暗澹たる戦場に旭光を   作:Zanna di Liquirizia

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注意
ここから先、センシティブな描写が見られると思います。
以上忠告終わり


諡号(しごう)の胚胎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不可能だ。人類は未だ海の1割程しか解明できていないんだろう?……そのくせ深海棲艦は完全消滅したなどと、言い切れるワケがない。良いか、只の生物ならまだしも、恐らく彼奴らは半永続的に増殖し続ける。そんなものを完全消滅させる?……深海棲艦に奪われた海域を取り戻すどころか、ジワジワと人類の生存領域を侵食され続けているような貴様らに、そのような夢物語を語っている暇があるのなら、とっとと行動に移したほうが良い。無駄に口だけ回して時間を無駄に浪費し続けているような体たらくでは、いずれ人類は衰退することになる」

 

『……黙っていれば抜け抜けと……我々とて尽力しているのだ。それを貴様は減らず口ばかり――!」

 

『よせ、高城(たかぎ)中将、言い方はともかく、言っていることはもっともだ』

 

 

 うわぁ……怖いなぁ、上層部の言い争いってのは……。

 

 あれから3日経って、今は元帥が、白朱鷺が元帥に言った『自身を提督に据えろ』という旨の要求について、他の親和派の上層部と協議している。……そこでほりの深い初老の男――高城中将の口にした深海棲艦を根絶やしにするという発言に対し、白朱鷺が反応したことで、言い争いに発展した。……本人の経験談からか、どちらも芯の通った発言ばかりをし、一向に言い争いが収束しないかに見えたが、業を煮やした元帥がついに間に入り、ようやく収まりがついた。

 

 

 「だが、人は多いほうが良い、そうだろう?」

 

『その通り、だが規律を乱すものは我々海軍には不要だ』

 

「それが俺だと?……ああいや、違うか」

 

 

 彼らは恐らく僕たちの元上司でもあった呉第二鎮守府の元提督の処遇について話しているのだろうけど、相変わらず白朱鷺は紛らわしい言い草をしている。白露には何を言いたいのかわかるらしいけど、僕にはわからない時もある……白露って、あんなに頭の回る感じだったかな?……少なくとも、僕の記憶ではそんなことはなかったけど……。

 

……そんなことを考えてたら、いつの間にか話が変わって、僕たちの処遇をどうするかという話に代わっていた。

 

 

『俺個人としては、この白朱鷺准尉(・・)に一任したい』

 

 

 准尉、白朱鷺が軍に入った際に与えられた階級……まあ、なかなか高い地位を与えられたとは思うけど、白朱鷺のことだし、その地位を使って色々やりそう――というか元帥も後ろ暗いことをさせる気だろうし、白朱鷺のことは便利な捨て石なんだろうね。

 

 この世界――この表現が合っているかどうかは分からないけど――について色々と知らないことがあるようだから、軍の階級について説明が必要かと思ったけど、どうやらそれについては知っているようで、説明の手間が省けた。

 

 それはそうと、テレパシーでも周りに聞こえるように、白朱鷺が調節したらしい。これでわざわざ通訳する手間が省けたよ。

 

 

『正気か周防(すおう)元帥、どこの馬の骨かも分からぬものを軍部に引き入れるだけに収まらず、挙句の果てには、提督の任に就けると、そう言うのだな」

 

 

 元帥の荒唐無稽な言葉に、相見(さがみ)少将が物申した。……確かに、僕も元帥がとんでもないことを言ってるとは思うけど――というかそもそも、あの島は日本の領土でもない無人島で、日本の排他的経済水域に掠りもしていない。それに、その島まで行くのに深海棲艦の襲撃を防ぎ続けないといけなくて、そのうえ物資の輸送も難航することは間違いない。……それを分かったうえでの元帥のあの発言は、随分と悩ましいことだろう。

 

……何より、僕たちの立ち位置は、一応は問題行動を起こした提督の部下であり、脱柵した艦娘だ。扱いは難しいだろうけど、それよりも、まだどの国の領土にもなっていない島を、勝手に占領するということになってしまうのが、何より問題だろう。

 

 国内外でも波乱が起きるに違いないだろう……だけど、今の日本は海外との通信手段がなく、

――他の国がどうかは知らないけど――外交もままならない状況だ。さっさと島を実効支配してしまえば、そうそう他国が介入することはないだろう。

 

 その島を観察していても、人工物どころか人の出入りさえ一切見られなかった。あの島は無人島で、すでに他国が実効支配している様ではなく、もしかしたら、地殻変動による海底火山の噴火によって、あの島ができた事さえ、他国は認知していないのかもしれない。

