冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第11話

 

パルデア地方、現在は朝9時の少し前。

今日も今日とてラジオ塔が占拠されることもないような平和な地方。

現在はテーブルシティでとある相手を待っている。

 

「あと、2日かあ」

 

ここにいるのも今日を抜くと残り2日。

やり残したことは特にないけど、でも心にしこりが残っているような。

言い切れぬ不快感で自然と焦り気味になってしまう。

体が冷え切らないように、たまに足腰を動かし目的の人物を待つ。

 

「おーい、スグリー」

 

どうやら来たらしい。

 

「ごめん、ちょっと遅れちゃった?」

 

「いんや、別に」

 

チャンピオン、ネモのご登場である。

アカデミーの制服に身を包み、少し息を切らしている。

 

「アオイから、スグリが会いたがってるって聞いてさ」

 

昨日、夕方ごろ。

いよいよパーティが完成したので誰かに腕試しをしたかった。

さすがにアオイは忙しそうなので、ネモの胸を借りることになったんだが。

 

「ごめんね。昨日急に声かけて」

 

「いいよ。それで、今日はどういう要件?」

 

言いかけてつい口がモゴモゴとなってしまう。

本当に勝てるのだろうか。

もし負けたとして、それが完膚なきまでに叩き潰されたような状態なら、俺は冷静でいられるだろうか。

そもそもなんで俺はここまでバトルにこだわるんだ。

別に今まで通りでいれば。

...っと思った自分の両ほほを叩く。

詳しくは俺自身もわからないけど、それでも無性にそうしなきゃって思ってるんだ。

だったら、勇気を出せ

 

「...リベンジ、いいべ?」

 

と、言った瞬間ネモが笑みを浮かべる。

気にせず続ける。

 

「2体とか3体とか日和ったこと言わない。おれの本気の6体全部、キミにぶつける」

 

「わかった。場所はどうする?」

 

「ここじゃねえ、あんまり人目につかない場所...南2番エリアで」

 

どきどきと脈打つ心臓を深呼吸で落ち着かせる。

 

「じゃあ、後ろ乗って」

 

「うん」

 

モトトカゲの背に乗り、今日の戦術をシミュレーションする。

大丈夫、俺だってたくさんバトルしてきたんだ。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

場所が変わって南2番。

適当に開けた場所をバトルコートに見立て、トレーナーエリアにお互いが立つ。

お互いの視線が交差し、一匹目のポケモンが投げ入れられた。

 

「ミミズズ、お願い!」

 

「...!シャンデラ、頼んだ!」

 

最近調整したばかりのこいつ。

だが練度はそれなりになっているはずだ。

 

「シャンデラかー。いいね!」

 

悪いがこっちに喋れるような余裕はない。

先手必勝。

 

「シャンデラ、かえんほうしゃ」

 

俺の声にこたえ、シャンデラが業火をはなつ。

こいつのとくこうは、ほのおタイプのポケモンでも指折りだ。

まともに受けられるような威力じゃない。

じゃないんだが

 

「!?なんで」

 

軽いダメージとはいかないものの、ミミズズの体はぴんぴんしている。

なんで...。

いや、まさか

 

「オッカの実」

 

「ッ正解。ミミズズ、しっぽきり」

 

確かにミミズズの特性はどしょく。

狙うとしたら、かくとうもしくはほのおによる攻撃。

だが、半分賭けみたいなものだ。

かえんほうしゃをまともに受け、これ以上は無理と判断したんだろう。

後続につなげられる状態で技による交換をしてきた。

とりあえず、ミミズズの体力は大きく減らされるので良しとしよう。

次に繰り出すポケモンは

 

「ウェーニバル!お願い!」

 

みず・かくとうのウェーニバル。

こっちのシャンデラのサイコキネシスなら押し切れるか。

こっちも少し賭けに出よう。

 

「ウェーニバル、アクアステップ!」

 

こちらがサイコキネシスの指示を出す前にウェーニバルの攻撃。

俺のシャンデラは

 

「...シャンデラ!?」

 

一撃で倒された。

 

「く、ならこっちは」

 

焦りで思考がうまくまとまらない。

ぼうぎょが低くても、パワーととくせいで押し切る。

 

「マリルリ、頼んだ!」

 

「...ウェーニバル、もう一度アクアステップ!」

 

しかし、効果はいまひとつ。

大きなダメージはない。

それでも何発も受けきるには限度がある。

ここで決めないと。

 

「マリルリ、じゃれつく!」

 

こっちのちからもちマリルリの強烈な一撃が突き刺さる。

しかし、しっぽきりの分身によって一発はじかれてしまった。

 

「ウェーニバル、アクアステップ!」

 

交代先に不利なポケモンがいるのか、交代はしてこない。

なら俺はその状況をそのまま利用させてもらう!

