勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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平和は次の戦争への準備期間

そう言う者もいるだろう
…だがそうでない明日が欲しいものだ


 エザリア・ジュール(想いを押し付けられる者)

エザリアは旧オーブ領にある小島で生活を送る事になった

 

シーゲルとパトリック、それにエルスマンは渡航の前日死亡している事が確認され、旧最高評議会関係者は彼女1人となっていた

 

 

近くの島には戦時中にオーブへと亡命したグループも移住しており、其方ではギルバート・デュランダルがまとめ役として機能していた

なお、戦後ザフトに帰還したアンドリュー・バルドフェルドとその部下達もヘリオポリスⅡではなくこちらに移住している

 

 

「流石の僕達も彼等と同一視されるのは勘弁願いたいからねぇ」

とは元隊長の言葉だ

 

 

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シーゲルやパトリック、ダッド(ナチュラルに負けた戦争指導をした連中)に対してプラント市民ことにヘリオポリスⅡへの移住を決めた者達は冷淡であり、批判非難こそすれども指導者としてはおろか市民としてすらも受け容れるつもりはない

そう断言していた

 

勿論プラントの裏切り者であるラクス一味や『ナチュラル如きに負けた連中(ザフトの面汚し)』もそうであった

 

 

その一方で、プラント最後の評議会議長となったエザリアについては受け入れるどころか「是非自分達(ヘリオポリスⅡ住民)の指導者に」と言ってきた

 

 

エザリアからすれば理解不能である

 

自分はシーゲルやパトリックの跡を継いだにも関わらず、結局プラントの。ザフトの敗北を覆す事は出来なかった

そればかりか、ユニウスセブン落としという狂気の沙汰と言える蛮行をあわや実行してしまう所だったのだから

 

仮に

もし仮にユニウスが地球へと落ちたならば

 

恐らく

いや間違いなく地球全ての国家や組織がプラントを

プラントの全てを滅ぼさんとしただろう

 

 

 

自分の息子の命惜しさにその様な破滅的な状況を生み出した自分に何が出来るというのか?

 

そうエザリアは思っていた

 

 

 

…だが

 

「エザリア・ジュール

貴女のその手腕のお陰で我々はまだ戦える(・・・)のです

貴女の交渉(・・)にナチュラル共は屈したのですから」

 

 

 

理解したくなかった

 

 

 

つまり、彼等の中ではクーデター(武力蜂起)した者達の動きは

地球を滅ぼさんとしたユニウスセブン落としを交渉のカードとして見ていたのだ

 

 

余りにも悍ましく、余りにもとんでもない思い違い

 

 

 

「エザリア、覚えておけ

人は見たいものしか見ないし、信じたくない事はどれだけ目の前にあったとしても受け入れないものだ

…それは我々プラントのコーディネーターも同じなのだ」

 

強硬派のトップでありながらも、そのコントロールに腐心していたパトリックの言葉が思い出された

 

 

 

だから、エザリアは地上で過ごす事を決めたのだ

 

 

----

 

 

エザリアもシーゲルもパトリックもダッドも

デュランダルやバルドフェルドですらも地球側にこう主張した

 

 

だが

 

「別に構わない

もう一度戦乱を起こそうと言うのならば、それ相応の対処をするだけだ」

 

微笑んでそう言ったアーヴィング大統領、いや元大統領の姿が今でも彼女の脳裏に深く刻まれている

 

 

「そうすれば、今度こそプラントの人間を始末出来る格好の口実となる」

そう薄く笑みを浮かべていた大統領補佐官の姿も彼女にとっては恐怖だった

 

大統領補佐官は地球で生まれ、育ったコーディネーターらしいと聞いた

 

 

『裏切り者』

そう地球のコーディネーターを私達は思っていた。彼等は嫌々地球側に協力していたのだと

 

 

 

 

だが、違ったのだ

その事実を理解した私はマトモに思考できなくなる程の衝撃を受けてしまう

 

「…やれコーディネーターだ、ナチュラルだ

地球、プラント。そうやって大別するのは我々統治者側からすれば仕方ないのだろう

…だが、それが危険な事である事をしっかりと認識せねばならない

 

コーディネーター全てが優秀だとしても、倫理観や責任感が伴わねば容易く悲劇を生む。我々とて優秀などと嘯くつもりは毛頭ないが、さりとて全てにおいて君達に劣るとは思っていない

…二度はない。2匹目のドジョウはいないのだよ、エザリア・ジュール」

 

冷笑

…いやいっそ嘲笑してくれればまだ此方もやりようはあった

 

見下していたならば

憎悪していたならば

 

 

だが、そうではなかった。彼等はただ自分達の

…そうではないか

 

自国民の脅威を取り除く為にその全てを行使しただけに過ぎないのだと漸く思い至った

 

 

 

 

仮に

もし仮に国家間の紛争を調停出来る組織があったとしても彼等はそれを頼りにする事はないのだろう

 

 

「君達がどの様な基準でその立場に就いたのか知らないが、我々は国民からの信任の元に此処にいるのだよ

それ相応の自覚と責任感の元に行動せねばならないのだ

故に我々と相対する人間にも同じものを求める。…さて、その様なものがあったとして、だ

その自覚や責任感を持って職務にあたれるものなのかね?」

 

 

プラント最高評議会は確かに各コロニーから選出された議員により運営されている

だが、各々の専門知識は非常に高いもののそれ以外については門外漢

 

 

外交にしても、本来それこそおざなりにすべきではなかったスカンジナビア仲介の元での停戦交渉

 

 

----

 

 

