麟佳さん家の竜姫事情   作:麟佳さん

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リメイク第二弾 ⚡(U'・ェ・)⚡

竜姫シリーズってモンスターと戦った時とかの印象とかも含めて書くのですが、この子はプレイしてないから動画見るしかねぇ…。


白銀の狼は樹で眠る

夕方ので森を散歩していたミストルティン。辺りが暗くなり始めるこの時間は彼女に取ってお気に入りの時間帯だ。夕日を眺めながらのんびりしていると、小さく遠吠えが聞こえる。

「何でしょうこの声…狼?でも、弱ってる?」

優しい彼女は弱々しい声が気になり、捜索に向かう。そして森を歩くこと数分。数体の異族に囲まれた狼を見つける。

「大変!た、助けないと・・!」

幸い、異族はそこまで強い個体ではなかったため、彼女一人で容易に撃破出来た。問題はこの狼である。

体高はミストルティンの胸元もあり

白銀の毛と甲殻に覆われている。四肢もまた堅牢な甲殻に包まれ、その先にある爪は黒金のように輝く。尻尾は太く、叩きつけられれば大きな痛手だろう。頭には角を持ち、牙は喰らいついたらそのまま喰い千切られそうだ。。特筆するべきは狼の背中辺りから稲妻が走っていること。雷の魔術を使える狼なんて聞いた事がない。これでも、普通の狼よりも大きいが、顔つきを見るにおそらくまだ幼体。大人になればこれの数倍は大きくなるだろう。

「大丈夫かな…あっ、足が…。」

狼の右前足からは血が流れ傷口を見ると刃物で切り裂かれたようだ。

「今治療するから…大丈夫ですからね?」

「グルル…ギャウ!」

「きゃあ!?」

ミストルティンを敵と見なしたのか。狼は残った力を振り絞り、体当たりを繰り出した。全く警戒していなかったミストルティンは吹き飛ばされてしまう。しかし諦めず、再度接近していく。

「大丈夫…私は味方だよ…?今痛いのを無くしてあげますから…。」

先程の体当たりで力を使い果たしたのか唸りはするものの攻撃は出来ない様子。背中の稲妻も消えていた。

そっと傷口に杖を触れさせて治療を開始するミストルティン。次第に傷口は閉じていき出血も無くなる。他に傷は無いか体をよく診るが、他には大きな外傷は見られなかった。

「これで大丈夫。しばらく休めばまた動けるようになるからね?女の子なのにとっても強いんですね。」

「…グルル。」

ミストルティンの穏やかな気に当てられたのか、狼はその場で丸くなり眠る体勢に入る。その寝姿にミストルティンは思わずその体を撫でようとゆっくり手を伸ばすが唸って拒絶の意思を示され断念する。しかし一度救いの手を差し伸べてこのまま放っておく訳にもいかないのでミストルティンも側で眠る事にした。

数時間後、目覚めたら狼は側で眠るミストルティンに目をやる。先程の吹き飛ばしたにも関わらず気を許し過ぎではないかと呆れた様子にも見える。しかし狼にも義の心はあるのか、体を揺すってミストルティンを起こす。

「ふわぁ~…狼さん…?もう大丈夫なんですか?良かった…。」

彼女が安堵したのを見た後、鼻をミストルティンの顔に触れさせる。彼女なりの挨拶だろう。そして、狼は背を向けて森の奥へ進んでいく。おそらく巣に戻るのだろう。それを見守った後、ミストルティンも家路につく。

「不思議な狼さんでした…。また会えるでしょうか?」

 

