冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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閑話 -旅に出て、1ヶ月ごろ-

 

これは2年前、カロスを旅していたころ。

家を出て、一か月が経過しようとしていたころ。

 

「オタチ、ヌメラ。ごはんだべ...あときみも」

 

昨日であったリオルに声をかける。

お腹がすいて動けないところを俺が保護し、それから一緒に行動している。

見つけた時、ノートに書いてあったレシピ通りに雑炊を作ったらお気に召したらしく、ガツガツとむさぼりすぐに2杯目を要求された。

 

「...そろそろ、トレーナー探さねえとな」

 

トレーナーがほかにいるらしく、昨日捕まえようと思ったらボールがはじかれてしまった。

 

「...みんな食い終わったか?ならそろそろ出発するべ」

 

あれこれと考えていたら、無意識のうちに食事と片づけを終わらせていた。

しかし、どうしたものか。

 

「この先にポケモンセンターは、もうちょっとかかるんだっけか」

 

行先には少し遠回りになるが、一旦そこに立ち寄ろう。

うっそうとした森の道なき道を行く。

 

「はやく見つかるといいな」

 

そういうと、リオルが少し暗い顔をする。

よくわからないが、向こうにも事情があるらしい。

 

「っとあぶねえ」

 

先に進もうと思ったら、崖際だ。

こうなると、別の道を行くしかないのか。

振り返り、回り道をしようとしたとき。

強烈な羽音が聞こえた。

嫌な予感がする。

 

「ス、スピアー」

 

木々の間から、巨大な針をつけた虫ポケモン。

スピアーが現れた。

 

「に、にげ!」

 

慌てて移動しようとしたとき、足がもつれてしまう。

転んだ勢いで、そのままがけから転落。

 

「うそ」

 

今までの記憶がよみがえる。

走馬灯というやつだろうか。

落ちていく途中で、今までのことを思い出す。

崖から手を伸ばすリオルが見える。

...ここで、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

 

目を覚ます。

体をゆっくりと起き上がらせ、現状を確認する。

木造の家...だろうか。

窓の外は森が広がっている。

 

「起きた?」

 

「ひっ」

 

誰かに声をかけられた。

額の上に大きなサングラスをつけたトライテールの女性。

 

「...木の上で気絶してたんだけど。何かあったの?」

 

「え、と、あの。スピアーに追いかけられて」

 

「ここらへん生息地だからね。...あ、そうそう。この子が見つけてくれたんだ」

 

と後ろからリオルがひょっこりと顔を出す。

昨日から一緒に行動してたリオルだろうか。

 

「一昨日ぐらいから、急にいなくなって探してたんだけど。もしかしてきみが一緒にいてくれてた?」

 

「あ、あの、はい。そです」

 

「やっぱりそうなんだ。この子、おくびょうな子でさ。あたし以外の人には滅多に懐かないからそうじゃないかと思って。ありがとう」

 

「いえ、その、どういたしまして」

 

「そういえば自己紹介してなかったね。あたしコルニ。きみは?」

 

「ス、スグリです」

 

「顔が赤いけど、もしかして熱がある?」

 

とずいっと近寄ってくる。

柑橘系のフレッシュな香りが鼻孔をくすぐる。

 

「いや、あの、近いです。それが、その」

 

「...恥ずかしがり屋さんか。なるほどね」

 

何も言えない。

こういう元気な人はどうも苦手だ。

 

「あの、お世話に」

 

とベッドから降りようとしたとき、痛みが走る。

耐えきれないほどじゃないけど、とにかく痛い。

 

「ッコラコラ、まだケガは治ってないんだから、安静にしなさい」

 

「...ハイ」

 

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

 

それから3日ほどたった後。

 

「へー、キタカミの里。全然知らない」

 

「知らない人の方が多いと思います」

 

「それで、なんで旅しようと思ったの?」

 

「...元々は人に誘われたからなんですけど。いつまでも姉ちゃんの後ろに隠れているの自分が嫌だったり。里のことも少し苦手だったり」

 

本日使う分の薪を割りながら、コルニの質問に答える。

 

「うまく言えねえんですけど。旅さして、強くなりてえって」

 

