「…そうか。彼の無事は確認出来なかったのかね」
『残念ながら
…オーブからの出国が間に合ったとするならば、其方へ連絡があるなり我々に連絡があるのではないかと』
「……どう見る?」
通信相手に尋ねる男
彼の名はオルバーニ。地球連合事務総長の地位に
『……なにぶん、現地も破壊し尽くされておりますし現在地球軍による掃討作戦が行われております
今此方が動くとなると総長のお立場にも』
「…いや、そこについては気にしなくて良い」
『と言われますと?』
「私は既に連合事務総長の地位にないのだからな」
オルバーニは力無く項垂れた
----
オーブ戦争が始まる前日、地球連合臨時総会が招集された
議題はオーブに対する『武力制裁』の是非
…少なくとも、オルバーニはそう捉えていた
「オーブに対する武力の行使の是非、ですかな?
事務総長はおかしな事を仰られる」
「元より、地球連合軍としてオーブに攻撃する訳でもない
あくまでも『地球の秩序を乱した』オーブに対する制裁であり、東アジアの行動に我等が力を貸しただけの事」
「左様。如何な事務総長であろうとも、我が国の行動まで制限する権利はありますまい?」
「…地球連合の役割を考えれば、無用な争いを起こすべきではない」
オルバーニの言葉に大西洋連邦、ユーラシア連邦そして東アジアの代表がそれぞれ冷笑を浮かべる
「無用ではありませんよ
自国内のテロすらも満足に防げない。体制が変わろうとも変わる事のない軍
こんなものが必要と?」
「…周辺国としては自国内で問題を完結してもらわねば困るのです
……まぁ、統治するものの無い方に何を言っても無意味でしょうがな」
オルバーニは皮肉をぶつけてくる赤道連合の代表の姿を見て、理解する
既に周りには敵しかいない事を
「そうそう。プラントに無責任にも譲歩案を提示した方がおられましたな?
少なくとも、その様な話を聞いた事がありませんが、ね?」
「平和的解決を模索するのは結構な事
ですが、当事者である我々に断りもなく動かれたとなれば流石にやり過ぎと言わねばなりませんなぁ」
「…残念ですよ、事務総長
貴方の様な人物をその席に据えておく訳にはいきません」
「私は本日此処にオルバーニ地球連合事務総長の解任を求めます
…賛同される方はご起立をお願いしたい!」
ムスリム同盟代表の言葉に大西洋連邦、ユーラシア連邦、東アジア共和国、赤道連合、ムスリム同盟、南アフリカ統一機構にアフリカ共同体の代表が起立
座ったままなのは大洋州連合と南アメリカ合衆国のみとなる
オルバーニは目を見開き、呆然としてしまう
そしてオルバーニは地球連合事務総長の地位を解任された
故にオルバーニから立場を与えられていた
東アジア政府の一部は独自に『アスハシンパ』と接触し、オーブ戦争の直前の混乱に乗じて
…言うまでも無いが『死人に口なし』である
----
そんな経緯があり、今のオルバーニは『元』地球連合事務総長。しかも解任決議の後、地球連合事務総長という役職の是非にまで議題に上がる始末
しかもプラント理事国は旧常任理事国を中心として再構成戦争の際に纏まっている事から、寧ろ国家間の格差は旧世紀と比べて広がったとすらいえるだろう
流石に悪しき前例である『拒否権』は存在しないものの、どうしても国力差というものはそのまま話し合いにおける力関係に繋がりかねないものであり、それ等を調整するのが地球連合事務総長に期待されていた役割
はっきり言ってしまうと、武力衝突が起きた時点でオルバーニが何らかのアクションを起こしていたならばある程度オルバーニの提案に耳を傾けただろう
しかし現実にはプラントが圧倒的不利な状況において譲歩案を示しており、各国政府としては
「お前の提案国民に説明して納得させるのは俺達なんだが!?」
と激怒するに値するものだった
「地球連合事務総長でありながら、プラントに味方するつもりか?ああん?」
