冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
2つ目の観測ユニットを目指し、険しい道を行くアオイ一行。
急こう配の坂を滑り、目的の場所まであと少し。
悪戦苦闘することなく、体力を温存できている。
...のだが、ネモの様子がよろしくない。
「大丈夫か?ネモ?...なんかあったら休むべ」
「うん、大丈夫だから。ありがとう」
そういえば、バトルの時もボールの投げ方が変だったな。
もしかして体力がない、もしくは運動音痴なのかもしれない。
何かあっては遅いので、脇で待機しておく。
しかし、その心配も杞憂に終わった。
「はあ。やっと着いた。中に入って休もー」
「生徒会長、意外と体力ないよな」
「アハハ、ふぅ。意外でしょ?」
「ドヤ顔で言われてもな」
「無理せずに。きつくなったら言っていいからね」
「ありがと」
っと、ボタンが何かに気づいた。
視線の先を見ると、機械的なデリバード?っぽいものがいた。
パルデアでのデリバードはあんなに機械的なのか。
「デリバード。外で見かけるポケモンもいるんだ。」
向こうもこちらに気づいた。
正面からみてもメカメカしいな。
パルデアのデリバードははがねタイプもはいってるんじゃないだろうか。
「...かわいい」
「え?」
かわいいかと聞かれたら微妙。
どっちかというとかっこいい。
ボタンが近づくと、機械と生物が入り混じった雄たけびを上げた。
なんか怒ってる。
「うわ、うわー!」
「ボタン!」
急いでボタンをデリバードから遠ざける。
幸い距離自体は近くはないのでこうげきは飛んでこない。
何を焦ったのか、ボタンはブラッキーを繰り出した。
それを見たアオイが救援に入り、タイカイデンを出す。
さっきのキラフロルと同じように二人でタコ殴りにしてゲームセット。
「ええ。マジなんだったん今の?はービックリした」
「パルデアのデリバードって、あんなにメカメカしいの?」
となりにいるアオイに尋ねる。
しかし、首を横に振り。
「いや、普通。少なくともあんなに機械っぽくない」
「完全に寿命縮んだし。早く中はいろ」
仕切り直しとはいかないが、観測ユニットの中へ。
内装は1つ目と特に変わらない。
「ここなら野生のポケモンも来ないし安全だね」
「...ねえ、エリアゼロのポケモンってなんなんだろ」
「俺も気になってた」
ペパーが懐から表紙が紫の本を取り出した。
パラパラと中を見て、とある項目で手を止める。
項目は、エリアゼロの怪物。
ドンファンに似た、これまたメカメカしいポケモンに襲われたとの報告。
「...エリアゼロの怪物」
「ポケモンじゃないってこと?」
「それはわっかんねえけど」
「でも見た目だけなら完全にデリバードだったべ」
こうげきを受けた時に首が上にすっ飛んでいたけど。
「...普通のポケモンとは違うと思うけど」
「確かに見た目も変わってるし、図鑑でも見たことないもんね」
『そろそろ話しておかねばな』
ユニットの中で音声が響く。
フトゥー博士だ。
『エリアゼロ内部に生息している生物の一部は今よりはるか先、未来のポケモンなのだ』
「わ、わやじゃ、未来のポケモン!?」
驚きの回答である。
「いやいやいや、無理があるし」
ロマンがないなあ。
俺はテンションが上がりっぱなしなのに。
『ボクがいるゼロラボにはタイムマシンが存在しており、未来のポケモンを呼び出しているのだ』
「それって父ちゃんがずっと研究していた...。完成していたのか!?」
『ああ、その生涯をかけてね』
「...え?」
なんで他人事のように話しているんだ。
フトゥー博士自らが誕生させたんじゃないのか。
というか生涯をかけってって、死んだみたいな。
「タイムマシンって未来に行けたりもするん?」
『ああ、可能だ。ただし、人間ほどの質量だと帰ってこれないがね』
「いや、怖いし」
「父ちゃ、いや。オマエは何のために俺たちをエリアゼロへと呼んだ?」
オマエって父さんに向かって随分な言い方だ。
もしかして何か琴線に触れることでもあったのかもしれない。
『それは...直接話させてくれ。実物を見せながらであれば、理解もしやすいはずだ』
ペパーがうなだれ、難しい顔をしている。
...ものすごく嫌な推理をしてしまったので、考えないようにしよう。
博士が死んでて、今のアナウンスは別人がやってるなんて。
そんなの、ペパーが救われないじゃないか。
考えないようにしているのに、握りこぶしに力が入る。
『では、アオイ。パネルを操作してロックを解除してくれ』
「ぺ、ペパー...!」
俺の声と共に、ペパーが目を見開く。
悲しい、辛いという感情が隠しきれていない。
「...どうかしたか?」
しかし、それを無理やり押さえつけている。
なら、俺は何も言わない。
こういう時は何を言えばいいんだろうか。
「いや。おなかすいたなって」
「これが終わったら、たらふく食おうぜ」
「うん」
