暗澹たる戦場に旭光を   作:Zanna di Liquirizia

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キャラ達が勝手に動いてしまう


呆気ない結末

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、白朱鷺が居るからってそんな軽率に鎮守府に近付いて、何かあったらどうするつもりだったの?」

 

「えっと、その、何かあったらとあたしが囮になるつもりでした……」

 

「あのね、白露。せっかく全員助けられるチャンスだってのに、君が居ないんじゃ、話にならないよ。無謀だし、そもそも白朱鷺が居るんだから――」

 

 

 あたしは今、村雨達を連れて呉第二鎮守府の屋上にいる。春雨の手当てをして、見つからないように下の様子を眺めている。

 

……そして時雨に説教されている。

 

 

「――白露、聞いてる?」

 

「聞いてるって、分かってるよ、無謀だってことは。でもさ、それを言ったらそもそも鎮守府から逃げ出すこと自体がさ」

 

「白露、口答えしないで。黙って説教を受けてて」

 

 

  時雨から話を振っておいてそれは酷いじゃんか。……というか、今ここでしなくても、全てが終わってからでもいいと思うんだけどな……。

 

 

「――これからは、もうそんな事はしないでね。心配したんだから」

 

「ふぅん、心配、してくれてたんだ」

 

「当たり前だよ。白露、君は僕の姉なんだから、全く。白露が憲兵に掴みかかったときは本当に驚いたんだからね?」

 

「分かったって、悪かったよ」

 

「ふん……分かれば良いんだよ分かれば」

 

 

 時雨の説教が終わって、夕立が近付いてきた。どうにも聞きたいことがあるようで、あたしの手をとって、時雨から少し離れたところまで引っ張られた。

 そして小声で「白露、あの人(白朱鷺)は信用できるっぽい?」と聞いてきた。

 

 

「うーん、そうだね。今のところは、ある程度信用できるかな。でも、まだ白朱鷺の人なりを知らないから、信頼するとまでは行かないけどね」

 

「じゃあ、夕立も信用することにするっぽい。でも、もしあの提督の二の舞になるようなら、夕立はそれ相応の対応をしようかしら」

 

「あの様子だと、そうはならなそうだけどね」

 

「それならそれで良いっぽい」

 

 

 夕立は、あたしのその返答に満足したのか、離れて行って、時雨(白朱鷺)に飛びついた。……たぶん、ああすることで、白朱鷺の反応を確かめたんだろうけど、夕立に飛び掛かられた白朱鷺は少したじろいだあと、夕立を引き寄せて頭を撫でていた。

 その間にも、白朱鷺は気絶したままの春雨を横目に、村雨と話をしていた。全く、とんだマルチタスクだ。……たぶん、夕立を撫でているのは何となくというか、天然なんだろうな。夕立って、犬っぽいから。

 

 まあ、あたし達が白朱鷺を見限ることは、そうそうないだろう。何せ気絶して春雨を見て、随分と苛立っている様子だったし、白朱鷺を見ていて、どうにも自分より他人を優先するような、そんな感じがする。

 あってるかどうかは別として、あたしは洞察力にはある程度の自信がある。白朱鷺があたし達の提督になってくれれば、色々と丸く収まりそうだけど……そうだね、ちょっと、白朱鷺に提案してみようかな。

 

 

 それにしても、『あの提督の二の舞に――』って言っている時の夕立は少し怖かったな。夕立はああいう時に、圧を込めるきらいがある。

 他の夕立がどうかは知らないけど、うちの夕立は少し過激なところがある。深海棲艦やあの提督に対しては特にその気があるのだけど……幾多もの出撃による疲労のせいで憔悴して、その気概もなくなっていた。

 

 

 あたしも鎮守府の様子を眺めていようと思い、屋上のパラペット――屋上にある、転落防止用の塀のようなもの――に腰掛けた。

 

 少し眺めていると、憲兵達が慌ただしくあっちこっちに駆け回っている姿が見えた。恐らくは、春雨の居た懲罰房の扉が開かないだとか、憲兵が1人倒れていたとか、そんなことで侵入者を探しているか、それともあたし達が侵入したことに感づかれたか……だけどどういうわけか、憲兵達は一切屋上を探そうとしなかったから、都合が良かった。

 

 

 そうだ、時間があるし、白朱鷺に提督になって欲しい、という旨だけでも言っておこうか。

 