それから数年が経った。

ミストルティンはあの不思議な狼のことまだ覚えており、時々今はどうしているだろうと想う事もある。レーヴァテインと共にいるナルを見ていると、一緒に暮らせないかと言う気持ちも出てくる。今のナルの大きさは馬や牛よりも大きく背中にも乗れる。あの狼に再び出会えばきっと大きく逞しい姿に成長しているであろう。そんなある日の遠征中の事。森の側の平原で異族の大群を相手にしてた際、後衛で補助をしていたミストルティンだが後方から攻めてきた異族に奇襲され、窮地に立たされる。同じく後方でマスターを守護するロンゴミアントも敵の対処に追われ身動きが取れず合流出来ない。前衛の姫達も敵の殲滅で直ぐには戻って来れない。苦手な近接戦闘でもなんとか持ちこたえていたが数に押され劣勢に立たされる。そしてついにバランスを崩して倒れたミストルティンに異族が襲いかかる。

「あぁ、そんな…!?」

死を察し、今までの思い出が頭の中を駆け巡る。その思い出にもう触れられないと感じたミストルティンは思わず涙を流す。

(これは走馬灯?皆、こんな私にも優しくしてくれました。良い思い出が一杯。私はもう助からないのかな…。)

「ヴァオオオオン!!!」

諦め、眼を閉ざしたとき、大気を響かせる咆哮と大地を振動させる足音が聴こえた。その後、稲妻のような音がミストルティンの側に溢れ、巨大な影がミストルティンに落ちる。そして記憶にあるその声に彼女は再び目に光を取り込む。

「グルル…ガァアア!!」

その姿は、かつて助けた狼と同じ。ただその大きさは桁違い。前足の甲殻・・いや爪だけでミストルティン程大きく、その口は容易く彼女を咥え、呑み込めるだろう。

異界での狼の呼び名は

『極み吼えるジンオウガ』

 

大量の異族を吹き飛ばし、ミストルティンの側で番犬の如く鎮座している。まだ戦闘は続いているがどうしても確認したい事があるミストルティンは狼に声をかける

「あの…!あなたはあの時の?」

それを聞いた狼は大きな頭を近づける。迫力に思わず逃げたくなるが、足を踏ん張る。そして目の前に来たときミストルティンの顔に鼻を触れさせる。

「あぁ、やっぱりあの時の…。こんなも大きくなって…。」

予想を遥かに越える成長ぶりに喜びで思わず涙が溢れ、手を伸ばして頭を抱き締める。狼もそれを静かに享受していた。遠間で見ていた仲間達も初めは警戒していたが、その様子に安堵し敵に向き直る。

二人だけの時間が過ぎるが異族にそんな事情は通用しない。狼に向かって一斉に飛びかかる。それを見た狼はミストルティンを頭で体の下に押しやり、体に稲妻を纏わせる。狼が雄叫びを上げると閃光と共に雷電が炸裂する。

「ヴァオオオオオン!!!」

飛びかかった異族を消し飛ばし、離れた敵には雷の光弾が襲いかかる。ミストルティンを守護する為か、周囲から離れずに戦い続ける。巨体の重さを感じさせない爪や尻尾の体術は異族の武器を破壊するほどの威力。特筆するべきは瞬間の速度。身を屈めたと思えば視界から消え、次の瞬間にはもう敵への攻撃を終えて、またすぐにミストルティンの側に戻る。結局ほとんどミストルティンから離れること無く敵を殲滅して見せた狼は再びミストルティンを見つめる。離れたところで戦っていた仲間達は狼に興味を持ち近づいてくる。だがそれを見た狼は…

「グァウ!!」

吠えると共に先ほどまで異族を吹き飛ばしていた雷の弾を仲間たちに向かって撃ち出す。幸い被害は無いものの狼の側で見ていたミストルティンは思わず冷や汗をかく。

「待って下さい、あの人達は…へっ?」

何とか説得しようと狼に向き直ったが、目に入ったのは直前に迫る狼の大口だった。狼はそのまま口を閉じ、ミストルティンを咥え込む。

口を開けた狼にいち早く異変を感じたレーヴァテインは雷の弾幕をすり抜けて狼に向かう。そして狼が森に向かって走り出す直前、背中に飛び乗りしがみつく事に成功するが狼はレーヴァを意に介さずそのまま走り出す。ミストルティンを咥えている分遅いがそれでも馬よりも速い速度で森に走って行く。ある程度はそのまましがみついていたが、森の奥に入った所でレーヴァは走行の衝撃と狼の背中の電気により手が離れ落ちてしまう。それから更に少し走った所で狼は止まり、ミストルティンを降ろす。