「...そっか」

 

少し考えたあと、思いついたかのように

 

「実はあたし、ジムリーダーなんだ」

 

「え!?」

 

「きみが保護してくれてたあの子を鍛えるために山籠もりしてたんだけど、うまくいかなくてさ。もしかしたら、君とならあの子も強くなれるかも」

 

「強く」

 

「もう少しだけ、ここで過ごしてみない?」

 

願ってもない。

本来ならお金を払ってもできないようなことである。

 

「えと、お願いします」

 

「よし、体はもう大丈夫そうだし、明日からビシバシ鍛えていくよー!!」

 

 

 

この日から、コルニによる特訓が始まった。

 

 

 

「リオル、はっけい!」

 

「そんなんじゃ、響かないよ!コジョフー、けたぐり!」

 

 

 

「あと腕立て100回!頑張ってー!」

 

「はあ、はあ...」

 

 

 

肉体こそまだ耐えきれていたが、先に心が耐えきれなかった。

 

「ぐす、おれ、やっぱり無理だ」

 

目の前が涙で見えない。

連日のバトルでの負けと、肉体の酷使が響いて心が折れてしまいそうだった。

月明かりの中、ウッドハウスの近くに岩陰で涙を流す。

そんな俺に近づく影。

 

「...リオル」

 

木の実を差し出してくれた。

目を見ると、こちらを心配してるのが伝わってくる。

 

「あんがと」

 

涙をぬぐい、出された木の実をかじる。

酸っぱくて苦々しい。

でももう少しだけ頑張りたくなってきた。

 

「そうだ。お前が折れてねえんなら、おれも折れねえ」

 

「...大丈夫?」

 

「ひゃあ!?」

 

「驚きすぎでしょ。...ごめんね、アタシ人を教えたこととかなかったからさ。もしかしたらすごくスパルタかもしれない」

 

「いや、今まで甘えたちゃんだったおれには、これぐらいがいいべ」

 

「あんまり自分を卑下しすぎちゃダメだよ。そうやって前の自分ばっかり見つめてるとひん曲がっちゃう」

 

「うす」

 

「それじゃあ、今日はもう寝よう?」

 

「わ、わかった。おやすみなさい」

 

 

 

なんてことを半月ほど行ったある日。

薪を切っていた時に、リオルが急に光りだした。

 

「え、なに?」

 

あまりの衝撃で理解が追い付かない。

光が落ち着いたかと思うと、中から先ほどとは体格の違うポケモンが。

リオルの進化系、ルカリオである。

 

「し、進化だ。初めて見たべ」

 

ドタドタと家の中から騒がしい足音が聞こえてくる。

 

「もしかして、進化した!?」

 

「あ、うん」

 

「うわー、見逃しちゃった。...でも、とうとう時期が来たってことだね。来て」

 

っと家の中へと押し込まれた。

コルニがタンスの中をごそごそとあさり、何かを取り出す。

 

「これ」

 

何か石のようなものがついたグローブとそれに似た丸い石をつけたチャーム。

 

「コルニ流、免許皆伝、おめでとう」

 

「く、くれんの?」

 

「うん。でも多分まだ使えないと思う。いつかスグリとルカリオがもっと強くなった時のために取っておいて」

 

コルニが俺の肩に手を置き、告げる。

 

「これからの旅、さらなる苦難があると思う。でも、強くなった君ならきっと乗り越えられる!」

 

目元には、少し涙がにじんでいた。

 

「ぐす、なんだか、少し寂しいけど、これで修業は終わり。よく頑張ったね!」

 

コルニとルカリオから抱きしめられる。

不思議と恥ずかしさは一切なく、感動だけが心を満たしていた。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

その翌日、荷物をまとめ出立の時。

 

「いままで、お世話になりました」

 

「困ったことがあったら、いつでも相談に乗るから!

 

「...うん」

 

「行っておいで、あたしの一番弟子!」

 

そばを歩く、今は俺のポケモンとなったルカリオ。

あのときのおくびょうな背中はもうない。

頼もしさすら感じてしまう。

 

「次は、どこに行こうか」

 

旅はまだ続いていく。

 

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