勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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題名の通りです

宜しければどうぞ



いつも誤字訂正ありがとうございます


 集う者達(前編)

オーブ本土が焼かれ、プラントでクーデターが起きていた頃

 

「さて、そろそろか」

ロンド・ギナ・サハクは楽しげに自身の愛機であるアストレイ・ゴールドフレームのコックピット内で笑う

ゴールドフレームのレーダーが此方へ向かう2つ(・・)の反応を捉えたからだ

 

此処はアメノミハシラ付近にあるデブリ帯の一角

そこへ

 

『…こちらサーペント・テールのガイだ

…まさかお前からの依頼とは思わなかったが』

ブルーフレームが

 

『何だってんだよ

言っとくがこれは返さないぜ?』

レッドフレームが

 

道を外れた者達(アストレイ)が此処に集う

 

 

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『オーブが落ちたと聞いたが?』

 

「…ふん、あの場合情けない事だが仕方なかった

そう言う他にあるまい?」

傭兵の言葉に少し苛立ちながらも答える

 

『地球軍も好き勝手しやがって!』

 

「勘違いするな、ジャンク屋

確かにオーブ本土が焼かれたのは事実。犠牲も出た

…だがな?貴様や傭兵、そしてこの私が乗っているコレもまたその様な事を容易になし得るもの

世界には秩序が必要で、その秩序を維持する為には力が必要なのだ」

個人の意志で動かせ、しかも使い方によっては拠点攻撃すら可能な人型兵器など脅威でしかない

 

 

 

「プラントでの出来事は聞いているな?」

 

『…ああ』

 

『どうやらザフトには余裕が無いと見える』

 

「既にプラント理事国をはじめとした国家はジャンク屋や傭兵について規制強化の方向で動いている」

 

『…つまり、お前の依頼を受ける事で何か変わる

そういう事か?』

 

「オーブが焼かれる前なら此方もある程度の手は打てた

だが、今となってはプラント理事国側に縋らねばならん」

 

『ならお前の依頼を受ける理由にならないじゃねぇか!』

やはりまだ傭兵の方が話になる、か

だが、アストレイシリーズが我がオーブの機体である事はオーブに攻撃した時点で明らかとなっているだろう

 

…仮にジャンク屋が理事国と諍いを起こせば当然その出どころを探すだろう

理事国は自勢力のMSの管理体制を強化していると聞いている

そしてオーブ戦で流出する隙間はなかった

 

となれば、アメノミハシラから流出したと見られたとしてと不思議ではない

…いや、疑惑がある時点でどうにもならんか

 

 

『落ち着け、ロウ

問題はジャンク屋もザフト側に立って参戦しようとした。…そういう事だ』

 

『…確かにそれは、ヤバいかも知れねぇな』

 

『此処はオーブ

…いや、地球軍と協力すべきだ

そういう事だな?』

 

「その通りだ。一応アメノミハシラにはイズモとクサナギがある

なけなしの戦力を全て出せば向こうとてそこまで粗忽には扱わんだろう」

ギナとしても楽観論が過ぎると自嘲したくなるが、そうも言ってられなかった。今の自分に出来る事などそこまで多くはない

…だが

 

「私もまた当事者なのだ

アスハの小娘に全てを押しつけて素知らぬ顔をするなど認められるものか」

 

自身の誇りにかけても、国は守らねばならない

 

 

----

 

 

 

 

「おいおい、ホントにこいつ等ザフトの人間かよ?」

 

「…ふん、後ろで踏ん反り返っている連中に従う奴等だ

この程度だろうさ」

 

ディアッカ達はイザークと彼を監視していた者達との合流を果たしていた

 

だが

 

「…どうするべきか」

 

「……うむ」

いかんせん、2人を監視していたまとめ役2人に妙案が浮かばなかったのである

 

これにはディアッカとイザークも呆れ顔だ

 

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ディアッカ達は知らなかったが、現在彼らのいるコロニーでは幾つかの勢力が混在していた

 

