勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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アフター編
始まるよー


 after STORY 穏やかな日々

コロニー『理想郷(シャンバラ)

 

地球とプラント間で勃発した武力衝突

その中で数奇な運命を辿った者達が辿り着いた終着点の一つ

 

 

 

此処には権力も思想も人種も関係ない

ただ、人が住んでいるだけの狭い世界であった

 

 

 

 

 

 

 

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ボーン!

 

ボールが跳ねる

 

「クロト、お前なにやってる!」

 

「はっ、油断大敵ってね!」

 

「はぁ。…マジウザい」

 

「ナイスだ、アウル!こっちに寄越せ!」

 

「くそっ、させるかよ!」

 

「っ!スティング、クロトがマークに行ったぞ!気をつけろ!」

 

 

 

 

 

「元気やねぇ」

 

「アンタも加われば?」

 

「や、加わったら人数的にどうかと思うからさ」

 

「…ならば昼食が終わってからにすべきだろうな

ニコルも加わるなら問題ないだろう?」

 

サッカーに興じるクロト、シャニ、オルガ、アウル、スティング、シンを遠目に眺めながらカズイとフレイは雑談に興じていた。ナタルは今となっては愛読書となっている『レシピ本』から目を上げると2人の会話に混じっていた

 

 

「あんまり体を動かすのは好きじゃないんだがなぁ」

 

「今此処にいるメンバーの中で1番護身術の腕が良い人間が口にしていい台詞じゃないわね、それ」

 

「フレイの言う通りだな

少なくとも軍属でかなり無茶な訓練を強いられていたクロト達やニコル相手でも手玉に取れる人物の言葉ではないと思うが?」

 

「年季が違うんですよ」

 

「…ステラ、カズイに勝てない」

カズイの膝枕を堪能しているステラは落ち込んだ様に呟くと、頭をグリグリと兄と慕うカズイの腹に押し付ける

 

このコロニーにいる者達は全員『訳あり』の人間であり、外に出れば騒乱の元となりかねない

故に例外なく全員護身術の鍛錬を欠かさない事になっている

 

勿論ロミナ・アマルフィもそうだ

 

 

 

 

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元々手習感覚で始めたカズイとシンの訓練

だが、兄と慕うカズイにはやはり強くあって欲しいと願うシンの心情からシンは様々な勉強をしていた

 

…二度と、理不尽な暴力に屈したくなかったから

 

 

その直向きな努力はカズイがヘリオポリスに渡ってからも途絶える事はなく、妹であるマユと共に自分達なりの研鑽を積み重ねていた

 

それはシンがカズイの力になれる様になってからも変わる事はなく、寧ろ

 

 

 

 

 

「うわわあああっっ!」

 

「こんなんで

こんな、この程度の実力で、カズイを守れると思ってんのかよ、アンタは!」

 

とカズイの護衛役となっていたキラ・ヤマト相手にも近接格闘においては圧倒出来るレベルへと至っていた

 

マユは流石にそこまでではなかったものの、同年代の子供相手どころかマリューやナタル相手でも良い勝負が出来る水準となってたりする

 

「守られるだけじゃダメ

守り、守られる関係で私はいたいの!」

との事

 

 

なのでこのコロニーに落ち着いてからシンとマユは兄と模擬戦をする事になったのだが

 

 

 

 

「うわあっ!」

 

「はははっ!動きは確かに良くなったが、肝心要の動きの癖が全く変わってないじゃないか!

そんなんでお兄ちゃんに勝てると思ったか!」

 

「「「「「…マジ?」」」」」

嬉々として兄との模擬戦に挑んだシンであったが、動きの癖や起こりを徹底的に潰されてしまい、実力を完全に発揮できないままに翻弄される事となった

 

これにはクロト達『強化人間組』もドン引きである

なお、ステラは目を輝かせてカズイを見ていた模様

 

 

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「というか」

 

「…そうだな」

 

「ステラ?お兄ちゃんちょっと足が痺れたかなぁ?」

 

「……分かった」

それ以来ステラはカズイに懐いてしまい、偶に兄との模擬戦を楽しむ様になってしまった

今ではカズイの2人目の妹として全員から周知される様になっている

 

…なお年齢的にはステラの方がマユよりも年上であるが、精神年齢的には明らかにマユの方が上の為マユは密かに困っていたりする

 

 

