冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
「んんー」
朝食を作り終わったので、軽く背を伸ばす。
今日は昨日帰りに食パンと卵が安かったので、サンドイッチにした。
「昨日の祝勝会、楽しかったな」
ボタンと近場のファミレスで日常会話をしながら、ごはんをつまんだ。
祝勝会というよりは学生の遅めのランチである。
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『すてみタックルを覚えたカイリキー?カイリキーはすてみタックル覚えんよ?』
『サンドイッチが爆発なんてするわけないでしょ。...アオイ?あれは、まあ』
『雪原で巨大なヨクバリスを見た?確かにガラルはダイマックスがあるけど...それの倍大きい?』
『へえ、生徒会長って料理下手なんや』
『足のない女性があなたは違うって言って立ち去って行った?ホラー映画の話やん。いや別に怖くないが?』
『ピカチュウが喋って探偵やってる?嘘乙』
『ちょ、ごめんって。そうだね、ピカチュウ喋ったね。探偵だね』
.......
.....
...
全部本当なのに何一つ信じてもらえなかった。
スマホロトムで日付と時間を確認する。
「そういやオモダカさんと編入の事話してねえ」
段取りはリーグ側でやってくれると思うので、俺は連絡待ちなんだが。
...というかやることは大体終わっているので今日はどうしようか。
アオイとバトルしたいのはやまやまだけど
「あれ?お前」
スマホロトムの画面から、声のした方に顔を向けると。
少し前に見た顔が。
「ペパーくん」
「えっと...スグル!」
「おしい。スグリだべ」
「そうか、すまん」
「...ペパー君もキャンプ?」
「いや俺は散歩だな」
そういうとボールの中から貫禄のある犬ポケモン、マフィティフを出した。
バウっと吠えた後、こちらに小走りで寄ってくる。
「治ったんだ。よかったね!」
「ああ。最後のスパイスでなんとかな。お前も協力してくれてありがとう」
「いんや、おれは大したことしてねえ。この子が治そうって頑張ったからだ」
マフィティフの顔を撫でようと手を伸ばすと、軽く舐められたあと。
ガブっと噛まれた、もう一度いう、噛まれた。
「いたーい」
「バウ(漢方はありがとう。それはそれとして、よくもあんな苦いもん飲ませてくれたな)」
「こら、マフィティフ!噛むのやめろ!」
なんとかやめてくれた。
手には歯形がくっきりと残っている。
「ごめん、ほんと」
「いや、こんだけ元気ってことみせてくれただけで十分だべ」
そんなわけない。
普通にめちゃくちゃ痛い。
血が出てないだけ有情と感じるほどだ。
「そういえば、話変わるんだが。前に作ってくれた漢方。あれと似たようなもんって作れるか?」
「回復に特化しててかつ、簡単な材料で作れるもんなら多少は。...もしかしてけがしたポケモンが」
「あー、いや、そういうことじゃなくてだな」
っとペパー君が掻い摘んで説明してくれた。
エリアゼロに潜るという話。
そして、親である博士について。
「...2日後、行くことになっているんだが、お前にメンバーとして来てほしくてな」
「おれとペパー君でってこと?」
「いや、アオイと、うちの生徒会長のネモってやつ。ほかに機械に強いボタンってやつを誘った」
おそらく全員友達だ。
聞き覚えしかない。
「わかった。おれもいくべ」
「ほんとか!?...言っとくが危険な場所だぞ」
「任せて。少なくともほかの3人よりは冒険して、そういう場所にも行ってきたから」
それにと、前置きしペパーくんをまっすぐに見つめる。
「友達の頼みなら、断れねえ」
これで?って反応されたら本当に心が折れる。
今まで以上に泣く自信がある。