 

「白朱鷺、ちょっとこっちに来て。話したいことがある」

 

「良いだろう。2人きりか?」

 

「そうだね」

 

 

 あたしが頷きながらそう言うと、白朱鷺は目を強く閉じ、脱力したように立っていると、時雨の髪色や目の色がもとに戻り、白朱鷺――時雨が、少しよろめいて困惑したような表情を浮かべていた。

 

 

「時雨、どうしたのさ」

 

 

「――白朱鷺が、居なくなった?」

 

「……?それってどういう――」

 

 

『白露、話とは何だ』

 

 

 ああ、そういうことか。時雨からあたしに、入っている身体を乗り換えたから時雨があんな表情になっているってわけだね。……それにしても、随分と喪失感のようなものを感じてそうだ。少し見ない間に随分と絆されちゃってまあ……。

 

 

「白朱鷺、早く戻ってあげたほうがよさそうだから簡潔に伝えるよ。提督になって欲しい」

 

『……そういうこと。I see. of course』

 

「えぇと、もとよりそのつもりだったってことで良いんだね?」

 

『yeah, 良いとも、なってやるさ。お前達の提督に』

 

「……そ。なら良かった。白朱鷺が提督になると、色々と丸く収まりそうだったから、快諾してくれて良かった、けど良かったの?色々やることがあるんでしょ、そっちはどうするのさ」

 

「……相変わらず勘が良い。時雨が、普段はそうじゃないと言っていたが、あれは見当違いだったのか?」

 

「時雨、そんなこと言ってたんだ。酷いじゃんか、……まあ、時雨がそう言っていたのなら、そうも見えてたんじゃない?」

 

 

 あの提督に知られたら、色々と面倒だから、普段はおくびにも出さずにしていたから、それが災いしたのか。……ま、まあ、敵を騙すにはまず味方からって言うし、良いことなんじゃないかな?

 

 

『そちらのほうが都合が良いこともあるが、確実に裏切らないと分かっている者が相手であれば、自身の得意とすることを明かしておいても良いとは思うが……まぁ、時雨もあの様子だと、そもそも気づいていないのだから、時雨の人を見る目が無かったということだろう』

 

「……そうなるね。時雨って勘は良いほうだと思っていたけど、そうじゃないんだったら、言いたいことは懇切丁寧に説明したほうが良いよ。白朱鷺ってほら、本題に入るのが遅いくせに、わざわざ回りくどくて分かりづらい話し方をするじゃん。そのうえ主語が抜けていて、何を言いたいのか分からないときがあるからさ、あたしには良いとして、時雨に対しては言いたいことをハッキリと言いなよ?」

 

『……umm, 善処しよう』

 

 

 あっ、戻ってった。ちょっとデリカシーが無かったかな。……まあでも、白朱鷺相手だったらこのくらいでも良いんじゃないかな?

……時雨があからさまに安堵したような表情になってる。そこまでほだされちゃってるんだ。いつかこれをネタにいじってやろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白露姉さん、大本営の憲兵はいつ来るの?」

 

「うーん、どうだろ、結構距離あるからね。あと2時間後くらいじゃない?」

 

 

 東京から呉――広島までは新幹線に乗っても5時間ほどかかる。大本営の元帥の執務室まで行くのに20分、大本営で元帥の執務室を探すのに10分、元帥の執務室に書類を届けるのに、色々あって40分は掛かって、帰りは50分ほど掛かった。

 

 壁を抜けられるのなら、元帥の執務室が分かればすぐにたどり着けるだろうと思ったけど、案の定、大本営には呉第二鎮守府比じゃないくらいの憲兵が居た。それに監視カメラも。

それらを潜り抜けるのはなかなか難航した。

 

 道中、『白朱鷺が殲滅さえ出来れば、手間も時間も掛からずに済むんだがな』と、物騒なことを口走っていた。実行はしなかっただけに良かったけど、白朱鷺なら出来てもおかしくはない。

 

 

 話を戻して、誰が見ても分かるように、行きと帰りでは、掛かった時間が全然違う。一体何があったのかと白朱鷺に聞いてみれば、ちょうど時雨もその質問をしていたようで、教えてくれた。

 