まずクーデターを起こして実権を握ろうとしている『ザフト司令部』

エザリアに従っていた『エザリア派』

ディアッカとイザークを監視していた者達『黒幕』

そしてクルーゼと元クルーゼ隊にサトー隊を加えた『パトリック派』

これに加えて旗色を鮮明にしていない『市民』

数名しかいないが『地球側のスパイ』

となる

 

エザリア派で現在も健在なのはシーゲルとパトリックを軟禁しているところを警備している者達のみ。ほぼ勢力としては壊滅していると言って良いだろう(なおトップのエザリアは意識不明ながら生存)

黒幕は既にザフト司令部側によって爆殺されている。彼等の部下がディアッカとイザークと共に行動しているが指揮統制は崩壊。最早組織としての活動は不可能だろう

パトリック派でゼルマンがエザリアを、アデスがダッドをそれぞれ救出。現在サトー達のいる拠点に撤退中

クルーゼは現在新型機の受領の為不在

 

 

他のコロニーではザフト司令部側とそれに反発する市民とそれに同調したザフト兵との間で戦闘が行なわれている始末

 

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「さて、どうする?イザーク

あの様じゃ、頼りにならないと思うぜ?」

 

「分かっている!

…が、俺はお前よりも持っている情報が少ないんだ

…ええぃ、地球軍がヤキンまで来ているというのに何をやってるんだ!」

ディアッカの皮肉めいた言葉にイザークは今のプラントの状況を考えてつい苛立ちを隠しきれなかった

 

この際自分の母が議長をやっている事については気にしないでおくとして、だ

今自分達が頼れる相手で、しかも確実に話が出来る人物となると

 

「…クルーゼ隊長か」

 

「…はぁ、それしかないだろうな」

イザークもディアッカもクルーゼの事を嫌っている訳ではないし、今でも尊敬している

 

だからこそ、地球軌道上での戦闘前にゼルマン艦長としたやり取りや行動がどれだけクルーゼ等隊の上官にとって目に余るものであったか今となっては理解出来る

故に合わせる顔がないのを2人は自覚している

 

しかも既に隊の旗艦であった『ヴェサリウス』僚艦『ガモフ』はクルーゼ隊の手から離れていると言うのだからこの話を聞いた2人は

 

「勝つ気あ()のか?」

と疑問の声を揃って口にしたという

 

 

 

 

確かに対足つきの戦績はお世辞にも良いとは言えない旧クルーゼ隊であったが、それでもネビュラ勲章を授与される程の功績を叩き出したのは間違いではない

それから機動戦力を取り上げる。しかもその理由が『ナチュラル共に良い様に負けた』からだと言うのだから2人からすればそんな人事をした者達の神経を疑う

 

 

勿論これには訳があり、エザリア政権下での国防委員長ジェレミー・マクスウェルは自身の息子であるラスティ・マッケンジーがヘリオポリスで戦死した事でクルーゼやヘリオポリス襲撃を追認したシーゲル、パトリック等を恨んでいた

ジェレミーは妻との仲が険悪となり、ラスティを妻に引き取られこそしたもののザフトの養成機関『アカデミー』において優秀な成績で教育機関を終えた証である『赤服』をラスティが纏った事に深い喜びを感じていたのである

 

それがナチュラル如き(・・・・・・・)に息子を殺されたと言うのだから、当時ジェレミーの受けた衝撃は計り知れない

 

 

 

自慢の息子がナチュラル如きに倒される訳がない

…いいや、そうではない。クルーゼ(パトリックの狗)が、パトリックが息子の才能を恐れて作戦の名目で殺したのだ!

