冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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ザ・ホームウェイ4

4つ目の観測ユニット。

ここでロックを解除すれば、博士のもとまであと一歩。

息を整え、施設の中へ。

 

「何これー、ボロボロー!!」

 

まるで凶暴な生物が大暴れしたかのような荒れ方である。

いつぞやの研究施設を思い出す。

 

「なんかが暴れたみたいな」

 

「暴れたってなにが...?」

 

『ハロー、子供たち』

 

アナウンスが施設内に響く。

そろそろ色々と問いただそう。

 

「うわ、博士かビックリした」

 

「ここってなんでこんなに壊れてるんですかー?」

 

『それはすまない。ハロー子供たちよ』

 

何だか様子がおかしい。

通信の不調だろうか。

 

『すすますますまいい。すまななすまいいなすまないまま。すまままままま。ハローハローコドモタチ』

 

「な、なんだあ!?」

 

「ちょ、やめて、怖いし!」

 

ボタンが俺の陰に隠れながら怯える。

博士の音声はさながら壊れた機械のよう。

終わりを感じさせない不協和音だ。

 

『...再起動を開始します』

 

再起動...なんで?

今の声は間違いなく博士の声。

それが再起動を告げるなんて。

...嫌なラインが繋がってしまった。

 

「なんか通信変だったね」

 

「変っていうか。アレ、もう」

 

「わざとなら趣味悪すぎ。ちょっとビビったし」

 

「おふざけの方がまだ優しいべ」

 

「背筋がぞわってしたよー」

 

アオイが気にせず、ロックを解除する。

これで、最後。

っとまた博士の声が施設内に響く。

今度はさっきの不協和音とは違う。

 

『アー、アー。ハローハロー。スマナイ、さきほどは。通信が乱れてしまったようだ』

 

「...んなわけあるかよ」

 

ペパーのむなしさをはらませた声。

気付いているというか、確信に至っているのか。

 

『ロックはすべて解除された。エリアゼロ最深部、ゼロラボを目指してくれ』

 

重苦しい雰囲気の中、今度はゼロラボを目指すことになった。

足取りはさっきと違って少し重い。

 

「さ、さっきの博士。なんかヤバかったね」

 

「冒険をワクワクさせる演出だったのかも!?」

 

「え、ネモ、あれでワクワクしたん?」

 

「わりと、した!」

 

「げ、医務室で感性を診てもらいなよ」

 

「なんとも言えないなー」

 

女の子たちは明るく会話を続けている。

一方俺とペパーはというと。

 

「なあ、スグ。さっきのあれってさ。もしかしてさ。....いやなんでもない。忘れてくれ」

 

「まだそうと決まったわけじゃねえ。気を強く持っていこう」

 

「...そうだな」

 

お通夜一歩手前の空気感だ。

それを察したのか、アオイが声をかけてくれた。

 

「なんか二人とも元気ないけど、大丈夫?」

 

「いや、なんでもない。アオイ、なんかあったら頼む」

 

「縁起でもねえべ」

 

歩みを進めている間に、考え事をしてしまっていたせいか。

いつの間にか、エリアゼロの最深部へとたどり着いていた。

感慨深い反面、これで終わりかという口惜しさがある。

 

「これがエリアゼロ最深部か」

 

「到着ー、財宝伝説、確かめちゃうー?」

 

「そういうのって大概持ち出されたりされてねえか」

 

『ロトロトロト』

 

アオイのスマホロトムが鳴り響いた。

博士からの通信のようだ。

 

『ハロー、子供たち。よくぞたどり着いた。キミたちの目の前にある建物こそがゼロラボだ』

 

「博士がいるところですね」

 

「結晶体に取り込まれている?」

 

『エリアゼロ内部の結晶体は不思議なエネルギーを持っている。生物の能力を変化させたり、機械の機能向上にも効果がある。ポケモンがテラスタル化するのも同じエネルギーなのだ』

 

「つまり、この建物もテラスタルしてるってことか」

 

へー、確かに結晶に覆われているし納得だ。

とすると何タイプになるんだ。

 

「ペパー、ちょっと黙ってて。...テラスタルオーブはエリアゼロの結晶体でできているってこと...すよね」

 

え、そうなの?

