冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
「ルカリオ、お疲れ様」
「ありがとう、ヌメルゴン」
「ダメだー。全然勝てねえや」
時間はわからないが、現在。
あれからバトルしては回復し休憩を数度繰り返している。
しかし、最初の1回以降はどうやっても勝てない。
ネモの成長がすさまじい。
「でも、対応力は最初のころよりもよくなってるよ」
「うーん、なんかいまいち実感ない」
「...もっとバトルしてみる?」
「そうする。でも、」
スマホロトムの時刻を確認。
あっという間にもうお昼。
少し暖かいと思ったらそういうことか。
「そろそろお昼にしよっか」
「賛成。ちょうどお腹空いてたんだー」
正直、これ以上やっても空腹で満足な指示を出せないだろうし。
二人分の椅子と机を準備し、ボールからポケモンたちを出す。
「オオタチ、ルカリオ、お米炊いといてくんろ」
キュイっといつものかわいらしい返事。
それにしても、何を作ればいいんだろうか。
カレー...は重たいか?
ネモの女の子なんだし、あんまりカロリーが高いとよくないかもしれない。
かといって時間を取りすぎるとバトルの時間が短くなる。
きりたんぽにしようか。
同時にコンソメスープも作れば、栄養バランスもとれるはずだ。
「お昼、きりたんぽはどう?ついでにコンソメスープ」
「きりたんぽ?なにそれ?」
「お米を棒にして焼いたやつ」
「?」
あんまりピンと来ていない様子だ。
とりあえずコンソメスープの具材と味噌ダレの準備をしよう。
バッグに入っていたキャベツ等の野菜やソーセージをまとめてカット。
「私もなにか手伝おうか?」
「いいの?じゃあ、味噌ダレ作るから。そこの少ない味噌に、砂糖小さじ1杯とみりん大さじ1杯いれて混ぜて」
「私、小さじ1杯結構多めだけどいい?」
「?多分、いいと、思う」
何を言っているのかわからないけど、大丈夫だろう。
具材をきり終わったので、そろそろと米がとネモの様子を確認したんだが
「ネモ、砂糖多すぎだ」
明らかに大匙半分ぐらいの量が入っている。
「ごめん、自分でも入れてから思った」
「ひょっとして、あんまり料理したことない?」
「...あるけど、大雑把っていうか」
「弱火で10分なら、強火で5分って思ったりする感じ?」
「はい」
それなら仕方ない、と考えることにしておこう。
幸い、そこまで壊滅的な量というわけでもないので、これもテイストだ。
「まあ、そういうこともある...あるのか?」
そうこうしているうちに、オオタチが米が炊き上がったのを知らせてくれた。
アツアツのお米を飯盒から取り出し、ボウルに投入。
バッグの中からすり棒を引き抜き、手で棒の硬さを確認。
そういえば、お米のつぶれ具合を聞いてなかったな。
「はんごろしでいい?」
「いやー!大雑把でごめんなさーい!!」
ネモが隣にいたパーモットを盾にし、頭を守るようにうずくまる。
何をしているんだろうか。
ああ、意味を詳しく知らないのか。
「いや、そっちのはんごろしじゃなくて。半分ぐらいお米が潰れてる状態でいい?」
「あ、はい。いいです」
ボウルに入れたお米をぐちゃぐちゃとつぶし、割りばしに棒状になるようにつける。
それを6、7本ほど作成し、先ほど作成した味噌ダレをペタペタと塗り付ける。
最後にこれをアルミホイルで巻き、火元でしばらく焼けば完成。
この間に、うえでコンソメスープを作っておけば、時短にもなる。
これでお昼の準備は整のった。
...
.....
.......
