ポケモンを美味しく食べよう   作:恋音

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ペンドラーフライ

 

 ちまたではポケモンなるものが存在するし、ジムというものがあるらしい。

 

 異世界生活数ヶ月──

 私はついにその謎を解いた。

 

「──ズバリ!運動サポートシステム!」

 

 ポケモンはおそらく、アプリやゲームの枠を超えて、人々の生活習慣にまで影響を及ぼす一大フィットネス革命だと、私は分析している。

 

 なんてったって、専用の『ジム』が各地に設置されているというのだから!これはもう、国家規模のスポーツインフラ整備と見ていい。

 

 で、そのジムにはチャンピョンなる存在がいるらしい。

 ちなみに教えてくれたのはスムージー屋のバイトの兄ちゃん。彼曰く、『あそこのジムはカイリキーが強いよ』とのことだったが、彼の4本腕でパンチがヤバいっていう説明で確信したよね。4本に別れるくらいに鍛えれるパンチングマシーンがあるのだ、って。

 

 一応言っておくけど、私は運動が苦手。苦手というか、もはや嫌い。

 ジム通いの話をされると、反射的にアレルギーが出るし、プロテインの香りで眠くなる。つまり私は、ポケモン界隈のチャンピオンにはなれない。私が鍛えるのは包丁の腕前よ。

 

 けれど、ジムのある街というのは概して人の流れが多く、活気があり、流通が強い。

 結果、食材が集まりやすいという、料理人見習いにとっての隠れたパラダイスとなるのだ。

 

 最近拠点にしている海辺の街はバザーみたいなのがあって、個人でも出店できるみたいだった。

 路銀も稼がなければならない。ということで、折角なので出店することに。色んな野生生物を捌いてランダム南蛮にした。大丈夫、試食済み。個人的には白身魚の南蛮が美味しかったな。

 

 学生の私に取って店舗経営というのは目標であり貴重な体験。接客でてんてこ舞いになったというのは、いい経験。

 また、食材の仕込みや廃棄をいかにして無くすか、素早く提供。どれをとっても初めては慣れなくて大変で。でも楽しかった。

 

 ──出店巡りを忘れなければ、もっと楽しかったかもしれないけどね!!(気付いたら周囲が片付けモードだった)

 

 しかもさ、肉が足りないって気付いた頃には、みんな撤収してて買い足せず。

 そのせいで、たっぷり作ったタルタルソースだけが余るという悲劇。何これ、味の罠?

 

 その日、私は夕方の浜風に吹かれながら、屋台のフライヤーの前で残ったタルタルをじっと眺めていた。あの白いクリームに、陽光が反射してキラキラしていてね。ふと、幻覚のように浮かんだのは、どこかで会ったこともない彼氏(仮)と海辺を走ってるシーンだった。

 

 「ほら、こっちへ来てご覧なさ〜い」って、砂浜の向こうから彼が手を振って、私は笑いながら追いかけてて──その足元で波がバシャーン!

 

 ……虚しい。こういう時はむしゃむしゃするに限る。

 

 

 

「くっそー!なんかイモムシなのかムカデなのかわかんない紫色の虫っぼいやつ捕まえたからエビフライにして食ってやる!ムカデもゴキブリも、四捨五入すればエビ!」

 

 

 

──ペンドラーフライ(2人前)

殻付きえび(大)……4尾

塩………………………少々

こしょう………………少々

揚げ油…………………適量

 

小麦粉…………………適量

卵………………………1/2個分

生パン粉………………適量

 

 

 

 

 

「さて……まずは素材の下処理から、っと」

 

 本来ならエビの場合、背わたを取って殻をむいて、腹側に切り目を入れてまっすぐ伸ばして。とか、いろいろ決まりごとがあるんだけど。

 

「この虫、なんだろ……?」

 

 正直、よくわからない。

 けど、なんとなくエビに似てるっちゃ似てる。尾もあるし、関節もある。だけど色が真紫。

 

 見るからに毒持ってますよって言ってる気がするわ。

 

 とりあえず殻っぽいところは全部剥いで、背中にあった黒い線は、よくわかんないけど取っといた。おそらく背わた。そういうことにしておく。

 

「水分を拭いて。ふけたら塩コショウ。はい、下処理終了!」

 

 誰かに褒めてほしい。いや、素材の正体的にあまり聞かれたくないかも。

 

「さて……ここからが本番!」

 

 この2、3メートルくらいある大きな生物を食べやすい大きさにした後、小麦粉をサラサラと広げて、素材に薄くまぶす。手早く、丁寧に、まんべんなく。

 粉がついた瞬間、エビ感が2割増しになった。視覚の錯覚、ありがとう。

 

「はい次、卵~。くぐらせて、持ち上げて、しっかり余分は落として……はいっ!」

 

 よく混ぜた卵にどぷんとくぐらせると、表面がしっとり黄金に輝いた。

 

 素材に卵をそのまま被せてもくっつかないから、小麦粉や片栗粉で素材と卵を接着させる必要があるんだ。

 そして卵もまた、パン粉を繋ぎ止めるための重要食材。

 

「最後にパン粉をまぶす」

 

 ざくざくした生パン粉をたっぷりと纏わせて、手のひらでやさしく押さえつけていく。空気を含ませすぎず、でもぺたっとならない絶妙な力加減。

 

 

「よし、揚げるよー!」

 

 170度の揚げ油に、静かに投入。

 じゅわっ……と弾ける音とともに、油の中で泡がぱちぱちと踊り出す。一気に立ち上る香りに、脳がこれはエビフライと即断した。素材への遠慮がゼロになる音だった。

 

 表面がカリッと黄金色に染まったら、トングで引き上げて、立てかけて油を切る。ころもが小さく音を立てて落ち着く。香ばしさの暴力。

 見た目はもうどこからどう見ても、立派なエビフライ──たぶん、エビフライ。

 

 紫色だったんだよなぁ、外皮。

 

 

「後はさらに盛って、余ったタルタルソースをこれでもかとかけたら……」

 

 

──いただきます!!!

 

 

 

 

 

「比例票で上にいた人が落ちて、下の人が通った時の味って感じの味」

 

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