 

『一部のものしか知らないがね』

 

そうなんだ。

 

『4つのロックを解除したなら、ゼロラボのゲートを開けられるだろう。だが、ゲートを開けば中にいる危険なポケモンたちが、一気に外へと飛び出してしまう』

 

「危険って?」

 

『キミたち5人なら乗り越えられるはずだ。準備ができたなら、ゲートを開けてほしい』

 

博士との通信が終わった。

さっきのバトルじゃもの足りなかったところだ。

肩をぐるぐると回し、準備運動を始める。

いざとなったらメガシンカも使おう。

 

「私とアオイがいれば、大丈夫!!」

 

「ははー心強いっす」

 

「おれもいるしな!」

 

「はいはい、そうだね」

 

ボタンが子供をあやすように頭をポンポンと叩く。

なんだこいつ、俺は一応チャンピオンなんだぞ。

各々が準備を整え、アオイがゼロラボのゲートを開こうとしたとき、

 

「ちょーっと待ったー!」

 

なんだペパー。

トイレか?

先生はトイレです。

 

「え?なに、これからって時に」

 

「ヤバいポケモンが出てくるかもしれないんだ。ミライドンもいたほうがいいんじゃねえか?」

 

「確かに、入り江の洞穴でのミライドンなら心強い」

 

アオイが野生のポケモンに襲われていたところを助けたんだっけか。

今はその面影は全くないけど。

 

「えー、でもエリアゼロ来てから、ライドも嫌がってるし。ってかバトルフォルムにもなれないんでしょ?」

 

「あいつは本当は強いんだ。秘伝スパイスも食ってんだし、ここぞって時は戦うだろ!それにエリアゼロはあいつがしばらく暮らしてた場所だし。ボールから出しとけば家族が見つけてくれるかも」

 

そういえばあったなあ、もう一匹のミライドンの話。

博士の奇行とかテラスタルの結晶とかで忘れてた。

 

「ペパーにしては一理あるよね。アオイ、ミライドンを出しちゃえ!」

 

「わかった。おいで、ミライドン」

 

アギャっとどことなく寂しげな声を出し、ミライドンが現れた。

イタズラをしたときのブラッキーのように縮こまっている。

 

「なんかあってもおれたちがいるんだ。大丈夫だべ!」

 

「うん!...よし、じゃあ開けるねー」

 

ゲート前のボタンを押すと、赤いランプが発行し、けたたましいサイレンの音が鳴り響いた。

ポケットからキーストーンのついたグローブを取り出した、その時。

何かの気配がした。

直観で声を出す。

 

「後ろだ!」

 

ドスンと轟音を響かせ、見たことのある造形の肉体が舞い降りる。

金属とドラゴンをもしたような肉体はまさしく、ミライドン。

こいつがもう一匹のミライドンで、推定アギャッスの方の家族か。

 

「家族が会いに来てくれた?」

 

「おお、マジか!?」

 

だが様子がおかしい。

アギャッスの目は、完全に怯え切っている。

かといって向こうも家族を見つけたといった気配はない。

外敵同士のぶつかり合いといったところだ。

ミライドンの間に立ちふさがり、ボールを構える。

...こいつの目、間違いなく後ろのアギャッスを狙っていた。

しばらく俺ともう一匹のミライドンのにらみ合いが続きいたが、

しびれを切らしたのか、向こうが去っていった。

 

「...なんか感動の再開って感じじゃなかったね」

 

「多分だけど、あいつは敵だ。目の感じが完璧にミライドンを狙ってた」

 

「え?わかるの?」

 

「旅してたかんな。こういうのは結構見てきた」

 

「それにあいつ。なーんか、やな感じだったな。おい、気にしないでいいぞ。バトルフォルムになれば、あんなやつ!」

 

キュウと喉を鳴らし、しょげてしまった。

 

「あ、すまん」

 

「博士が言っていた危険なポケモンってもう一匹のミライドンってこと?」

 

