冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

16 / 44
第16話

ジムチャレンジ3日目。

昨日、ボタンと別れた後はカラフ、フリッジ、チャンプルのジムを攻略したので、残るジムは2つ。

個人的には今日中にはジムチャレンジを終わらせたい。

朝一で作った食パンを使うタイプのサンドイッチを頬張りながら、時間を確認する。

現在、ボタンとの約束の時間が来るまで、ベンチで腰を下ろしている最中なんだけども。

 

「来ないなあ」

 

ふと時計を見ると約束の時間からは数十分はすぎている。

さっき電話したのだが、折り返しなどはない。

 

「事故にでもあったんか」

 

ない話ではない。

実際スター団という不良集団がいるわけだし。

そういう事案があっても不思議とは思えないわけで。

 

「ご、ごめん!遅れた!」

 

っと考え事をしていたら、ボタンの重役出勤だ。

 

「...なんかあった?」

 

「いや、特になんともないけど」

 

「そっか。事故かなんかに巻き込まれたんでねえかって心配したべ」

 

「ほんと、遅れてゴメン」

 

なにか昨日一昨日と違うようなぎこちなさがある。

何か自分の中のモヤモヤに取りつかれているような。

目の前のことに集中できないような雰囲気だ。

 

「話聞いた方がいい?」

 

「いや、大丈夫。そういうんじゃないから」

 

「うん。じゃあ、話したくなったら話してくんろ」

 

ボタンは語気に出るからわかりやすい。

特にマイナスの部分が。

 

「今日はバトルはどうする?」

 

「うーん、今からやったらジム戦がギリギリになるから今日はいいや」

 

「わかった」

 

「その様子だと朝ごはん食べてきてない?なら、ほい」

 

バケットの中に残り数個のサンドイッチを見せる。

 

「なにそれ、朝から作ったん?」

 

「まあね。好きなだけとっていいべ」

 

「ウチ、人が握ったおにぎりとか食べられないタイプやから」

 

「そっか。残念」

 

元々田舎で暮らしていたせいか、最近の若者の感性に疎いんだよなあ。

どうにかアップデートしてるんだけど。

 

「あの、なんか、ジム戦で手伝えることある?」

 

「...手伝えること」

 

「遅れてきたし、お詫びというかさ。今日一日は空いてるし、手伝いぐらいはできるよ」

 

「ふーむ」

 

とは言っても、何を手伝ってもらえばいいんだろうか。

今困っていることといえば、テラスタル関連のこととか。

あと四天王、チャンピオン戦に向けての調整とか。

 

「テラスタルの使い方とか?あとは...四天王に向けての調整がしたいんだけどさ」

 

「わかった。とりあえず、ジム戦着いて行っていい?」

 

「何すっかわかんねえけど、あんがと」

 

スマホロトムの時計を見直すと、もうそろそろ出る時間だ。

 

「うし、じゃあ行くか」

 

「...ちなみに、今はどこまで行けてるの?」

 

「昨日はフリッジまで行った。今日には残りのベイクとナッペ山に行きてえ」

 

「めっちゃペース早いやん。なんかあんの?」

 

「行きたい場所があるのと...バトルしたいやつがいる。だから早くチャンピオンランクになる」

 

二人でライドポケモンにまたがり、ベイクジムへと向かう。

果たしてボタンは何をしてくれるのだろうか。

 

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

あれから数時間後。

現在、お昼終わりということもあってか、ガラガラのファミレスで一息つく。

ベイクジムとナッペ山ジムの攻略にはそう時間はかからなかった。

どちらかというとジム戦よりエクササイズやスキーの方が難しかった。

ガラルの雪原でスキーした経験がここで活きるとは。

ボタンは相変わらずスマホロトムをポチポチと触っている。

 

「これで完了やね」

 

「え?」

 

何かが終了したらしい。

画面を覗き見ようとすると

 

「勝手にみんな」

 

と手で押さえられてしまった。

 

「細かい手持ちはわからないけど、四天王のタイプは順に、じめん、はがね、ひこう、ドラゴン」

 

画面を操作しながらボタンは続ける。

 

「今のスグリの手持ちだと、くさタイプとこおりタイプの技がないから、そこを埋めなきゃきついと思う」

 

「具体的には?」

 

「シャンデラにエナジーボール。ルカリオにれいとうパンチ。あとはヌメルゴンのりゅうせいぐんはりゅうのはどうにして継戦能力を高くした方が、ドラゴンタイプで困らんね」

 

「でもシャンデラがじめんタイプの技なんてまともに食らったら」

 

「だから、テラスタイプを変える必要があるね。シャンデラはひこうテラス。ルカリオはフェアリー。あと、ヌメルゴンをどうするかなんだけど」

 

と過去のデータや四天王がメディア露出した際に使用したポケモン、ネットの情報など。

様々なものにフォーカスして、ボタンと作戦を立てていく。

 

「ざっとこんな感じ」

 

「不安だったところが全部修正されてる!すげえ!」

 

「まあ、こういうのは得意やし」

 

「ありがとう。これで勝てる」

 

「うん」

 

と朝と似たようなテンションに戻る。

また何かを思い出したんだろうか。

 

「朝さ。遅れてきたやん。そのことなんだけどさ」

 

話す気になってくれたらしい。

 

『...』

 

ボタンが学校で起きたことについてかいつまんで説明してくれた。

昔のいじめについてと、それに対しての仕返しが大事になったこと。

それらすべてが隠蔽されたこと。

 

「...昨日とかに、ふと考えてさ。ベタなやつだけど、みんな優しいから口には出さないけど...とか。別のやり方とかさ」

 

「おう」

 

「いじめられてた理由も、なんとなくわかってて。ウチのこういう性格が災いしたんだって」

 

うつむきながら、ボタンは最後の言葉を吐き出す。

 

「そういうの考えてたら、なんか眠れなくて。それで遅れた」

 

「...そっか。ありがとう、話してくれて」

 

しばしの沈黙。

何かを言わんとするが言葉が出てこない。

...正直に思ったことをありのまま言うとしよう。

 

「おれさ、ボタンの事見直した」

 

「見直す?なんで?」

 

「そうやって、みんなのために立ち上がって、引っ張っていけるっていうのはわやすっげえことだ。おれにはできねえ」

 

「...うん」

 

「未来のこと言い訳にして、自分には無理だって考えて何もしない奴は大勢いる。でもそんなやつがいっぱいいる中で、立ち向かった」

 

「...うん」

 

「確かに、たまに心に来ること言うけど、それも含めてボタンの魅力だ。自信持て。その人たちも絶対に感謝してる!」

 

ボタンが何も言わない。

顔はうつむいて見えないようになっている。

 

「それに、今日もおれの約束に付き合ってくれたべ。優しい奴だよ、ボタンは」

 

「...ごめん。今の顔見せられん」

 

鼻声でそう言葉が返ってくる。

少し時間がたったのち、顔を上げる。

目元と耳が赤くなっている。

 

「ほんと、むかつく」

 

「ええ、褒めたのに」

 

「うっさい。今日はスグリのおごりね」

 

「なして...」

 

と理不尽に怒られた。

この日は結局俺のおごりとなり、ボタンの指示通り、宝食堂でテラスタイプを変更した。

運命...とまではいかないけど、初めての四天王&チャンピオン戦。

今まで以上に勝ちたいという気持ちが大きくなる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。