「ううっ。ここは?」

深い森の奥、狼の巨体が収まる空間がそこにあった。辺りを見渡すと食べ終わったであろう動物の骨が散らばり赤いシミが地面に出来ていた。キョロキョロしていたミストルティンを狼は大きな前足で側に寄せて横になる。

「え?えっ?」

困惑するミストルティンなど露知らず、狼はミストルティンの体に寄り添う様に眠りにつく。

「ぐぅ~ん…ぐぐぅ…。」

「ね、眠ってしまいました…。どうしましょう…。様子を見て帰らないと…。」

十数分程たって、起きない事を確認したミストルティンは疲労で軋む体に鞭を打ち、ゆっくりとその場から離れて行く。急がず慌てずゆっくりと距離を開ける。しかし、

「ガルルル…。」

ミストルティンが離れた事に気がついた狼は目を覚ます。慌てて走り出したミストルティンだが、飛びかかった狼の口に咥えられて運ばれる

「あわわ!?お、降ろして下さい…!?」

再び元の場所に戻され、今度は腕の中に置かれて胸と腕と頭で囲まれてしまい逃げられなくなる。

(これではもう、私はどうなるのでしょう…。玩具にされてボロボロに…それともおやつとして食べられるのかな…?でもどうしてさっきは食べなかったのでしょう?それに…なんだか嬉しそうなのは気のせいでしょうか?)

あれこれ考えているうちに、狼の暖かい体温に体を預け眠ってしまうミストルティン。一人と一頭は静かな森の中で共に夢を見ていた。

 

深い眠りから目覚めると辺りの状況は一変していた。狼ではなく大きな木の側で眠っていたようだ。少しずつ意識と感覚が目覚めるとようやく状況が脳に伝達される。

「ググゥ…」

「はぁっ、はぁっ…!コイツ、どれだけタフなの…?」

あの狼とレーヴァテインがにらみ合いをしていた。しかし両者共に既に激しい戦闘をしていたのか身体中傷だらけ。しかし狼の佇まいはまだまだ余裕を見せているのに対して、レーヴァに関しては剣で支えてやっと立っている状態。とてもじゃないがもう戦える状態ではない。そんなレーヴァに止めを刺す為に狼は巨大な前足を振り上げる。ミストルティンが駆け出すも間に合う筈もなく、振り下ろされる手に抵抗出来ずレーヴァは前足の下敷きにされ、乱れた白髪だけが覗く。

「レーヴァさぁん!?」

悲痛な声をあげたミストルティンに狼は視線を移すがすぐにレーヴァを完全に踏み潰す為に体重をかける。巨大な脚に潰されるレーヴァの体はミシミシと音をたてていた。

「止めてください!?レーヴァさんを離して下さい!」

非力な手で狼の足を必死で叩くミストルティン。どれだけ効果が無くとも、叫びで声がかすれても。叩くのをやめない。

「その人は私の大切な人なんです!だからお願い…します。私を…好きにしていいですから…。離して、下さい……。」

「───。」

その様子をずっと見ていた狼は何を思ったのか…レーヴァから足を降ろす。

「!?、レーヴァさん!」

赤く濡れたレーヴァを抱き締めるミストルティン。凶悪な狼なんて気にすること無く治療を始める。一方のその様子を見守る狼は何かを納得した様子で二人を見つめて横になっていた。懸命な治療のおかげでレーヴァは目を覚ます。

