暗澹たる戦場に旭光を 作:Zanna di Liquirizia
そんなときのWarframeWIKIか。
「……うぅ、眩し……ぅ、あ、時雨?――じゃない。……だれ、っぽい……?」
――!……夕立の声……良かった、目を覚ましたんだね……もう大丈夫、周りに深海棲艦も、追いかけてくる憲兵も、居ないはずだから、心配は要らないはず……そうだ、探照灯を切っておかないと、僕たちが幾ら丈夫であろうと、長時間、強い光を見続けたら、流石に失明してしまうかも知れないからね……。
「ん?……あァ、目を覚ましたか。……して、夕立と言ったか、調子はどうだ?……頭痛や、目眩はしているか?」
「…………ないっぽい」
『……白朱鷺、そろそろ変わって欲しい。僕も、夕立と話がしたいから……』
夕立が怪訝な目で僕を見てきて……心が痛くなってくる。……違うんだ……それは僕だけど僕じゃないんだよ、夕立。
「ちょっと待ってろ、何か、忘れているような……あぁ、そうだ」
そう言って、白朱鷺が、僕の体で、夕立に近寄り、夕立の額に手を当てた。……まあ、熱がないかを確認しているのだろうけど、ちょっとビックリした。夕立も、ビクリと、肩が跳ねていたけど、あれはどちらかと言うと、恐怖とか、そういうのじゃなくて、僕の姿をしているのに、どうにも
「Okey, no problemだ。Changeするぞ」
『ようやくだね。熱があるかなんて、僕もうっかりだったけど、忘れないでほしかったかな……』
「――ふう……夕立、大丈夫かい?……怪我はまだ痛むなら、早めに行ってほしい。そうしたら、多分、治してくれると思うから……」
「えーっと、時雨……?さっきは一体、だれだったっぽい?……それと、夕立に、何があったっぽい?……時雨たちとはぐれちゃった後のことが、あんまり良く覚えてないっぽい……」
これは説明しても問題ないんだろうか。……別にトラウマになるようなことは起きていないはずだし、たぶん大丈夫だろう。
「……夕立は、海上で、深海棲艦に囲まれていて……沈みかけていたんだ。……ごめん、夕立……僕がはぐれちゃったばっかりに……」
「ううん、時雨……夕立の方こそ、はぐれたときに、安易に海に行っちゃって……海に行ったら、開けてるし、時雨たちがいたら、良く見えると思って、勝手に動いちゃって……」
そんなことを行ったら、僕の方こそ、憲兵に勘付かれるような、迂闊なやり方で、鎮守府を脱出したり、憲兵に見つかってしまうような道を選んでしまったこともある、夕立が自分を悪く言う必要は無いのに、元はと言えばあの
今の日本軍が慢性的な人手不足だとはいえ、自衛隊があった頃の人間だって残っているはずのなに……提督になるためには、色々な試験をくぐり抜けた者だけが、提督になれると
『……二人して、感傷に浸っているところ申し訳ないが、そろそろ濡れた服を絞って、着せてやれ』
夕立と出会えたことが嬉しくて、すっかり忘れていた……そうだった、今夕立は、びしょ濡れの服を脱いで、少し、寒そうにしてる。……僕としたことが、こんなことを見逃すなんて。
「……それもそうだね、白朱鷺。周囲に深海棲艦はいる?」
『いぃや、周囲に敵影は無し……我々が悠長にしていようが、構うものは、誰一人として、存在しない』
そう、それはちょうど良い。……さっさと済ませて、どこか、身を隠せるところを見つけないと。……夕立が見つかったからと言って、話が終わるわけじゃないんだから……白朱鷺、僕の艤装が使えないように見えたけど、気のせいだったのかな――っと、足音か、深海棲艦は……まずありえない……なら、白露達か、それとも憲兵か……白朱鷺も気づいたみたいだ。
『……時雨、お前と同じ装いの奴が2人、追手は無しだ。お仲間か?』
「多分……夕立はどうすれば良い?」
『そうだな……この辺りは、一旦は安全だ。寝かせておいて、後で戻ってくれば良い』
一旦は安全、ならば心置きなく暫定白露達に意識を向けられる。ひとまず夕立に絞っただけなのに何故か暖かい服を着せて、足音のする方へと向かうとしよう。……でも、ちょっと心配だから白朱鷺に夕立を見ていてもらうことにしよう。
「白朱鷺、夕立を見ててもらえる?」
『分かった。足音の主が敵であれば、証拠隠滅をする準備をしておこう』
