冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
「...ルカリオ、かませ!インファイト!!」
そう指示を出すと、一瞬でドドゲザンの懐に入り込む。
目で追いきれないほどではないが、電を思わせる速度だ。
そこから拳と足によるラッシュが叩き込まれ。
「ド、ドドゲザン!」
最後のアッパーで甲冑のような肉体が宙を舞う。
かくとうタイプに弱いドドゲザンに上乗せでメガルカリオのてきおうりょく。
どんなポケモンでもこれを食らって生き延びれるはずがない。
「...メガシンカ。コルニさんの名が出た時、そして最初にルカリオを出したとき、まさかとは思いましたが」
ドドゲザンに労いの言葉をかけ、ボールへとしまう。
今のインファイトによって、ルカリオのぼうぎょ、とくぼうは一段階下がってしまった。
決めきるならあと3手、もしくは2手か。
「キラフロル、出番ですよ」
出てきたポケモンは、オモダカさんを模したかのようなポケモン。
いわ・どくタイプ複合のポケモンで、主なとくせいはどくげしょう。
ぶつりの技を受けた時にどくびしをまき散らす。
今は俺もオモダカさんも残り1匹なので関係ない。
「トレーナーを導く光あれ。キラフロル、テラスタル!」
テラスタルオーブにエネルギーが集まっていき、それを投球。
結晶の中からは頭にいわタイプのテラスジュエルを着けたキラフロルが出現した。
「こっからだ。...ボルテージを上げろ!!」
声を張り上げる。
向こうはいわタイプでこっちはかくとう・はがね。
追い風が吹いてきている。
「ルカリオ、バレットパンチ!」
弾丸どころではない。
大砲のごとき破壊力の一撃をキラフロルに刻む。
まわりにどくびしが散らばるが知ったことか。
「キラフロル、だいちのちから!」
じめんタイプでこうかばつぐんをついてきた。
メガシンカしてもこうかばつぐんは痛いらしく、少しひるむ。
だから、次で確実に決める。
「決めるぞ!!」
今ならルカリオの一挙手一等足がわかる。
次にどんな動きをするのか。
俺のどんな指示を待っているのか。
「インファイトォオ!!」
まだ勝っていないはずなのに、勝利したかのように叫ぶ。
「いっけえええ!!!」
ルカリオの雄たけびと俺の声がリンクし、キラフロルにラッシュを叩き込む。
一撃一撃に俺たちの想いと旅の遍歴が乗っている。
だから、これが耐えきれるわけがない。
コート外まで吹っ飛ばされたキラフロルは立ち上がることなく、オモダカさんのボールにしまわれた。
「...素晴らしい。想像をゆうに越える」
「やったぁ...」
驚きと感動が心を同時に満たした。
ルカリオもメガシンカを解く。
「すっげぇよ、ルカリオ」
ルカリオも嬉しそうにこちらを見てほほ笑む。
すたすたと近づき、抱きしめられた。
「ああ、ありがとう。おつかれさま」
背中をなで、ボールへとしまう。
「素晴らしいキズナ。パルデア地方にまた偉大なトレーナーが誕生しましたね」
オモダカさんが拍手で祝福してくれる。
「へへ」
といった瞬間、体から力が抜けた。
おそらくテンションを上げすぎたんだろう。
後ろに倒れそうになった時、誰かに支えられた。
「...おめでとうございます」
「アオキさん」
「ぐ”、小生、涙が”」
「ほんまにおめでとうさん。最後すごかったなあ。はじめて見たわ、メガシンカ」
「おにーちゃん、やりましたの!」
「たとえ外国から来ても、パルデアでポケモンバトルをするトレーナーは等しくパルデアの宝物」
オモダカさんが拍手の手を止め、いつの間にかおれの前まで来ていた。
アオキさんに礼を告げ、自分のちからで立つ。
「その中でチャンピオンはひときわ輝く存在。パルデアのトレーナーたちをその背中で導いてくださいね」
「はい!」
「スグリ君、動けるかいな?」
「あ、はい。もう大丈夫です」
「ほな、写真撮りに行こか」
...
.....
.......