「いただきます」
「いただきまーす!」
コンソメスープは週に何度か作ることもあるが、きりたんぽを作ったのはガラルの雪原以来だ。
空腹も限界なので、そのままかぶりつく。
うん。やっぱり甘い。
いい糖分補給になりそうだ。
「モチモチしておいしいね。これ、どこの料理なの?」
「キタカミの里っていう俺の故郷の料理。鍋に入れてもおいしいんだ」
「へー」
旅に出る前に、お駄賃目的で姉ちゃんとばあちゃんの手伝いをしておいてよかった。
「そういえば、スグリってさ。なんで旅に出たの?」
「え?あー。何ていうか」
思いがけない質問で返答に困ってしまった。
一旦、頭の中で言葉を整理し
「里の人たちとか、姉ちゃんのいいつけ守らなかったりして、何度も叱られてさ。それにうんざりしてた時、アデクさんって人に出会って。旅に出てみないかって言われてさ」
あの人は今、何をしているんだろうか。
まだ旅を続けているんだろうか。
「それがすごく心に響いて。だから、旅に出た。今考えてみたら、弱い自分を辞めたいっていうのもあったと思う」
「...両親に反対されなかったの?」
「親はおれが早いうちに死んじゃってたから。姉ちゃんにも旅に出るっていうのは言ってない。唯一伝えたじいちゃんには最初は反対されてた」
カロスに行って最初に電話した時、姉ちゃんに聞いたことのない声で怒られた。
電話の先の顔を想像したくない。
「そうなんだ。ナイーブなこと聞いちゃってゴメンね」
「いいよ、別に。おれも気にしてねえべ」
「...そういえば、さっきの大好きな人って」
「気まずくなったからってそこ掘り返さねえでくれ」
「もしかしてア」
「あーはいはい!!この話終わり!!バトルの話しよう!!」
なんていう会話をしてお昼を終える。
その後はバトルしたり、お互いの鍛えていないポケモンを鍛えたり、バトルの反省をしたりして、本日のネモとの修業は終了。
自分にとってもポケモンにとってもいい経験値になったと思う。
...
.....
.......
現在、イキリンコタクシーを使ってチャンプルタウンまで移動。
1回しか勝てなかったとはいえ、ネモの本気相手に3体を戦闘不能にまで追い込んだマリルリ。
そのアドバイスをくれた人にお礼が言いたくなった。
宝食堂の暖簾をくぐり、アオキさんを探す。
あの時と同じ、一番左端のカウンターに哀愁ある背中が鎮座していた。
店員の指示を受け、アオキさんの隣のカウンター席まで移動し、ゆっくりと座る。
「この間はありがとうございます」
「なんのことでしょうか?」
覚えていないらしい。
ジムチャレンジの都合上、それも仕方ないか。
「この前に助言を頂いたものです。おかげで本気のネモに勝てました」
「ネモ?...チャンピオンクラスの?」
「はい。お互いテラスタルなしでしたけど」
「そうですか。お名前を聞きいてもよろしいですか?」
なんで急に名前を聞くんだろう。
バトルしてみたくなったのかな。
「えと、スグリです」
「失礼ですが、アカデミーの生徒ではないように見えますが」
「今は旅をしていて。数日後にはブルーベリー学園に入学する予定なんです」
「ふむ」
と会話は打ち切られた。
この日は宝食堂でご飯を食べ、近くでキャンプをして就寝。
パルデアで暮らすのも、残すところわずか。
なんだか今になって涙が出てきそうだ。
...
.....
.......
体をうんと伸ばし、起床する。
パルデア地方を丸1日過ごせるのも今日が最終日。
明日には飛行機に乗ってキタカミの里に帰る手はずだ。
川辺で歯を磨き終え、テントを片付けようとしたとき
「すこし、よろしいですか?」
後ろから声を掛けられた。
こんな朝早くに誰だろうか。
振り返り、その人を確認すると
「はじめまして。スグリさんでよろしかったでしょうか」
「はい。そうですが」
褐色肌の海藻を頭からかぶったような女性がいた。
「私、こういうものです」
「ご丁寧にどうも」
名刺を手渡される。
中には【パルデア地方ポケモンリーグ委員長オモダカ】
と記載されていた。