いつしかジェレミーはそう考える様になり、同じ作戦に従事していた赤服の親に対しても憎悪を募らせる事となった

 

しかし、それだけならば国防委員長である自分の暴走と見られるであろう事くらいはジェレミーも理解していた

そこでラクス・クライン救出(・・)の際から一部で支持される様になったクルーゼへの不信感

これを利用する事で『クルーゼ隊に不審な部分があり、それが解消されるまでは前線に出すべきでは無い』とした

 

事実としてあの出来事以降、クルーゼに対する不信感は急速に高まっていた事が地球軌道上における第八艦隊との戦闘における致命的ともいえた連携の不備へと繋がった訳だが

 

表向き(市民に対しては)足つきとの一連の戦闘による被害を鑑み、暫く本国にて活動する

としながらも裏では(ザフト内部においては)ナチュラルに負けたコーディネーターの恥晒し

という懲罰人事とされていた

 

 

この辺の歪さがまだ若い(歴史の浅い)組織としての欠点が浮き彫りになった形かも知れない

 

 

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アデスは自分に従う元ヴェサリウスクルーとダッド・エルスマンを連れて拠点へと戻ろうとしていた

 

勿論

 

「いたぞ!」

 

「逃すなっ!」

ザフト司令部に従う者達の追跡を受けていたが

 

 

「構うなっ!応戦は最低限にしろ!」

アデスは部下達にそう指示を出しながら、ダッドを連れて撤退しようとする

 

 

何せ相手は曲がりなりにもザフト司令部

ザフト全体がそうではないと願いたいが、過度な期待は禁物と言えるしこの状況で楽観視出来る程アデスは緩い考えを持っていない

 

 

 

「…すまないなアデス君」

 

「構いません。我々はこれがプラントの未来を守る為のものと信じてやっているだけですから」

 

ダッドはアデスの言葉に苦笑を浮かべると

 

「…ならもう一仕事頼まれてはくれないか?」

そうある提案をした

 

 

 

----

 

 

「エザリア議長が襲撃された!?」

 

「はい、恐らくエルスマン議員もそうではないかと

一応確認の者は出しましたが」

 

「…となるといよいよこの方達にも害が及ぶやも知れんな」

 

 

 

シーゲルとパトリックは周囲が混乱している事に気が付くと怪訝な表情を浮かべる

 

「エザリアに何かあったという事か」

 

「しかしパトリック。彼女も決して組織運営能力は低くないと思うが?」

パトリックの呟きにシーゲルは疑問を口にする

 

「そうだとしても、ジェレミーが抑え切れるか?

という問題があるのではないか?」

 

「…マクスウェルか」

 

 

シーゲルはかつての光景を思い出していた

 

 

 

----

 

「息子が

ラスティが死んだというのか!

…ナチュラルどもめ!ユニウスセブンだけに飽き足らずっ!!」

 

「マクスウェル」

 

「シーゲル!これで分かった筈だ

野蛮なナチュラルを生かしておけば我々の生存が脅かされる!

…滅ぼさねば!ナチュラルをっ!!」

 

「…だが」

息子を喪い、憎悪を隠そうともしないマクスウェルにシーゲルが声をかけようとするが

 

「お前に分かるか!

愛する者を奪われた、その悲しみと怒りが!!」

 

「その先にあるのは破滅だけだ

それでは」

 

「ナチュラル共を滅ぼせば良いだけではないか!

我等から搾取する事しか取り柄のない奴等を滅ぼして何が悪い!!」

半狂乱となったマクスウェルにその声は届かなかった

 

 

そしてその暫く後、ジェレミー・マクスウェルはパトリック等の強硬派に転じ、ナチュラル殲滅を声高に主張する様になる

 

 

----

 

「…マクスウェル」

 

「もう忘れろ。奴は家庭から守りきれなかった男だ」

シーゲルの言葉をパトリックは即座に切り捨てる

 

「今の奴は既にプラントの未来を脅かすだけの敵に過ぎん」

無論パトリックとてマクスウェルの主張に対して思う事がないとは言わない

…だが、その妄執の為にプラントの、コーディネーターの未来まで賭けられるか?と問われたならば

パトリックは首を横に振る

 

 

 

そこへ

 

 

「ザラ委員長(・・・)!クライン議長(・・)!」

新たな者が訪れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守る者の為に

望む明日の為に

人は最期まで足掻き続ける

 

 

道は闇の中にあれど

それでも尚、人は止まる事を知らず

 

 

次回

『集う者達(後編)』

 

 

 

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