「……ここは?」

「レーヴァさん!?良かったです…!」

「ミストル…。っ、下がって!まだいたのね。」

抱きついていたミストルティンを押し退けて前に立ち、狼に剣を向けるレーヴァテイン。だが剣先と体は揺れ動き、ただの虚勢であることは一目瞭然。それを見た狼も臨戦体勢に入ろうとするが、ミストルティンが間に入る。

「待って下さい、レーヴァさん。狼さんは私たちを見守っていてくれてたんです。」

「はぁ?何を…。あっ!ミストル待ちなさい!」

「狼さん、ありがとうございました。」

伏せて横になる狼に近づいて深く頭を下げるミストルティン。それが狼にどのように映ったのかはわからないが狼は頭でミストルティンを押し返す。それはまるで帰れと言っているようにも感じた。

「どういうつもりかは分からないけど。帰してくれるならいいわ。行きましょ、ミストル。」

「レーヴァさん少し待って下さい。あの…狼さん。よろしければ一緒に来ませんか?きっとあなたは私と暮らしたかったんですよね。それなら一緒帰りませんか?」

ミストルティンの思わぬ提案にレーヴァは度肝を抜かれるが、反論はしない。強い意志を宿し、積極的に動く時のミストルティンはテコでも動かないことを知っている。一方の狼は少し思案するように目を閉じる。そして目を開いた狼はミストルティンの横を通り抜け、動けないレーヴァに大口を向ける。表情の見えないミストルティンは止めようとするが正面から見ているレーヴァはそれを制する。狼の牙はレーヴァの肉を貫かない様に優しく咥えあげて森の外に歩きだす。

「狼さん、ありがとうございます。」

「また大きいのが増えたわね。そうだ、コイツに名前でもつけてあげたら?いつまでも狼じゃ味気ないし。」

「それじゃあ…えっと…。白い狼…はくろう…。ハクロはどうでしょうか?」

「グルルゥ。」

「それで良いみたいね。」

「はい。これからよろしくお願いしますね、ハクロ♪ 」

 

戻ったミストルティン達を見て、皆は眼を丸くする。何せあの狼がミストルティンを背に乗せ、レーヴァを咥えながら付いてきたのだから。ミストルティンの説明を受け隊の皆はハクロを快く迎え入れた。拠点にやってきたハクロは、可能な限りミストルティンの側にいる。

花の手入れをしているとき。

木陰でお昼寝をしているとき。

森を散歩しているとき。

外で食事を取るとき。

屋内には体が大きいため入れない為、窓からミストルティンをうかがっている。

「あいつ、本当にミストルが好きなのね。今も見てる。」

「気にかけてくれるのは嬉しいですけれど、少し恥ずかしいです・・。」

「ミストルは魅力的だから仕方ないわ。ま、簡単には渡さないけど。」

「レーヴァさん、喧嘩は駄目ですよ?」

「大丈夫、ちょっと手合わせするだけだから。命のやり取りなんてしないわ。」

なんて言っているが時折レーヴァとハクロは森で稽古をしている際は大抵両方ともボロボロで帰ってくるので心労が絶えない。しかし戦場ではそれなりに連携をとって戦っているので仲が悪い訳ではなく、譲れない物があると言った風である。

「ハクロはミストルが好きだからね。皆と一緒に暮らしてるけどまだあなたの隣を諦めてはいないのよ。」

「でも、私は皆さんが大好きで一人に絞るなんて…。」

「いいのよそれで。皆に優しくして、贔屓をしないそういう所がアイツも好きなんだから。」

「はわわ…。」

「ほら、食べ終わったからハクロのとこに行ってきたら?多分待ち遠しくてやきもきしてるでしょ。」

「は、はいぃ。行ってきますね。」

外に出てハクロのいる所に到着するミストルティン。少女と狼はお互いの鼻を合わせて挨拶する。もはや恒例となった行動である。

「今日はどうしましょうか?ハクロは何かしたいことはありますか?」

「グルルゥ。」

唸りを一つあげてからハクロは頭を地面につけるように伏せて寄り付く。これは背中に乗れの合図だ。ハクロの上に乗ると、静かに歩きだし森へと向かった。巨大なハクロの背中は人が座るには十分な広さで、ミストルティンを気遣っているのか揺れもかなり穏やかである。