チリさんに連れられ移動した場所は、写真館のような部屋。
「あんさんは、戸籍が外国のもんやからなあ。トラブル避けるために特別なライセンスを発行せなあかんねん」
「わ、わかりました」
「なんや、緊張しとんのか?」
「そうですね。なんかカメラ苦手で」
チリさんは、ふんと息を漏らした後に俺の顔をじろじろ見て。
「うーん、このまま撮ってもええんやけど。なんか暗いわ」
「く、暗い」
「リーグの面々は実力知っとるけど、このままやと他の地方の連中に舐められそうやな」
「そ、それは...」
「ええ子やっちゅうのは面接でもわかってんねんけど、それにつけ上がるやつもおるし」
俺はジメジメしてるけどそこまで言うもんだろうか。
というと俺のヘアバンドの位置を少し触り
「動きなや」
「ひゅぅ」
耳元で囁かれたため、変な声が出てしまった。
バトルは終わったはずなのに心臓がまたドキドキする。
なにか髪を触られている感触がする。
しばらくすると終ったのか、ヘアバンドを付けられ
「おう。こんなもんかいな。目、空けてええで」
「え、あ、はい」
目を開けると、目の前に鏡があった。
「バッテン取ったら、あんさん案外ええ顔しとるやん」
「わ、わや。すっごく雰囲気変わってる。でもなんか、スースーするべ」
しかし、今までの陰気な自分が少しマシになっている。
これなら舐められることは少なくなりそうだ。
「どーする?これで撮るか?」
「...」
...
.....
.......
ライセンスに貼ってある、前髪を上げた状態の自分。
イメチェンしたみたいで少しワクワクする。
誰かの反応を見るために髪を上げたまんまで出てきているが、なんていわれるだろうか。
「き、きもいって言われたらどうしよう」
そんなことを考えながらリーグを出ると。
「ボ、ボタン」
入り口付近でスマホロトムをポチポチと触るボタンがいた。
向こうも俺の声に気づいたのか、
「...お疲れ。どう」
と続きを言わず、固まってしまった。
もしかしてやっぱり変だったんだろうか。
「どちらさん?」
「いやちょ、おれだべ。スグリ!」
「いや知ってるけど、どしたんそれ?負けてお金ない代わりにやられたん?」
「負けてない、勝った!ほら、ちゃんとライセンスも貰ったから!」
「うわすご、マジやん。おめでとう。...だったらその髪なに?」
額をツンツンと突かれる。
「あのままの写真だと、陰気で舐められるかもしれないから、髪上げてもらった」
「ほーん。まあ、悪くないんやない」
なんだその全然参考にならない感想は。
ほかのもっと女子力のありそうな人に聞こう。
「...いい。アオイに聞くから」
と不意に友達の名前を出してしまった。
ボタンに説明した方がいいだろうか。
「え?アオイってアカデミーのアオイ?」
「...知ってるの?」
「多少は。それよりそっちはどうなんよ」
「ど、どうって?」
「仲いいかって聞いてんの」
なんでそんなことを詰めてくるんだ。
というか怖い。
「い、いいかはわかんねえけど、服さ選んでもらったりした」
「...そう」
とだけ言うと俺の脛をゲシっと蹴り。
「生意気」
と一言。
「おれ一応チャンピオンなったべ!?」
「うっさい」
「...なして」
「ええから、ほら、祝勝会いくよ」
と顎でついてくるように促された。
昼もいい具合に過ぎた時間なので、多分ファミレスだろう。
リーグに一礼し、今も遠いところにいるであろう恩師たちに感謝する。
「ありがとう」
一人は俺に冒険を教えてくれた。
一人は俺に強さを叩き込んでくれた。
どちらかがいなければなしえなかったこの結果。
アデクさんは会えるかわからないけど、コルニにはいつかもう一度会いたい。
アオキ(おめでとうって声かけようとしたら、なんか倒れてきたわ)
髪上げたスグリは『スグリ 髪型 予想』で9 or 10番目ぐらいのイラストを想像してもらえれば。めっちゃいいイラストです。(左にキタカミ、右に予想があるやつ)
(この分は消すかも)