勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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戦争なんで、綺麗には終わらない
そんな悲しい話


戦争なき未来へと
 果てなき道を


大西洋連邦大統領であるジョセフ・コープランドは執務室で難題に立ち向かおうとしていた

 

「…まさか、こうなるとは」

 

コープランドの前任者であるアーヴィング政権における最大の功績とも呼ばれている

 

『プラントとの武力衝突での勝利』

その意味が失われようとしていたのだ

 

 

 

 

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「この議場で諸君らの顔を見るのも今日が最後と思うと感慨深いものがある」

大西洋連邦大統領アーヴィングは自身の辞任に際して議会での演説を行なっていた

 

与党側の大多数の議員はアーヴィングの辞任を好ましく思っていなかった

何せ是々非々あれども、間違いなく禍根を取り除いたのだから

加えてエイプリル・フール・クライシスなどにおける迅速な民政、各国との硬軟混じりの外交

発足したばかりでともすれば、暴走しかねなかった地球連合事務総長(オルバーニ)の影響力の排除やオーブの影響力の排除

 

 

他の者であれば、支持率低下を気にして行えなかっただろうものをアーヴィングは強権を行使してでも成し遂げて見せたのだ

加えて国内における根強い反コーディネーター感情に対しても根気強く付き合う事で結果として机上の空論とも揶揄されがちであった『コーディネーターとナチュラルによる共生社会』の実現にも多大な貢献をしている

 

選挙の顔としてはこれ以上ない人物であり、与党側としては長期安定政権を担って欲しい

そう思っていたのだ

 

 

 

 

だが、アーヴィングはこれに対して

 

「君達が願うのは党の安寧だけなのかね?

…ならば今そう言い給え。大統領として、政党トップとして

…そしてこの国を生きる1人の人間として

君達から議員という立場を取り上げねばならぬ」

と険しい目つきで与党の有力者を睨み付けている

 

「我々は権力を持つ

故にこそ、間違えてはならんのだ。間違えたのならば、それを潔く認め、そして自身が真にこの職にあるべきかを問わねばならん」

その視線にアーヴィングへと意見を向けた者達は目を逸らした

 

「…話にならんな

私とて人間だ。汚れていないなどと言うつもりは毛頭ない

…だがな?我々の選択一つで失われる命がある

それを忘れてしまう様では困るのだ」

そう冷たく言い切った

 

 

 

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「漸く終わったプラントとの武力衝突

…いや、言葉を正しく使うならば戦争だったのだろう

それにより多くの人命が失われたのは諸君らも知っているだろう

どうにも勘違いしている者が多い様なので、訂正しておこうか

 

我々は勝者ではない

だが、プラントも勝者ではない

これは勝者なき戦いだったのだ」

アーヴィングの演説は続く

 

「今回我が国を始めとした国家や組織は軍事力を行使した

…だが、軍事力を行使して物事の解決に臨んだ時点で我々政治家は負けているのだ!

軍事力の行使は万能薬などではない!恐ろしい副作用を伴う劇薬なのだ。故にこそその行使には慎重にならねばならないし、行使するとなれば行使した後の事を考えねばならない

どう始めるのか?を論ずるならば

どう終わらせるか?も常に考えねばならん」

なし崩し的に始まってしまったが故に、戦争を終わらせる事に苦労したアーヴィングだからこそ思ってしまった

その結果、ユニウス落下という人類滅亡の危機を招いたのだ。アーヴィングからすれば情けない事この上ないものだったといえる

 

「未来に思いを馳せるのは良い

今を真剣に見つめるのも良いだろう

…だが、そのどちらに対しても我々は責任を負わねばならない事を決して忘れてはならない」

 

 

こうしてアーヴィングは次代へとそのバトンを渡したのである

 

 

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基本的にアーヴィングの政策を踏襲する形となったコープランド政権であったが、『ジャンク屋組合(ギルド)』についてはその結成とジャンク屋の権利について保証する事とした

 

ユニウスの落下を阻止した者の中にジャンク屋の者がいた事が理由の一つといえた

 

 

 

 

…だが、これこそがコープランドの失策にして最大のミスだったのだ

 

 

 

 

 

 

 

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ジャンク屋組合やジャンク屋に対する法整備を進めようとしたアーヴィングや理事国首脳

 

彼等はジャンク屋というモノ自体の在り方が平時において危険なモノとなり得るのではないか?