「ハクロとの散歩は気持ちいいですね。どこまで行くのですか?」

「グルゥ。」

暫く歩き到着したのはミストルティンのお気に入りの木。ゆっくりと伏せるハクロを見てミストルティンは背中から降りてハクロに向き直る。

「ハクロもこの木が気に入ったのですか?なんだか、うれしいです。ここに来たと言うことはお昼寝ですね。」

木に寄り添いぺたりと座るミストルティン。ハクロはそんなミストルティンの膝に大きな頭を乗せて伏せた。ずっしりとした重みに驚くがその頭に手を伸ばし、ゆっくりと頭を撫でてやる。

「ググゥ…♪」

「意外と甘えん坊さんですね。このまま木陰で日が沈む迄、ゆっくりしましょう。」

 

『狼さんはどうして雷を纏っているの?』

『それは貴女を照らし出し、守る為ですよ。』

『狼さんの口はどうして大きいの?』

『それは、貴女を苦しめる物を食べてしまう為です。』

『狼さんはどうして私のそばにいるの?』

『それは貴女のことが何よりも大切だからです。』

 

 

そんな穏やかな日常が流れるある日の事。ミストルティンはオティヌスとお茶の約束をしていたため、彼女の工房に向かっていた。イタズラ道具を作ってるのか、機械を弄っているのか、不思議な薬品を作っているのか。少し楽しみにしながら歩いて行くと何やら言い争う様な大きな声が聞こえた。工房の扉を開けると女性がオティヌスに掴みかかって言い争っていた。その女性は2メートル程の身長で腰まで伸びる緑がかった白髪に大きな白い角と狼のような耳を持ち目は翡翠のように透き通る。豊満な胸と引き締まった肉体はほぼ半裸だが手足の先から肘に甲殻と爪、毛で覆われ、腰からは太い尻尾が伸びている。そして体からは白い稲妻。猛々しい風貌は方天画戟によく似ている。もしミストルティンが冷静にこれらを判断出来ていれば彼女が何者かはわかるはずだが、喧嘩に慌てた彼女にそんな余裕はない。

「おい!私に何をした!?」

女性はオティヌスを激しく揺さぶっている。

「オティヌスさん……。ど、どうされたのですか……?」

「!、お前は…!」

ミストルティンに気づくとオティヌスを突き飛ばして、ミストルティンに近づく。鋭い眼孔に睨まれたミストルティンは足が竦み動けない。

「え?えっと…あうぅ…。」

「何を怯えている?眼を開け、私を見ろ」

その眼にミストルティンは覚えがあるが、混乱して思い出せない。ボーッとしていると女性はミストルティンの顔を支えて、お互いの鼻を触れさせて止まった。きょとんとしたミストルティンだったがその仕草に思い当たる相手がいるので思いきってその名前を呼んでみる。

