冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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ザ・ホームウェイ0.5

 

エリアゼロ、潜入当日。

昨日は色んな感情がごちゃ混ぜになり、よく眠れなかった。

具体的に言うなら興奮30、不安20、感動50。

ゼロゲート前、とくに警備や見張りの人はいない。

レンガ造りのトンネルの前に設置してる金網のシャッターを開け、いざ第一歩。

 

「はっや、もう来てんじゃん」

 

「うわ、これはその違うんです!」

 

思わず顔を撮られないように隠してしまった。

でも、よくよく考えてみると聞いたことがある声である。

 

「ボタン。驚かすなよ」

 

「そっちが勝手に驚いただけやん」

 

「...ごめん。なんか悪いことしてるって考えると、臆病風が吹いて」

 

気を取り直し、レンガ造りのトンネルを抜ける。

その先には、近未来的な造形の研究所のような建物が見える。

ちょっとテンションが上がり、小走りで建物の前まで来てしまった。

 

「こ、これがゼロゲート。わやかっこいいべ」

 

プシューっと大きな音を立て、ゼロゲートの扉が開く。

SF映画の悪の組織みたいだ。

さっきの臆病風がすべて興奮の嵐で吹き飛ばされた。

 

「へへ、おれ1番!」

 

建物の中に入ると、かろうじて見える程度の明るさだった。

見えないほどではないけど、移動には不便である。

昔姉ちゃんが電球を勝ってくるのを忘れて、この明るさで夜を越したことがあった。

 

「はしゃぎすぎ。...暗」

 

「ライトつけていい?」

 

「お願い。上に電球みたいなのは見えるから、多分点く筈だと思うけど」

 

リュックのわきに着けてあるライトを起動し、あたりを照らす。

スロープがあったので、二人でそこを上りコントロールパネルを探すが。

 

「どれだ?」

 

見つからない。

さっきから地面をくまなく探しているんだが。

 

「これだよ。なんで地面ばっか探してんの」

 

ボタンがすぐそこにあったのを見つけてくれた。

なんだ、普通にあるのか、ちょっと残念。

 

「スパイ映画とかだと、下のスイッチとかで出てくるから」

 

「欠陥でしょ、そんなの。診てるから、ちょっと待ってて」

 

カタカタとなれた手つきでキーボードを触り、謎の文字列を打ち込んでいく。

映画でよく見るハッカーが敵のアクセスに侵入するやつだ。

これだよ、俺が求めていたのは。

 

「わやかっこいい!すげぇ!」

 

「はいはい、ありがと。...省電力になってるから、今切り替えるね」

 

ボタンが画面を触っている間は暇なので、そこらへんを散策しようとしたとき。

玄関ドアがまたしてもプシューっと開いた。

スパイ映画のテンションでつい物陰に身を隠してしまった。

 

「ここがゼロゲート。にしても暗い」

 

ネモだな。脅かしてやろう。

 

「へへへ、ここでお前はお陀仏さ」

 

近くに来たタイミングで悪役のような登場ムーブ。

しかし、思いのほかネモは怖がりのようで。

 

「イヤ、不審者!」

 

「ちょ、違う。おれだべ」

 

「...スグリ、何やってるの?」

 

「ビックリさせようかと」

 

シラーっとした目で見られた。

明らかに好感度が下がっている。

 

「パルデアのチャンピオンクラスともあろう人が、か弱い女の子を?」

 

どの口が言っているのだろうか。

キミもチャンピオンクラスだし、か弱いからかけ離れているよ。

 

「か弱い?」

 

疑問符を浮かべたら、ほっぺたを軽くつねられる。

 

「次はしないようにね?」

 

ひまひぇん(しません)

 

両ほほを抓られながら、うりうりと動かされる。

痛くはないが、むず痒い。

そんなときに今度はペパーとアオイが入ってきた。

 

「おわ、なんかくら」

 

ネモの両手が俺の頬から解放される。

 

「やほ、アオイ。強いポケモンがわんさかいるって聞かせられてさ」

 

「すげーポケモンがいるって聞いたら秒できた。学校では小うるさいけど頼りになりそうだな」

 

「おー?戦るか!?」

 

俺も会話に混ぜてもらおう。

 

「へぇー。ネモって学校では小うるさいんだ。なんか以外だべ」

 

「スグリに相手してもらおうか?」

 

「これが終わったらね。おれもあの時より強くなったから!」

 

オホンとペパーが咳払いする。

 

「スグは俺たちより冒険について詳しいってんで誘った。回復についてはこいつに頼め」

 

「よろしく」

 

「...というか暗いよ!?すげーポケモンどこにいるの!?」

 

とネモが天井に向かって吠えた瞬間、上の電気が輝きを取り戻す。

こんな短時間で終わらせるなんてさすがだな。

 

「ついた」

 

「なんで?」

 

「終わったか、ボタン?」

 

上で作業してるであろうボタンに声をかける。

肩を少し動かしながら、降りてきた。

 

