勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

78 / 131
 鮮烈なる光

「オーブ本土が焼け落ちたか」

 

「些かやり過ぎではありませんか?」

 

上層部(うえ)がオーブにご執心だったのは事実

だが、オーブ本土は誰も統治したがるまいな」

東アジア共和国軍宇宙艦隊旗艦『彗星』の艦橋にて宇宙艦隊司令部(チャン)と参謀達がオーブ戦争について話をしていた

 

 

----

 

焦土となったオーブであったが、大西洋連邦やユーラシア連邦に東アジア共和国何れの国家もその領土には関心がない

 

「現状でも国内をまとめるのに苦労している

これ以上負担を増やすと言えば、私は官僚達から殺されかねんよ」

とは大西洋連邦大統領であるアーヴィングの談

 

それは広大な国土を有するユーラシアや島嶼地域を多数持つ東アジアも同じである

 

復興には手を貸す

だが(国土は)要らない

と言うのがプラント理事国の本音であったのだ

 

 

オーブの市民が多く避難しているアメノミハシラ

如何に拠点としての機能を有しているとしても流石にオーブ本土の市民全ての受け皿になる訳もなかった

加えて、物資面の問題もある

 

既に退役した氷山空母を改装した大型輸送艦によるオーブへの物資供出も各国間の話し合いで合意しており、可及的速やかなオーブ再建が望まれる

 

 

いや、お前等が焼いただろ?

というツッコミに対しては

 

いや、ほら

邪魔だったから

という何とも理不尽な答えが返ってくる事だろう

 

 

地球軍にとって邪魔だったのはオーブが変わろうとしても変わる気も未来を思う事もしない『旧アスハ派』だった

加えてカズイ襲撃の追跡調査で判明した『親プラント』思想を持ち、いざとなればプラントの利となる事をしでかす者達もまた厄介

それ等が最悪結び付く可能性もあった為に一度全てを焼き払う事にしたのである

 

その為、オーブ国防軍関係者はその殆どをオーブ戦争で処理せねばならなくなった訳だが

 

 

更に代表であるカガリも名を変える事を余儀なくされ、此処にオーブ建国以来続いたアスハ家は断絶する事となる

これがカガリを助ける為の条件であり、仮にこれが履行されないのであれば地球軍はオーブ最後の拠点であるアメノミハシラへの攻撃すら辞さないと通告していた

 

 

それ以外のオーブ国内の問題については少なくともプラント理事国として関与するつもりはない

オーブ再建には協力しよう

食糧支援なども行おう

 

だが、それだけ

 

 

仮にオーブでクーデターが起きようとも

その結果残された氏族が全員死のうとも

 

好きにすれば良い

 

 

 

もうプラント理事国はオーブに何の価値も、何も求めるつもりはないのだから

 

 

----

 

「しかし閣下、いよいよですな」

 

「…余り気は進まんがね。無論やれと言われた以上最善を尽くすが」

張としてはこの様な作戦に賛同できなかった

 

しかし、相手が大量破壊兵器を持ち出したのも事実

速やかに戦争を終わらせなければならないと彼も覚悟を決めざるを得ない

 

 

「…因果なものだよ」

張は軍帽を深く被り直した

 

 

----

 

 

「第一ブロックから第十五ブロックまでのリンク完了!」

 

「第二十三ブロック、予定よりも展開が遅れている。何かトラブルか?」

 

「各艦ミラーの調整を急がせろ!」

彗星の艦橋ではオペレーター達が忙しなく各所と連絡を取り合っている

 

「…しかし太陽光で拠点を焼く、か

何とも正気を疑いたくなる様な話だな」

 

「そうですな。とは言え閣下

人型の機動兵器などが闊歩する今となっては現実味がないのは今更ではありませんか?」

 

「…かも知れんな」

忙しなく動いているオペレーター達を他所に張や参謀達はともすれば、呑気に雑談に興じていた

 

現実離れしているとも言えるこの作戦を聞いた時、張は『戦争の狂気に毒されていないか?』と盛大にため息をついたものだ

 

 

----

 

 

張は資源衛星『新星』を巡る攻防戦の時は一つの分艦隊を指揮する指揮官だった

 

彼は堅実な指揮に定評があり、プラントとの関係が険悪なものとなった事による人事異動で宇宙艦隊に配属された経緯がある

 

だが、堅実であるが故にMSを活用した中・近接戦闘に対して彼は終始翻弄される事となり、友軍と同じく甚大な被害を受けて新星の放棄と撤退を余儀なくされる

結果、東アジア共和国の宇宙戦力は壊滅的被害を受けた

 

 

それでもプラント理事国(世界屈指の強国)としての意地か、プラントに対する攻撃の際再編した宇宙艦隊を投入

この戦闘により、東アジア共和国軍宇宙艦隊は編成表の上から消滅してする事となった

 

しかし、その代わりに農業用コロニー『ユニウスセブン』に対する核攻撃を成功させる事となった訳だが

 

 

 

 

何とか生き残った張であったが、既に宇宙艦隊は無く陸軍へと戻される事となり、ザフトとの戦争に引き続き駆り出される

 

張は地上の旧世紀の遺物の復活(マッド・パーティ)の話を聞いた時友邦の上層部の頭の中身を本気で心配した

 

まだ大型爆撃機は分かる

が、列車砲だ氷山空母だ挙句パンジャンドラムが実戦投入されると聞いた時は眩暈すらおぼえた

 