 長ったらしく説明していたから掻い摘んで言うと、一時的に身体能力やアビリティの効果が上昇していたらしい、それで今は、その上昇していた能力が段々もとに戻っていって、今は上昇した分の能力は完全にもとに戻ったらしい。

 説明の途中で血がどうとかストックがどうとか言っていたけど、よく分からなかったからそれは割愛する。

 

 どうにも、その説明をする前提としては色々と知っておかなければ理解できないそうで、それはまたどこか機会があったら、ということになった。

 

 

 壁を通り抜けられるのならば、透明化出来ないのかと聞いてみたら、今は出来ないとの返答が返ってきた。どうにも、壁を抜けるのと透明化では随分と勝手が違うそうだ。『今は出来ない』ってことは後々出来るようになるってことだよね、やっぱりとんでもない。

 

 まあそれでも、上昇した分の身体能力とかが時雨の身体にも影響して、あの嘘みたいな速度が出ているのかと思ったらそんなことはなく、身体能力がもとに戻ったと白朱鷺が言ったあとでも、とんでもない速度で走っていた――あれは走っていたと言って良いのか?ほぼずっと飛んでたし、スライディングとかもしてたけど……。

 

 時雨に、白朱鷺が表に出てる――この言い方で良いのかな?……まあ、白朱鷺が身体を動かしているときと同じような動きができるのかと聞いてみれば、『出来ないよ。よく分からないけど、白朱鷺が身体の主導権を握っている時だけ、あんな動きが出来るみたい』って言っていた。

 

 よく分からないけど、便利だってことは分かった。だってそうだろう、あんな馬鹿げた身体能力なんて、それに慣れていない人間が急にそれほどの身体能力を得たところで、まともに扱えるはずがない。危うく腕がもげてしまいそうだ。

 

 

「それまで村雨は何して暇を潰す?あたしは下の様子を眺めておくよ。ついさっきも慌ただしく動いていたし、何かあったらと知らせれるようにね」

 

「良いけど……気を張り詰めすぎて倒れないでよね。村雨は、夕立と話して暇を潰すわね」

 

「分かった。じゃあ、そういうことで」

 

 

 考えているようで考えてない会話を終えて、あたしは再び鎮守府の様子を眺め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さてさて、あたしはあの提督の無様な姿を、しっかりと目に焼き付けるとしようかな」

 

「ここに居て見えるのか?」

 

「まあ、ちょっとだけ」

 

 

 今は時雨(白朱鷺)と一緒に、鎮守府の様子を見ている。

 

 ついさっき、おそらくは大本営直属であろう憲兵達が、呉第二鎮守府(ここ)に押し入ってきた。その時の提督()の慌て様ときたら、実に滑稽で、あたしはその様子を見ても、微塵も哀れには思わなかった。だってそうだろう、こうなったのは全て自分の責任なのだから、それに同情するなんて馬鹿のすることだ。

 

 

「白露が物騒な話をしてるっぽい……」

 

「そうね……村雨は、あそこまで嬉しそうな白露姉さんは初めて見たもの」

 

「そりゃあ嬉しくもなるでしょ、あたし達は遂に、あの提督から解放されるんだから。……というか、夕立も人のこといえないからね?」

 

 

 当然、二度とアイツの面を拝まずに済む、こんなに喜ばしいことはないだろう。……それにしても、当たり前だけど、大本営直属の憲兵は手際がいいね。ここの憲兵とは大違いだ、あんなのに追われてしまえば、一瞬で捕まってしまうんだろう、これから、そんなのに囲まれて元帥と対話をする、少し、恐ろしくなった。

 

 

「春雨、まだ起きないっぽい?」

 

「まだ眠っている。鳩尾に一撃食らったんだ、まだまだ起きんだろうさ」

 

 

 春雨はまだ目を覚まさない。時折苦しそうな声や、嗚咽を発していて、懲罰房でどんな目に遭ったのか、想像に難くない。

 

白朱鷺も、メンタルケアが必要だろうと言っていた。確かに春雨は強い子だけど、それでも酷い傷跡だ。深海棲艦による損傷(・・)じゃないから、入渠しても治るかは分からない。それに、白朱鷺は鳩尾に一撃と言っているが、実際はもっとひどいもので――今どきこういったことには厳しいらしいけど、女としては終わってしまったのかもしれない

 