「でも中から出てくるって言ってなかった?」

 

「中から...」

 

ペパーのつぶやきと共に入り口を見ると、無数の未来のポケモンが出てきた。

ほんとに中から出てきちゃったよ。

 

「うおおおお!」

 

あっという間に取り囲まれる。

見たところ、ハリテヤマとサザンドラ、あとはさっきであった奴らか。

ミライドンは怯えて戦えそうにない。

なら。

 

「ペパー、手伝ってくんろ!ヌメルゴン!」

 

「おう任せろ!マフィティフ!」

 

それぞれがボールからポケモンを繰り出し、未来のポケモンたちを倒していく。

たまにボタンの方にもサポートに入るが、全員それなりに強いためあっという間に片付いた。

その光景に心動かされたのか、ミライドンも雄たけびを上げ、未来のポケモンを威嚇した。

 

「あ、逃げてく!あの子たちが外に出たら大変!ボタン、追いかけよう!」

 

「え、ちょっと、なんでうち?」

 

「待てー!?」

 

「なんか興奮してない!?」

 

流石に体力のないネモとこの中で一番弱いボタンを一緒にしては置けないな。

こっちにはアオイとペパーもいることだし、追いかけよう。

 

「おれ、不安だからいってくる。こっちは任せた」

 

「応、頼んだ!」

 

二人の走る速度は速くないため、一瞬で追い付いた。

あとは未来のポケモンたちをタコ殴りにして、ゼロラボへと向かおう。

 

「え?スグリも来たの?」

 

息を切らしながら、ネモが話しかけてきた。

しばらくは走れないだろうな、この子は。

 

「心配だからな。とっとと倒す。だから!」

 

ルカリオをボールから出し、拳を合わせる。

呼吸を整え、三回の回し蹴りし、肺の奥底から叫びをあげる。

コルニ直伝(通話)のやり方。

 

「命、爆発!!」

 

キーストーンとルカリオナイトが共鳴。

バチバチとスパークする。

 

「メガシンカ!!!」

 

メガルカリオ、爆誕。

これでとっとと片付ける。

 

「すっご、ルカリオマンじゃん」

 

「なにそれ、なにそれー!!」

 

ネモもボタンもテンションが上がっている。

 

「ルカリオ、ボーンラッシュ!」

 

骨のような棍棒を生み出し、ハリテヤマたちを殴り倒していく。

その勢いはまさしく鬼神のごとしといったところだろうか。

 

「もっといくぞ、ルカリオ!インファイト!!」

 

波動に飲まれることなく、しかし激流のような拳がポケモンたちを粉砕していく。

あっという間に倒し終わった。

でもこれは俺も結構消耗するな。

コルニが言っていた通り、あんまり乱発はできなそうだ。

 

「おつかれさん、ルカリオ」

 

「えー!?スグリ、メガシンカ使えたのー!?ここ出たら戦ろう!」

 

荒れた息を整え、ペットボトルの中の水分を飲み干す。

ルカリオ側もちゃんと休ませないとな。

 

「使えるようになったのはつい最近だ。ここ出たらな。アオイのとこ行こう」

 

「あの、それなんだけど、私走れそうになくて...」

 

メガシンカの興奮にプラスしてバトルで息が上がりきっている。

汗まみれだし、走れなさそうだなと思ったけども。

おぶっていくしかねえか。

ボタンと二人で担架みたいに運んでいくのも格好悪いしな。

リュックを前にして、おぶれる体制をとる。

 

「おぶっていく。その間に休んで」

 

「え?あ、わかった」

 

メガシンカなしの俺とネモならおそらくネモの方が強い。

なら急いで向かっている間に体力を回復してもらったほうがいいだろう。

かがんで背負う体制をとると同時に、ネモの体重が俺の方へとやってきた。

う、なんかやわらかくて、うぐぐ。

のっぴきならない...!