 

 だとしたら、さっさと島を獲ってしまえば良い。幸い僕たちは海に出ることに忌避感を抱いているわけじゃない――春雨はまだ目を覚ましていないけど、目を覚まし次第、すぐに島に上陸するつもりだ。

 

 

……どうやら、僕が長ったらしく考えている間に、白朱鷺たちも話がまとまったようだから……あとでもう一度話を聞こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議の後、僕たちは春雨のいる病室まで足を運んだ。どうやら、白露が付きっきりで看病してくれていたらしく、今は春雨の寝ているベットに備え付けられた椅子に座って、春雨の体を濡らしたタオルで拭いている最中みたいだった。

 

 

 「春雨は……まだ、目を覚まさないのかい?」

 

「うん、魘されているようだし、疲労とダメージが酷いから、まだ気絶してる。起きるのは、もう少し後になりそうだね」

 

「そう……分かった。白露もありがとうね」

 

『付きっきりで看病するのもいいが、自身の体調とて万全というわけではないんだ。程々で切り上げるんだな。その時は言ってくれたまえ。俺が見ておいてやる』

 

「そっか。じゃあ、安心して任せられるね。あたしも、久し振りにぐっすり眠れそう……かな」

 

「……白朱鷺、白露は眠っただけ?」

 

『いいや、過労による昏倒だな。変われ、俺が(とこ)に運ぶとしよう』

 

 

 白露、3日前からずっと春雨に付きっきりで、まともに眠れていなからね……まあ、それは鎮守府にいた頃も同じか。

 

 やっと、やっとだ。これであの忌々しい提督ともオサラバだ。二度とあんな面見たくないね。……あの鎮守府に残っていた娘たちも、憲兵によって保護されたらしいけど、白露がいなくなったことで秘書艦が居なくなって、変わりに別の娘が秘書艦になったらしいけど、元帥曰く、その娘は、大本営から来た憲兵にも怯えて、まともに話せる状態じゃ無かったらしく、眠らせて無理矢理保護したらしい。

 

 まあ、それが一番手っ取り早い方法だったし、僕がその立場でも迷わずそうするけど……白露そんな環境でよく、五年間も耐えたものだね。今更ながら、我が姉の凄さを実感したよ。

……白露は、大体の哨戒や出撃でも旗艦だったし、多分あのクソ野郎――元提督のお気に入りだったんだろう。それは白露も気づいていただろうし、本当に僕の姉はよく分からない。

 

 白露が元提督に従順だったから、脱柵の計画を立てているときは、白露だけ置いていこうか本気で悩んだこともある。……まあ、一旦白露には黙っててといったのにもかかわらず、夕立が白露に言ったときは危うく解体を覚悟したけど……あのときは、白露が提督側だと思っていたから、提督に告げ口されると思ったから本気で焦った。……あとから聞いたけど、どうやら白露はあの提督の暗殺も目論んでいたらしい。……そう思うのも仕方ないか、だって、白露はあの提督に――いや、この話は止そう。

 

 結局は、白露はあの提督に従っている馬鹿な艦娘のフリをしていただけで、あの提督に対する忠誠心やらは一切なかった。……まあ、あれだけされて尊敬しろと言われても無理な話だろう。

 

 

「これでよし。時雨、戻るぞ」

 

 

 白朱鷺は、白露をベットに寝かせたあと、布団をかけてから傍に座った。

 

『時雨、白露と二人きりで話がしたい。村雨たちの島に持っていく資材一式の整備を手伝いに行ってやれ』

 

「白露も寝始めたばかりじゃないか。もう少し休ませてからで良いんじゃないかな」

 

『そりゃァもちろん』

 

「そう、だったら言ってくるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……と、春雨は……っと、どうなってっかなぁ。うん、こりゃ酷い有り様だ。俺にも治せやしねェな」

 

 

 shit!あのクソッタレめ、motherf*cker, son of a bitch!腑抜けた女々しい愚図が、豚の癖して我が物顔で人の世に出てくるんじゃねェ!f*ckin'!……あぁ、calm down, calm downだ……目的を忘れるな。

 

 

「生殖器内にseminal plasmaは……多少残っているか。そりゃそうか、この分だとおおよそ八人程度……国を守る軍ーともあろうものが()って(たか)ってする事が強姦とは、随分とまぁ落ちぶれたものだ。全く本来ならsecond rapeなど、やりたくはないが、仕方あるまい。春雨も赤の他人との子など、孕みたくはないだろう――まぁ、そもそも誰かとの子を孕めるのかすら分からんのだから、もしかしたら、その心配は杞憂で済むかもしれんが……何が杞憂で済むだ、ふざけやがって。……まぁいい、あとでなら余計なお世話とでも言うがいいさ。これは単に善意の押しつけだ」

 

 

 さて、テレゴニー云々で奴ら――春雨を凌辱した軍人共の遺伝子なんざ、一片たりとも残したくはない。こういったものはあまり慣れていないが、食らえば何とかなるだろうか?

