勘弁して、ほんとマジで   作:鞍馬エル

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やりたかった事の一つ





 after STORY モラトリアム

「しっかし何だな」

 

「…何?」

 

「何だよ、オルガ」

のんびりと木陰(シャンバラ建設時、搬入されたもの)で趣味であるジュブナイル小説を読みながらオルガ・サブナックは思わず呟いていた

 

それを此方に移住してから偶にある伴奏ニコルのピアノとロミナのバイオリンに歌ラクスによる音楽を録音したプレイヤーで聴いていたシャニ・アンドラスとナンバープレイスをひたすらやり込んでいるクロト・ブエルが訝しげに顔を向ける

 

 

「平和だよな」

 

「…だね」

 

「いーんじゃないの?あんなに苦しんで戦うなんてボクはいやだからね」

 

しみじみと何かを噛み締める様に呟くオルガにシャニとクロトも同意する

 

 

----

 

 

「うざいんだよ、お前等!」

 

「は?…ウザい」

 

「なんだか知らないけどお前も撃滅!」

少し前の自分達はある施設からアズラエルのおっさんの所へと預けられ、そして大した事のない戦闘や検査ばかりを受けていた

 

しかも変な薬を飲まないと直ぐに体調が悪くなる

暇を見つけてそれぞれが趣味と思えるものを楽しもうとしてはみたが、ささくれ立った心にそこまで良い影響を与える事は最後までなかった訳だ

 

 

だが、プラントの奴等の最後の足掻きであるユニウスセブン落とし

それを防いだのを最後に俺達の役割は終わったらしい

 

それ以後戦闘に出る事もなくなり、変な訓練や検査を受ける回数も目に見えて減ってきたのだから

 

 

(…ああ、俺達は用済み(・・・)なんだ)と何となく理解した

別にそれで処分(・・)されたとしても不満は確かにあっただろうが、態々抵抗しようとは思わなかっただろう

 

 

しかし、俺の予想を裏切る形で此処へと連れて来られた

なんでも此処は『緩やかに終わりを受け入れる場所』らしい

 

 

どうにも俺達とは別の意味でマトモでは無さそうな3人組に明らかに役目を終えてすっきりとした様な女が1人

あとの3人、兄妹なんだろうが何でこんな所に来る事を選んだのか分からない2人と明らかに疲れ果てた様な金髪の女

 

何というかチグハグな面子だと思ったもんだ

 

 

 

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「おい、オルガ達

そろそろ種蒔きの時間らしいぞ」

 

「…そうかよ

シャニ、クロト行くぜ」

 

「…アレ、今日だっけ?」

 

「今日はなにだっけ?」

 

「さつまいもらしいぜ?」

 

「…早く育つってカズイとナタルが言ってた」

スティングとアウルにステラの奴が俺達を呼びに来た

 

 

「今まで壊すばっかだったんだろ?

何かを育てるってのも中々良いもんだからな」

とはカズイの言葉だ

 

ナタルが言うには

「温度や湿度の管理されているコロニーなら救荒食物(きゅうこうしょくもつ)を意識して栽培する理由は無い

が、収穫の早いものを育てて備蓄するのは良いかも知れないな」

との事だ

 

 

此処には俺達3人を含めてもスティング、アウル、ステラにナタルにニコルにロミナ。ラクスにカガリにフレイにマユにシン、そしてカズイしか居ない

たった15人しか居ないので、そのうち収穫したものの一部を近くの軍の基地に売却するらしいな

 

まぁ耕作地は順当に増えるだろうが、俺達の消費量は変わらないだろうからそうなるのは寧ろ自然な事だろうとは思う

なんだかんだでこのコロニー『シャンバラ』もそれなりに色々かかっている以上はその借りを返そうとするのは良い事だろう

 

MSに不慣れなカガリ、ラクス、ロミナ、マユ、ナタルは『真パンジャン』に

それ以外の奴はザウートや少し前に納入されてきたプロトジンを使って農作業すれば効率は良くなるだろうしな

 

 

…MSで農作業ってのも妙な話だが、カズイ曰く

 

「時代の変化に合わせてモノも進化するだろうし、使う側の意識も変わっていくべきだろうよ」

との事なので、そういう事もあるんだろうさ

 