 そもそも春雨も子供なんだ。それなのに、憲兵の奴ら、自分らは摘発する立場だからって、起訴されないとでも思っているのだろうか。……セカ――ああいや、恥ずかしいところを見られるのは、春雨のトラウマになってしまうかもしれないけど、頑張ってもらうしかない。

 

 こうなれば徹底的に、ついでに元帥にも手伝ってもらうしかないよね。……春雨には酷だけど、白朱鷺に写真を撮撮ってもらって――どうやって撮ったのかは知らないけど――これも有効活用しようか。

 

 あたし達が艦娘としてではなく、ただの幼気な少女として、あの憲兵等を訴えるか……そもそも艦娘のことは、機密事項だったっけ、だったら尚更やりやすい。

 

 

「村雨、その氷嚢は患部に当てたままでね」

 

「当てたままって、これちょっと気持ち悪いんですけど……」

 

 

 あの氷嚢は、白朱鷺が海から取った海水をよく分からない力で凍らせて、それを時雨の身体を引き伸ばしたものだ。あ、白朱鷺って名前はついさっき教えてもらった。

 

 

「仕方あるまい。氷を包めるものがこのくらいしか無かったんだ」

 

「そういうことだから、もう少し我慢してて。……そろそろかな。あの提督が出てくるのは」

 

「だろうか。っと、アレか?俺は実際にその面を見たわけじゃねェんだ、どいつがその提督なのか分からねェが」

 

「そうよ、アイツであってる。相変わらず憎たらしい面してるね、アイツ」

 

「ふふっ、アイツ、絶望の淵に叩き落されたみたいな顔してる。あたしはこれで満足だな」

 

「みたいというよりそのものだろうに。あの様子だと、自身の地位は確実なものとでも言っていたんじゃないか?それが部下は逃げ出し、書類の偽装は発覚し……どうせ無駄に豪華な椅子にでも座ってふんぞり返っていたんだろう、そのくせ指揮はいい加減。……まぁ、そんなところだろう?」

 

「その通り、よく分かったね。……いや、時雨の言葉から推測したんだ。なるほどね〜、そんなに秘密をポンポン喋っちゃうなんて、お姉ちゃん、そんなふうに育てたつもりは無いからね!」

 

 

 あたしが、おだてるように時雨に対してそう言うと、白朱鷺が――正確には時雨の体で――苦笑いを浮かべ、呆れるように首を振る。

 

……目が点滅するように光っていた気がするけど、どうにかしてあれで会話しているんだろうか、まだ明るいから分かりづらいけど、夜だったり暗いところだと、分かりやすいかもしれない。

 

 

「白露、そこら辺にしておいてやれ。時雨が混乱している」

 

「何で混乱して……?ああ、そういうこと、ギャップってやつだね白朱鷺。いや~、あたしもつ最近の言葉を使えたし、遂にあたしも若者の仲間入りかな!」

 

「……そうなのか?」

 

「ありゃ、もしかしてギャップが分からない?」

 

「ああいや、gapだろう?……それは分かるが、gapとはそのような意味だったかと、少しな」

 

「あ~、和製英語っててやつかな。確かサラリーマンとかもそうじゃなかったっけ?……確か英語圏だとオフィスワーカーとかって言うんだっけな……うーん、ギャップとはちょっと違うかも」

 

「……時雨は英語が分からんそうだ。それに、俺もサラリーマンなどとは聞いたことがない」

 

 

 んん?どういうこと?最近の日本語圏の人間なら大抵はそういうと思うんだけどな……白朱鷺のことがさらに分からなくなった。……ああいや、壁を抜けたり、超人的な速度で走れることについて教えてくれたときに割愛していた前提の知識とやらに関係しているんだろうか。

 

 まあ、今はそんなことを考えなくてもいいか。

 

 

「……この時代の人間ではないってこと?」

 

「半分正解だ。……正確にはこの世界の、と言ったところか」

 

「当てずっぽうで言ったら当たっちゃったか。……だから話が噛み合わないところがあったんだね、時雨」

 

 

 あたしが時雨(白朱鷺)の中にいる時雨にそう問いかけると、時雨が目を大きく開いて、感心したように笑った。

 

 

「流石だ。少ないHintから答えを導き出せるとは……素晴らしいlogical thinking abilityを持っている」

 

 

