「こうなればせめてナチュラル共だけでも!」
「…既にフレアモーターは設置している
あとは推進剤を点火させ、時間を稼ぐだけだ」
「ユニウスセブンには既に同志が部隊を率いて待機しているはずだ
…これでまだどうにかなるだろう」
プラントからユニウスセブンへと移動するクーデター派
彼等は自身のオーナーであった者達に対して以前フレアモーターを要求していた
というのも、アルテミス要塞やプトレマイオス基地に対してデブリなどによる質量攻撃を考案している
という建前の元にフレアモーターを入手した
それを自分達の子飼いの部下達に命じて地球軍は勿論、友軍にもバレない様に密かに設置していたのである
地球軍とて、Nジャマーの投下であれだけ混乱していたのだ
ユニウスセブン程の質量を落としたとなれば、Nジャマーの比ではないだろう事は容易に想像がつく
そうなれば地球側はその手当てに忙殺される事となり、その間に体制を立て直す事も可能と彼等は確信していたのである
言うまでもないが、それは机上の空論であり、盲人の戯言レベルの話
仮にその様な事が行なわれたとなれば、まず間違いなく理事国は迷う事なくプラント全てを塵に変えるだろう
そうでなかったとしても、プラントの立場は間違いなく戦前の比では無いレベルとなるだろう。その決定的ともいえる原因を作った者に対して果たしてプラント市民は賛美を送るだろうか?
その辺りについて考えていない彼等はやはりと言うべきか所詮一兵卒をまとめ上げる程度の役職に収まるのがお似合いといえる
既に帰る場所もない彼等の最後の悪足掻きでしか最早ないユニウスセブン落とし
だが、彼等はそれに本気で活路を見出そうとしていたのである
彼等の擁する戦力はナスカ級『ヴェサリウス』を旗艦としてローラシア級が3隻にMSジンが26機程にゲイツが2機
後から増援が来たとしても恐らく総数で50にも満たない数。それがクーデター派の全戦力だった
もっと戦力を集められると彼等は思っていたのだが、シーゲル達によりザフト正規軍は彼等をあっさりと見放している為に予想よりも遥かに戦力は少ない
「あとどれくらい有ればいけるか?」
「後半日は必要かと」
「半日か。長い半日になりそうだな」
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『どう思う?』
「そう簡単に諦める様な潔さなど相手は持っていないと私は思うが」
…何の因果か、パトリック・ザラが言うには『ザフト勝利の為の切り札』であるフリーダムに私は乗る事となっていた
機体性能は申し分ない。機動性、火力、防御面
あらゆる点においてこのフリーダムは既存のザフト機を大きく上回っていると言っても決して過言ではないだろう
だが、この機体には
…いや、既に終わっている様なもの
今まだプラントが存在しているのは地球側が迷っているからに他なるまい
不思議なものだ
人類を、世界を滅ぼさんとしていた筈の私がまさかこの様な立場となるとはな
家族を失い復讐に狂ったジェレミー・マクスウェル
己が栄華の為に世界すら滅ぼさんとするクーデター一派
人とは斯くも悍ましく残酷になれるものなのだろう
だが一方で
妻を失いながらも、それでも必死にプラントの行く末を考えるパトリック・ザラ
妻と子を失い、それでもなお明日の為に復讐を堪えるサトー
と言った者達も確かにいる
(面白い)
クルーゼはコクピットで口角を僅かに上げる
ならばこの結末を見届けるのではなく、切り拓くのもまた一つの選択なのだろう
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ドミニオンは既にユニウスセブン付近へと進出し、艦砲射撃によりユニウスセブンの破壊を実行している
とは言え圧倒的な質量を持つユニウスセブン相手に効果的かと聞かれたらその効果の程は疑問符がつくものではあったが
それに続く様にユニウスセブンへと向かうのがイズモとクサナギ
『…各員良く聞け
我々は決して同じ旗の下の同志でも、仲間でもない
…だが、今目の前の困難を退けようという意志だけは共通しているものと私は考える』
艦隊司令であるギナの声が各MSのコクピット内にも響く
『己が役目を果たさんとする者』
叢雲 凱はコクピットの中で目を閉じたままギナの声を聞く
『自分達の居場所を守ろうとする者』
ロウ・ギュールは真っ直ぐ前を見つめる
『友人や家族を守ろうとする者』