「あなたはハクロなのですか?」

「そうだ。お前が名付けてくれた、ハクロだ。」

「どうして…。ひょっとしてオティヌスさんの薬で?」

「そうそう、そうなのさ!あれからまた改良して直ぐに話せるようになったのは良かったんだけどハクロの機嫌を損ねちゃってね。」

「当然だ、急に体が変化したら怒るに決まっているだろう!元に戻ったら呑み込んでやろうか?」

「勘弁して。本当に申し訳ない、謝るよ~。」

「皆様、ご無事ですか!?」

そこにやって来たのは黒と灰の髪に忍び装束を纏った女性。ハクロと同じく竜から人の姿になれるようになった、ナルだった。

「っ!貴女ですね、騒ぎの元凶は!」

ナルは腕に巻いた布を取り刃を露にし、眼は紅い軌跡を宿す。どうみても、臨戦態勢だ。

「全く、血の気が多い奴だ・・。まぁ、ちょうどいい。」

臨戦態勢に入るハクロの体に強い雷電が走り、白いオーラの様な物を纏う。普段の戦闘時でも今まで見たことのない形態にミストルティンとオティヌスは驚いていた。

「参ります!」

入口にいるナルが走り出すのにあわせてハクロも動き出す体勢に入る…と思った瞬間にハクロの姿が消え、同時にナルの声が上がる。

「あがっ!?」

「どうした?私を倒すのだろう?」

入口の方を見るとハクロがナルを壁に叩きつけていた。片手で首を絞められ、持ち上げられている。そのまま後ろに投げ飛ばした。

「ぐぅ、まだまだ!…え?」

受け身をとり構え直そうとするナルだがハクロは圧倒的な速さで目の前に迫る。踏み込んだハクロは体を捻り、雷を纏った尻尾を叩き込みナルを吹き飛ばす。

「レーヴァテインに育てられてその程度か?話にならない。森に行って眠るか。」

「!?、お母さんを馬鹿にしないで!」

背を向けて歩き出すハクロに激昂したナルは赤い軌跡を残しながら斬りかかる。そんな怒りに感傷せず、冷めた目をしたハクロは背を向けたまま飛び上がって回避し、そのまま踏みつける。うつ伏せで倒れるナルの背中に乗るハクロはわざとらしくナルの頭に脚を乗せて踏み躙り、ナルの顔を地面に擦り付ける。

「たいして強くも無い癖に意気がるな。せいぜい反省するんだな。」

「くっ…ううぅ…。」

悔しさで涙を流すナルをそのままに、ハクロは森に歩く。その圧倒的な差にナルは立ち上がる事が出来ない。ミストルティンがナルに駆け寄り回復を行うと、表情が少し柔らかくなり顔色も良くなっていた。

「大丈夫…ですか?ごめんなさい、ハクロがあんな酷い事を・・。」

「やはりハクロですか。あの身の熟しでもしやと思いましたが。」

「へっ?あれでわかるのですか!?」

「いつも叩き潰されて決着がつくので…。ミストルティンさん、私はもう大丈夫ですのでハクロと話してあげてください。」

「えっ、でも。」

「大丈夫、あたしが面倒見るからさ。ハクロと話したいこと沢山あるでしょ♪」

「…わかりました。オティヌスさん、お願いします。」

ナルの介抱をオティヌスに任せて、ミストルティンはハクロを追って森に入っていく。静けさを取り戻した部屋を見るとあれもこれも、どこもかしこも散らかっている。

「あ~、部屋が滅茶苦茶だよ。今日は1日片付けかな?」

「オティヌスさん、私も少し休んだらお手伝いします。」

「ありがと、ゆっくり夜まで休んでから手伝って貰おっかな♪」

 

森に入りしばらくして、大きな木の側で片膝をたてて眼を閉じるハクロを見つけたミストルティン。

「ミストルティンか。どうした?」

ミストルティンに気づいたのか眼をやるハクロ。先程までの気迫はなくリラックスしているようだ。

「あの、その…どうしてあの様な事を?」

「挑発して、叩きのめした事か?ナルは熱くなると話が出来ない。それにレーヴァテインに頼まれたからだ。」

「レーヴァさんが?」

「『試合することがあれば思いっきり負かせてやって。それが目標になるから。』と言っていた。成長の為に壁を見せてやりたかったのだろう。だから望み通り倒してやった。」

「そんな理由が…。だとしてもあんなに…。」

「自然界での敗北は死。それをあれで収めてやってるんだ。弱い奴に価値は無いだろう。」

「…無価値ですか?…弱い私は…嫌いですか?」

ミストルティンの言葉にここまで淡々と言葉を紡いだハクロは口を閉ざした。そして暫く考えた後、口を開く。

「ミストルティンは特別だ。お前はかつて命を繋げてくれた恩人だ。どれだけ弱くても守る。…こんな事を言うつもりは無かったんだが。我儘な私はきっと嫌われるだろうから。」