 ロジカルシンキングアビリティ……論理的思考力かな?白朱鷺は英語が混じっていて分かりづらいな……時雨は英語が出来ないし、余り理解できてないんじゃなかろうか。……あとで時雨に英語を教えてあげよう。

 

 

 ここの提督も輸送車に乗せられたようだし、そろそろ元帥との対面の時間かな。……心配だし、村雨達は同行させるとして、春雨はどうしようか……あたしがおぶっていくか。

 

 

「白朱鷺、春雨はあたしが背負うよ。元帥との面談もそろそろなんじゃない?」

 

「そうだな。もうそろそろか。OK. 中庭に行こうか。着いて来い」

 

 

 やっとだね。海軍の上層部と話すってだけでも緊張するのに、今から元帥と話すんだ――いや、実際に話すのはあたしじゃなくて白朱鷺だけど、まあ、それでも、対面するだけでも緊張するな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中庭に移動したあたし達は、その場に待機して元帥が現れるのを待っていた。周囲には恐らく大本営直属であろう憲兵達があたし達を包囲していて、普通であれば逃げ場はどこにもない。

憲兵による包囲にビクビクしながら少し待っていると、白朱鷺が急に中庭に通じる扉に目を向けた。

 

 

「ようやくお出ましか。遅かったじゃないか、えぇ?」

 

「ちょっと白朱鷺、大本営の憲兵に向かってそんな失礼なこと言ったら――」

 

 

 

「――っくく、良い。憲兵も銃を下ろせ。この場には対話のために来た。流血沙汰にしたくはない」

 

「しかし――!」

 

 

元帥のその言葉に、憲兵に1人が声を上げる。が、その言葉は元帥に睨まれたことで気圧され、押し黙ってしまった。恐らくは白朱鷺の無礼な物言いを許容した元帥に物申そうとしたのであろう、よくよく見ると、その憲兵は胸に大佐の憲章をぶら下げていた。

 

 あたしは元帥が現れたことにびっくりして倒れそうになった。まあ、白朱鷺に支えられたけど……。

 

 

「Hmm, そうだな、無礼な物言いだったことは認めよう。だがね、俺はこの口調が恒であるが故、悪いがこのままで居させてもらおう」

 

 

『それでも構わんな?』とでも言わんばかりの表情で元帥を見つめる白朱鷺に元帥が口を開く。

 

「構わん。……それで、大本営に呉第二鎮守府の不正の証拠を送りつけたのは貴様だな?いろいろと言いたいことはあるが、先ずは感謝しよう。これでまた、軽視派の提督を潰せたというものだ」

 

「それは結構。その通りだよ。到底褒められる様な手段は取っていないが、まぁこれも握りつぶせるだろう?手段はともかく、成したことは称賛されるべきではあるまいか?……話を戻そう。ここの提督とやらの処遇はどうなる?降格か、それとも完全なる失墜か」

 

「恐らくは。ただそれも、軽視派の者共の横槍が入らなければの話ではあるのだがね、この基地とその提督は、周辺地域への影響力は捨て置けるものでもないが、海域防衛に一役買っているというわけでもない、ただの中堅だ。証拠さえそろえば、今後数年の間は日の光を浴びることすらままならんだろう」

 

「そうか!それはいい気味だ。……だが、この基地はどうするつもりだ?此処を仕切る者も居らず、この件に関わった憲兵は軒並み拘束、そして事情聴取が行われている。まともな運営など適わんだろうさ。……それはそうと、後ろに居る者は艦娘か?」

 

「ああ、そうだ。俺が提督の職に就いた当初から俺の部下をしている。とても優秀な奴だとも」

 

 

 気づかなかった。確かにあの人は艦娘だ。お忍びのアイドルみたいな服装をしているから分かりづらかったけど、あれはたぶん川内さんかな。良くはっちゃけたりしているけど、ああやってこちらを品定めするように見てくるところは、まさに忍者みたいだ。

 

 それにしてもあの元帥が提督に着任した当初からの艦娘、詰まる所元帥の初期艦って訳だけど、確かに風格があるというか、歴戦の艦娘って感じの雰囲気がある。

 

 

……というか、会話のペースが早すぎて割り込めない。あたしは無言に徹しようかな。

 

 

「That’s good enough. まぁ、それを知ったところでどうこうしようって訳でも無い。只気になっただけだ。……Let's get back on track. これで、海域を防衛する役目を持つ提督が、1人減ったわけだ。アンタのその口振りから、そこまでの痛手では無かろうと、手間は増えるだろうな」

