冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第17話

四天王・チャンピオン戦、当日。

疲れもあったのかぐっすり眠れて、体調も万全。

道中の事故を防ぐためにもそらとぶタクシーでポケモンリーグまで移動。

かいふくの道具と自分の身なりを確認し、玄関前の男性に話しかけようとしたとき。

 

「ちょっと」

 

後ろから3日前から聞いた声が。

振り返り確認すると。

 

「ボタン。来てくれたのか」

 

「今日チャレンジって言ってたし。...後ろの襟、変な形になってるよ」

 

「ほんとだ。ありがとう」

 

襟を正し、ボタンに向き直る。

 

「まあ、その」

 

とモジモジして何も言わない。

何かを言い終えるまで、その場でまっすぐボタンを見つめる。

 

「頑張って。スグリなら勝てるから」

 

「おう!絶対勝つ!...ニヘヘ」

 

大事な場面での応援なんてされたことがなかった。

なんだか心に自信というか活力が満ちてきた。

今度こそ、リーグ前の男性に話しかける。

 

「ポケモンリーグ、チャンピオンテストに挑戦なさいますか」

 

「はい」

 

「...ブルーベリー学園のスグリさんですね。お持ちのジムバッジは8個。それでは、面接室へお越しください」

 

ボタン曰く、相当ふざけた回答をしない限りはおとされないらしいが、緊張してきた。

面接室の前まで行き、軽くノック。

 

「どうぞ、お入りください」

 

「し、しつれいしましゅ」

 

きれいに噛んだ。

ドアを開け、中に入ると長髪緑髪の女性がデスクに鎮座している。

恐る恐る椅子の横へ。

 

「本日はお越しくださいありがとうございます。どうぞおかけください」

 

「はい。失礼します」

 

俺が座ったことを確認すると、まっすぐに双眸を捉え。

 

「これよりチャンピオンテスト一次試験、面接テストを行います。お持ちのジムバッジは、おお8個ですか」

 

というよりちゃんと8つないとこの時点で不合格確定らしい。

 

「今からスグリさんにいくつか質問をさせていただきます。回答によってはその時点でテスト不合格になる場合もございますのでご注意ください」

 

バクバクとなる心臓を落ち着かせる。

大丈夫、真剣に答えれば落ちることなんてない。

 

「では、始めさせていただきます」

 

「は、はい」

 

蚊の鳴くような声で返事してしまった。

幸先が悪いという次元じゃない。

 

「本日はどのようにしてお越しくださったんですか?」

 

「そらとぶタクシーを使ってリーグまで来ました」

 

「それはいいですね」

 

何かがいいらしい。

よくわからないけど。

 

「現在通われている学校のお名前を教えてください」

 

「ブルーベリー学園です。本当は昨日には編入する予定だったんですけど、オモダカさんからチャンピオンランクにならないかとお誘いを頂いて」

 

「そうでしたね」

 

とこちらに笑顔を向けてくれた。

少し肩から力が抜ける。

 

「本日はポケモンリーグに何をしに来られたんですか?」

 

そんなもの、一択しかない。

 

「チャンピオンになるため...です」

 

「ええ、ええ。それ以外ありませんよね」

 

至極当たり前というように返された。

みんなそのつもりでこの椅子に座る。

でも、いつだってその夢をくじいてきた。

そんな人が目の前にいる。

 

「では、チャンピオンになって、どうなさるおつもりですか?」

 

「...それは、少し考えてもいいですか」

 

「どうぞ。お考え下さい」

 

頭の中の言葉をまとめる。

俺は何をしたいのか。

1つとは言えない。

自分の中にあるもの、全部やりたい。

 

「チャンピオンになって。友達と全力のバトルして、未開の地も冒険してみたいです」

 

「なるほど、そうですか」

 

この回答で正解なのか不安になる。

二人で対面となると、第三者の反応が見られないからだろう。

 

「続いて、8つのジムの中でもっとも苦戦したのはどこですか」

 

「えっと、ハッコウジムです」

 

正直どこもあんまり苦戦という苦戦はなかった。

だから一番印象に残っている人を出す。

 

