勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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短いよ





 楽園()の終わり

「…情けないものだな

いったい我々は何をしているのか」

オーブ国防軍官舎の一室でため息をつく者

 

「最早手遅れかも知れません」

力無く項垂れる者

 

「ウズミ様の時代は終わったのだ

新しきオーブの為に戦おうと何故思わん!」

怒りを露わにする者

 

 

彼等はバスカーク一尉が襲撃されてから、オーブ国防軍の内偵の報告を受けていた

 

そこで判明したのは現政府に対して不満を未だに抱えている者の多さ

 

 

「不満を持つな、とは言わん

それで行動出来ぬならば、その軍服を脱げというに」

組織の決定に従わぬならば、その様な人物は組織にとって百害あって一利もないだろう

 

だが、彼等はそれをしない

何故か?

 

(武力)がなければ体制を覆す事が出来ないと思っているから

 

 

先のクーデターにより、武力による権力奪取という悪しき前例が生まれてしまった

結果、反体制派の中には『カウンタークーデターをすべきではないか?』との意見が残る事となる

 

中には

「大西洋連邦の協力を得て行なった以上、オーブの独立性も失われる」との懸念を持つ者もいた

 

 

大西洋連邦からすれば鼻で笑う話ではあるが

 

 

 

「既に国防軍内においても、深刻な対立が起きつつあります」

 

軍令に反した一尉の護衛担当

本来ならば一様に非難されるべきところなのだが、一部の一尉に反感を持つ者や現政府に反発する者の中で1人がこう言った

 

 

「自業自得だ」

 

その結果、発言した者に掴みかかる者が出た事をきっかけに騒動が起きてしまう。その対処にも少なくない労力を振り分けなければならなくなったロンド・ミナは

 

「今の状況を分かっておるのか!」

と思わず執務室で声を荒げたという

 

 

 

 

カガリは一尉をこちら側に引き入れた最高責任者として、臨時招集されたオーブ議会で批判や非難をされる事となり、一時的にオーブの政治に空白が生まれる事となる

 

 

コトーやウナト等は「今はそれどころではない」と各派閥のトップに働きかけたのだが、現政府の正当性を非難する事により市民からの支持を獲得しようとする議員側と結局折り合いが付かなかった

それと共に首長制そのものに対する疑問符を市民にも共有してもらう事で首長制の廃止、或いはその権限の縮小を狙っている部分もあったのである

 

オーブ議会の人間としてはあくまでも一尉襲撃について『国内の問題』と認識していたが為にこの様な事となった訳だが

 

 

併せて議会では未だに大西洋連邦軍が国内に駐留している事も問題としてカガリら政権首脳部への攻撃材料として扱う

 

 

議会側としては、ウズミの様にいつまでも口を出す人物やホムラの様な指導力を発揮できない代表も困るが、指導者としての心構えや覚悟が定まっていない人間にこの国の舵取りを任せたくない

と言うのが本音ではあったのだから

 

加えて、政権奪取の方法がクーデターでありしかも大西洋連邦の力を借りるとなってはオーブの中立性や国際的な立場などが揺らぐと考えていた

 

 

 

…だが、これが最後の一押しとなるとは彼等も予想していなかっただろう

 

 

 

----

 

 

アズラエルとフレイはカガリとの話し合いの場に来ていた

一応カガリの補佐役としてコトーも同席していたが、アズラエルとフレイ2人ともそこまで重要視していなかったが

 

 

「カズイの身柄の引き渡し、だって」

 

「ええ、彼のご両親からの委任状も此処に」

カガリの言葉にアズラエルは懐から書類を出す

忘れがちであるが、まだカズイは本来学生。保護者の庇護下にある年齢だ

本人の意思が確認出来るならばまた話は別になるが、そうでなければカズイの両親の意見が優先される

 

「…確かに間違いじゃなさそうだが

この国で治療を続ける訳にはいかないのか?」

 

「信用ならないのよ、この国が」

カガリの言葉にフレイは言葉少なく応じる

 

「…確かに今回の不始末は弁明のしようもない。申し訳なく思う

しかし」

 

いつまでアイツに重荷を背負わせるつもりなのよ、アンタらは!!

コトーの言葉にいっそ悲鳴とも思えるフレイの言葉が返る

 

----

 

 

 

フレイ・アルスターにとってカズイとは変な人物だった

 

 

当時父を見殺しにされたと憎悪を募らせていたし、今でもあの時何かやり方があったのではないか?とは思っている

 

でも普通に考えて

 

「お前の邪魔をする俺を刺してからにしろ」

なんて言わないし、考えないと思う

 

キラの事にしても、シンの事にしても、あの女の事にしても、目の前のじゃじゃ馬の事にしても

別にカズイが何かを削ってまで助ける理由なんてない

 

サイの事だってそうだ

あれは私とサイの問題であって、カズイに文句を言うのは筋違いだと思う

 

 

…だけどアイツは言うのだ

 

「独りで抱えるのは辛いからな」って

 

 

 

アイツは他人が思う程に強くも賢くもない

…頭のネジが何本か飛んでいるとは思うけどね

 

 

 

 

でも別にもう良いの

カズイがもしも死んだら、私も一緒に死んであげる

…約束したものね?

 

 

アンタが最後まで私の好意と向き合わなかったのは正直癪だけど、その辺はまた再会した時にしっかり詰め寄ってあげるんだから

 

 

 

だけどね?

カズイを傷つけておいて、何もしない国なんて私もアイツの弟も妹さんも用はないの

 

 

私は何もしないわ

私は、私達はカズイとそのご両親を連れて出て行くだけ

 

そこがたとえ更地になったとしても、私は何も気にする事なんて無いんだから

 

 

----

 

 

「カガリ・ユラ。貴女がどう言おうと私はカズイを連れて行くわ

…邪魔なんて、させない」

フレイの目に剣呑な光が宿る

 

「まぁそう言う訳です

此方としては最大限譲歩したつもりだったんですけどねぇ。仕方ないでしょう

…さて、そろそろ私達はお暇するとしましょうか」

 

「…カズイに」

アズラエルとフレイが席を立つと

 

「…アイツの意識が戻ったら伝えてくれ

ありがとう、助かった。と」

カガリは下を向き、つぶやく様な声で2人に告げる

 

「…そうね。それくらいならしても構わないわよ

…さようなら」

溢れる涙を見ないふりをしてフレイとアズラエルは退室した

 

 

 

----

 

「アンタは残るのね、キラ」

 

「…うん。家族が此処にいるから」

 

「アンタもホント面倒な奴よね

アイツにそっくりだわ」

オーブの軍港の側でフレイとキラは別れの挨拶をしていた

 

「そうかな?

…それなら少し嬉しいかもね」

 

「アンタねぇ

…この国に残された時間はほとんど無いわ

クサナギに家族を連れて急ぎなさい」

 

「…クサナギ?」

 

「ええ、そうよ

アイツからの最後の伝言。…伝えたからね」

 

そして2人は別れる

恐らく二度と会う事は無いだろうと思いながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして天使達は楽園から飛び立つ

まだ見ぬ明日へ向かって

 




という訳で史実通り、オーブは焼ける事となりました


なお、史実と異なりアークエンジェル不在。ストライク、バスター、フリーダム、ジャスティスが欠員の模様

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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