正直俺達の乗っていたカラミティ、フォビドゥン、レイダーは対MS戦闘を意識しすぎている為、こういう作業が出来るとは思わねぇな

拡張性の高いと言われているストライクダガーやその高性能機であるロングダガーとて、流石に『農作業カスタム』なんてのは出来ないと思う

 

 

この辺は『ザフト脅威のメカニズム』って奴なのかも知れねぇな

 

 

 

余談になるが、どうやらニコルの親父はザフトのMS開発の関係者だったらしく平和利用される事になった光景を見て、感慨深そうな顔をしてたのは印象深かった

 

言っちゃあ何だが、人殺しの兵器を作るよりも何かを生み出す機械を作る方がそりゃ身内からすれば嬉しいんだろう

 

 

 

 

 

----

 

 

 

「おらおらおら!」

 

「…オルガ、うっさい」

 

「あーあ、何やってんだか」

…相変わらずあの3人は何というか纏まりが無い様に見える

まぁ?じゃあ俺達に纏まりがあるかって聞かれてもわかんないけどな

 

 

「…こう?カズイ」

 

「そうそう。あんまり同じ場所に種を蒔いてもダメだからな、ステラ」

右を見ればステラの奴がカズイに教わりながら種蒔きをしてる

 

 

「やっぱりMSを使った方が早いだろうに」

 

「手作業だからこその()ってのもあるだろ?スティング」

 

「何でもかんでも機械頼りだと、やっぱりねー」

左を向けばスティングがシンとマユと雑談しながら種蒔きをしてる

 

 

「土って少しひんやりしてて気持ち良いんだな

初めて知ったな、これは」

 

「確かに素足で作業するなんて中々ありませんものね

…でも、何と言うか新鮮な気持ちになれますね」

 

「こうやって昔の人達は種を蒔いて作物が育つのを待っていたんでしょうか?」

 

「私達がいつも何気なく口にしているモノもこうやって育てられているのかしら?」

 

「ニコルにロミナ。そうは言うがコロニー内での農作業と地球での農作業には格段の差があると思うぞ

何せ地球では天候や気候に応じた育て方などをしなければどうにもならないのだから」

 

「言う程簡単じゃ無いって事よ」

後ろでは雑談しながらのんびりと種蒔きしているカガリとラクスにニコルとロミナにナタルとフレイ

 

 

俺は鍬で少しまだ耕せていないところを耕している

 

「アウル、体全体を使わないと腰をやるぞ?」

いや、んな事言われてもやった事ないんだけどさぁ!?

 

…ま、やるけど

収穫が楽しいからさ

 

アウル・ニーダ

少し前にやったさつまいもの収穫で1番はしゃいでいた人物であった

 

 

 

 

----

 

 

「人工的に起こした火では味わえない感じですね」

 

「焼き芋を作るのに流石にコンロとかレンジはちと味気ないからなぁ。っぱ焚き火でやるべきでしょ」

 

コロニーの明かりが落ちてきた夕刻、カズイ達は各々近くにある大きな石や木に腰掛けて焚き火を囲んでいた

焚き火の中には紙に包まれたさつまいもが放り込まれており、焼き加減を見ながら皆それぞれ焼き芋を楽しんでいる

 

「こういうのは中々出来ないからな」

 

「オーブでやろうとしても中々難しかったものね」

シンとマユはかつてオーブで焼き芋をしようとして消防車が駆け付けた時の事を思い出していた

 

「物質的に豊かになる事と精神的な豊かさを得る事はまた別の話だからなぁ」

 

「確かにな

便利になればなるほど小さな幸せというものは中々見えなくなるモノだな」

 

「時には足を止めて、周囲を眺める位の余裕があればもっと人は優しくなれるのかしらね?」

カズイ、ナタル、フレイはそれぞれ自分なりの考えを口にする

 

「…まだ生焼けじゃん

何やってんの、アウル」

 

「マジ?

