冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第2話

パルデア行きの飛行機を降り、少し寄れたリュックを背負いなおす。

 

「すっご」

 

今まで行った地方とはまるで違う風景に目を奪われる。

パルデアの太陽は沈まないと聞いたが、それもうなずけるほどの情熱を感じる。

 

「えっと、近くのポケセンって。あ、パルデアのポケセンって泊まれないって聞いた気が」

 

とりあえず適当な宿泊できる施設を探そう。

...ボールがひとりでに揺れだす。

そういえば忘れてた。

 

「おいで、オオタチ」

 

あの時...アデクさんと別れてからすぐ、帰宅したじいちゃんに旅に出たいって伝えた。

最初は反対されたけど、俺がやりたいことを見つけたのがうれしかったのか、最後には笑って送り出してくれた

姉ちゃんには気が付かれないようにこっそりと準備を進め、2年前の明けの明朝に出発。

旅に出た当初、姉ちゃんからは実家に電話するたびに今どこにいて何してるのかを事細かに聞かれていたが、今ではそれすら懐かしい。

 

あの時からずっと一緒のこいつも今では進化してオオタチになっている。

長い体をさらに長く引き伸ばし喉がキュイっと鳴る。

適当に街をぶらつこう。

イキリンコというとりポケモンのタクシーに乗り、発展している町へ。

到着した場所は、ハッコウシティ。

 

「やっぱ、パルデアって都会だべなあ」

 

安いホテルでチェックインを済ませ、街を散策する。

そういえばそろそろ着替えがよれてきた気がしてきた。

ここいらで新調するのもいいかもしれない。

ブティックの前まで行くとガヤガヤと中も外もなにやら騒がしい。

 

「皆の者ー! 準備はいーいー?あなたの目玉をエレキネット!何者なんじゃ?ナンジャモです!おはこんハロチャオー!ナンジャモの~?ドンナモンジャTVの時っ間っだぞー!」

 

頭にコイルをつけた変な服装な女性がなにやらはしゃいでいる。

カメラスタッフがいるのでテレビ撮影だろうか。

 

「今日の企画は、題して『ナンジャモが服をプロデュースしてみた!』」

 

携帯端末も何も持っていないので知らないが、有名人らしい。

ホテルのテレビやパソコンで見たことがある。

でも、俺には関係ない。

服は諦めて野生のポケモンでも探しに行こう。

 

「そこのミノムッチヘアの少年!」

 

ばっちりと目が合う。

そんな髪型に見えるのか。

ふよふよと浮くカメラが俺を捉えるので思わずオオタチでガードしてしまった。

 

「おっと、撮影はNGだった?」

 

「いや大丈夫だべ。じゃなくて、大丈夫です。ちょっと恥ずかしくて」

 

ナンジャモさんだったかが、俺のすぐそばに寄ってくる。

いつの間にか周りにいた人たちも離れていた。

 

「ち、近いべ」

 

「おっと、これはかなりの恥ずかしがり屋さんと見た。ではでは、自己紹介お願いしていいかな?」

 

「スグリです。キタカミの里から来ました。こいつは相棒のオオタチです」

 

「やっぱり外国出身かー。オオタチを連れてる人って珍しいからさ。パルデアには生息してないんだよねー」

 

キュイっと喉を鳴らし、ナンジャモに返答する。

 

「ではでは、待ちきれない視聴者のために、早速プロデュースしちゃいましょう!」

 

何の企画かの説明をされていないのに勝手に始まってしまった。

 

 

 

 

 

...

.....

......

 

 

 

ひとしきり着せ替え人形になった後、

 

「じゃじゃーん、完成!」

 

鏡の前には、タンクトップの上に着崩したパーカー。

下はダメージジーンズで厚手のスニーカー。

なぜか髪は後ろでまとめておでこが前面に出てしまっている。

都会では変わった服装がはやっているんだな。

 

「どうどう?いいと思わなーい?」

 

「え?」

 

「さっきまでの田舎っぽさが吹っ飛ぶほどの、ザ・ナウヤンスタイル!これにはしびれる魅力10万ボルト!」

 

「おも、思います。です」

 

「でしょでしょー」

 

周囲からの視線がビシビシと刺さって恥ずかしい。

オオタチが身を寄せてくれていることで何とかなってるけど。

 

「ってなわけで、あなたの目玉をエレキネット!エレクトリカルストリーマー!何者なんじゃ?ナンジャモです!まったねー。ほらほら、こっち」

 

肩を引き寄せられた。

顔が余計熱くなってしまう。

 

 

...

.....

.......

 

 

 

文字通り嵐にあったかのような瞬間だった。

代金は向こう負担でプレゼントということでまるっといただけるらしい。

ショーウィンドウに映る自分に視線を向ける。

 

「...似合って...る???オオタチ」

 

オオタチに聞いても眉間に皺を寄せた難しい顔で首をかしげる。

コメントに困っている様子だ。

 

「なんか落ち着かねえ」

 

新品特有のパリッとした着心地と絶妙な動きにくさが落ち着きのなさを加速させる。

 

「そういや女の人に服さ選んでもらうの、姉ちゃん以外だと初めてだべ」

 

ナンジャモのきらびやかな視線と目が合った瞬間や近づかれた時のフレッシュな香りを反芻する。

 

「すっげぇいい匂いしたな」

 

今になって自分の態度がすごく嫌になってきた。

なんでオオタチを盾にしたんだ。

 

「うう~」

 

ぐるぐるする思考に追い付かず、頭を抱えてうなってしまう。

恥ずかしくてたまらない。

 

「...また、会えるかな」

 

会えるといいな。

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