 

 堕ろすことなら簡単なんだが、その根本から取り除くのは難しい。何せ自分の身体ではない故、随分と勝手が違う。根気がいる作業だな、これは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅん?……あれ、ねちゃってた?」

 

 

 えっと、確か春雨の看病をしてて、その後は……あぁ、そうか、疲れて気絶しちゃったのか。

 

 

「ここは……ベット?ってことは時雨か白朱鷺が運んでくれたのかな……」

 

 

 目が覚めた時、あたしはカーテンで仕切られた病室のベットの上に寝かせられていた。春雨のいる病室と同じ部屋ではあるが、カーテンで仕切られていて、外の様子がよく見えない。

 

 少し眠ったおかげか幾分か疲れも取れたようで、あたしはベットから降りて仕切られているカーテンを開けた。

 

 

「春雨は――うん?……っ誰!!」

 

 

 春雨え、あたしが気絶する前と同じ場所で眠っていた。けれどその前に、時雨によく似た、見覚えのある――つまり白朱鷺が体の主導権を握っている時のような――姿の女が、そこに立っていた。

 

 

「……うん?あぁ、起きたのか、白露」

 

「……えーっと、白朱鷺で、いいんだよね?それ、時雨も居るの?」

 

 

 あたしのその言葉に首を横に振った白朱鷺は、再び春雨に目線を落とし、そして、話し始めた。

 

 

「安心したまえ、春雨の処置はすでに終えている」

 

「そっか、どうだった?」

 

「……どうだったか?……あぁそうだね、全くもって腹立たしい。あまりにも胸糞悪いせいで、柄にもなく暴言ばかり吐いてしまった」

 

 

 白朱鷺は嘆くようにそう言った。でも、あたしが聞きたいのはそこじゃない。

 

 

「そうじゃなくて、春雨の様体は?」

 

「あぁ、そっちか。……まァ、子を孕むことは万が一にもあり得ない。彼奴らの遺伝子の、ほんの一片も残さず消し去ったからな。……ただ、生殖器の損傷は酷いもんだ。たったの数日、されど数日と言ってもいいが、今回はたかが数日と言わせてもらおう。それだけしか経っていないというのに、酷く傷ついている。特に膣の損傷はこっ酷いもので、酷く擦り切れている。血が滲み出ていたものだから、ある程度の治療はしたが、まァあれだ、非常にユルい。シマリが殆どない。……試したわけじゃねェ、一目瞭然だ。股に拳大の穴が空いていると想像すれば分かりやすいか」

 

 

 拳大と聞いて、思わず下腹部に握った拳を充てがってしまった――いや、正確には下腹部じゃないんだけど――あたしの手でこれなら、男の握り拳なんて、キツイどころの話じゃない。ってことは――

 

「――ただ、犯されただけじゃない?」

 

 

 そんな、馬鹿な、そんなこと、あたしにだってしてこなかったじゃないか。何で春雨だけがこんな目に……ああいや。

 

 

「あたしたちのせいか」

 

「……要因にお前たちが絡んでいようと、元凶は前提督だ。気に負うなとは言わんが、そう深くは考え――いや、そうじゃないな。今は、春雨のことを考えよう」

 

 

 あたしが居なくなったから、処理(・・)するためのモノが居なくなったから、あの前提督――白朱鷺のようにくそったれとでも言ったほうが良いか――は、捕らえた春雨をあたしの代わりに使った(・・・)のだろう。

 

 白朱鷺も腹立たしげに目を細めている。その憤りがヒシヒシと伝わってくる。……けど、今はそれよりも春雨を第一に考えよう。

 

 

「拷問じみたヤり方か、それともジャッキでも使ったんでもない限り、数日でああはならん。人間の身体は案外丈夫だ――白露、ジャッキ云々は例えだ。あの場にジャッキは無かっただろう?」

 

「……まあ、確かに」

 

「それに、もしジャッキを使ったならば、よりこっ酷く傷ついていたはずだ。……おそらくは」

 

 

 白朱鷺がまるでやったことはあるかのように言うものだから、つい白朱鷺を睨みつけてしまった。

 