そう危惧していた

 

 

ジャンク屋と言っても、ジャンクを集めてそれを売り払う事で生計を立てるもの

そのジャンクを修理して再生品として販売するものがある

 

 

回収して売却するのは彼等にとっての経済活動であるからと

その為にコープランドはそれを良しとしたのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果、プラント市民が移住した『ヘリオポリスⅡ』にザフトの機体が集まりつつあると聞くまでは

 

 

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その報告を受けたコープランドは仰天し、詳細な報告をヘリオポリスⅡ側に求める

その一方で内偵を進ませ、万が一の事態が起きない様にしたのだが

 

 

…そこで判明したのが、ザフト機のみならずオーブのM1アストレイにストライクダガーすらも保有しているというものだった

 

 

ストライクダガーを始めとする地球軍の機体についてはジャンク屋組合に対してその販売を大西洋連邦、ユーラシア連邦に東アジア共和国に限定する様に通達、周知させている筈

 

それはともすればジャンク屋組合存続にも関わる協定

 

 

認める訳にはいかなかった

 

 

 

 

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因みにヘリオポリスⅡの元プラント市民とオーブの諸島に住んでいる者達の間にはいつしか大き過ぎる溝が出来ていた

 

 

地球という時には理不尽な災害により生活はおろか命すら脅かされかねない所に住む者達と

コロニーという調整された空間で生活する者達

 

それが双方の対立を生み出したのだ

 

 

旧オーブ領に住む者達は自分達が世界中から白眼視されている事を朧げながらに理解するだろう

小さな島だけで必要なものは賄えないのだから

 

コロニーでの生活とて満足のいくものではなかったが、地球での生活はプラントの人間にとって多大なストレスを与える事となる

その結果、彼等は諍いを繰り返す

だが、いつまでも過去(プラントでの生活)に思いを馳せたとて何も変わらない

 

その為、彼等もまた変わらねばならないと必死になった

 

 

 

その点、ヘリオポリスⅡに移った者は地球軍によるコロニー外部からの監視こそあったものの、プラント本国での暮らしとの差に嘆くだけの余裕があった

それ故に彼等は奪われた(・・・・)ものを取り返さんと動いていたのである

 

密かにどうやらヘリオポリスⅡに対して資金援助をしている組織があると大西洋連邦軍情報部から大統領の相談役となったハルバートンは知らされる事となり

 

「…動いたか」

と感慨深そうに呟いたとされる

 

 

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旧プラント本国は旧理事国を中心とした『コロニー管理委員会』によって管理されている

…と言うのは建前であり、委員会に属する国家は待っていた

 

 

『戦乱を呼び込もうとする者たち』を

 

 

 

 

 

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プラント市民の分断

それはコープランド達の発案ではなく、アーヴィングを始めとした者達とロゴス、各軍司令部による作戦であった

 

『細分化して、そしてその芽を摘む』

 

 

アーヴィングや旧理事国のトップ。そして各国の軍上層部はプラントによる武力蜂起についてこう分析していた

 

『コーディネーターは潜在的脅威であるが、その結束にヒビさえ入れてしまえば、対抗できる

…故に徹底的にコーディネーターの分断を行なう事こそが彼等との共存に繋がるだろう』

 

 

だからこそ、『真のコーディネーター(コーディネーターにとっての希望)』である人物と話をして半ば隠棲生活をして貰ったのだ

…幸いにも件の人物は自身の危険性について自覚していた為に、政府としても軍としても強硬手段に出る必要はなかったのは幸いといえるだろう

 