余談ではあるが、ステラとの模擬戦を見たアウルはカズイの事を兄と慕う様になったのだが、シンは自分にとっての唯一無二の立ち位置が脅かされる事にかなり悩む事となったそうな

 

 

 

 

因みにニコルとカズイの仲は良好である。当初はヘリオポリスを結果として破壊したニコルがカズイやフレイにかなり気を遣っていたのだが

「そういう話すると面倒だから、さ?」

と行なわれた話し合いでニコルも納得した模様

 

最近では工作用機械として再生されたザウート(農業カスタム)の操縦をカズイに教えたり、カズイから護身術や料理の手ほどきを受けていたりしている

 

ニコルの母親であるロミナとカズイは料理や農業を通じてかなり親しくなっている

最近では農地再生用機械『真パンジャン』を使い、収穫後の農地再生や農地の拡大に勤しんでいた

 

 

 

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このコロニーへ入港を許されているのはウィリアム・サザーランドが特別顧問を務めている『宇宙再開発機構』所属であり、理事であるムルタ・アズラエルとサザーランド両名が承認した艦艇のみ

 

 

宇宙再開発機構

これはアズラエルと共にロゴスメンバーから退いた元ロゴスメンバー等が出資して作り上げた組織である

 

大規模な、そしてかなり急いで行った軍縮であった為『元軍人』が世の中に溢れる事となる

規模を拡大せねばならなくなった各国警察機構などの治安維持組織への転向を推奨する事である程度の『後に起きるであろう事態』への備えとすると共に、宇宙各所に存在するコロニーに対する措置を速やかに決めねばならなかった

何せ旧プラント本国にはMSなどの生産拠点が存在しており、やろうと思えばこれ等を復帰させる事も可能なのだ

 

勿論高過ぎる武器(核兵器)により、これ等を灰塵に変える事は可能であるが、それをした場合元プラント市民の感情がより悪化する事が考えられた

加えて、戦争の記憶の風化という点においても問題ではないか?との声もあり現状コロニー群の破壊はしない事で連合各国は合意している

 

となると、このコロニー群を監視する体制が必要である

流石に宇宙にある雑多な組織全てを地球側が把握している訳ではなく、警戒を怠る訳にはいかなかった

本音を言えばその辺りの仕事を各国宇宙軍に投げるべきなのだろうが

 

何でこんなにも軍が必要なんですか、敵対組織居ませんよね?《頼むから、こっちの事も少しは考えて下さいぃぃぃっ!》(副音声)

という各国の財務担当の悲痛な声をこれ以上無視する訳にもいかなかったのである

何せ戦争の爪痕やNJ投下に伴う電力不足から引き起こされた混乱は未だ癒えていない。となれば復興事業に財政支出をシフトせねば国民から

 

「政府は俺達(国民)の事を何だと思ってるんだ!」

との怒りの声を受けてしまうだろう

 

予算という巨大なパイを切り分けて各所に配るのが財務担当の仕事

使うかどうかも分からない軍備にいつまでも巨額の予算を投じる事は出来ないのだ

勿論それが分かっているからこその航空機主体の対MS対策であり、ストライクダガーという汎用性と拡張性の高い量産機の採用であり、生産数の引き締めであり、新型艦艇の開発プラン数の削減なのだ

 

氷山空母?

アレはユーラシア連邦軍(他所様)の事だから(大西洋連邦軍関係者談)

 

 

…ではその氷山空母を我が国にも導入した理由については?

 

ひょ、氷山空母は巨大な冷凍船としての運用も可能であり民間への貸与を行なう事で購入費の部分的な回収が見込めます(大西洋連邦軍広報部談)

 

 

 

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閑話休題(それはさておき)

 

宇宙軍の縮小も避けられない話となってしまった訳だ。…だが、放置しておけばジャンク屋や不心得者が己が野心を果たさん為にそれらを利用する事は間違いないだろう

 

そこで急遽設立されたのが、件の組織

宇宙再開発機構

 

運用するのは主にコスモグラスパーであるが、デブリ撤去用等から武装を外したストライクダガーも採用される事となった

その役割が宇宙軍と重なる部分がある為に地球軍においても確たる影響力を持つサザーランドを特別顧問とし、政府との交渉も必要となるだろうとの懸念からアズラエルを理事として迎えた

組織としての運用資金については一部元ロゴスメンバーからの出資とし、現ロゴスメンバーからの出資も求めている

 