 

「あぁ、安心したまえ。試したことなどありゃあせん」

 

「……なら良いんだけどさ。……それって、治し方はある?」

 

「そうそう治らんだろうが、ピアスでも使って無理矢理閉じるのも有りだろうか?」

 

「いや、あたしに聞かれても」

 

 

 ピアスって言っても、絶対に一つや二つじゃ足りないでしょ。というかそれをやって負担にならないのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、本題に入ろうか……ああいや、別に春雨がどうでもいい訳じゃないが」

 

 

 白朱鷺が、先ほどよりも真剣な眼差しでこちらを見つめる――別にさっきは真剣じゃ無かったってわけでもないけど――コレはあれか、あたしが鎮守府に居たときの話かな?

 

 

「白露、時雨曰く、お前は一度、前提督の暗殺を目論んだんだとな。……これと言って責めるわけでも、何故かだなんて野暮ったいことはわざわざ聞かないだが、教えてくれ、お前は、あの鎮守府で、一体どんな扱いだったのか」

 

「……あんまり聞いてて面白い話じゃないけど……って、そのくらいわかるか」

 

 まぁ、どんな扱いだったかなんて、お前の口振りから察したが……」

 

 

――お前の口から聞きたい。確証が欲しいんだ、なんて言葉を、不気味な笑みを浮かべながら付け加えて。その言葉からは、あたしを責め立てる意思は一切感じなくて、ただ少し、白朱鷺の真意が探れない。

 何らかの企みがあって、あたしたちに利があることはわかる。それが何かは分からないけど。

 

 

「……まあ、単純な話だよ。あたしはどうやら、あの提督に気に入られていた、つまりあたしに性的魅力を感じてたって言ってもいいね。それで、あたしはあの提督の処理(・・)に使われていたってわけ。避妊具もピルも使おうともしなかった。提督の処理(・・)が終わったら、あたしは放置で、憲兵もあたしには気遣わない。あの提督、猿みたいに盛ってさ、日によっては一日に5回はスルんだけどさ、それが薄いのなんのって。あたしも下腹部が痛くてグッタリしてるんだけど、搔き出さないと孕んじゃうから、痛くなっても必死に掻き出して、まあ、幸い薄いおかげか簡単に書き出せてね。あいつ、自分が出すことばっか考えているから行為(・・)もヘッタクソで、あたしも全く気持ち良くならないし……一時、気持ち良くなったほうが、提督に身を委ねて肉道具になったほうが楽になれるんじゃないかと考えたことがあったんだけどさ、やっぱそれはイヤで……そこで提督を殺すことを考えたんだよね。提督を殺したら、あたしは解体されるだろうけど、時雨たちは助かるだろうからって……でもさ、軽視派のことだから連帯責任にされそうだからって踏みとどまったんだよ。殺意がまろび出ちゃわないように必死に堪えながら耐えたんだ。行為も酷いもんでさ、舐めさせられて、咥えさせられて、押し込まれて、美味いかと聞かれて、おいしいと答えなかったら()たれて、お尻の穴も舐めさせられた。……惨めだよね。ずっと提督の部屋に居させられて、出られるのは出撃の時だけ。と言っても出撃もかなりの頻度だったから、その時だけでも提督のことが忘れたくて一心不乱に深海棲艦を沈め続けて、でも無線から提督の声が聞こえてきて忘れられなくて。……ねえ、白朱鷺、身内から拒絶されるとね、結構堪えるんだよ、知ってた?」

 

 

 あたしは、今までため込んできたことを吐き出すように矢継ぎ早に打ち明けた。これは時雨たちの誰も知らないことだ。……あたしは今、どんな顔をしているんだろう。

 

 

「いいや、知らなかった。覚えていないと言ってもいい。そんな事があったかどうか、あったとして、どうでも良かったか……まぁ、過去のことなど知ったことではない」

 

 

 抱きしめられた。それに驚いたけど、声は出なかった。出たかもしれないけど、あたしの耳には入ってこなかった。まるであたしを慰めるかのように頭を撫でられる。まるでじゃないかもしれない、慰められているのかも。

 柔らかな触感を感じる。時雨と身長は変わらないはずなのに、随分と白朱鷺が高いように感じてふと見上げたが、白朱鷺の顔はそこにはなく、顔を戻して白朱鷺と対面する。

 不思議な感覚はすでに消え失せ、違和感だけがただただ残っていた。よく分からないけど、少し落ち着いた……気がする。

 

 

「ぁ――」

 

 

 白朱鷺に抱きしめられていたのが離されて、少し淋しく感じる。それと同時に、あたしってこんなにもチョロかったっけ、とも思う。

 傷心中の女性が、優しくされてコロッと堕ちちゃうみたいに、あたしも白朱鷺が好きになってしまったかもしれない。……だからなんだって言うんだ、好きになったからといって、関係性が変わるわけじゃない――いや、確かにこれから関係性は変わるけど、別に白朱鷺を好きになったから変わるわけじゃなくて……ああもう!一旦この話はおしまい!

