年越しと言えばそばと世間は言うだろう。
そばはほかの麺類に比べて切れやすいことから、『1年の厄災や苦労を切り捨てて翌年に持ち越さない』という願いを込めて年越しそばを食べる、というもっとも有名な説だ。
そして細くて長いという点から『商売が長く続きますように』という縁起担ぎとして承認を中心に広まったと言っても過言ではない。バレンタインもチョコレート会社の商業作戦と似たような感じ。
実際そばは健康面で見てもかなり良いというもの。
なぜ新年を迎えた三が日にそんなことを言っているのかと言うと──目の前にネギを背負ったカモがやってきたからだった。
──カモネギの年明け蕎麦(6人前)
そば粉……400g
冷水……250g
つなぎ粉……150g
出汁……お好み
鴨肉……100g
ネギ……3本
まずカモらしき生命体の羽を毟って血抜きをする。川が近くにあるので冷水で冷しながらすると臭みが少ないから、内臓の処理をしてある程度放置するよ。
下処理の仕方は今回メインじゃないから割愛割愛。
さて、いい具合にお肉もネギも手に入ったから今回は手打ちそばを作ろうと思っているんだ。
「キャンプセットを開いてっと」
前回サンドイッチを作って食べたキャンプ用の机を今回思いっきり使ってしまおう。
さて、十割そばとかって言葉は聞いたことがあるだろうか。
そばにはそば粉と、つなぎ粉と言われる小麦粉を混ぜる割合のことを言うんだ。
そばは二八で始まり二八に終わるとも言われていて、一般的なのはつなぎ粉2とそば粉8で混ぜ合わせるのがスタンダード。
つなぎが少なければ少ないほどまとめるのが大変になってくるし、正直慣れないうちは二八でも難易度は高いだろう。
なので今回は三七寄りでお送りします!
「まずは粉を2つとも混ぜてふるいにかけて」
ふるいにかけないとダマになってしまうから、きちんと零さないように慎重に。
「次は水回し」
外側から内側に水の流れを作るように、平たいお盆のようなボウル、まあ桶に入れた粉にかけていく。
3回か4回に分割した方が絶対いいから、一気にやらないように注意してね。
水と粉を混ぜる時は、手を開いてシャンプーをするようにバサバサと混ぜてしまう。
この時、ぜんぜん纏められないからって水を足さないこと。根気強く、五分くらい混ぜ続けていると、チネリみたいにポロポロとした塊が少しずつ出てきてくれる。
「これをまとめて……捏ねる!」
ここからはプロの技ってスゲーって感じの話になるんだけど、捏ねないとコシが出ないけど捏ねすぎるとまとまらなくなるという難しい話がある。
私は最初の方加減が分からなくて割れたりしていたんだけど、今回は何とかギリギリを見極められたみたい。
「そろそろ打ち粉をして、伸ばしていこうかな」
硬さも申し分ないので打ち粉と呼ばれるまぁ分量外の小麦粉を生地に纏わせ、板の上で生地を丸くある程度伸ばしていく。
ひらべったくなってきたらめん棒で更に伸ばす。
あ、板にもめん棒にも打ち粉は忘れずに。
これを忘れるとベチャッと伸ばしたところから引っ付いてきて大変なことになる……。
「四角く伸ばして言ってと」
ピザや餃子は丸く伸ばすけど、そばやうどんは四角く伸ばさなければならない。ここはすごく難しい作業だと個人的には思ったよ。
さて、と。
ちょっと厚みがバラバラだけど自分で食べるようだしこれくらいでいいかな。
打ち粉を生地にもう一度振って。そして折りたたむ。4つ折りくらいにしたら、小間板と呼ばれる麺を切る時の定規の役割を果たしてくれる板……のフリをしたただの木材で生地を押さえ。
「秘技、細切り!」
うん。バラバラですね。
ダメだよ、日本食って修行積まないとなそうそうハイクオリティなものできないんだって。
きゅうりの輪切りが一定にできても麺が切れるかって言われたら違うもん。
「まぁいいや。出汁を作って……」
私はお出汁と醤油とみりんの少し甘めな味が好き。そばはうどんより少し濃いめの味付けをすると麺に絡んだ時にちょうどいいって思うんだよね。私だけかな。
血抜きが終わった新鮮な推定かもを薄切りにして湯掻いてあくを取り除く。
そしてごま油で鴨とネギを焦げ目が着くまで焼いて……。
「そばを湯掻いて出汁に入れて、と」
上に先程焼いた鴨とネギを入れ、仕上げに少し出汁をかけ足すと鴨の脂が出汁の表面でキラキラと輝き出した。
私は盛り付け後、すぐさま椅子に座る。
──いただきます!
「新年早々おみくじが凶だったから悪縁が切れてほしいって切実な味」
二八で実話です。……凶とか初めて見た……。