進撃の巨人―数十年に一人の逸材の兄弟―   作:夏玉 尚

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初めまして、こんにちは。夏玉です。

二次創作が書けるということで大好きな進撃の巨人に挑戦しました。

拙作ですが、楽しんでいただければなと思います。


糞溜から一歩上へ

 運命のあの日、父と母、まだ幼い妹を残して少年はシガンシナ区奥地の森へ薪集めにやってきていた。

 いつも通り必要な分だけ薪を拾って少年は家へと帰る。だがそこに待っていたのは家族ではなく、床に広がる血。

 家族の死体はどこにも無く、既に黒く固まり始めていた血はまだ幼い少年を悲しみと狂気へと誘った。

 

 

 

***

 

 

 

「ジルバ、今日はどうだった?」

 

「まずまずだ。たまたま商人が通りかかったもんだから食料が手に入った、皆に分けてくる」

 

「おお」

 

 

 地下深く、ならず者たちが溜まるその場所は犯罪が横行する決して治安がいいと言える場所ではなかった。ここでは貧しくとも真面目に生きようとする者、そしてそれをカモに生きる者、真面目に生きようとしたが失念の末に落ちぶれたものの三種類の人間がいる。

 

 このジルバという青年とその隣にいる青年は、真面目に生きる者達をカモにして生きる者たちだった。通りかかる商人の荷を襲い、金目の物、食料を強奪して住処へと戻る。一日の大半をそんなことに費やしていた。

 

 

「これはお前の分だ、食え」

 

「サンキュー。 それにしてもお前の立体機動はすごいよな。あのリヴァイと肩を並べるくらいなんだって?」

 

「そんなもんでもないさ。生きるために腕を磨いてるだけだ、立体機動ができなきゃここでは生きていけないから」

 

「いつか地上に出たいのか?」

 

「いや、地上には嫌な思い出しかない。 俺は地上の人間が嫌いだ」

 

「家族が殺されたんだっけか……」

 

「昔の話だ」

 

「そだな。ここでは過去なんてどうでもいい、現在(イマ)が全てだ」

 

 

「リゼフ、お前は――――」

 

 

 コンコン、と二人が住処にしている空き家を誰かがノックする。

 この空き家に住んでいるのはジルバとリゼフ、そして二人が拾ったまだ幼い捨て子たち十数人だ。家に入るときは裏口から入るのがルールで、表から入ってくる者は『敵』だ。

 

 二人はナイフを構え、身構える。

 

 

「誰だ!?」

 

 

 ドアは開かない。だがドアの向こう側から声がする。入ると殺されると言うのがわかっているのか。敵は殺す。殺されても誰も咎めない。それが地下のルールだ。

 

 

「私は調査兵団のエルヴィンという者だ。開けてくれないか?」

 

 

 エルヴィンと名乗るその男はもう一度ノックをする。

 

 

「(どうする? 殺るか)」

 

「(いや、調査兵団は聞いたことがある。確か地上の組織の名前だ、開けてみよう)」

 

 

「待ってくれ、今開ける」 

 

 

 ジルバはナイフを構えたままゆっくりとドアを開ける。

 

 金髪に整えられた七三分け、全てを見透かすような目で二人を見る、それがエルヴィンと言う男だった。

 

 

「ジルバ・アッカーマン、リゼフ・イェーガーだな。 突然で悪いが、調査兵団に勧誘する」

 

「は? なんで俺たちの名前を」

 

「……」

 

 

 

「君たちは立体機動に長けると聞いている。それをどこで手に入れ、どこで習ったのかは知らないが、その技は以上でも生かせる」

 

「それは……取引か?」

 

「いや、取引ではない。命令だ。 断ればその立体機動装置を奪い、身柄を連行する」

 

「はっ!? てめぇ急に来て何言ってんだよ! 誰がてめぇの命令なんか――――」

 

「やめろ。恐らくこいつの部下が数名外にいる。もし後ろにいる子供たちを人質に取られれば俺達は何もできなくなる」

 

「くっ……」

 

 

「聡いな。ジルバ・アッカーマン、流石東洋人の血の生き残りだ」

 

「東洋人……どういうことだジルバ!?」

 

 

「わからない……俺が……東洋人……?」

 

「そうだ、ジルバ・アッカーマン。殺されたお前の家族は父以外東洋人の血を引いている。だからこそ人売りに狙われ、殺された」

 

 

「……本当か?」

 

「私と共に来れば真実を教えよう。 あとお前の妹はまだ生きている。そしてリゼフ・イェーガー、お前の弟もな」

 

「何!?」

「…………」

 

 

「どうだ? 私と来る気になったか?」

 

 

 二人はいつの間にか構えを忘れ、エルヴィンの話に聞き入っていた。

 

 

「これを逃せばもう機会はない。今、ここで決めてくれ」

 

「俺達を頼る子供がいる。この子供たちはどうなる?」

 

「そうだ! この子供達がいる限り、俺らはここを離れられねぇ!」

 

 

 ジルバは奥に隠れている子供たちを指す。捨てられた子供たちはジルバとリゼフが拾い育ててこなければ人売りに奴隷として売られるか、飢え死にする。

 もしここでこの二人がいなくなっても生き延びる術はない。

 

 

「残念ながら調査兵団に子供たちを育て上げる余裕はない」

 

「なら――――」

 

 

「だがこの子供たちが将来調査兵団に入ることを約束するのならば調査兵団訓練生として生活を保証しよう」

 

「……信じていいんだな?」

 

 

「私はお前たちの力が必要だ。約束は守る」

 

「……わかった。俺は調査兵団に入る」

 

「おい!ジルバ!」

 

 

「子供たちを救い、家族の姿を見れるならこれ以上幸せなことはない。お前だって弟の姿を見たいだろ?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「なら行こう……俺たちは籠の中の鳥じゃない」

 

「わかった。やってやろう、俺たちで」

 

 

「決まったようだな。ジルバ・アッカーマン、リゼフ・イェーガー、これを」

 

 

 エルヴィンはジルバの予想通り部下を外に待機させていたようで、部下から包みを受け取ると、ジルバとリゼフに渡す。

 

 

「これは……」

 

「調査兵団のマントか? この模様は」

 

「『自由の翼』という。我々は自由を求め、外の世界へと一歩を踏み出している」

 

「ははっ! かっこいいな! 自由の翼かー!」

 

「……」

 

 

「ではついてきてくれ。子供たちは部下が連れて行く。後で会えるだろう」

 

「絶対だな?」

 

「ああ」

 

 

 エルヴィンに連れられ、ジルバ・アッカーマンとリゼフ・イェーガーは鳥籠の糞溜から抜け出した。二人の背中には自由の翼が描かれていた。

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