 

「出発進行ー!」

 

「なんで 鼻の下 伸ばしてんの!!」

 

ボタンのローキックが俺の足に響く。

今は背負っているからやめてほしい。

しかしそんなこと言おうものならボディブローが飛んできそうだ。

走っている間も色々と大変だった。

主にネモの肉体とボタンの蹴りが。

そんなこんなをやっているうちに、ゼロラボの前までたどり着いた。

 

「ペパー、大丈夫ー!」

 

「お、終わったか。なんでスグに背負われてんだ?」

 

「ネモの体力が切れた。...もう大丈夫か?」

 

「うん、ありがと」

 

ネモを背中から降ろす。

ちょっと名残惜しい。

 

「そうか。それで、なんでボタンはスグを蹴ってるんだ?」

 

「...おれが知りてえ」

 

もう俺の足の体力は風前の灯だ。

背中はネモと俺の汗でべちゃべちゃだし。

ボタンの顔は真っ赤だし。

 

「とりあえず、中へ急ごう。アオイが待ってる」

 

ペパーの指示と共に、全員でゼロラボの中を進む。

途中、気になるものもあったけど無視してエレベーターへ乗車。

しばらく待ったのち、全面が結晶のような部屋へとたどり着いた。

向こうにはアオイと博士。

戦った形跡があるが、もう終わったらしい。

っていうか生きてたんですね。

 

「...なんなんこれ!?」

 

「なんか気味悪い部屋だ」

 

「っていうか一番強いの倒しちゃった!?」

 

「オマエ、誰なんだよ!?」

 

『今までアリガとう』

 

おかしな挙動と共に、言葉を発する。

この一言ですべてを察することができた。

おそらくあの博士は、アンドロイドか何かなのか。

ということは本物は...もう。

 

『ようヤく、タイムまシンヲ、彼ノ意志を止メるこトができた』

 

「父ちゃんじゃないんだよな」

 

『あア。コんナにも大キく育ッてクれて。嬉シい、ボクの。サみシイ思いヲさせてスマナイ。ぺp』

 

「父ちゃん!」

 

そこにいたのは、確かに息子と父だった。

思わず目頭が熱くなる。

なんでそれをもっと早くに言えなかったんだ!?

しかし、現実は無常だ。

異常発生のサイレンが鳴り響く。

 

『セキュリティに異常発生。セキュリティに異常発生。タイムマシンが危険にさらされています。タイムマシンが危険にさらされています。』

 

「わ、わ、わ、なに!?」

 

「またポケモン軍団来ちゃう!?」

 

『こレは、まさカ』

 

『タイムマシンの活動の障害が発生しています。障害を取り除くために楽園防衛プログラムを起動します』

 

『こ、こレは。博士ハドうシてもタイムマシンを止メたく無いノか!』

 

さすがにこれ以上はまずそうだ。

ボールを構えて、オオタチを出そうとしたとき。

 

『フトゥーIDを除くすべてのモンスターボールをロック』

 

とんでもないことをアナウンスが言い出す。

これでは何もだせない!?

 

「えっ!?どういうこと?」

 

「マジかよ、なんで!!」

 

『プログラム開始中、テラスタルエネルギー、収束開始』

 

『スまナイ、子供たチ』

 

博士の体が結晶へと飲まれていく。

 

『キミタチでは不可能ダ!...逃ゲてくれ!!』

 

『フトゥーAIは楽園防衛プログラムへと上書きされました』

 

目の前の機械がせり上がり、博士がボールを構えた。

紫色の最強のボールから、ポケモンが放たれる。

 

『邪魔者ハ、排除スル』

 

繰り出されたポケモンはさっきのミライドン!

どうやら完全にこっちをつぶす気のようだ。

ボールは動かず、出せるポケモンはなにもない。

暗雲が空を覆い隠す。

 

「マ、マスカーニャ!」

 

アオイがボールを投げるが、反応しない。

俺もさっきからボールを投げてみているが、一向に反応なし。

 

「ボールが使えない!?これじゃ戦えないよ!」

 

「わっ、変な電波で妨害されてる!ハッキングでも解除できん!!」

 

頼みの綱のハッキングも妨害で無理。

これ以上は、どうしろっていうんだ。

 

「ズリィ、こんなの...大人がやることかよ!?」

 

何か手はないのか。

こんな時に使える奥の手。

 

【アイツは昔父ちゃんが突然家に連れてきて】

 

突如として、ペパーとの会話が思い出される。

土壇場のひらめきというやつか。

でも、今はこれしかない!