「……そこまでする必要はないよ。……でも、逃げる用意はしておくよ」
「あぁ、そうしておけ」
「どこに行くっぽい?」
「ああ、ちょっとあっちの様子を見てくるから、ここで待っててね」
「分かったっぽい」
証拠隠滅をするってことは、要するに僕を追ってきている憲兵や、居るかは知らないけど陸上で活動できる深海棲艦だったら、いつでも殺せるようにするってことなんだろう。深海棲艦によっては、弾け飛ぶ事もあるから、スプラッタな光景には慣れているけど、それでも、人の死ぬ姿はあまり見たくない。
『さて……時雨、左手の親指、人差し指、中指を合わせろ』
「これが何になるの?」
『自衛の手段だ。煙幕だと思え』
「分かったよ。……あんまり、殺生はしないでほしいんだけど……」
『殺生とねェ……相手の出方によってはそうしてやらんこともない……まァ良い。そろそろ足音の主が見えてくるぞ、警戒しろ』
声は聞こえない。いや、荒い息遣いはかすかに聞こえてくるけど、それじゃ誰だかは判断できない。足音からして人数は二人、こちらに走ってくるのがわかるけど、たぶん僕たちを認識していないはずだから、白露たちなのか、それとも追手か……もし追手だったんら、場合によっては白朱鷺に
でも、それでも少し怖いから、適当にあった草むらに入って隠れておこう。
『女だな。それもお前と同じ服装、その後ろに追手も監視もなし、夕立の側に危険はない。警戒も解いていいぞ』
「大丈夫なんだね?」
『あぁ……向こうも、我々に感づいたようだ。姿を見せたらどうだ?』
『うん、そうするよ」
「そろそろ巻けたかな……」
「ほんっとうにしつこいんだから……でも、ここまで来れば、もう安心でしょ」
「だね……はぁ、春雨、無事だといいけど」
時雨と夕立と逸れたあと、ちょっと経ってから、春雨の姿が見えないことに気づいた。あたしたち、みんな逃げることに精一杯で、春雨と逸れたことに気づかなくて、そのまま、隠れそうなところを探していたら、海が見えるところにまで来ていた。正直、薄情なことだとは思うけど、時雨たちと逸れた場所も、春雨と逸れたところも、もうわかんなくなっちゃった。
それに、もし戻ったところで、精々憲兵に見つかるのがオチだ。それなら、あたしたちだけでも逃げ切って、誰かに助けを求めたほうが良い。というのが、あたしと村雨が考えて出た結論だ。
「時雨姉と夕立も、何事も無いと……いや、憲兵に捕まってないと良いんだけど」
追手の数は覚えていないけど、少なくとも15人は居た。あの提督は、あたしたちを逃がすまいと必死らしい。あの憲兵達が事情を知っているのかわからないけど、何人かは、見覚えのある顔だった。
あの提督と同じように、俗に言う艦娘軽視派というやつであろう憲兵が。知らない顔もチラホラいたから、多分、何も知らないまま、命令されたからあたしたちを追いかけてるんだろう。
海に出たところで、まともに航行出来る燃料も、深海棲艦と戦うための弾薬もない。ってことは、海岸に来たのは失敗だったか。森に隠れたほうが……いや、どっちにせよ、見つかってしまうだろう。それなら遠くに逃げたほうが得策かもしれない。
「ねえ、白露姉さん、なんかいま、物音が聞こえなかった?」
「えっ、物音?……そんなの聞こえてなかったけど。もしやもう憲兵が……?」
「だったら『ここに居たぞ!』とか言うんじゃない?」
いや、さすがにそんなあからさまに言わないんじゃ……動物が茂みで動いたとかもあるかもだし……、まあでも、警戒するに越したことはないし、一応草むらを探ってみるかな。
「村雨、物音がしたのって、どの方向?」
「まさか、白露姉さん……そっちを見てくるとか言わないよね……?」
「そのとおり。大丈夫だって、多分動物だから」
「……そうするよ」
「白露姉さん、今、何か言った?」
「いや、何も。村雨こそ何か言わなかった?」
あれ、気のせいだったのかな。何か声が聞こえた気がしたけど、村雨は何も言ってないって言うし……まあ、憲兵では無いだろうけどさ。
「ってあれ?……この三つ編みって……」
「……?どうしたの、白露姉さん?……って」
「あ、あはは……や、やあ、白露、村雨。こんなところで会うなんて奇遇だね……」