 

 

 白朱鷺が元帥を挑発するような口調でそう言い立てる。なんというか、言い回しが回りくどい。そうやって相手に言わせるつもりなんだろうけど、それにしても回りくどくて分かりづらい。何の話をしているのかを知っていなければ、理解するのに時間がかかりそうなほどに。

 

 

「……それで、要求は何だ?ある程度であれば飲んでやろう」

 

「Umm……, そうだな。ここの提督が失墜した暁には……俺を提督に据える。それでどうだ?」

 

 

 あたしがさっき白朱鷺に言った通り、元帥に自身を提督に据えようと提案をした。

 

 

「ふむ、検討しておこう。だが、覚悟しておけ。その時になったら指南書をやる。しっかりと目を通せ」

 

「gotcha, 覚えておこう。だがそれはそうと、此処に就くのは癪だ。何処かいい場所を見繕って置かねばな」

 

 

 「ああ、そう言えば。地球や火星には火山ってモンがあったなァ」と、意味深にそんなことを言う白朱鷺。そんな白朱鷺を怪訝な顔で見ていると、白朱鷺が突然、海のほうに目を向けた。

 

 

「白朱鷺、どうかした?……そっちは海だけど」

 

「最近、海底火山が噴火し、島ができただろう?そこにしよう」

 

「待て。あそこは明確に日本の領土だと定められていない。外交問題になる可能性があるぞ」

 

「だが他の国の領土でもない。それに今は、海外との通信手段も断たれているだろう?……実効支配してしまえば、文句を言う者は居ても、どうこうしようがない」

 

「……なるほど、検討しておこう」

 

 

 白朱鷺が、半ば強引に元帥を納得させ、話を推し進めた。……それにしてもそんな島があるなんて初耳だ。火山の噴火による津波なども無かったし――いや、そういえば、2週間ほど前に空にできた裂け目のような何か。……あれが関連しているのかもしれない。

 

 そんなことを考えながらぼんやりと空を眺める。

 

 

「……それともう一つ、聞きたいことがあるのだが、良いかね?」

 

「何だ?わかる範囲でなら答えよう」

 

「空に現れた裂け目、あれは一体何だ」

 

「それは白露が空を眺めていたからついでに、ということか」

 

「それもそうだが、あれに関してが件の島と違い、調査のしようが無かったんだ」

 

 

 空にできた裂け目からは、よく分からない、淡い水色の瘴気のようなものを噴き出している。だからといって日に日に瘴気のようなものが空を覆い尽くしているわけでもなく、循環するようにして、瘴気のようなものが拡大することはない。

 

 かなり高いところ――というか、熱圏よりも圧倒的に高い場所――に裂け目はあるようで、夜になると、多少の光を発しながら、時折月が裂け目の前を通り、影ができていた。

 

 

「あぁ、Void亀裂のことか。あれなら時間で消滅する。ただ亀裂から厄介な敵性勢力が現れる可能性があることが厄介だが……心配は無用だ」

 

「じゃあ、あの瘴気みたいなのは?」

 

 

あたしがそう聞くと、少し悩むように視線を彷徨わせたあと、やっと質問の意図が分かったかのようにこちらを向き直し、言葉を発した。

 

 

「瘴気か……そう言っても差し支えないが、まぁ良いか。どうせ此処(・・)の技術力では、あれを利用することも出来んだろう。……あれはVoidから漏れ出る、太古のエネルギーだ」

 

「ヴォイド……?宇宙空間にある、銀河も何もない空間のことか?」

 

 

「そうじゃない。……あれは、物理法則が絶えず揺らぐ、別次元にある空間だ。宇宙で発生する、数多くの神秘的な現象を引き起こす、とても……神秘的(悍ましい)な領域だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Tipsー

Void
Warframeにおいては、オペレーターのエネルギーとなったり、オロキン時代の移動手段として用いられている。過去に一度、とある大型コロニー船がVoidに侵入してしまうという事件が発生した。






やっとプロローグが終わった……。

TennoCon、楽しみですね。
Valkyr heirroom、私は絶対に購入します。


さて、私は3‐1で冬月掘りをしていたのですが、迅鯨がドロップしました。違うそうじゃない
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