と思わずオルバーニに鉛玉をプレゼントしたい衝動に駆られた首脳もいたくらいなのだから、彼等の怒り具合も分かるかも知れない
しかも、プラントへの封鎖を外交官特権で突破し、プラントへ渡航したというのだからプラントの処理に頭を悩ませる理事国首脳や各国宇宙艦隊司令部からも好ましく思われているはずもなかった
「なんとかせねばならん
プラントに住む人命を失うというのは問題にしかならない」
オルバーニはこの状況を打破すべく、各国のジャーナリストと接触し事態の打開に向けて動き出そうと決意した
その翌日、丁度ヤキンに対する攻撃が行われていた最中
地球連合元事務総長オルバーニは暴漢に襲われ命を落とす事になる
----
「…それで?彼の容体はどうですか?」
「はい。どうやら
大西洋連邦本土に戻り、カズイを収容した病院の院長の言葉にアズラエルは眉を顰め
「ただでさえ身体の弱った人物にそれをすればどうなるか位は考えて欲しいものですね」
「まったくですな。同じ医術を生業とする者として情けなく思います」
憤慨する院長
この人物は大西洋連邦本土においても知る人ぞ知る名医であり、個人病院を経営していた。ところがエイプリル・フール・クライシスによって生じた怪我人などをギリギリまで受け入れた結果、経営が悪化。あわや閉院の危機に追いやられてしまう
アズラエルとしてはその様な人物を失うのは好ましくないとして資金援助を申し出たのだが、いかんせんブルーコスモス盟主という肩書きがあったが故に院長は難色を示す
それでも粘り強く交渉し、アズラエルの秘書がコーディネーターである事からも漸くアズラエルがコーディネーター排除を掲げる強硬派と違うと誤解を解いた
まぁ、アズラエルがブースデッドマンを運用している事を知った際には盛大に顔を顰めていたが
「暫くは当院での治療が望ましいかと」
「ええ、お願いしますよ」
院長の言葉にアズラエルは満足そうに頷いた
----
「宇宙港付近に深刻な被害が!」
「ヘルダーリンが岩塊により港内に着底!
速やかに救助を!」
「おのれ!ナチュラル如きが舐めた真似をっ!」
ヤキン司令部では劫火とその直後の岩塊による質量攻撃により発生した被害で混乱が生じていた
ヤキン司令はその被害の大きさに怒りを隠そうともしない
「東アジア、ユーラシア艦隊が接近!」
「部隊は出せるな?」
「可能ですが、それではヘルダーリン乗員の救助に支障が!」
「どの道奴等を追い払わねば、我等もプラント本国も終わりなのだ!
MSを全機出せ!警戒行動の為に出撃していたホイジンガーにも地球軍への攻撃命令を出せ!
本国に増援要請も忘れるな!」
プラント最後の砦、ヤキン・ドゥーエの攻防戦が今始まろうとしていた
----
「ヤキンに攻撃だと!」
「はい。かくなる上は本国の守備隊を出すべきかと」
「マクスウェルは何と言っている?」
エザリアはヤキンから齎された急報を聞き、大急ぎで対応せねばならないと思考を巡らそうとするが、なにぶん彼女は軍事にはそこまで明るくない
その為国防委員長であるジェレミー・マクスウェルの意見を聞こうとするが
「マクスウェル国防委員長より伝言を預かっております
『もう、お前の役目は終わりだ』と」
「なに?」
エザリアはその言葉に戸惑うが
パン!
「き、貴様」
エザリアに報告してきた人物は躊躇いなく彼女へ向けて隠し持っていた拳銃を発砲
「マクスウェルも排除し、邪魔なシーゲルやパトリックも居ない
…後は」
倒れ伏すエザリアなどに興味を持つ事なく、彼女を害した人物はその場を立ち去った
そして
プラントの高級ホテルの一室がエザリア襲撃の僅か後爆破される
「これからは我々がザフトを
…いや、プラントを導くのだ」
プラントに試練の時が訪れようとしていた
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
-
いる
-
いらん
-
それより本編でしょう?
-
ifstory補完しろよ