更にシーゲルの娘であるラクスについても、当人自身が自らの立場と名声の高さを危惧していた事もあり、件の人物と共に押し込める事が出来た

 

 

…少なくとも、コープランドはそう判断している

 

 

世界とは優しくも甘くもない事をコープランドは知っているのだから

 

 

 

 

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「…ヘリオポリスⅡに対して警告を出せ」

コープランドはそう命じる

 

「…大統領閣下

これを機に彼等も除かねばなりません。これでは堂々巡りとなりましょう」

 

「無論だ、ハルバートン

幸福とは他者から与えられるものではない。自らが気付き、手を伸ばさねば手に入らぬものなのだからな」

 

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大西洋連邦軍を始めとした各国の軍は表向き(・・・)MSをそこまで保有していない

 

しかしながら、ザフトに導入初期においてみられていた様に『人型の作業機械』として多数擁していた

勿論戦闘に耐え得るものではないが、武装を装備しキチンとした手順を踏む事により各軍の保有するMS数は爆発的に増加する

 

 

 

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先の武力衝突においてすら、尻尾を掴ませなかった連中

だが、戦乱は収束に向かい現在現体制に対して武力を用いて対抗しようとするのは難しい体制を作り上げた

 

 

…だからこそ、彼等は動いたのだろう

 

 

 

…しかし、世界を動かすのは一握りの人間であっても

 

 

世界を回すのは名も知れぬ者達なのだ

 

 

 

「…そろそろ退場してもらおう」

彼等は確かに様々な人脈や財力を持ち、広範な影響力を有しているのだろう。が、それを行使するのであれば、それ相応の対応をされても文句は言えない

 

…否。言わせない

 

 

アズラエルを始めとした元ロゴスメンバーは勿論の事、現在のロゴスメンバーも彼等の排除には前向きであり、大西洋連邦軍総司令部としてもいつまでも訳の分からない連中に軍の中を引っ掻き回されたいとは思っていない

 

軍は『抜かずの刀(抑止力)』として機能すればそれで良いのだから

 

 

 

なお、ヘリオポリスⅡに対して武器(ジャンク)を提供した事からジャンク屋組合に対しても今回の件の解決(・・)について協力を要請(・・)している

仮に断った場合は彼等ジャンク屋の権利を剥奪し、組合についても解体させるつもりだ

 

 

「彼等には自分達のしている事が世界に混乱を招く行為であるとしっかり自覚させねばなりません」

とはハルバートンの言葉であり、コープランドもそれについて全面的に賛同している

 

 

「人間誰しも不幸になりたいなどとは思うまい。平穏こそが幸せである事は否定しない

…だが、平穏が幸福であると知らしめる為に戦乱を起こすなど許してはならぬ」

戦乱の芽は摘み取らねばならない

 

 

その為に多くの者達の命が消えたのだ

 

 

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ジャンク屋組合は大西洋連邦政府を始めとした国家連名の最後通牒を受け、自分達の未来の為選択を迫られた

 

先の武力衝突における功労者の1人であるロウ・ギュール等に対して協力を求めた組合であった。しかし現在のジャンク屋組合の上層部は発起人であるリーアム達を追い落としていた事もあり、ロウ達はこの件に関して組合に対して協力する事はなかった

 

 

ジャンク屋の中には『地球軍による横暴』と露骨に敵対姿勢を見せる者もそれなりに出てしまう

 

組合としても自分達の利権を取り上げられる事に賛成出来るはずもなく、それ等の動きを黙認

いや、寧ろ水面下では支援していた

 

 

『どの様な事になろうとも、自分達は必要とされるだろう』

という思い込みの元で

 

 

 

時代は動き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アーヴィング、アズラエルと愉快なロゴスメンバー
「付き合ってられんわ。道筋は作ったから後はもうええやろ?」

コープランド他
「ちょっ!?」

カズイ達
「隔離されたけど、漸く楽になれた」

ジャンク屋組合
「タスケテ、タスケテ」

ロウ
「知らねぇって!」

そんな感じ

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

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  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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