「そんな…私は…。」

「私は…お前には嫌われたく無い。

お前と暮らすきっかけになったあの日…レーヴァテインを殺しかけた時を覚えているか?あの時、お前の泣きそうな声を聞いたら…潰せなかった。今まで容赦なく敵を踏み潰し、食い殺していたのに…。私はいつの間に弱くなってしまったんだろうか?」

眼から光が消えていく。勇ましい竜の時からは考えられない程に弱っていくハクロ。彼女に芽生えた新たな感情は、捕食者としてかけ離れた物である。容赦なく敵を撃滅する事と敵を見逃す事という矛盾に苦しんでいるのだ。そんなハクロにミストルティンは寄り添い、ハクロにその答えに気づかせようとする。

「そんなことありません。それはハクロが優しい心を持っている証です。」

「優しい…。なら弱くなっているのだな。自然で生き抜くのに、優しさは必要ない。」

「でも、ハクロはどうして私を助けてくれたのですか?もう一度言って下さい。」

「あれは幼い頃に助けられた借りを返しただけだ…。」

「あの後私を連れ去ったのは?それにレーヴァさんにトドメを指さなかったのはなぜですか…?」

「お前が大切だからだ。だからお前の大切な物も奪いたく無かった。だがあの時レーヴァテインを殺せば、お前の輝きが消えてしまいそうだった。そしてお前を帰したのは…私の元にいてもいずれ光が消えると思ったからだ。」

ハクロの告白にミストルティンは黙って耳を傾ける。彼女の優しさにミストルティンはついつい微笑むが優しさを理解できていないハクロの顔は浮かない。

「滑稽だろう?多くの命を潰し喰らってきた化け物が感情に流され、あげく人に支配される。こんな私を弱くないと言えるのか?」

「はい、ハクロは弱くないですよ。弱くなったのではなくて、優しさという別の強さを知ったんです。それに支配だなんて思ってませんよ?私にとってハクロは命の恩人で…大切な友達ですから。」

ミストルティンは思っている事を正直に答える。ハクロの大きな手を優しく握る。

「そうか、友達か…。」

「他の皆さんともきっと仲良くなれます。優しいハクロならきっと大丈夫です。」

「そうか?オティヌスは死なない程度に痛め付けるつもりだったのだが?」

「でっ、でも、出会った時は問答無用だったのに今は確認しているので…。」

「もういい、言いたいことは分かった。私が絆されて、人に近付いているということだな。なら私を優しいと言うお前に、頼みがあるのだが…。」

「えぇっと、何でしょう?」

「人の姿での暮らしを教えてほしい。食事や狩り、睡眠の取り方等知らないことばかりだ。竜の姿の方が戦いやすいしお前を運びやすいが、この姿の方が得する児ともあるだろう。例えばフトンでお前と共に眠れる事とか、お前の作った食事を食べる事も。」

「良いですけれど、無理をしなくても・・。」

「いや、一時は引いたがまだお前を手にする事を諦めた訳ではない。今なら私が連れ去ってもお前の光は消えないだろう。私はお前が欲しい。他のやつにくれてやる道理はない。」

「あの?ハクロ?」

「早速だが今夜共に眠ってくれ。レーヴァテインと度々眠っているだろう?私も人の姿で共に眠りたい。」

「ふぇぇぇ!?」

この日から外では竜、内では人の姿でミストルティンに付きっきりになったハクロ。レーヴァとハクロの小競り合いは隊の名物になったそうな。

 

 




フロンティアの極みジンオウガさんをみたときの衝撃たるや……好きぃ……♪
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