夢を見せる魔法   作:二次創作しか知らないフリーレン

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のじゃロリ女王

 ゼーリエが妾の街で暮らし始めてから、さらに五百年が経過した。

 彼女はクヴァールとの模擬戦が楽しいようで、余程好戦的な性格なのだろう。

 彼も最初は乗り気だったが終いには面倒になったのか、何とかしてくれと泣きつかれる。

 

 なので夢の中でイメージトレーニングしたらどうかと、妥協案を提示した。

 彼女は魔族以上にふてぶてしいと言うか、我が道を行くエルフのようだ。

 

 現実と殆ど同じ仕様にもできるため、被害や時間を気にせずに実験をするにはもってこいと言える。

 

 それはそれとして自室に私物を持ち込み、いつの間にか人間で言う母と子のような関係になっていた。

 妾は友人つもりなのだが、彼女の感情表現や行動から、自分のことを失った母親として認識している可能性が高い。

 

 理想の女王を崩さないために、基本的に頼られると断れない性格を模しているのが、ゼーリエにとっての母と誤認する原因になったのだろう。

 生活の面倒は殆ど妾が見ているし、自室で見ていると一人暮らしができるのが不安になる。

 

 

 

 それはそれとして、妾も彼女と同じで魔法への探究心は強い。これは魔族の本能でもあるらしい。

 昔から気になることは夢の中であれこれ試していて、膨大な時間をあっちで過ごしたからか、見た目の割に感情表現が豊かだったり人間を理解していたりする。

 

 今もっとも興味があるのは、いかに効率良く精気を吸い取り、効果範囲を広げ、魔力をもっと増やせるかだ。

 

 それと魔族に強姦され、死ぬ寸前まで搾り取られる事件が増えてきた。

 一応は妾が気づいたら止めているが、余計な労力を割きたくはない。

 

 なのでか弱い人間たちが自衛できる仕組みを整えるのが、もっとも確実だろう。

 例えば無駄に有り余っている自分の魔力の一部を、夢の世界に保存しておき特定のキーワードや認証コードで自由に引き出し、プログラム化した魔法効果を得るなどだ。

 

 まあこれらはそう簡単にできるものではないため、長期計画で進めていくしかない。

 

 

 

 そんなことを考えながら、八歳から全く成長しない妾は立派な椅子に座り、机の上に山積みになっている書類を引き出して、書かれている内容を確認する。

 

 もし失敗したら信頼が揺らぐため、夢の世界で長期に渡ってシミュレーションをしてから、許可と不許可のハンコをペッタンペッタンと押していく。

 効果を確認するのは現実では瞬きするほどの時間しか必要なく、外から見る限りはほぼ流れ作業である。

 

「しかし、政務が終わらぬのう」

 

 窓の外に広がる晴れ渡った空を眺めながらも、手は止めずに何の気なしに呟きを漏らす。

 

 五百年の間に街はさらにランクアップして都となり、大勢の人間たちから信頼を得た妾は、とうとう魔族でありながら史上初の女王になった。

 

 馬子にも衣装と言うらしいが着慣れていないため式典でズッコケてしまい、ゼーリエは大笑いして普段冷静なクヴァールも表情筋が緩んでいた。

 

 それでも二人共友人であり、おめでとうと祝福してくれる。

 しかし見た目は人間年齢の八歳から変わっておらず、どう考えても王族の衣装が似合っていないので、人間基準で言えばただ可愛いだけだった。

 

 

 

 とにかく長年の目標を達成できたので、法律を改正して精気を吸いやすい国造りを心がける。

 ようやく牧場経営が軌道に乗り始めたのだが、何というか思っていたのと違う。

 

「どうも、しっくり来ぬのう」

 

 現状、あまり精気を吸うと人間たちの反感を買うため、希望する国民だけ夢を見せる魔法で眠らせている。

 それでも何千、何万という人々を食べられているし、望みが叶ったことには違いない。

 

「しかし今は、護衛をつけねば出歩けぬ立場になってしもうた」

 

 女王は思った以上に窮屈で、自由気ままに出歩いて精気を吸い取っていた頃が懐かしい。

 今は牧場の規模が桁違いに大きくなり、経営に関しては妾以外に務まる者はいない。

 

 なので後任が居ないので、さっさと辞めて身軽になるわけにもいかず、つい頬杖をついて大きな溜息を吐いてしまう。

 

「ゼーリエは魔法の研究に忙しそうにしておるし。

 クヴァールも面白い本を見つけたと話しておった。楽しそうで良いのう」

 

 最初の出会いは色々あったが、今ではゼーリエとは仲の良い友人だ。

 人間と同じかはわからないが、少なくとも定期的に顔を合わせたり手紙のやり取りをしている。

 

 だからこそ余計に羨ましいし、クヴァールには宰相の地位を与えて政務を手伝わせていた。

 何なら国王にならないかと強く勧めたが、当人にその気はないようだ。

 

 やる気や能力がない者に王位を継がせ、牧場経営に失敗するわけにはいかない。

 

 ゆえに結局、妾が女王を続けるしかないのが現状である。

 

「リリー女王国の領土が、また増えるのう」

 

 ある書類に目を通し、承認の判子を押して大きく溜息を吐く。

 

 中央諸国に位置するリリー女王国は、人間と魔族が仲良く暮らす大国である。

 世間一般にはそう伝わっているし、ある意味では正しい。

 

「新たな問題も出てきて頭が痛いのう」

 

 だが実体は女王である妾のワンマン経営にほかならない。

 さらに夢を見せる魔法で魔族を改心させることで、人間に近い精神構造に作り変えているのだ。

 

 これが人道的かと言えば首を傾げるが、殺すよりは生かすほうが良いと考えるのが人間心理である。

 

 なので魔族が女王を務めるのも、同族を洗脳することも黙認されていた。

 全ては妾が行っていることで、もし自分がいなくなった瞬間に国が滅亡するのは避けられない。

 

 

 

 そして今起きている新たな問題とは、うちの領土が勝手に増えていくことだ。

 このところ魔族が活性化し、周辺諸国やそれらに入っていない町や村にも大きな被害が出ている。

 

 しかしリリー女王国は違い、人間以上の能力を持つ魔族と仲良く暮らしていて、さらに敵対行動を取る輩を力で黙らせることができるのだ。

 

 さらに政務に関しても長期的なシミュレーションが可能なので、目に見えるような失敗は一度もなく、悪くて成功で良くて大成功ばかりである。

 

 まさに順風満帆な国家運営と、敵を改心させて手駒を増やしていく。

 そんな中央諸国随一のリリー女王国の傘下に入りたいと、申し出てくる国々や町村が増え続けるのも無理はなかった。

 

 

 

 正直なところ、牧場はこれ以上の規模拡大は必要ないので断りたいところだが、理想の女王を演じるためには、困っている人の頼みは断れない。

 ゆえに表向きはにこやかでも、内心では嫌々引き受けるのだった。

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