出来栄え?
知らない子、ですねぇ
人生とは何があるか分からない
私、ナタル・バジルールはこの歳になって改めてそう実感し、『真パンジャン』で新しい農地を開墾した後、コロニーの空を見上げた
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私の家、バジルールは代々軍人を輩出する家であり父も兄も大西洋連邦軍の軍人だ
その影響からか私も幼い頃から軍人を志す事となり、念願叶って大西洋連邦軍人となった
そして新造艦であるアークエンジェルへと配属になり、そこで経験と実績を積む事でゆくゆくは護衛艦の艦長にでもなるのではないか?
そうあの頃は思っていたものだ
…それがどれだけ血塗られた道であるかすら理解しないままに
「いや、軍隊にいる人達に対する感謝は人並みにはありますよ、流石に。でも『軍のルールが何よりも優先される』みたいな事されたら、腹立ちませんか?」
苦笑しながら、だが全く目の奥は笑っていない顔でサラリとぶつけられた言葉
これを聞いて恥ずかしながら、自分の中の歪みを初めて理解したのだから我ごとながらに情けない話だった
平和を守り、人々の命と生活を守る事こそが軍人として最大の任務だと言うのに
私にとって、カズイ・バスカークという人物はある意味では道を糺してくれた恩人であり、そして自らの罪の証でもある
例え戦力が足らないとしても、それでも何とかしなければならないのが私達軍人の役割であり、間違っても民間人を軍に徴発する事を認められる訳がない
…しかも、自国民でも大問題になるだろうに、それが他国の国民ともなれば尚更
そもそもストライクはOSの開発が難航していた以上『運用出来なくて当たり前』
民間人であったヤマト少年がストライクを動かせたからとて、それをあてにするなど大凡真っ当な軍人の考え方ではない
…情けない事だが、その程度の事すら当時の自分はわからなかったのだ
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「…ラミアス大尉、フラガ大尉。そしてバジルール少尉
貴官等に問わねばならない事がある」
あれは第八艦隊に地球軌道上で合流した時の事
ヤマト准尉とバスカーク伍長がハルバートン提督に呼ばれてメネラオスへと出向した時、私達アークエンジェルのトップの人間は提督の副官であるホフマン大佐による詰問を受ける事になっていた
「貴官達が新兵器であるストライクや新造艦であるアークエンジェルを何としても守ろうとした
…それ自体に問題はないだろう。私も一大西洋連邦軍人としてその精神には敬意を払う」
一見すれば称賛している様に思える大佐の言葉
…しかし
「だが、そうであったとしても問わねばならない
貴官達のその選択で多くの子供達の人生が狂った
それに対して君達はどの様に責任を取るつもりなのかね?」
軍人とは命令を受ければ、それが死ぬとしても職責を全うしなければならない時もある
それを理解した上で私達はこの軍服を纏っている
なのに
出来るからと
戦力が足らぬからと
人手が足りぬからと
情け無い言い訳をして子供達を死地に引き摺り込んだのだ
余りにも醜悪で、余りにも愚か
私が幼い頃、父や兄の背を見て目指そうとした
あまりの不甲斐なさにただ立ち尽くすだけだった
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バスカークが
…いや、カズイが軍に志願して世に言う『アークエンジェルの口撃』をした事により、もうカズイが軍から離れられる事が無くなったのだと地上に降りた私は今更ながらに思い至った
元々コーディネーターの間でそれなりに声望の高かったカズイ
それが
「や、んな大それたもんじゃないですよ
…自分に出来るのは、自分の手の届く範囲の
しかも自分が守りたいと思った人を守るだけなんですから」
勝手に希望を持たれて、そして勝手に憎悪をぶつけられる
だが、私は勿論アークエンジェルの皆はカズイ達を守ろうと
…守るのだと確固とした決意を持っていたのだ
オーブの姫と護衛を収容したアークエンジェルは2人を送り届ける為に一路オーブへとその進路を変えた
この時点で私達は気付くべきだったのだ
…確かに2人をオーブへと移送する必要はあるのかも知れない。が、それがアークエンジェルである理由など何処にもない
進路上にあるムスリム同盟や赤道連合は連合軍に対しての態度を変化させており、あの時大西洋連邦を始めとしたプラント理事国側に明確に反発していたのは大洋州と南アメリカ合衆国にアフリカ共同体くらいのもの
ならば、ユーラシア連邦領から安全に移送出来る環境は整えられたのだ
そして、オーブへと着くなりカズイとヤマト少尉にフレイはオーブ軍へとその所属を変え、アークエンジェルから離れる事となった
正直、今の今まで体よく利用してきてどの面下げて
と思わなくもなかったが、私個人の考えなど組織間において役に立つ訳もないし、寧ろノイズにしかならないだろう
嗚呼願わくば
彼がこれ以上身を、精神を削る事が無い様に私は祈る事しか出来なかった
そしてオーブで政変が起き、カガリを首班とする新体制が構築された
…実行する事は終ぞなかったが、仮に政変が失敗していたならば赤道連合基地に待機していた部隊によりオーブは灰燼と化していただろう
それだけギリギリのタイミングだったのだ