「ではそのジムで勝負したジムリーダーは?」

 

「ナンジャモさんです」

 

「うん、しっかりと覚えていますね。ではナンジャモさんのポケモンのタイプは覚えていますか?」

 

「でんきタイプです」

 

「素晴らしい」

 

本当に思ってる?と聞きたくなる。

 

「スグリさんの手持ちで最も印象に残っているポケモンを教えていただけますか?」

 

「...オオタチです。いつでもどこでもこの子と一緒でした」

 

「そうですか、そうですか」

 

まだまだ面接は続く。

早く終わってくれ。

 

「もう一度お聞きします。チャンピオンになってどうなさるおつもりですか?」

 

「友達と全力のバトルして、未開の地も冒険してみたい...です」

 

「すみません、そうでしたね」

 

どうして一度聞き直したの?

もしかして何か失敗した?

 

「それでは最後の質問です。スグリさん...ポケモンはお好きですか?」

 

「はい!」

 

頼む、合格であってくれ。

面接官さんの確か、チリさんだったかが両目を閉じる。

しばらくの沈黙。

静まり返る空間。

耐えきれなくなりそうなとき、チリさんがふと表情を柔らげ

 

「おつかれさん。以上で質問は終いや。スグリ、おめでとさん」

 

「え?てことは」

 

「おう。一次試験、面接テスト合格や」

 

肩から一気に力が抜けた。

最高潮だった鼓動がだんだんと落ち着いていく。

 

「一発合格。最近は豊作やなあ」

 

チリさんのコガネ弁だろうかで、さらに力が抜ける。

 

「さ、気持ち切り替えて、二次試験。その名も実技テスト。ポケモンリーグ選りすぐりの4人のトレーナーとの連続勝負!」

 

ついに来た。

むしろこっちが本命とまで言える。

 

「しっかり準備してから、奥の部屋へ進みや」

 

ゆっくりと椅子から立ち上がり、軽くストレッチ。

ボールの中にいるメンバーに声をかける。

 

「頼むぞ、みんな」

 

頬を両手で軽くたたき、奥の扉を開けた。

すると後ろからチリさんが

 

「なんや、もう行くんかいな」

 

「...はい」

 

バトルコートの先、四天王側の場所まで細くて長い足を動かす。

しかし、体格には見合わない威厳があった。

 

「ほな行くで。四天王の露払いはこのチリちゃんや。うんとかわいがったるから、精々...気張りやあ!」

 

四天王戦、第一戦目。

チリさんとのバトルがスタート。

 

「ナマズン!」

 

じめん・みずタイプのナマズン。

やはりじめんタイプ主軸。

それならこっちも対策通りいかせてもらう!

 

「...よし、シャンデラ、行ってこい!」

 

すばやさはこっちのほうが断然上。

それにこっちには

 

「シャンデラ、エナジーボール!」

 

みずとじめん両方こうかばつぐんのエナジーボール。

ナマズンでは耐えきれるわけもなく、戦闘不能。

 

「ほーん、やるやん。ほんなら、バクーダ!」

 

今度はじめん・ほのおタイプのバクーダ。

テラスタルは切りたくないので一度下げる。

 

「いったん戻って。出てこい、マリルリ!」

 

「なんの!ラスターカノン!」

 

はがねタイプのとくしゅ技。

もう2発は確定で受けきれる。

 

「お返し。マリルリ、アクアブレイク!」

 

アクアジェットよりも強い水をまとった一撃。

これもじめんとほのおの両方こうかばつぐん。

二体目のバクーダも戦闘不能。

はらだいこは決まった時が強いけど、負けることが許されない四天王戦では少し相性が悪い。

だから技を威力も命中も安定してるアクアブレイクに変更した。

 

「うし!」

 

こっちはほとんど損失なしで向こうは2体戦闘不能。

このまま流れで押し切る!