ちぇっ、もう少し待たなきゃダメかよ」

 

「別に慌てなくても良いのにさ

ボク達を縛るモノなんて今は無いんだから」

シャニはアウルから渡された焼き芋を齧り、顔を顰めアウルはその言葉を聞いて自分の手元にある焼き芋をもう一度焚き火の中に放り入れる。クロトはそんなアウルとシャニを笑いながら、焼き芋を美味しそうに口にした

 

「味付けも何も無いってのに、これで美味いのか」

 

「元々さつまいも自体の甘味があるからなんだろうが、これはこれで良いもんだな」

スティングは余りにも原始的とも言える焼き芋の美味さに驚き、オルガはカズイとナタルに教えてもらった事を噛み締めながら味わっている

 

「こういう場で色々話をすると盛り上がるのでしょうか?」

 

「雰囲気で楽しむ。確かにこういうのも良いよなぁ」

 

「コロニー生活では味わえないものね、これは」

 

ラクスとカガリはこののどかな雰囲気を楽しみ、ロミナもこう言った食べ方がある事に驚いていた

 

「皆さん、もし良ければピアノの演奏なんてどうでしょうか?」

一足先に焼き芋を食べ終えたニコルはそう提案する

 

「良いかも知れないわね」

ロミナは息子の言葉を受けて、手を洗うとバイオリンを取りに行く

 

「…ではせっかくなので歌わせていただいてもよろしいでしょうか?」

そうなるとラクスも歌おうとする

 

誰もそれに異を唱えない

 

 

----

 

 

皆目を閉じ、音と歌に身を任せる

 

 

 

どうして僕は小さな手で 傷を背負おうとするのだろう?

カズイは全ての始まりとなったヘリオポリスの時の事を思い返す

 

 

誰かの為だけじゃない 見失わないで

ナタルの脳裏にアークエンジェル格納庫でのカズイとの出会いが浮かんでくる

 

 

どうして僕は迷いながら 逃げ出す事出来ないんだろう

カガリの脳裏にオーブ本土に残る事を選択した者達の姿が浮かび上がる

 

 

望むのは光射す日を 日を…

バイオリンの演奏するロミナの脳裏に愛する夫やその仲間達の姿が浮かんでくる

 

 

FIND THE WAY 輝く宇宙(そら)に手は届かなくても 響く愛だけ頼りに 進んだ道の先 光が見つかるから YOU"LL FIND THE WAY

ニコルの脳裏にラスティやミゲル、オロールやマシューと言ったクルーゼ隊の散っていった仲間達の姿が思い起こされる

 

 

君は言った 永い夢を見た とても哀しい夢だったと

マユの脳裏に血溜まりに倒れたカズイの姿が浮かび上がる

 

 

それでもその姿は 少しも曇らない 僕は言った 泣いていいんだと ずっと傍にいてあげるよ 欲しいのは抱き上げる手を 手を…

フレイはカズイに止められた時の事を

そして、カズイが疲れ果てて眠りについた時の事を思う

 

 

FIND THE WAY 言葉なくても 飛ぶ(はね)はなくても 乱す風に負けぬ様に 誰よりも早く痛みに気付けたなら…

スティング達はロドニアで斃れていった者達の姿を思い起こす

クロト達は自分達の様になりながらも、途中で倒れた者達を想う

 

 

答えを出すこと きっとすべてじゃない 焦らなくていいんだよ あなたも…

今はもう二度と会う事の出来ない父シーゲルや婚約者だったアスラン、そしてその父親であるパトリック達にこの祈りが届く様に

ラクスは祈りを込めて歌う

 

 

FIND THE WAY 輝く宇宙(そら)に手は届かなくても 響く愛だけ頼りに 進んだ道の先 光が見つかるから

シンの脳裏にオーブでカズイを心から心配していた両親やカズイの両親。そして必死になっていたキラやミナの姿が浮かんでくる

 

 

FIND THE WAY 言葉なくても 飛ぶ(はね)はなくても 乱す風に負けぬ様に 進んだ道の先 確かな光を見た YOU"LL FIND THE WAY

カズイはユニウスを止めようと命を散らせたガルシアやクルーゼ

国を方法こそ違えど守ろうとしたウズミやキサカ、アークエンジェルを守る為にその身を盾とした名も知らぬ赤道連合の者達

 

この戦乱で失った様々な命に思いを馳せた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で久し振りの歌詞使用となりました
歌手的にはミスマッチだけど、歌詞の内容と音的には良いかと個人的には思ってます(センス×)

突発アンケート 本作設定の完全なお遊び回いります?

  • いる
  • いらん
  • それより本編でしょう?
  • ifstory補完しろよ
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