 

「じゃれつくだ!」

 

いくらウェーニバルでも耐えきれない。

ダメージなしのウェーニバルが一撃で落とされた。

 

「ワオ、いいね!ここからがポケモンバトルだよ!」

 

少し傷ついたマリルリを一度下げ、次に出すポケモンを考える。

今の相手に一番刺さるポケモンは。

 

「ヌメルゴン、押し切れ!」

 

「それなら、こっちもヌメルゴン!」

 

ヌメルゴンによる対面。

お互いのトップドラゴンがにらみを利かせあう。

しかし、まずい。

ヌメルゴンはとくぼうが高いポケモン。

素早さ勝負で勝てたとしても、相手の技を受けきるかでしか勝機がない。

 

「ヌメルゴン、りゅうせいぐん!」

 

ヌメルゴンが空から無数の隕石を降らせる。

すべてが似た者同士の勝負。

すばやさで勝ったのは俺の方。

だが、さすがに。

 

「耐えるか」

 

「いいよ、ヌメルゴン!これはお返し」

 

いくらとくこうが下がったとしても、ここでりゅうせいぐんを受けきれれば追い抜くことはできる。

 

「ドラゴンクロー!!」

 

ドラゴンクロー!?!?

失念していた。

ドラゴンの物理技は放ってこないだろうと勝手に自分の中で選択肢を狭めてしまっていた。

ヌメルゴンのぼうぎょの低さでは耐えきれるわけがない。

コートの前で沈んでいくカロスで出会った仲間。

唇をかみ、次のポケモンを選択する。

 

「...オオタチ!」

 

まて、今のはマリルリを出すのが安定択だろ!

不安と焦燥でまともな判断ができない。

ふるぐると頭が回転し、足に脱力感がする。

自分の不甲斐なさにイライラが募る。

 

「ヌメルゴン!りゅうせいぐん!!」

 

「あっ」

 

また仲間が倒れる。

旅に出る前からの親友。

何をするにしてもこいつと一緒だった。

俺は何をしているんだろうか。

ただ勝負を挑んで、判断ミスで負けに追い込まれて。

相手は残り5体。こちらは3体でうち1体はダメージあり。

前戦った時はもっとスムーズにバトルできていたのに。

ネモという存在は、、ここまで高い壁なのか。

 

「ねえ!スグリ!」

 

「!?」

 

急にこちらに向かって声をかけられた。

次に出すポケモンを選択しないと。

 

「ご、ごめん。今出すから!」

 

「そうじゃなくて。スグリはなんでポケモンバトルやってるの?」

 

「なんでって」

 

その答えは俺が一番知りたい。

晴れない霧に視界が遮られている、そんな俺が。

 

「私は、バトルが楽しいから!楽しくって仕方がないから!」

 

ふと懐かしい言葉を思い出す。

 

【いい夢だ。ああ、叶うといいな。...だが、それに囚われすぎてはいかんぞ。ワシは過去に強さや夢に魅了され、己を失うような若者を何人も見てきた。だからこそだ。何かあればすぐに立ち止まり、振り返りなさい。進むだけが人生ではないぞ】

 

これまでの旅での出来事を思い出す。

懐かしくて、笑みがこぼれてしまう。

そんな中でも一際目を引く存在。

 

「アオイ」

 

バトルが好きなあの子が。

誰かにやさしくなれるあの子が。

...好きになったから。

出会ったたのは数日前でも、この気持ちの大きさは日という言葉じゃ現わせないほど、胸を躍らせる。

 

「俺は、バトルは好きかどうかはわかんねえ。それでも、大好きな子がバトルさ好きだから!」

 

息を切らしながら言葉を発する。

自分でも恐ろしくなるほどスラスラと出てくる。

 

「たくさんバトルして、強くなってるから!だから、おれもそれに追い付けるように!追い抜かれないように。その子の隣を歩きたい!!」

 

息があがり、目の前がちかちかする。

脳に酸素がいきわたっていないのかもしれない。

だが、それ以上に、今言葉に出した感情が気持ちいい。

心のモヤモヤが晴れ、クリアになった。

 

「...気分は晴れた?」

 

「晴れた!」

 

大きく深呼吸。

ネモをまっすぐに見つめ、拳を強く握る。

己の愚かさを振り切れるように、ありったけの叫びをあげる。

 

「勝負はこっから!ブラッキー!」

 













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