「すげーんだよ。カタカタッターンってさ」

 

「...なんかオートで省電力モードになってたっぽいから、ハッキングして解除」

 

「あー、イーブイバッグがもふもふの」

 

「もふ?えと、名前ボタン」

 

なんだかぎこちないな。

前に言っていた隠者と陽者というやつだろうか。

 

「話すのははじめまして。私ネモ。クラスは1-A。機械得意なんだね!ポケモン勝負は好き?」

 

「うぐ、ぐいぐいくるし」

 

としれっと俺を前にして防御しようとしてる。

バリアか何かなのだろうか。

 

「ハイテクに強いやつ。校長に紹介してもらった。アオイの助けになるって聞いたら秒できた」

 

「冒険とかガラじゃないけど。アオイに借返さなきゃ。約束は果たす」

 

「意外と硬派な奴。改めて俺はペパーだ。好きなものはマフィティフと料理で」

 

と言いかけた時、アナウンスのような機械的な音声が広がる。

近未来的な仕掛けにワクワクしてしまった。

 

『生体認証確認中。生体認証確認中』

 

『ハロー、アオイ。待っていたぞ。優秀な仲間を集めてきてたようだな』

 

「いや、どちら様なん?」 

 

「俺の父ちゃん...多分」

 

多分という言葉にひっかかりを覚えるが、今はいい。

この人がペパーの親父さんなのか。

 

「え?フトゥー博士?この人が?」

 

『学籍番号805C001ネモ。学籍番号803B121ボタン。ブルーベリー学園学籍番号805A103スグリ。来てくれて感謝する』

 

「なんでおれの学校バレてるの?」

 

「博士!お会いできて光栄です!まだ会えてないですけど」

 

「えと、うちらのこと話したん?」

 

「んなわけあるかよ」

 

思い思いの声をすべて無視し、博士は続ける。

 

『キミたちにはパルデアの大穴に入ってきてほしい。右手に見えるエレベーターから下の部屋に降りられる』

 

エレベーターが博士の声と共に開いた。

ワクワクが止まらない、筈なのに何かが心の中でモヤモヤとたまる。

 

「あのさ、父ちゃん!」

 

『...先へと進んでくれ』

 

ペパーが寂しそうな顔でうつむく。

カチンときた。

 

「博士、ペパーは!?」

 

と言いかけた時

 

「いいよ、スグ」

 

止められてしまった。

なんだかやるせない。

 

「仲、悪いん?」

 

「うーん」

 

「まあ、行こうぜ。言ってても仕方ねえし」

 

ペパーが皆を先導し、先にエレベーターへと進んでいった。

背中に哀愁がある。

 

「ペパー、大丈夫?」

 

アオイが心配で声をかけた。

俺も気が気じゃない。

 

『生体認証オールクリア。降下ゲート開放』

 

「わー、自動ドアだー」

 

「いや、遠隔で操作されてるっぽい」

 

「ハ、ハイテクじゃ」

 

『ここから外はエリアゼロ、上空だ。アオイ、ミライドンは連れてきているな』

 

「もちろん!」

 

『ここまで一緒に冒険してくれてありがとう。ミライドンのライド技を使えば、エリアゼロへと降りられるだろう』

 

え、こっからポケモンで降りるの?

なんかすごい機械が運んでくれるとかじゃなくて?

 

「え?エレベーターとか無いん?ってかミライドン、飛べんの!?」

 

ボタンも同じことを思っていた。

一応何かあってもいいようにファイアローを連れてきているけど、いけるのかこれは。

 

『下に着いたら連絡する。無事を祈っているよ』

 

「強引な奴」

 

「エリアゼロのポケモン楽しみ。早く降りようよ!」

 

「...あの子、怖いとかないんか?」

 

一番にネモ、二番にボタン。

それぞれと続いていく。

 

「一応とりポケモン連れてきてよかったべ」

 

「...俺たちもいくか」

 

「そうだね」

 

あと数歩で上空というところまで、移動。

アオイがボールから、ミライドンを出した。

しかし、アギャアとおびえたような声を出す。

 

「どうしたんだろ」

 

「フンっ。高くてビビってんだろ」

 

ペパーがミライドンに飛び乗る。

 

「そっかそっか。みんなでとべば、怖くないよ!」

 

後ろにネモが乗った。

その理論は破綻しているだろ。

まあ、おれもさっさとのってしまおう。

 

「へへ、なーんか。いいな、これ」

 

またがると、案外すべすべしている肌触りだ。

 

「意味わからん」

 

ボタンが最後尾に乗った。

イーブイのモフモフの背中を感じる。

限界が来たのか、ミライドンがシャッター近くまでよろよろと進んでしまった。

 

「...のれ!」

 

ペパーが手を伸ばし、乗ろうとするアオイの手をつかんだ。

突如、ミライドンが頭の羽を広げ、大空を舞う。

今までのタクシーやそらでの旅とはまた違う味わいがある。

未開の地、エリアゼロへ一行は歩みを進めた。

 

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