冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
「リ、リーグ委員長...」
「ええ。それでなのですが」
「ちょ、ちょっと待ってください」
一旦心を落ち着かせ、机と二人分の椅子を用意する。
えーっと今出せるのは、緑茶でいいか。
「どうぞ、あと粗茶ですけど」
「ああ、これはどうも」
なんかつかみどころのない人だなあ。
フワフワしているんだけど地に足はついてるっていうか。
カップの緑茶をずずっと飲み
「それで、今日ここに私が赴いた理由なのですが」
「はあ」
リーグの委員長がここに来るぐらいだから相当な案件なんだろうか。
もしかして不法滞在を疑われている?
「アオイさんから、旅をしている友人がいるとお聞きして。スグリさんのこれまでの遍歴をお伺いしても」
「へんれき?」
「旅で何をしてきたか、ということです。難しく考える必要はありません。どこに行き、誰と出会ったかを私にお話しいただけませんか?」
「い、いいですけど」
っとそれからこれまでの旅のことをつらつらとオモダカさんに述べる。
『最初はカロスに行って...』
『そこでコルニって人と一緒にリオルを鍛えて。そいつが...』
『んで、カロスの旅が終わったから今度はガラルさ行って...』
『マスター道場ってところでアルバイトして。女将さんとは今でも連絡とってて...』
『雪原で元マクロコスモスの人に...』
『そういや、ピオニーって人とワイルドエリアで...』
なんて自分でも懐かしくなってくるような話を終え。
もう一度、オモダカさんに向き合う。
「ざっとこんな感じです。この話が役に立つかは、わかんねえですけど」
「ふむ」
と顎に手をおき、難しい顔をした後
「ありがとう。どれも興味深いものばかりです。叶うならもっと詳しく聞きたいものですが、私も本業がありますので」
「はあ。用件はこれでおわりですか?」
「いえ、実は本日ここに来させていただいたのには、もう1つ理由がありまして。スグリさん、ジムチャレンジを受ける気はありませんか?」
「はあ、え?ジムチャレンジ、ですか」
「ええ。私の部下からスグリさんがネモさんに勝利したとの話を伺ったもので。ネモさんご本人からも確認は取れています。その実力があれば容易いでしょう」
それとっと前置きし、オモダカさんがバッグの中から球体を取り出す。
これってアオイが持ってたのと同じやつか。
「テラスタルオーブ!」
「差し上げると言うわけにはいきませんが、チャンピオンクラスになるまでの間、リーグからこれを貸し出します。無論チャンピオンクラスになれたのであれば」
っと不敵な笑みを見せ、言葉を終わらせた。
これの続きはもらえるということだろう。
正直願ってもないチャンスではあるけど、それでも学校があるし。
「ブルーベリー学園のことならご心配なく。グレープアカデミーと学園はいわゆる姉妹校。ですので、多少の融通はきくでしょう」
「あー、そういえば、学校説明会の時に何か言っていたような」
「すでに保護者の方のご許可は頂いておりますので、スグリさんの自由意志ということになります」
「うむむ」
「あと、これは私の独り言ですが。もしチャンピオンクラスともなれば、立ち入り禁止の区画なども冒険できるかもしれませんね」
...
.....
.......
「もらっちゃったべ」
手にはテラスタルの結晶のように輝くオーブ。
向こうにどういう意図があるのかは読めないけど、もらえるものはもらっておきたい。
「今日含めて3日間でジムチャレンジを終わらせてえな」
とりあえずセルクルジムまでライドポケモンで移動しているけど。
このままなんの経験もなく、いきなり戦っても勝てるのだろうか。
...少し腕試しするか。
「ちょっといいですか」
とりあえずもふもふイーブイのリュックを背負う女の子に声をかける。
「え?うち」
「あ、はい。その暇だったらバトルとか...」
「ナンパ目的ならやめてほしいんやけど」
「いや、ナンパとかじゃなくて。テラスタル貰ったから腕試ししたくて。腕試しだから1体でいいんですけど」
少し考え、眉間に皺を寄せたのち。
「...いいよ。あんまりバトルしすぎないと腕が鈍るし」
バトルコートまで移動し、お互いにボールを構える。
「シャンデラ、頼んだ」
「ニンフィア、お願い」
ニンフィア。
イーブイの進化系ってことは、もふもふバッグよろしく、やはりイーブイ好きなんだろうか。
「うし、シャンデラ。早速テラスタルで」
と思い、オーブを見つめた時にふと気が付く。
そういやこれの使い方ってどうすればいいんだろうか。
オモダカさん、説明書とかくれなかったな。
一旦イーブイ好きさん(仮名)のもとに近づき
「え、ちょ、バトル中になに?」
「テラスタルってどうやって使えばいいんだべ?」
「え?は?知らないでバトル挑んだの?意味わからんよキミ」
「...申し訳ねえです」
「...うちがやるから見てて」
っとテラスタルオーブに光のエネルギーが集まっていく。
どうやら相当な出力らしく、イーブイ好きさんの体が不安定に。
思わず、両手で支えてしまった。
集まったエネルギーがニンフィアへと注がれ結晶化。
そこから現れたのは頭にハートを模した造形の彫刻のようなものがつけられたニンフィア。
以前、アオイとアオキさんのバトルで見たことがあるけど、やっぱり近くで見ると迫力が違う。
「ねえ、いつまで体触ってんの?」
「え、うわ。ごめん!」
「ほら、そっちもテラスタル」
手に持ったテラスタルオーブにエネルギーが集まる。
確かに振動こそ大きいけど、片手で抑えられないようなものじゃない。
オーブをそのままシャンデラに向かって投げる。
巨大な結晶ができたかと思うと、中から頭に斧が刺さったシャンデラが現れた。
心配で駆け寄る。
「シャンデラ、大丈夫か!?頭に斧刺さってるべ!」
「違う。それはがねタイプのテラスタルだからそうなってんの。よく見なよ、シャンデラには刺さってないでしょ」
「あ、ほんとだ」
なるほど、びっくりした。
気を取り直して
「...ごめん、待たせて。こっからバトルだから」
「待たせすぎやん。もう帰りたいから、さっさと終わらせるね」
「シャンデラ、シャドーボール!」
ネモと鍛えに鍛え、磨かれたシャドーボール。
並みの威力では収まらない。
「...こんな効くの!?ニンフィア、こっちもお返しでシャドーボール!!」
ニンフィアのとくこうから放たれるシャドーボール。
鍛えたシャンデラといえど、さすがにそう何回も耐えられないだろう。
だからここでジム戦に向けて朝から新調したとっておきの技。
「シャンデラ、テラバースト!」
はがねタイプのテラスタルから放たれる、結晶の一撃。
ニンフィアを戦闘不能にさせるには十二分の破壊力だ。
「来るかもしれんとは思ったけど。お疲れ様」
「お疲れ、シャンデラ!うっし、このままセルクルジムまで」
「待って」
「ん?」
っと後ろからイーブイ好きさんに声をかけられた。
散々振り回したので殴られるのかもしれない。
「今のバトル、なんか納得いかへん。やから、連絡先教えて。再戦するから」
「...いいけど。おれ明日明後日はジムなんだけど」
「いいから。スマホロトム出せ!」
「え、あ。ごめん」
スマホロトムを奪い去られ、そのまま連絡先を登録させられた。
「次は勝つから」
「は、はあ」
と踵を返し、どこかに行ってしまった。
怒らせてしまったかもしれない。
次回再戦の時にちゃんと謝ろう。
「やべ、そろそろジム行かねえど」
この地方のジムの強さがどんなものか。
少しの期待が胸を擽った。