冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第23話

 

「うーん」

 

頭を捻りながら、スマホロトムをじっと見つめる。

原因は先ほどのペパーとの会話。

博士がいるエリアゼロは立ち入り禁止区域。

入ろうものなら何が起こっても責任は取れない。

そんな場所だ。

自分自身の経歴に傷がつくことだってある。

 

「止めたいけど、一緒に行きたい」

 

興味と理性、優しさと正しさ。

相反する二つが自分の頭の中を交差し、思考をかき乱す。

勉強はできない方なので、どうしたらいいかの答えが見えない。

 

「...いっそ、許可でもとる?」

 

これも考えたが、リスクが大きすぎる。

万一にでもペパーが停学処分にでもなったなら?

責任を取るとかそういう話じゃない。

せっかくできた友達を失ってしまうことになる。

 

「誰かに相談したい。でも、そんな相手いねえ」

 

ボタンは、行けばええんやないって返すだろう。

ネモは、強いポケモンがいるならOKというのが目に見えている。

ペパーは言わずもがな。

 

「アオイに聞く?」

 

でも、変なことでうじうじ悩んでるって思われないだろうか。

『スグリって、意外と度胸ないんだね(笑)』

なんて言われようものなら俺は号泣するだろう。

そのまま何を起こすかわからない。

 

「うう。しっかりしろおれ。勇気をだせ」

 

恐る恐る、スマホロトムを操作し電話をかける。

相手は聞くまでもなくアオイである。

 

『もしもしー。アオイですけど』

 

「あ、あの、えっと、スグリだ、です」

 

電話した瞬間急にドモり始めてしまった。

何を言ってもいちいち引っかかる。

歯切れが悪くてかなわない。

...違う、ここは思いきれ!

 

「い、今から会いたいです!」

 

『え!?あ、いいけど。場所はどうしようか?』

 

「へ?えっと、アオイの好きな場所で」

 

「わかった。テーブルシティのバトルコートまで来て」

 

「...........はい」

 

それだけ。たったそれだけなのにすごく緊張した。

心臓がドキドキと跳ねるような鼓動を行っている。

胸が痛くて仕方がない。

 

「テーブルシティ、いくか」

 

呆然と誰に言うのでもなく、虚空に向かってそう告げた。

もしかしたら俺はとんでもないバカかもしれない。

 

 

...

.....

.......

 

 

テーブルシティのバトルコート。

それが見えるベンチに彼女は腰かけていた。

相棒のマスカーニャとねこじゃらしで遊び、暇をつぶしている。

変に驚かせないように声をかけよう。

 

「あ、アオイ。おはよう」

 

「おはよう、スグリ。あれ?イメチェンした?」

 

「うん。こっちの方が陰気臭くないから」

 

「私は前の方が好きだったけど」

 

「え!?」

 

衝撃の事実である。

すぐに前髪を下ろしに行きたくなってきた。

 

「あと、チャンピオンクラス昇格、おめでとう!」

 

「ありが、え!?!?!?」

 

「どうかした?」

 

「な、なんでチャンピオンの事知ってるだべ?」

 

「オモダカさんが教えてくれたよ。史上最短だって」

 

はぁーっと今までにないほどの深いため息が出た。

もっと違う場所で一番驚くようなタイミングで言いたかった。

 

「まあ、別のチャンピオンクラスには、言うよな。...アオイの方こそ、おめでとう」

 

「ありがとう!」

 

結局俺はなにもできなかった。

何かしたことといえばげんきのかけらを渡したくらいなもんだ。

なんだか勝手に気まずくなってしまったので、話を本題に戻そう。

 

「それで、今日なんでアオイを呼んだかなんだけど」

 

っとそこから先を言うことができない。

嫌われてしまったらどうしようと考え、安牌な言葉を脳と口が勝手に続けた。

 

「エリアゼロ、楽しみだね」

 

アオイは黙って俺の目をジッと見つめてきた。

普段とは違う力強さに圧倒される。

さしずめ、ハブネークに睨まれたグレッグルだろうか。

全くと言っていいほど、視線が外せず体も動かない。

 

「なんか気を使ってるよね。スグリ、本当のこと言ってよ」

 

「気なんか使ってねえべ」

 

「ダウト。...当ててあげようか?」

 

今までに感じたことがない恐怖に身を震わせる。

心霊とかそういう類ではなく、人間の底知れない恐ろしさの方。

なんだかアオイの目の色が変わってる。

比喩だが実際に色も変わっているのかと錯覚するほどだ。

 

「エリアゼロのことがばれて、おれのライセンスも、ネモのも、アオイのも取り消されたらどうしよう。...ペパーやボタンも停学処分になったりしたらどうしよう。ボタンなんて停学から復帰したばっかりなのに、そんなことになったら」

 

心臓をキュッと握られるような感覚だ。

もうひと踏ん張りでお前をあの世に行かせられるのだぞという凄味がある。

これ以上は俺のメンタルが持たないので、吐いてしまおう。

 

「...当たってる。おれ、全部思ってる。だから、誰かに相談したくて」

 

「それで、私に電話してきたと」

 

「うん」

 

「そっか」

 

それだけ言うと、アオイは俺の頭をわしゃわしゃと撫で。

 

「よしよし、スグリはいい子だねえ」

 

「ちょ、やめてくんろ!?」

 

「やめなーい、アハハ」

 

急に明朗快活ないつものアオイに戻った。

今のは一体何だったんだろうか。

気恥ずかしくて、顔が熱い。

 

「うん、すっきりした。ごめん、アオイ」

 

「謝罪じゃないでしょ?」

 

「あ、ありがとう!」

 

「どういたしまして!」

 

アオイがベンチから立ち上がり、スマホロトムを触る。

 

「スグリの今使ってる奴って、レンタルだよね」

 

「そうだけど?」

 

「...自分の欲しくない?」

 

「ほ、ほしい。でも、ボタンに相談しても難しいこと言ってくるし」

 

「なら、私がいいの選んであげるよ!」

 

こんな感じに、アオイとショッピングして一日が終了。

結局エリアゼロのことについては有耶無耶になった。

でも、それでいいのかもしれない。

世の中にはグレーな部分であるからこそ、動くことができるときもある。

逆もしかりだけど、それでもやっぱり俺はペパーと親父さんを会わせたい。

友達として、先に親を亡くした人間として。

 

 





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