「...そっか。友達か。なら俺のことはペパーって呼べ」
「わかった、ペパー!おれもスグでいいよ」
「よろしくな、スグ!」
二人で固い握手をする。
男の子の友達はもしかしたら初めてかもしれない。
「そういえば、朝ごはんって食べた?」
「ん?まだだけど」
「それなら、完治祝い。食べてってよ」
「マジか、ちょうど腹減ってたんだ」
もう1人分の椅子を用意し、昨日買ったあれを出す。
本当は昨日のうちに食べようかと思ったんだけど、疲れでお風呂に入った後はすぐに寝てしまった。
「そういや外国だとサンドイッチは食パンを使うんだったか」
「うん。パルデアの人の口に合うかわからないけど。あと、これ、クッキー」
「おお、これムクロジのじゃねえか!いいのか!」
「あんまり甘すぎるの好きじゃないからさ。一緒に食べて」
「そいうことなら遠慮なく」
二人でサンドイッチとクッキーを食べながら、特に何ともない話をする。
今までどんなところに行ったとか、どんなことをしたとか。
「2年って結構長いよな。親とかに反対されなかったのか?」
ペパー君が魔法瓶に入れた紅茶をコップに注ぎながら俺に質問してきた。
二人分のうちの片方を受け取り、ありがとうと一言つげ。
「おれの親、小さいころに死んじゃったんだ。だからじいちゃんとばあちゃん、あと姉ちゃんに面倒見てもらってた」
コップの中の紅茶を半分ほど飲み、話を続ける。
「じいちゃんからは最初は反対された。姉ちゃんには旅に出るってことは言ってない」
「悪いな、言い辛いこと聞いて」
「いいよ。言い方悪いけど、顔すら覚えてないし」
「...実は俺の親も生きてるんだけど、ほとんど顔見てないっていうかさ」
ペパーが遠くを見つめ、懐かしむような表情をし、ため息を吐いた。
多分何か根深いものがあるんだろうな。
「さっきも言ったんだけど、俺の父ちゃんは博士でさ。でも研究で家庭を省みないで。そんな父ちゃんに母ちゃんは愛想つかして出てってさ」
声に少しばかりの怒気がこもる。
「立派な博士だっていうのはわかってるんだけど。なんか、納得いかねえんだ」
「当たり前だべ、そんなの。会える距離にいるのに、会いに来ねえなんて」
今もキタカミの共同墓地に眠る両親に想いを馳せる。
あの人たちは死ぬ寸前、なにを思ったんだろうか。
死人に口なし、今ではそれも土の中。
「おれが説教さしてやる!...あ、今の説教は言葉のあやっていうか」
少し頭に血が上ってしまったか。
よその親を説教はよくない。
「はは、いいよ。ありがとう。その気持ちだけで十分だ!」
純粋な笑顔をこちらに向け、頭をくしゃくしゃと撫でてきた。
なんだか友達というよりは兄貴みたいだ。
「ニヘヘ。なんか兄ちゃんみてえだ」
「だーれが兄ちゃんだ、スグ!」
頭をつかまれ、拳でグリグリと押されるが、痛くない。
手加減してくれているんだろう。
ものの数秒で放してくれた。
ペパーがスマホロトムを取り出し、時間を確認する。
「いい時間だし、ここらへんでお暇ちゃんだ」
「もう行くの?用事?」
「エリアゼロ行く前だからな。色々準備しないと」
「わかった。なんかあったら連絡してくんろ」
「おう、2日後、頼むぜ。じゃあな、スグ」
「うん、またね。ペパー」
そう言ってペパーの背中を見送る。
マフィティフが横をついて歩いていて、なんだかほほえましい。
「...エリアゼロって入っていいのかな」
と零してしまったが、言わなかったことにした。
俺チャンピオンだし、何かあっても大丈夫だろう。
大丈夫だよね?ライセンス没収されたりしないよね?
みんな防災用品は用意しときや。
以下、スグリデータ
年齢 14歳
身長 160ぐらい。
好物 ミアレガレット
悩み 異性との距離の縮め方
趣味 冒険
総括 明朗快活な子が好きな田舎っ子