ペパーがアオイの方へと向かい、手に持った紫の本を渡した。
「アオイ、この本。あいつが持ってこいって言っていた例の本、この本は大穴のこと全部に関係ある。アイツに期待されていない俺なんかよりも、お前が持っていたほうがいい気がするんだ。アオイ、まかせたぜ」
「...わかった」
男2人の重苦しい雰囲気とは違い、女の子たちはなんとも楽しそうだ。
...俺も切り替えよう。
観測ユニットで少し休んだ後、再び3つ目のユニットを探す。
ふとペパーがネモに質問した。
「なあ、ネモの親ってさ、どんな感じ?」
「えー、普通だよ」
「いや、ウチでも知ってる。スマホロトム会社の役員」
それは、お嬢様とかいうやつだろうか。
確かに立ち振る舞いから品を感じるけど。
「なんで知ってるの!?」
「普通に有名だし。あと、個人的に調べてた」
「いいとこのお嬢様なのか!?」
「どうりで食べるときの所作が綺麗だと」
「わー、わー、ガラじゃないんだって!...んーでも、そうだな。お父様とお母様もいい意味で放任だなー」
お父様とお母様、俺には二つの意味で今後は使うことはない言葉だ。
「お姉ちゃんもいるし、私もやりたいようにやっているよー?」
「お嬢様力パない」
「もーうるさいなー。そういうボタンのところはどうなのー!」
ボタンの方に話が回ってきた。
予想外だったの少し焦っている。
「えーっと、ウチは、ドが付くほどうざい」
「過保護ってこと?」
「声はでかいし、スキンシップ激しいし、ボタちゃんとか変な呼び方するし。マジでうざい!ほんとにうざい!」
「なんかかわいそうだな。ボタちゃんの父ちゃん」
「や め ろ!!」
なんだろう、該当する人物を知っている気がする。
でも似てないし、いや、そういえばあの人、ローズ元委員長と兄弟だったか。
ニュースで見た顔を思い出しながらボタンを見る。
「...ボタン、こっち見てくんろ」
「え?なに?」
じーっと見つめ、細部まで観察する。
「...恥ずいんだけど」
「わ、わやじゃ!?」
すっごく似てる。
え?ということは、ピオ...!
これ以上は死にそうなのでやめとこう。
「え、本当に何?」
「忘れてほしいべ。ボタちゃん」
「だからやめろ!」
全員がよくわからないといった風に俺を見つめる。
疑問を解消するだけが正しいのではないと知りました。
「...なんかわからんけど、スグリの親はどうなの?」
予想はしていたけど、こっちに飛んできたか。
適当に誤魔化して、アオイにバトンタッチしよう。
「あー、まあ遠くに出張してるみてえなもんだ。夏には帰ってくる」
「出稼ぎとかってこと?」
「...かもな。アオイはどう?」
ネモとペパーがいたたまれないといった顔をしている。
ゴメン、アオイ。これ以上はもたない。
「お父さんは仕事が忙しそう。お母さんは、すっごく優しいよ。料理も得意だしね」
「うん。手作りサンドイッチ、すごくおいしそうだった」
「ネモはあったことあるのか。やっぱうまいんだろうなあ」
「なー。アオイは爆発させるのにな」
「今はいいでしょ、その話!」
今考えると、この中にいる女の子のうち2人は料理下手が確定しているのか。
ボタンは...多分下手だろうな。
「ボタンは料理下手か」
「決めつけんなし!...レシピ見たらできるけど」
「勝手なイメージだけど、野菜を洗剤で洗ってそうだな、なんか」
ペパーのイメージに納得してしまった。
「え?違うの?」
空気が凍る。
うん、まあ、不健康そうだしそうだろうなって。
なんて話をしていたら、3つ目の観測ユニットに到着。
「一休みできるねー」
「またなんか出てくるし。絶対出てくる」
「アハハ。ボタン心配性すぎー!」
正直、俺も出てくると思う。
こういうのなんだっけ、天丼っていうんだっけ。
振り向くと、さっきの本で見たドンファン?みたいなやつがいた。
強大な雄たけびを上げ、こっちを威嚇してくる。
「ほら見たことか!?ほら見たことか!?」
「こいつってヌシのあいつじゃん!未来のポケモンだったのか!?」
「ペパー戦ったことあるの?すっごく強そうだけど!」
「ああ、ヌシなら俺とアオイに任せろ!」
「OK!コノヨザル、お願い!」
「マフィティフ!」
アオイとペパーのヌシ狩りコンビ。
マフィティフの病み上がりを感じさせないほどの力強い動きについ圧倒された。
みるみるうちに弱っていき、数分もかからないうちに地に伏せた。
「よっしゃ、勝利だぜ!」
「やったね!」
「秘伝スパイスのときのアイツも、もともとはエリアゼロにいたのかもな」
「いいなー、二人は大穴の外で会ってたんだ!」
「いやいや、あんな未来100%が外にいたらアウトでは?フトゥー博士が管理してんじゃないの?」
「オモダカさんがかわいそうなことになるべ」
「...えら~い博士は何考えてんだろうな。ま、観測ユニットに入ろうぜ」
観測ユニット3つ目に到達。
エリアゼロの冒険はまだまだ続く。
そこのお前!感想1個に含まれるやるきエネルギーは感想500000個分だぜ!!