夢を見せる魔法 作:二次創作しか知らないフリーレン
妾は百年以上生きた魔族であるが、姿形は五歳の幼女だ。
大勢の村人に囲まれ、刃物を向けられている。
ぶっちゃけ、いつ死んでもおかしくない危機的状況だ。
さっきまで縄で縛られていたが、今は解放されている。
しかし怪しい動きをしたら斬り殺されるため、注意深く周りの様子を伺う。
だが先程の妾の発言に問題があるのか、周囲が静まり返って何とも言えない微妙な空気になっている。
何故こうなっているのは良くわからないし、生殺与奪を握られているので正直に説明していくことにした。
「妾は、夢を見せる魔法が使える。
そして自分で言うのも何じゃが、魔族の中では異端でのう」
具体的には、人肉にはこれっぽっちも興味がない。
必要とあらば殺人も躊躇はしないし普通に食べられるだろうが、全くそんな気が起きないのだ。
しかし人間たちに興味がないわけではなく、彼らが発する精気が吸いたくて堪らない。
「人間の精気を吸わせてくれぬか?
殺しはせぬ! ほんの少しだけで良いのじゃ!」
「「「ええ~っ!?」」」
周囲の人間たちが、ドン引きしているのはわかる。
しかし、妾にとっては生きるために息を吸うのと同じで、極当たり前のことだ。
なので全く恥ずかしがることはなく、堂々とした態度で説明していく。
「人間でも、趣味嗜好に違いがあるであろう!
魔族も長い年月の中で進化や変化し、妾のような異端が現れてもおかしくあるまい!」
妾のことを人間たちが理解しようとしても、時間の無駄だ。
何しろ自分でも、特殊体質の理由がさっぱりわからないのである。
「代わりに良い夢を見せるゆえ! よろしく頼む!」
目の前の冒険者らしき男を見上げると、明らかに困っていた。
きっと妾のような異端には、これまで出会ったことがないのだろう。
自分も我ながら何を言っているのやらだし、生き延びるためとはいえ馬鹿正直に伝えすぎたかと反省する。
だがそれはそれとして、今さら止まれないのでこのまま押し切ることにした。
「もしかして抜いたばかりか? じゃったら他の者でも──」
「いっいや、別にそんなことはないぞ!」
どうやら精力は有り余っているようなので、妾は満足そうにうなずく。
「ならば、夢を見せて良いか?」
「待て待て! どうしてそうなる!」
どうしてそうなると聞かれても、さっき説明した通りだ。
しかし冒険者のお兄さんは頭が痛そうにしていて、周りの村の人たちも困惑している。
やがて小声で相談したあとに、再び妾に意見してきた。
「大体、お前が嘘をついている可能性もある!」
「嘘などついておらぬ」
「魔族は皆、そう言うんだ!」
ぐうの音も出ない正論ではある。
しかし、これでは振り出しに戻っただけだ。
妾は若干呆れつつも、引き下がってたまるかと村人たちに必死に懇願する。
「怪しい動きをしたら、斬り殺して構わぬ!
正直、もう我慢の限界なのじゃ!」
土下座してばかりな気がするが、人間にとっての魔族の信頼などカスみたいなものだ。
そして今回は、妾の見た目が可愛らしい幼女という優位性が勝った。
取りあえず警戒して監視を行い、怪しい動きをしたら即斬首という条件で、何とか許可が出たのだった。
村のあばら家に案内されて、一人の若者に木の床の上にごろんと寝転がってもらう。
相変わらず警戒厳重で、周りの村人たちは全員が武器を携帯している。
それでも抜刀してないため、最初と比べれば少しだけ気が楽になった。
「では始めるが、準備は良いか?」
「ああ、いつでも構わないよ」
今回志願したのは、冒険者のお兄さんではない。
好奇心旺盛な村の若い男性だ。
(できれば、精力が有り余っている者が良かったのう。
しかし、贅沢は言えぬか)
精気の質は心身の強さに左右されるので、冒険者をやるぐらい元気が有り余ってればかなり美味しい味がするだろう。
しかし村の若者が、魔族が相手でも精を提供してくれる貴重な人材なのも、また事実である。
なので意見が通らずに斬首になるよりマシかと割り切り、意識を集中し声を出して固有魔法を発動させた。
「《夢を見せる魔法》」
すぐに目の前の青年の目が閉じて、安らかな寝息を立てはじめる。
だが間もなく頬が緩んで朱に染まり、口が半開きになってヨダレが垂れ、呼吸が明らかに荒くなった。
普通の睡眠とは異なる光景に不安になったのか、冒険者のお兄さんが妾に厳しい視線を向ける。
「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」
「問題ない。ただ、淫らな夢を見ておるだけじゃ」
彼が今どんな夢を見ているかは、妾が干渉しているので手に取るようにわかる。
「それに強制はしておらぬゆえ、本人が現実に戻りたいと望めば、すぐに目が覚める」
夢の世界を永遠に彷徨わせることも可能ではあるが、怪しい動きをすれば斬り殺されるのだ。
彼の希望を優先して、すぐに現実に戻るように配慮するのは当然と言えた。
「しかし、一体どんな夢を見ているんだ?」
「口止めされておるゆえ、目が覚めたら直接聞くと良い」
彼が何をそんなに恥ずかしがっているのかは、理解はできても納得はしていない。
だが機嫌を損ねても良いことはないため、今のところは大人しく従っておく。
そんなやり取りをしていると、あっちはそろそろ終わりそうになる。
「……そろそろ出そうじゃな」
「いいか? くれぐれも、怪しい動きはするなよ」
「漏れ出た精気を吸うだけじゃ。
何の問題もなかろうよ」
そして現実では殆ど時間が経過していないが、夢の世界ではかなり経っていた。
一回出したら即終了という条件でも、村の青年は目覚めたくないと思ったのか相当頑張ったようだ。
おかげで妾にとっては嬉しいことだが、一発だけでも凄く濃いのが出たのだった。