「時雨!……無事だったんだ。……夕立はどうしたの?」
時雨がいた。
いや、そんな簡潔に言うことじゃないけど、今はこの言葉しか出てこない。夕立がいないけど……まさか逸れた?……いや、それにしては時雨がそこまで焦ってないからそうじゃなさそう。
というか、時雨、なんか雰囲気が変わった?……前までの切羽詰まった感じじゃなくて、落ち着き払った感じ……あたしたちと再会できたんだから、もっと喜んでもいいと思うんだけど……。
「夕立はびしょ濡れになっちゃったから、今は暖かい格好をさせて休んでるよ。……うん、そうだよ。あとも1人居るんだけど、……居ないっぽいね」
夕立も居るんだ。…じゃあ、一安心、かな。……いや、春雨が居ないからここでゆっくりして居られ無いんだけど……まずは二人が無事で安心した。……いやなんで夕立がびしょ濡れに……ああ、そうか。夕立には出撃の命令が下っていたから、その時に補給した
それはそうと、時雨は誰と会話してるんだろう?……まさか、時雨があの憲兵たちと……?いや、時雨に限ってそれはないか。あれだけ脱柵に必死になっていたんだから。
……というか
「時雨!その血は何!?まさかケガしたんじゃ……」
「ええと、この血は……その、あれだよ、返り血だから、僕の血じゃないから安心して……」
「返り血って……!何があったらそうなるのよ……深海棲艦じゃ、無いものね。……あれは、もっと紫色だったから」
村雨があたしの気持ちを代弁してくれた。……そもそも、返り血って、あんな鮮血を、バケツをひっくり返したりでもしないと、あんなびしょ濡れにはならないでしょ……。
「何があってそうなったのかとか……色々聞きたいことはあるけど、……それ、寒くないの?」
「ううん、生暖かくて変な感じだけど、そのおかげで温かいから、平気だよ」
な、生暖かいって、なんか、生々しい表現だね……、まあ、返り血だってことだから、そりゃちょっとは温かいか。
「……え?追手と同じ服装の?……憲兵かな、……まずいかもしれない。……白露、村雨、夕立を連れてここを離れよう、憲兵が来てる」
「憲兵が!?……時雨、夕立は起きてる?寝てたら抱えていくよ!」
「夕立は起きてる!けど怪我してるから支えて行くよ!……大声でここにいるのがバレた?僕にやったようにアレは出来ないの?……無理?そう、なら逃げるしか……チェンジ?分かった、頼んだよ」
大声を出したせいでバレた……あたしのせいか、……というか、時雨は誰と話してるんだ?……それにチェンジって……確か交代となって意味だったはずだけど、どういうことなんだろう。
……?時雨の毛先が白くなった……?それに雰囲気が違うような……一体何が起きて……そもそも時雨はどうやって憲兵に気がついたんだ……?
「きゃあ!?」
「村雨っ!?……ん!!?」
何が起きて――村雨が悲鳴を上げて、そしたら急にちょっとした衝撃が来て、気がついたら夕立が目の前にいた。……いや、言葉にしても訳が分からないけど、とにかくそんな事が起きた。
「あれ?白露と村雨っぽい?いつの間に……」
「それよりも、だ。ちょいと失礼」
「……?うわあ!?」
今度は時雨がらしくない口調で夕立に話しかけたと思ったら、海すら見えないどこかに移動していた。……いったいわけが分からないよ、まったく。
それにしてもここはいったいどこなんだろう。……さっきまで居た海辺でさえ、死に物狂いで逃げていたから、そこすらどこかもわからないのに、今はどんなルートを通ったのかもわからないから、ここを特定することなんてできないんじゃないのか?
……いや、そもそもさっきの時雨は一体……?まるで別人の様な、見た目も多少違う――よく見たら目の色も少しだけ違っていて、時雨のときの表情よりもずっと細められたままの目がこちらを見続けている。見た目が少し違うことを除けば、見た目はほとんど時雨なのに、どうにも別人にしか見えない。
「……それで?このまま逃げ続けるのも手だが、我々が鎮守府から逃げ出したなんて情報、いずれは上層部に伝わるだろう。……あぁ、そうだな、お前も少しは考えろ、……ん?……あぁ、そうか、それなら良いんだが……」
通信機を持っている様子もないからただの独り言……な訳無いよね、ならアイツは時雨と会話をしている……?