キラ・ヤマトはアメノミハシラの両親やトール達、そして遠く離れてしまった友人達の事を思う
『未来の為に戦おうとする者』
シホ・ハーネンフースは決意を秘めた瞳でユニウスセブンの方角を睨みつける
『戦おうとする意志を持つ者だけが、戦場に出る資格がある
各員奮起せよ!』
『発進カタパルト展開、発進シークエンス
アストレイブルーフレーム発進位置へ』
イズモのオペレーターの指示に従いブルーフレームは動き出す
『進路クリア
ブルーフレーム発進せよ』
『…叢雲凱、ブルーフレーム行くぞ』
ブルーフレームが
『続いてレッドフレーム発進位置へ』
『レッドフレーム発進せよ』
『ロウ・ギュール、レッドフレーム行くぜ!』
レッドフレームが
『続けてシグーディープアームズ発進スタンバイ』
『分かりました』
『進路クリア、ディープアームズ発進せよ』
『シホ・ハーネンフース、ディープアームズ行きます!』
プラントの未来の為に蒼き剣がそれぞれ出撃して行った
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『発進スタンバイ、ストライク発進位置へ』
誘導に従いキラはストライクを動かす
そこへ
『キラ・ヤマト
貴様にどうしても伝えたい事があると通信が来た。回線を繋げるぞ』
「あ、はい」
今になって何があったのかとキラは不思議に思うが
『よぉ、キラ
相変わらず自分を削る様な事ばかりしてんな』
『カズイ!?』
そこにはオーブで斃れた筈の友人の姿があった
『色々話したい事があるとは思うが、後にしよう
…キラ
気をつけて行ってこい』
それはアークエンジェルを降りてから失ってしまったキラとカズイの関係
キラはMSで
カズイは後ろで
それぞれが出来る事をする
それだけだ
キラの表情が引き締まり
『ストライク発進、どうぞ』
『キラ・ヤマトストライク発進します!』
キラはイズモから出撃した
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『何で俺達の邪魔をする!』
『貴様等のしている事は八つ当たりに過ぎん!』
イズモからMSが出撃していた頃、クルーゼとサトー隊は既にユニウスセブン付近まで進出しており、クーデター派と交戦していた
『ユニウスさえ落とせば、ナチュラル達に勝てるんだ!』
相手から聞こえてくるのはまだ子供や若者の声
だが、やらねばならない
サトーは奥歯を力強く噛み締め、目の前のジンを両断する
『妻と子供の眠るこの墓標!
落としたところで世界は変わらぬ!!
…各機速やかに
『『『『『了解!』』』』』
サトーの命令を聞いたサトー隊各員は散開
障害の排除に取り掛かった
『クルーゼ、貴様も思うところがあるだろうが艦隊を落としてもらう』
『了解だ。早々に片付けるとしよう』
サトーとクルーゼもまたそう通信するとお互い成すべき事の為にそれぞれの戦場へと向かった
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「ほう、ザフトもどうやらユニウスセブン落としを阻止しようとする者がいる様だな」
サトー隊とクルーゼとクーデター派との戦闘を遠望したギナはどうやらユニウスセブン落としがザフトの総意ではない事を朧げながら感じ取った
ギナはそう戦場を見渡しながらも、攻撃してくるジンを一刀両断している。ギナにとっても、これは最後の賭けなのだ
此処でギナ達がユニウスセブン落とし阻止に貢献出来たとなれば、大西洋連邦を始めとした国家からオーブ復興の為の物資等について少しは交渉出来るというもの
現在のオーブはトップをミナに臨時に据えているが、これとて一時的な措置としかならない事はギナやミナにあのじゃじゃ馬ですら理解している事
しかしながら、仮にオーブのトップを変えたとしても国際的に孤立しているオーブの状況が変化するとは誰も思っていない
本来ならば、他国の人間が作戦前に通信を入れるなどと言う事は出来る筈もないのだが、それにすら異を唱える事も出来ないのが現在のオーブの立場。…勿論その人物に対してオーブがかなり負担をかけた挙句やらかしている事も理由だが
それに何よりも、仮にユニウスセブンが落ちた場合かなりの確率で再建中のオーブ本土にも多大な悪影響が予想される
それはギナとしても到底容認出来るものではなかったのだから
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『青いジン、だと!