カズイ達はオーブ政変における実働部隊の一つであり、大西洋連邦に対するカードの一つとカズイとフレイはなっていた
その為、新体制となったオーブは何としてもカズイを国内に引き留めねばならなかったのだろう
あの時のカズイと私は確かに道を違えるしかなかった
…私はオーブ軍に行く選択は出来なかった。余りにも信用出来なかったから
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そして起きたカズイへの襲撃
カガリがカズイに対して軽んじる訳がないのはアークエンジェルクルーの誰もが分かっていた事
その補佐を務めるロンド・ミナやコトー・サハクとて、あの時カズイを失えばどの様な事になるのかは理解していただろう
大西洋連邦軍や政府としても、『真のコーディネーター』という看板になり得るカズイの存在は決して軽いものではなかったのだから
…個人的にはそんな重荷を負わせたくなかった
だからもし、此方へ戻ってくるのならば私は実家の力に頼ってでもカズイを護ろうと心に決めていた
その一方でオーブにとっても、命綱となっているカズイがまさかぞんざいに扱われるとは夢にも思っていなかったのだが
現場の暴走
そう断じるにはあまりにも醜悪で
あまりにもどうしようも無い
誰かは言った
『アスハの亡霊にオーブは今も支配されている』と
私達は誰もそれを否定出来なかった
そしてフレイは最早微塵も信用出来なくなったオーブを離れる決断をした。カズイやカズイの家族達を皆連れて
彼女からヤマト少年やヘリオポリス組の少年達も無事アメノミハシラへと避難出来ると聞いた私は
もうオーブに一切の興味を無くした
民間人であり、少なからずオーブの延命に貢献した筈のカズイを守れない
…そんな
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そして漸くプラントとの武力衝突と呼ばれる事になる一連の戦闘が終わりを告げる
カズイとフレイはやはりと言うべきか、その影響力の強さから隔離された場所で余生を過ごす事になったそうだ
これでもそれなりに耳は良いつもりなのでな?
その辺りには抜かりはない
「…軍を辞め、自分の道を選ぶ
……そう言うのだな?」
「はい。私が未熟であったばかりに彼の人生は大きく狂いました
私なりの責任の取り方があると思っています」
プラントという最大の仮想敵が無くなった事により各国の軍は大幅な軍縮へと舵を切り、それは大西洋連邦においても同じであった
兄は軍に留まる選択をしたが、私はこれを機に軍を辞す決断をする
そして、残りの人生を彼と共に歩む事に使おうと思い定め、それを父に伝える事とした
「既にお前も士官学校を卒業した身だ
今更私がとやかく言うつもりはないし、言ったところで聞きはすまい?」
「その通りです
私の頭の硬さは他ならぬ父親譲りですから」
私の言葉に父は
「人生儘ならぬものと分かってはいたが、まさか愛娘をあっさり持っていかれるとは、な」
苦虫を纏めて噛み潰した様な顔をして
「それがお前の決断ならば、私もお前の兄も言う事はない
…幸せになれ、ナタル」
「…ありがとうございます
……お父様」
そうして私は実家にも別れを告げて、カズイ達のいるコロニーへと向かう事になった
本来色々面倒な手続きがあったのだが、そこは父と兄の全力の援護射撃によりどうにかなった
当時の事をサザーランドとアズラエルはこう振り返る
「まさかバジルール少将があそこまで押し込んでくるとは」
「いやいや、娘を人生の墓場に送り込もうと言うのに本当に強かったですね、あの2人は」
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そして今私は此処にいる
軍人の家系であるバジルールの娘でも
新造艦アークエンジェルの副長でもない
ただのナタル・バジルールとして
このコロニーの生活は割と独特だと思う
何せ食材の多くは外部から納入されるものになるが、野菜や果物に関しては自給自足なのだから
しかし、どれだけ見ても慣れると思えないな
畑を耕すパンジャンとやらと肥料を撒いて耕作地の土壌を回復させる作業に勤しむザウートは
…いや、まぁ確かに作業的には楽になっているのは間違いないのだが
最近更にプロトジンが作業用として納入される事になり、かなり開墾作業が捗っている
のだがな、カズイ?
最早意味のないだろうマシンガン(種散布タイプ)のマガジンを使ってリロードで遊ぶのはどうかと私は思うんだ
…まぁ、シンもクロト達も楽しそうにしているから構わないのかも知れないのだが(連ザフにおける同機の弾数リロード)
私達は此処で生きる
それで良い
現在のコロニーシャンバラの保有戦力
ザウート、真パンジャン、プロトジン(NEW!)
突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?
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いる
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いらん
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それより本編でしょう?
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ifstory補完しろよ