 

 まあでも、コレじゃあたしも時雨のことを言えないな。

 

 

「えへへ……ありがとっ」

 

「それはどうも」

 

 

 白朱鷺が見たことないような柔和な笑みを浮かべてる。うーん、こうして見ると……時雨と同じ顔なのに全くの別人に見える。いや、別に普段も表情で区別がつかないわけじゃないんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、白露」

 

「なあに?提督っ。……白朱鷺さ、切り替えヘタクソだよね」

 

「何故提督呼び……まあ良い。白露、お前はまだ、奴に復讐がしたいか?」

 

 

 奴って言うと、前の提督のことかな。そりゃまあまだまだ煮え切らないところはあるけど、然るべき方法で裁かれるのなら、ぺちゃくちゃと文句を言うつもりはないけど……。

 

 

「そりゃあ、出来るんなら、復讐、したいけど」

 

 

 あたしがそう答えると、さっきまでの柔和な笑みから一転して、今度はニヒルな笑みを浮かべた。……うん、笑みだけで人を殺せそう。

 

 

「その言葉が聞きたかった」

 

「というと?」

 

「元帥の許可は得た。渋い顔をしていたがな。……奴の大切なブツを壊しに行こうか」

 

「いいね。清々するかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで白露、先程は何故提督呼びをした?」

 

「ん〜……まあ、これからそう呼ぶことになるんだし、今のうちに練習しとこうかなって」

 

「なるほど」

 

 

「それはそうと提督さ、主語が欠けてること多いよね」

 

「そうか?」

 

「うん、あたしは分かるからまだいいけど、時雨とか時々ポカーンてしてるよ」

 

「……なら、今のうちの直さねばなるまい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここか?」

 

 

 白朱鷺が、呉第二鎮守府の懲罰房の警備をしている大本営所属の憲兵に案内され、あたしたちは元提督の収容されている房やって来た。

 

 

「ええ、そうですが……ほ、本当にするんですか?」

 

「ああ勿論」

 

 

 この憲兵は、案内をするついでに、あたしたちはが何か仕出かさないかの見張りも兼ねて、房の脇に立っている。……これからあたしが行うことは、その仕出かすことには含まれないからいいけど、憲兵はこれから行われることを先んじて聞いていたようで、青い顔をしている。

 

 

「白露、こいつが呉第二鎮守府の前任の提督か?」

 

「そうだよ」

 

 

 前提督(コイツ)、この期に及んでふてぶてしく房に座り込んでいる。手錠は繋がれているけど、それ以外の拘束具は見当たらない。少し心配になるな。

 

 

「……なんな、騒々しいと思ってみれば、俺のオンナじゃないか。この私を助けに来たのか?」

 

 

……なんか前提督(ブタ)が喚いてるなぁ、と言いたいところだけど、コイツの声を聞くと身体が強張って喉が締まってしまう。白朱鷺が、あたしの代わりに口を開いた。

 

 

「誰がお前なんざ助けに来るんだ?お仲間か?」

 

「……だ、誰が貴様に口を開くか!――ま?待て!何をする!!」

 

 

 前提督(ブタ)の周りに触手のような何かが纏わりつき、四肢を固定する。とっても蹴りやすい(・・・・・)体勢にさせる。白朱鷺があたしに催促するように目を向ける。あたしは溢れる笑みを抑えることもせず、前提督の大事なモノに、思いっきり蹴りを食らわせる。

 触手には多少驚いたけど、前持って説明を受けていたし、前にも大本営に向かう際に見たことがあるから、そこまで触手に気を取られることもなくしっかりと蹴りを入れられた。

 

 白朱鷺を見てみれば、愉悦に歪んだ口元を手で隠しながら、愉快そうな声色で「Nice shoot!白露。良い蹴りっぷりだ。十中八九潰れただろうな」と言い、前提督を嘲るように仰々しく手を叩いた。

 この間も前提督は苦痛に悶えていて、見ててとても清々する。

 

 

 見張りをしていた憲兵は、股間を押さえてより一層、青白い顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




白露の暴露のシーンは書いていてとても楽しかったです。

……過激すぎたかな
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