「……さて、諸君らに質問だ。……これから、どうする?」
さっきはまだしも、今の時雨は間違いなく別人だ。……というか、これからどうするかなんて、あたしが聞きたいよ。……まぁ、この際だから、今目の前にいるコイツが誰か、誰と話しているかなんて聞かないでおく。
「どうするか、それも考えたいけど……それよりまず、……あなたは誰?」
「良いよ、村雨。……そんな事は後で聞こう。少なくとも、さっきまでは時雨だったから。……それで、そうだね、どうする、か。……向こうの弱みを握るってのはどう?……というか、現にあたしたち自体が弱みみたいなもんだし。……それと未だはぐれたままの春雨も救い出したい。けど、多分まだ、鎮守府にまでは連れて行かれていないと思う。まだそこまで時間は経っていないはずだし」
「OK, Good idea. それならば猶予があるか。……だが急いだほうがよさそうだ。……それと、、手元にあるweekpointがコレだけでは少し事足りない。もう少し、向こうさんにとって明確なweekpoint――まァ、知られちゃ不味いものか、それともお前たちについて、もう少し深掘りするか」
「白露姉さん……?そんなことって言ったって、村雨、誰だか分からない奴と行動を共にしたくないんだけど……」
「さぁ?もしかしたら、口調が変わっただけで時雨のままかもしれないよ。それに、今はそんな事を考えてる暇はない。……じゃあ、話を戻して……深掘りと言っても、どうするのさ?……出撃記録とか、補給の記録とか、そんなのしかないけど……」
そんなのを手に入れてもどうしようもないと思うけど……あ、そうか、大本営に提出された書類に不備、つまり何らかの隠蔽されたものが一つでもあった場合、中堅鎮守府の提督であるアイツは失墜とまではいかずとも、まず間違いなく内部調査が入るはずだ。
「Exactly. だがそれには問題がある。分かるか?」
「そもそもどうやってその書類を手に入れるのか、そしてどうやって大本営にそれを見せるのか、だね。……というか、ちゃっかり心読んだ?」
「Yes. 良く分かったな。それと、どちらであってもやり方は決まっている。……出自不明の、詳細に記された書類。出どころを探るか、それともその書類と
「だったら、後者かな?……あれ、でも、どっちも行き着く先は同じだ」
「我々が上手くやればの話だがな。要は書類を丸ごと掻っ攫って、それをこっそりお偉いさんの目のつくところに置いておけばいい」
なるほど、なら妹たちを安全な場所に預けて、あたしとコイツの二人――まあ時雨を含めたら三人だけど――であの鎮守府に行こう。
「この2人を安全な場所に預けたいんだけど、どうすればいいかな?」
「いや、良い。すぐに終わらせる。奴らもまさか、逃げ出した奴がノコノコと帰ってくるとは思うまい」
「ちょっと待って、白露姉さん、それ本気?」
「もちろん、本気だよ」
もし見つかったとしても、あたしが囮になれば良い。……まあ、何とかなりそうだけど。
「もし見つかったら、どうする?」
「そうだな……若い芽が摘まれる。ああ、とても悲しい事だ」
「仕方ないね。これも自業自得だ。……奴らには、それ相応の報いを受けてもらわなくちゃね」
「……えーと、いったい何の話っぽい?」
……夕立、世の中にはね、知らなくてもいいことだってあるんだよ。
「なァ、時雨。お前の姉は随分と察しが良いようだな……ん?普段はそうじゃない?……ふぅん……人ってもんは良く分からんものだな?」
時雨のときも、誰かと話しているようだったけど、アイツと話してるようだね。……なら、乗っ取られたわけでもない、か。……まあそもそも、あたしたちをここまで避難させたのはアイツだし、そもそも、そこまで深く考えなくてもいいのかも……。
まあ、いったいどんな原理で人格?中身を入れ替えてるのかは分からないけど……そんなことよりも。
「さぁ、行こうか。ここからは決して誰にも見つかってはいけない。それを頭に入れておくといい。……まぁ、その様子だと心配は要らんようだが」
それは元より心得ているつもり、だけどもし、誰かに見つかったなら、その時はその時……マグロが食べたくなくなるかもね。
「さぁて、誰よりもいっちばん先に、手に入れてやるっ!」
うおぉぉ……Lv.83の時雨改二が沈んだ……育成面倒クセェ……
え?こんな作品を作ってるくせに……?いえ、逆にこんな作品を作ってるからというか、何というか……
まぁ、私の好きな時雨ちゃんと、沈んだ時雨は全くの別人ですので……