張は故事に学ぶべきと考える人物であり、彼の実家である張家は歴史に理解のある家であった事も幸いして、戦史関係の資料も多い

それ故に当時どの様な評価を受けて、これらの兵器の実戦投入が見送られたのかも知っていたし、知らないものは調べたものだ

 

故に再建される宇宙艦隊への移籍を一もなく二もなく快諾したのである

 

張の心境を分かりやすく表現するならば

 

こんな所(旧世紀の亡霊が跋扈する魔境)に居られるか!俺は部屋(宇宙)に戻らせてもらう!』

と言ったところであろう

 

 

彼にとっての最大の誤算が魔境から逃げた筈が逃げた先にもコスモ(スペース)パンジャンや今回の兵器の様な『正気を疑いたくなる様な兵器』が待っていた事だろう

 

 

 

 

なお宇宙艦隊司令に着任してからユーラシアの件の兵器や自国のそれを見た彼は

 

「やってられるか、コンチクショー!」

と日頃節制を心掛ける彼には珍しく、自室で呑み潰れていたそうな

 

 

----

 

 

「しかしこれが成功すれば、最早プラントも手を上げる他なかろう」

 

「…どうでしょうか?

これまでも頑なに拒んできた彼等ですぞ」

参謀達の会話に

 

「難儀な事だ

いつまで経っても戦争を終わらせる方法を人類は学ぼうともしないのだからな。いつまでも人類は変わらんのだろう」

ユニウスセブンやエイプリル・フール・クライシスの事を思い張は皮肉そうな笑みを浮かべると

 

「だが、失われた命の対価を叫ぶならば

…此方も容赦は出来んのだよ、砂時計の諸君」

遥か彼方にあるプラント本国を睨みつけた

 

 

 

----

 

 

「ナチュラルどもめ!何をするつもりだ

…速やかに奴等を排除しろ!」

 

「し、しかし

このヤキンの戦力をこれ以上失えば今後防衛にすら差し支えます」

東アジアの動きはヤキンからも確認出来ていた

 

故にヤキンの司令官は東アジア艦隊の排除を命じようとするが、副官はそれを諌めようとする

 

このヤキン・ドゥーエはプラント本国最後の砦

もし仮にこれが陥落したとなれば、もうプラント本国までの障害となるものは存在しない

 

無論本国にも戦力はあるにはあるが、サトー隊以外殆ど練度や士気を考えると地球軍に対抗できるか怪しい程度のもの

ヤキンにはまだ万全とは言い難いが戦力は残されており、それ故にプラント本国への侵攻を阻めている

 

それがヤキンに駐留する兵達の認識だった

仮に戦力が低下すればボアズの二の舞になる可能性もあり得る

 

 

だからこそ戦力を減らすのは下策と副官等は考えていた

そうであるからこその発言だったのだが

 

 

「貴様等は知らんだろうが、本国では既に戦力は整いつつある

今は地球軍の攻勢を挫くのが最善なのだ!」

ヤキン司令はそう声を荒げる

 

確かに傭兵やジャンク屋から提供された(・・・・・)MSや艦艇は台所事情が火の車となっているザフトにとって万金にも引けを取らない価値があった

 

兵士についてはとある伝手(・・・・・)から確保できると司令である人物には伝えられている

 

…しかし

 

「お待ち下さい、司令!

正面に展開しているのは確かに東アジア艦隊でありますが、ユーラシア連邦軍が何処にいるかも分からない状況での攻撃は危険かと」

 

(五月蝿い奴だ

今の我々が防衛戦をやったところでジリ貧なのも分からんのか!)

自分に付けられた副官の言葉に不愉快そうな顔を顰める

 

 

…そうやって貴重な時間を浪費していくのであった

 

 

 

 

----

 

「各艦、ミラー調整完了しました閣下」

 

「…よろしい

では集光システム『劫火』起動!

プラント本国への門を焼き払え!」

 

「第一から第十五ブロックまで角度調整」

 

「十六から二十三まで調整よろし」

 

「二十四から三十五よし!」

 

 

そして全てを焼き切る光がヤキンへと放たれる

 

 

 

----

 

「な、何事だ!」

 

「ヤキン付近を警戒中のMSとの通信途絶!」

 

「『ガモフ』以下警戒艦艇反応ロスト!」

 

「レーザー、だとでも言うのか?」

 

「確認出来ません!」

劫火の標的となったヤキンでは付近を警戒中だったMSや艦艇群が文字通り『消滅』

更に宇宙港にも深刻なダメージを受ける

 

幸いにもヤキン司令部などの内部にまで被害は及ばなかったが、一時的にヤキンの基地機能は麻痺したといえるだろう

 

 

 

----

 

 

「…閣下」

 

「予想よりも頑丈な事だ

特殊工作艦を前面に出せ!」

 

特殊工作艦

東アジアがプラント破壊の為に急遽生産したものの一つであり、武装は何一つ装備されていない

 

これの仕事はただ一つ

 

 

「牽引ワイヤーを切り離せ」

 

「スラスター起動!目標ヤキン・ドゥーエ」

 

特殊工作艦15隻から放たれるは、岩塊

 

 

質量攻撃により、ヤキンの機能を喪失させるつもりなのだ

 

 

 

「ユーラシア艦隊に通信を送れ!

『門をこじ開けた』とな!」

 

「はっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉は今、開かれようとしていた

 

 

 




なお、ヤキンを陥落させてもプラント本国への攻撃は未だに出来ない模様

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。