 

その役割故に各軍の元宇宙軍所属軍人が集まる事となり、職を失いかねない彼等の受け皿の一つとして機能する事となった

 

そして元アークエンジェルクルーの集まる輸送艦『アークエンジェルⅡ』が機密保護の観点からシャンバラへの輸送を担当する事になったのである

 

 

 

----

 

 

「あーもう、何だよこれは!」

セレインことカガリは頭を抱えた

 

「どうしましたの?カガリさん

…確かにこれは悩みますわね」

カガリの行動を見たラクスは彼女の手元を見て、思わず真顔になってしまう

そこには

 

『大さじ2杯、小さじ1杯、砂糖少々、味醂適量』

と書いてあったのだから

 

「…あはは、それは慣れるしかないと思いますよ2人とも」

 

「そうね。慣れれば分かるものよ?」

 

「…しかしニコルさんにロミナさん

レシピ本とは『誰でも作れる方法』が書いてあるものでは?」

ラクスの怪訝な顔をした言葉に

 

「「それはそう」」

と異口同音に答えた。やはり親子だからだろうか?

 

 

 

現在カガリとラクスは料理の勉強中

ラクスはコーディネーター故に身体能力こそ高いものの、それを鍛えていなかったし彼女はどちらかと言えば『世話をされる側』の人間だった。何をするにしても不慣れであるのは仕方のない話と言えるだろう

 

セレインことカガリもまたラクスとほぼ同じであり、違うとすれば彼女はナチュラルである事位であろうか?

 

 

なお、いつもの様にカズイに護身術の稽古を頼んでボッコボコにされるのは日常風景となっているのはご愛嬌

ラクスは順当にナタルとマユによる指導をロミナと共に受けている

 

…本音としては他の人達と同じ様にしたいと思っているのだが、それは流石に時期尚早と逸る自分を戒めていた

 

 

…フレイ?

愛する相手と触れ合う機会を逃す程彼女は引っ込み思案ではないので、毎回絆創膏だらけになるのを覚悟した上でカズイに頼んでいる

 

 

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「あー疲れた」

 

「…しんど」

 

「さて飯か。おいクロトにシャニ。手を洗ってねぇだろお前ら!」

 

「また負けかよ、くそっ」

 

「…やはり連携はあいつらの方が上か」

 

「要練習だな。やっぱり負け続けってのは嬉しくないからな」

シン達はサッカーを終えてそれぞれ卓につく

 

 

「…しかし何だろうな、この清々しいまでの『パンジャン推し』は

あれか?物資納入担当さんは『頭英国面(ブリティッシュサイド)』なんだろうかねぇ?」

 

「どれどれ?

……何これ、『観覧車式パンジャンドラム』って」

 

「?パンジャンって回るやつだよね

ステラ偶に目が回るけど」

 

「戦争の狂気という奴なのかも知れないな

しかし何だそれは?」

雑談をしながらカズイ達も席につく

 

 

「あーもう整備が面倒なんだけどなぁ」

 

「お疲れマユ」

 

「何だったんだよ、故障の原因は?」

 

「ありがと、カズ兄

やっぱり石が挟まっていたみたい。一回解体(バラ)して全部洗浄しといた」

 

と愚痴を口にしながら席につくのはマユ

(グレート)パンジャン』の整備をしていたらしい

 

 

 

「まだまだって事か

…先は長いなぁ」

 

「物事に近道はないと言いますし、地道な努力が1番なんでしょうね」

 

「どうしても食材が偏りますからその辺の工夫が必要かも知れませんね、母さん」

 

「そうね

ナタルさんにカズイくん。後で少し話をしたいのだけど?」

 

自分がまだ何も貢献出来ていない事に焦るカガリ

それでも一歩ずつ歩まねばならないと決意を新たにするラクス

今後の事を考えて話をするニコルとロミナ

 

 

「分かった」

 

「分かりました。では夕食後に」

この集団のまとめ役として動いているナタルと外向きの交渉を担当しているカズイはそれぞれ応える

 

 

そして

 

 

 

『いただきます』

食事を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は変わるのかも知れない

だが、このありふれたしかしかけがえの無い無い風景は変わる事はないのだろう

 




イメージ的にはログハウスが2棟あって、その前に畑がある感じ
その後ろにザウートとパンジャンがある(なお砲塔は錆びているし、火薬は湿気ている模様)


そんな日常

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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