「…あの状況下で仮に和平を結んだとしてもまた同じ様な事が繰り返されるだけだ

だからこそ、プラント本国の主戦論者や強硬論者にも嫌でも受け入れざるを得ない形での劣勢が必要だったのだ

…まぁ、結局思惑通りとはいかなかったがな」

 

「…しかし、あれしかなかった

エザリアには黙っていた事は謝らねばならない。…すまなかった」

 

「…エルスマンは知っていたのですが?」

 

 

 

 

プラント市民の移住の合間、パトリックとシーゲル。そしてエザリアとダッドの4人は時間の都合をつけておそらく最後となるだろう話をした

 

 

プラントを敗北に導いたシーゲルとパトリック

勿論エザリアとダッド、2人に近い者はそんな容易い話ではないと思っていたが、とにかくプラント市民としては『負けた理由』を文字通り血眼になって探しており戦争指導をしていた2人はその対象となったのである

 

シーゲルとパトリック、それにユニウスセブン落としを阻止した功労者であるサトーとその部下達の殆ど

彼等は地球にもヘリオポリスⅡにも移住する事を選ばず、度重なる内乱によりかつての姿の面影など微塵もないプラントに残る事を選択

 

地球軍は出入り口である港湾設備と非常用の搬出口の全閉鎖を条件にそれを認めた

 

 

彼等は此処(プラント本国)でその命を絶つつもりなのだ

 

 

 

 

言うまでもなく、エザリアは彼等に何度となく思い止まる様に説得したが、彼等の決意は固く誰一人として説得に応じなかった

 

サトー隊の隊員の中で唯一まだ若いルナマリアはサトー達の説得により地球へと行く事が決まっている

 

 

 

 

「隊長、どうしてですか!?」

 

「これは我々大人のケジメなのだ

…難しいかも知れないが、ルナマリア・ホーク。お前はまだ家族も妹もいるのだ

生きて明日を掴め。どれだけ辛かろうと諦めず投げ出さなければ明日は迎えられるのだからな」

 

「でもっ!」

 

「恨みを募らせて生きていくのは辛い

今となってはザフトなど名ばかりの組織だろうが、だからこそ生き残った我々は責任を取らねばならぬ

…我等の事を思うならば

真にコーディネーターの未来を思うならば、ルナマリア・ホーク

生きてこの事を後世へと語り継いでくれ」

 

「…う」

家族を失ったサトー隊の人間にとって、まだ年若いルナマリアは娘の様な存在であった

ザフトの士官養成学校であるアカデミーを本来の予定よりも大幅に短縮して卒業した彼女は不慣れな部分が多かった。それを見てサトー達は『この様な子供にまで戦いを強要する程に堕ちたのか、今のザフトは』とエザリア体制時のザフト総司令部に更なる不信を抱く事原因となっていたのである

 

彼女とて別にそこまで何も思わない訳ではない

 

だからこそ、サトー達の言葉に泣き崩れながらもその想いを受け継ぐ決意をした

 

 

 

 

----

 

エザリアとダッドは共に地球へと降りる事となった

イザークは危機感も何もないプラント市民に失望し、都合の良い部分しか受け入れないプラント市民の有様にディアッカは冷笑を唯浮かべるだけだった

 

 

身を挺してまでユニウスを砕いたクルーゼ(元上官)に対するプラント市民の反応を見るまではイザークはまだ多少プラントの今後について思うところがあったのだが

 

「最新鋭の機体を事もあろうにナチュラルどもの為に破壊させるなんて!」

という世間話を聞き、それに対して反発しないプラント市民を見て

 

「…ディアッカ。俺達は

途中離脱したニコルや未だに行方不明のアスランやヘリオポリスで死んだラスティにミゲル達にクルーゼ隊長

…何の為に俺達は戦ったんだ?」

と嘆いた

 

「…これがプラント市民(後ろにいる者)の本音なんだろ?

何の為に戦ってるのかわからなくなった?

今更だぜ、イザーク。俺はプラントに戻ってからずっと思ってた」

それに対して憮然とディアッカはそう口にした

 

 

エザリアもダッドも死を選びたかったが、イザークもディアッカもそれを許さなかった

 

 

 

だから2人は生きる事を選んだ

 

 

 

 

 

----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C.E70に発生したプラントと地球間の武力衝突

 

今でもその勝敗は議論となっているが、結果としてはプラントは市民の数を大幅に減らし、プラント本国の放棄を受け入れざるを得なくなった。

地球側は地球連合という出来たばかりの組織の存在意義について考え直す機会となり、後年起きた騒乱の火種を残す事となる

 

 

今となっては、元プラント市民の生存するコロニーは存在せず、その生存圏は明らかに縮小している

 

 

元プラント市民の多くは言う

 

「エザリア・ジュールが最初から戦争指揮をしていたならば、我々が勝っていた」と

 

 

だが、それは本当なのだろうか?

今となっては何もわからない事だが

 

 

 

 

 

ファーストコーディネーター(ジョージ・グレン)が求めたコーディネーター

この時期に存在していたとされる『真のコーディネーター』

その存在は定かではない上に出身地であるオーブ市民の一部からは蛇蝎の如く忌み嫌われている

 

何でも『オーブが焼かれた理由』との事

更にその後大西洋連邦に渡り、その後姿を消したらしい

 

 

 

 

何があの時代起きたのか私には分からない

詳しい事を知っていると思われるサイ・アーガイルオーブ国議員等からは

 

「あまり余計な詮索はしない方が良い」とのメッセージを貰っている

 

 

 

 

あの時代に何が起きたのか興味の尽きない所だ




皆様のこれからに良き事が有ります様に






2024/05/29 鞍馬エル

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