…この裏切り者が!!』
『落ちなさいっ!』
シホは回線から聞こえてくる
確かに彼女もまたザフトの人間でありプラントの未来を真剣に考えていた
だが、今の彼女にとっての最善は例え裏切り者と言われようとも、この暴挙を阻止して自分達の居場所を作らねばならない
『貴方達の無念は分からなくありません
ですが、私もやらなければならない事があるんです!』
その為に彼女は剣を取り、そしてそれを振るう事を選んだのだから
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『ストライクだと!?
貴様がいなければ!』
『僕にも守りたいものがあるんだっ!』
ザフトにとって、足つきと共に忌むべき存在となっていたストライクはユニウスセブンを守るクーデター派の人間にとって正しく怨敵というべき存在だ
その為、ストライクを落とすべくジンが向かってくるが、キラはもう迷わない
迷った結果、キラは守ろうとした人を危うく失いかけ、今また守ろうと決めた人達が命の危機に晒されている
『僕は、戦う!』
キラの中で何かが弾けた様な感覚が起きる
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『何故ナチュラルの味方をする!』
『生憎だが、私もそのナチュラルなものでね!』
クルーゼは相手の言葉に取り合う事もなく、腰にマウントされていたレールガンで目の前のジンを撃ち抜いた
『自分の感情すら制御出来ないならば
…自ら育てたその憎悪に食われて滅びるが良い!』
バラエーナとレールガンをかつて自身が母艦としていた
『…さらばだ』
そして、その引き金を引いた
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クルーゼにとって、ザフトでの己の地位はあくまでも復讐の為の道具でしかなく、それ以上の感情など持っていなかった
だが、文字通り苦楽を共にした優秀な副官や戦場という非日常において怒りや悲しみだけでない戦う理由を持つ部下達の存在はある意味において救いであり、別の意味では呪いでもあった
別に愛機などというものはクルーゼにはなく、壊れていた己に愛着などというものは無縁であると彼自身は思っていた
だが、いざ自分の手によって沈めてみるとなると、クルーゼの中に言いようの無い感情が込み上げてくるのを自覚する
…だが、今ではない
今己のすべき事をせねばならないとクルーゼは己を律する
確かに人類を滅ぼす決定的なチャンスであるだろう
…だが、この様な形での復讐などクルーゼは望んでいない
場当たり的な、しかもこの後の事など一切考慮していない。そんなついでの様なもので己が納得するとクルーゼは全く思っていないのだから
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キラ・ヤマト、か
俺は敵を倒しながら直ぐそばで戦っている少年の事を思い返していた
『…おやおや、また懐かしい顔ですね?』
「まだ貴様はあんな事をしているのか」
イズモより発進して接敵するまでの間、ガイはある人物と通信をしていた
『今はしていませんよ
…そう言ったところで信じますか?』
「…」
その相手はムルタ・アズラエル
ガイにとっては何よりも誰よりも憎い相手
『貴方にした事が間違っているとは思います。悪かったとも、
…ですが、だからと言って命乞いをしたりするつもりはありませんけどね』
「俺がお前の死を望んでいたとしても、か?」
『それは仕方のない事でしょう
貴方にはボクを恨む理由がある。その感情を否定するつもりなんて毛頭ありません。…勿論それで素直に殺されるつもりも全くありませんが』
確かにムルタ・アズラエルの筈だ
だが、どうにも昔の奴と話している相手の像が上手く結べなかった
『おや?まさかボクがいつまでも変わらない外道とでも思っていましたか?