 

「んん、流れが悪い。ドンファン、張り倒せ!」

 

じめん単タイプのドンファン。

ぼうぎょとこうげきが優秀なポケモン。

すばやさはマリルリとおなじぐらい。

後ろのルカリオでも対処はできるが、どうする。

 

「ドンファン、じしん!」

 

隆起した地面がマリルリを襲う。

正直耐えられなくても文句は言えない。

 

「耐えた!...ならアクアブレイク」

 

ネモとのトレーニングの賜物だ。

うちのポケモンたち全体の強さが前とは違う。

しかし、向こうのドンファンもそれは同じ。

 

「悪いけど、こっちもむざむざ倒れられんでなあ!」

 

ほとんと重傷だがギリギリ耐えている。

でもそんなことは関係ない。

 

「知るか!アクアジェットで押し込め!」

 

マリルリのアクアジェットにより、今度こそドンファンは戦闘不能。

こっちは残りが6体のうち1体が重症。

むこうは5体のうち、3体戦闘不能。

 

「勝つぞ!」

 

誰に言うまでもなく、声を張り上げる。

ボタンやネモ、みんなに背中を押されてんだ。

 

「...ダグトリオ!」

 

すばやさの高い、じめんタイプのポケモン。

なら少しでもダメージを稼いで、次のポケモンに繋げよう。

 

「マリルリ、アクアジェット!」

 

さすがにぼうぎょは弱いらしく、もうすでに8割は削れているような状態になった。

これならいける!

 

「ダグトリオ、よう耐えた!じしん!」

 

さすがに今度は耐えきれない。

マリルリが戦闘不能に。

 

「お疲れ様」

 

「ようやっと1匹かいな」

 

と愚痴を漏らす。

次はだれを出すか。

やはりここはルカリオで先手で沈めてもらおう。

 

「行ってこい、ルカリオ!」

 

ここで出すのは当然あの技。

 

「しんそく!」

 

目にも止まらない一撃。

ダグトリオが戦闘不能。

さて、最後の一匹になったのだが。

 

「戻れ。シャンデラ、終わらせろ!」

 

こっちの大本命を出す。

このためにこいつを調整したといえる。

 

「ドオー、かましたれや!...そんでもってテラスタル!」

 

ヌオーのパルデアでの姿。

じめん・どくタイプの複合で、すばやさを捨てた代わりに他が強い。

向こうはじめんタイプのテラスタルでさらにじめんの強さを高めてきた。

でも今は関係ない。

 

「キンキラキンに輝け、シャンデラ、テラスタル!」

 

テラスタルオーブに集まるエネルギーを抑えこみ、シャンデラに投げ込む。

まばゆく輝く結晶から、ひこうテラスのシャンデラが現れる。

 

「くー、やっぱ対策バッチリかいな!!」

 

「当然!シャンデラ、エナジーボール!」

 

くさタイプのとくしゅ技による一撃。

もう一発で確実に倒せる!

 

「ドオー、アクアブレイク!」

 

ほのおタイプなら倒されていただろう。

 

「シャンデラ、ここで決めろ!エナジーボール!!」

 

再度放たれたエナジーボール。

ドオー戦闘不能。

...勝った。

 

「よっしゃあ!よくやったシャンデラ!!」

 

抱き着く。

心なしかうれしそうだ。

ボールの中に戻し、チリさんの方を見ると。

 

「はあー、ここまで完膚なきまでにやられるとは。チリちゃんめっちゃショック」

 

「...多分前のおれなら負けてました。でも、今は友達がいるから」

 

「なんやそら。...ええやん!」

 

ぱちぱちと手を叩き、俺を祝福してくれる。

 

「ほんなら、次呼ぼか。言っとくけど、二人目はもっと強いで」

 

この人より強い相手。

どんな人が来るんだろう。

 

「おーい、次!出番やー!」

 

と奥の扉から、小さな女の子が出てきた。

 

「チリちゃん、負けちゃったんです?」

 

「おう。この子もごっつ強いで。油断しなや」

 

「はいですー」

 

「見学してるし。仇頼むでー」

 

とチリさんが横にはけていく。

確かこの人が四天王のポピーだったか。

メディアにあまり露出していなかったのは未成年だったから?

だとしたら納得できるけど。

少し息を整え、ポケモンたちを回復させる。

次もこの調子でいこう。

 

【四天王戦 一人目・撃破】

 

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