと地球軍が交戦したとして、皆はどの位期間がかかると考えているのだ?」

 

「流石の地球軍でも早々オーブを屈服させる事は出来ますまい」

 

「オーブにもMSがあると言うではありませんか?

それらを防衛に使えば」

異論を唱えた人物はため息混じりで

 

「皆地球軍を甘く見過ぎておるな

…大西洋連邦軍の凶鳥とユーラシア連邦軍のcrazy

アレの下部装甲がラミネート装甲に換装されたと知らぬのか?」

 

「なに?」

 

「なんだと?」

 

 

室内にざわめきが満ちた

 

 

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大西洋連邦政府としては、カガリ・ユラとサハクが中心となって行なったクーデター。実のところ、そこまで成功率は高くないとの意見も少なくなかった

 

その為、オーブのクーデターが失敗した場合のケースも想定せねばならなかったのは寧ろ自然な事とも言えるだろう

オーブ侵攻を行なうとして、大西洋連邦政府は戦後処理などというものを行なう作戦をすべきかどうか密かに協議していたのである

 

 

あくまでも主敵はプラントであり、オーブや南アメリカはあくまでも『状況故』に潰さねばならなくなっただけの事

 

 

だが、それ故に潰すと決めたならば

歯止めが効かぬと判断したならば

 

 

二度と立ち上がる事のない様に踏み潰さねばならない

 

プラントには生産拠点としての価値がある

オーブの価値と言えばコーディネーターとの共存社会をいち早く実現したが故の技術

 

…そう

コーディネーターとの共生社会が出来つつある理事国にとって、オーブは然程に重要では無い

 

 

 

加えてオーブの体制の脆弱さも問題だった

利用価値もない

国家として信用も出来ぬ

組織として引き締める事すら叶わない

 

 

 

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ラミネート装甲のユーラシア連邦への技術供与は元々予定されていたものだった

 

ザフトが傾き始めた戦局(天秤)を戻す為の方策として考えられるのは勿論新型量産機の配備だろう

だが、その量産機を配備するにしてもそれなりの数が必要であり、仮に開発出来たとしても地上への配備が遅れる事は考えれば分かる事

 

となれば『既存のMSの火力増強』が恐らく議論に挙がるだろう言葉を間違いないと大西洋連邦軍総司令部は判断

ザフトにおいても携行型ビーム兵器が導入されるのもそう遠くはないとの判断から比較的信用できるユーラシア連邦軍に対してラミネート装甲の技術供与が成される事となる

 

結果地上反攻の切り札とも言える凶鳥やcrazyの下部装甲がラミネート装甲に置き換わる事となった

無論一部ではあるが

 

 

そしてそれらは民間用に転用される事なく、両軍は保持していた

 

 

それらをオーブに投入するとこの人物は掴んでいたのである

 

 

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オーブ軍の所有する最大戦力はM1アストレイであり、この機体にはビームライフルが装備されている

 

オーブ軍の空を守る戦力はプラント理事国以外ではまだ現役のVTOL戦闘機であり、それ以外には洋上の護衛艦位

勿論、ミサイルサイロなども有しているにはいるがそんな事は侵攻側である地球軍、特にオーブを敵視している東アジアは理解している

 

そして、オーブは島嶼国家である

 

 

逃げ場などないし、それこそ大量破壊兵器を使用したとしても他国への被害はそこまで出ないと見られていた

 

 

 

「…まさか、そこまでやるというのか?」

 

「流石にそこまでやるとは思えんが」

 

動揺する者達に

 

「忘れましたかな?彼等は必要だからとカーペンタリアやビクトリア。果ては自国領内である筈のカオシュンすら更地としようとしたのですぞ?」

議論に冷や水を浴びせた人物は非情な現実を突きつける

 

(馬鹿どもが。熱に浮かされた結果、我々がどの様な立場になったか理解してあるのか?)

この人物はカズイの件について一切知らされておらず、この組織の理念に対しても懐疑的だった

 

 

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そもSEEDを持つ者とやらがいるとしても、それらに全てを預けられるのか?

仮に自分達にとって不都合が生じたとしてそれを粛々と受け入れられるのか?

と言った疑問が残る

更にそのSEEDを持つ者とやらが未だに見つかっておらず、その存在すらあやふやな事も疑問に拍車をかけていた

 

父からこの席を譲られたものの、正直なところ必要のないものとこの人物は思っている

 

今自分達がしている事は世界に混乱と憎悪と悲しみを拡げているだけであり、その後の事など考えているとも思えないのだから

 

 

(…潮時かも知れんな。こんな狂信者どもと心中するなど真っ平だし、する義理もない)

 

 

そう彼は判断した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼が思う以上にその組織のした事は重要視されており、後日密かにとある人物を頼る事となるのだが、彼は拘束された後自白剤を投与

全ての情報を吐かされた後、人知れず深海へと沈む事となる

 

 

 

そしてこの組織はひと月後、その拠点は消滅。構成員もその尽くが極秘に処分される事となった

 

 

 

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