…心外ですね。ボクも人ですよ?良くも悪くも変わる事もあるでしょうに』
「…率直に言えば影武者ではないかと俺は疑っている
そのくらい変わったな、アズラエル」
『変わろうとすれば、どれだけ歳をとっても変わるものですよ?
良い出会いがあって、見習うべきものがありましたからね』
「…そうか」
『別に許してくれ、なんて言うつもりはありません
恨んでくれて大いに結構。…ただ憎しみだけで進んでも碌なことにはなりませんよ?
『最高のコーディネーター』なんて期待されている人物だって、今必死に友達や国を守る為に戦ってますからね?』
アズラエルの言葉に思わず耳を疑った
「…まさか此処にいるのか?」
『さぁ、どうでしょう?
スクールの授業ではないんですよ?答えなんて自分自身で見つけるしかないんです。…健闘を祈りますよ、ガイ・ムラクモ』
「…そうだな。精々生きて答えを見つけるとしよう」
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その『最高作品』である筈の人物は必死になって今を
仲間や家族を守ろうとしている
「…ふ」
自分とあの少年
守りたいものを守ろうとする。その気持ちに何の違いもないとガイは少し口元を緩ませると
「こちらガイ、援護する!」
その背中を守らんと動き出した
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東アジア宇宙艦隊司令である張はユニウス落下の報を受けると『劫火』や特殊工作艦に対してユニウスに対する攻撃体制を整えるべく命令を発した
先行していたドミニオンより詳細な情報を受け取ると
「『劫火』を撃とうにもMS隊が障害となるか
…せめて推進器を破壊すれば話は変わるかも知れないが」
苦い表情を浮かべる
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.『隊長!残りフレアモーターは左部分3箇所のみです!』
「良し、これならばまだ距離がある
…間に合ったか」
地球の重力圏に突入すれば、多少推進力が残っていようともユニウスセブンは地球へと落ちる公算が高い
故にサトー達は全ての推進器を破壊するのではなく、意図的にずらす為に一部箇所の破壊をしなかった
…だが
「なにっ!」
突如として残していた三基のフレアモーターが爆発したのだ
『やらせるか、貴様らの思い通りになぞ!
ナチュラルは滅び、我等コーディネーターによる輝かしい未来が始まるのだ!』
最早動く事すら儘ならぬ、それこそ残骸と見間違えそうなゲイツからの勝ち誇った様な通信
『貴様達の様なナチュラルに迎合する連中の作ろうとする未来!
そんなものに価値などないのだ
……ふ、ふははははは!!』
狂笑
そう言っても誰1人それを否定しようのない狂った様な笑い声
…いや、嗤い声が周囲を満たした
しかし
頭上からのビームがそのゲイツを撃ち抜く
『死にたいならば、自分ひとりで往くと良い
…少なくとも、此処にいる者達には守ろうとする明日があるのだからな』
ビームの先には蒼き自由の翼があった
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「ユニウスセブン、軌道変わらず!
このままでは」
「…艦隊はどうか?」
プトレマイオス基地より順次艦隊、いや戦隊単位で部隊を送り出している
「ボアズ包囲艦隊ですが、大規模な動きを見せるとボアズ側が動きを見せるとの事で、艦隊の動員が難しいと」
「…ホフマン大佐
サザーランド大佐はなんと?」
「『例のもの』の使用自体は大統領令により可能性はあるそうです
…しかし、それを移送する時間がないと」
ハルバートンの言葉にホフマンは苦しそうな表情で答える
「提督!ユーラシア艦隊が!」
「何っ!」
そして妄執は打ち砕かれ、全ての戦いは終わりを告げる
だが、それぞれ明日は訪れる
次回エピローグ『終わらない明日へ』
昨日と今日色々あり過ぎたけど私はジオング(手足有線で切り離し可能。…脚、ないよ。そんなの)にもハンマハンマ(ジオングに同じ、脚はある)もなっていないので元気です
某エースも言ってました
「たかが
と
まぁ執筆速度は落ちますが、そこはご容赦ください
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
-
いる
-
いらん
-
それより本編でしょう?
-
ifstory補完しろよ