冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第15話

オモダカさんからの指令であるジムチャレンジ。

特に危なげもなくセルクルジム、ボウルジム、ハッコウジムのジムをクリア。

それから一夜明けた今日この頃。

俺は朝から何をしているのかというと。

 

「え?普通に負けたんやけど?」

 

イーブイ好きさんと朝から肩慣らしとして6VS6でバトルしていた。

ネモとの修業のおかげで、バトル中の技の考え方の幅が大きく広がり、危なげなく勝てた。

 

「最近ジムチャレンジやってるからね。実力においては多少は自信あるべ」

 

一息つくために近くのベンチで腰を下ろす。

 

「まあ、元々旅してたっていうのもあるけど」

 

「ここらへんで見ないポケモン連れてるし、言葉遣いも変だと思ったら、そういうことね」

 

「...変っていうのは?」

 

「だべとかめっちゃ田舎くさいよ」

 

言葉のナイフが心に突き刺さる。

もしかして盤外戦術に切り替えてきたんだろうか。

 

「うぐ。直そうとはしてるんだけど、つい出ちゃうんだ」

 

「ちなみにどっから来たん?」

 

「キタカミの里」

 

どこそれとつぶやいた後、手元のスマホロトムをポチポチと触る。

しばらく探したのち、ようやっと見つかったらしい。

 

「ド田舎じゃん。周り山と畑しかないし。こんなんだとLPも使えないでしょ」

 

「...まあ」

 

「よくそんな田舎から出てこれたね」

 

と言ったあと何かにハっと気が付いたように

 

「あ、ごめん、今のは違くて」

 

「なにが?」

 

実際ド田舎でとても不便な場所であることに変わりはない。

都会暮らしが長く続いたなら多分あの場所は嫌になると思う。

なぜか少しの間沈黙が続いた。

 

「そういえば、ジムチャレンジしてるんでしょ。もう行かなくてええの?」

 

「バトルして体力使ったから。もうちょっと休んでから行く」

 

すぐに行ってもいいんだけど、相手はジムリーダー。

少し休んで万全の調子にした方が確実に倒せる。

 

「そう」

 

「だから、もうちょっと話してもいい?」

 

「え?まあ、いいけど」

 

緊張しているかしていないかでいえばしてるだろう。

大ポカして負けそうという不安が、じゅくじゅくと心の奥底でむしばんでくる。

 

「バッグとか手持ちでわかるけど、やっぱりイーブイとか好きなの?」

 

「まあ、それなりには」

 

「そっか。じゃあ手持ち以外だと、エーフィとかグレイシアとか家にいたりすんの?」

 

「いない」

 

「そりゃまた、どうして」

 

「エーフィは朝起きるの苦手だから。グレイシアは、こおりのいしって売ってないし」

 

そういえば、俺のバッグの中にまだ使ってない分の石が残ってたはず。

昨日のお礼としてちょうどいいかも。

 

「そういうことなら、これ」

 

奥底から引っ張り出すようにして、ひんやりとした冷たい岩石をとりだす。

 

「昨日テラスタル教えてもらったから、そのお礼」

 

「え、いいよ、別に。なんか怖いし」

 

確かに急に礼といってバッグの中身をプレゼントするのは怖いかもしれない。

少なくもそう感じる人だっているかも。

 

「あー。ごめん。急に距離詰めすぎた?」

 

「...まあ、そうかも」

 

なんか会話がぎこちないな。

と思って困り果てた時、ボールの中からブラッキーが出てきた。

 

「うお、どしたべ急に」

 

「ブラッキー。キミもつれてんだ」

 

「去年にガラルを旅しててさ。そこで弱ってたイーブイを保護したんだ。それが、いつの間にかおれの手持ちになってた」

 

イーブイ好きさんをくんくんと嗅いだ後、おれの方に向き直る。

 

「はは、お前、舌しまい忘れてんべ」

 

うちのブラッキーはよく舌をしまい忘れる。

ちょいちょいと触ってやれば口の中に戻すんだけど。

 

「それ、うちのサンダースもよくやるわ」

 

「イーブイだった時の癖とか名残なのかな」

 

「いや、知らんけど」

 

「あ、そう」

 

なぜいつも急に裏切るのだろうか。

 

「...さっきのこおりのいしも、この子に使うつもりだったんだ。この子自身もグレイシアに憧れたからさ」

 

顔の下や眉間をなでると、ブラッキーがぎゅるぎゅると喉を鳴らす。

 

「ようやっと見つかって。スキップしながらキャンプに戻ったらさ、ブラッキーになってた」

 

ワット兄弟になんとか掘り出してもらったけど、それまでは一向に出なかったしなあ。

夜起こすのも悪いかなと思って、ボールからだしてテントに置いて行ったけど。

今思うと絶対一緒に連れて行った方が良かった。

 

「なにそれ、ウケる」

 

「今でももうちょっと早かったらって思っちゃうからさ。それを断ち切るって意味も込めて、こおりのいし渡そうと思ったんだけど」

 

「...そういうことなら、貰っとく」

 

「いいの?さっきまで警戒してたのに」

 

「笑わせてもらったし、それも含めてね」

 

俺の手の中にあったこおりのいしを受け取り、イーブイのバッグに詰める。

時計を確認すると、もうそろそろ出発してもいい時間だ。

 

「じゃあ、おれ、ジムチャレンジ行ってくる」

 

「そっか」

 

「明日さ、空いてる?」

 

「空いてるけど」

 

「おれ明日もジム行くからさ。行く前に緊張ほぐしたくて。今日と同じ時間にまた会いたい。いい?」

 

「...朝弱いけど、それでもいいなら」

 

「マジか。ありがとう。それじゃおれ行ってくる」

 

ライドポケモンにまたがり、カラフジムまで行こうとしたとき。

 

「ボタン」

 

「ボタン?何の?」

 

「いやそうじゃなくて。ウチの名前。お互い名前言ってなかったし」

 

「おれはスグリ。ボタン、また明日ね」

 

「...うん」

 

振り返り、遠くなっていくボタンを確認する。

 

「...おれ、女の子誘っちまった」

 

今になって自分の大胆さに気が付いた。

いや、汗の酸っぱいにおいとエナジー系の甘ったるいにおいでごまかされてたけど、女の子じゃん。

 

「そういうつもりはなかったんだべ」

 

誰に言うまでもなく言い訳する。

こんな調子でチャンピオンクラスまであがれるのだろうか。

 

 

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