 

「いや、まだおれたちには仲間がいる!」

 

「はあ?そんなやつ、どこに!?」

 

「ううん、そうだよ。私たちには、この子がいる!」

 

ボールの中から鼓動を感じる。

皆を守りたいという気高き鼓動が。

 

「ミライドン!!」

 

「がんばれー!」

 

「いけー!」

 

思い思いの声がミライドンの背中を押した。

輝きを放ちながら、肉体を変化させていく。

アギャアと前とは比べ物にならないほどの咆哮を放った。

もう弱虫のミライドンはいない。

向こうはなめ切っているのか、ちょうはつをしてきた。

 

「バトルフォルムになれたんだ!いけーミライドン!!」

 

「パワージェム!!」

 

岩を放つが大きなダメージはない。

エネルギーを充填してきた。

 

「まずいよ、なんかとんでもないのがくるかも!?」

 

「ミライドン、こらえる!」

 

向こうのエネルギーがたまりきったのか、向こうのミライドンははかいこうせんを撃ってきた。

ボロボロになりながらもなんとかこらえる。

しかし、このままじゃじり貧だ。

ここで一気に押し返さないと。

 

「よし、よく耐えたぞ!」

 

「...でもこのままだとまずいよ!」

 

「ねえ、アオイのテラスタルオーブ、なんか光ってない!?」

 

「強い光だ、見たことねえ!」

 

「アオイ!テラスタルで決めちまえ!!」

 

「任せて!ミライドン、テラスタル!」

 

ドラゴンのテラスタルジュエルをやどし、君臨する。

なぜだろうか、絶対に勝てるという安心がある。

 

「ミライドン、テラバースト!!」

 

ドラゴンのテラスタルエネルギーをまとった一撃。

こうかばつぐんに更にみんなの想いも上乗せしたんだ。

楽園防衛プログラムのミライドンは地に伏せた。

 

「やった!」

 

「暴走、止まったん?」

 

『なんと、なんと素晴らしい。まさかオリジナルの博士の最終手段さえ退けてしまうとは』

 

「戻ったんですか!」

 

『ああ。この結果は最高の科学力を持つAIでも計算できなかった。キミたちは絶望の淵にいても、自分たちの頭で考え、友達を信じる勇気を持ち決断できる人間なのだな』

 

博士の言葉は、なんというか、もう二度と会えないような。

そんな雰囲気を感じる。

 

『どれほど苦しい未来だったとしても、キミたちなら。自分が進んだ道を胸を張って生きていけるだろう。ありがとう、アオイ。ありがとう子供たち。どうやらボクがいる限り、タイムマシンは止まらないらしい』

 

ということは、止めるためには...。

 

『ボク自身がシステムを復旧させる一部となっているようだ』

 

「な、なんだよ。それ!?」

 

『すまないな。キミたちの冒険を見ていて、感じたことがある。キミたちのその自由さがうらやましいと。仲間を想い徒党を組んだり、世界を見て見識を深めたり、戦いを求めて戦いにその身をゆだねたり。大事なものを守るために大きなものに立ち向かったり。捕まえて、戦って、自分だけの宝物を探したり』

 

ミライドンが博士に向かって吠える。

 

『フフ、その翼で大空を翔けまわったりな。ボクも君たちのように何物にも縛られず自分だけの宝物を見つけたい』

 

「宝物...」

 

『タイムマシンの一部であるボクがここに在り続ける限り、タイムマシンは止まらない。だからボクは、タイムマシンで夢にまで見た未来の世界に旅立とうと思う』

 

「...でも、帰ってこれねえ!」

 

「そんな、せっかく会えたのに!」

 

『タイムマシンを止めるだけではないんだ。ボク自身が、未来の世界をこの目で見たくてたまらないんだよ。冒険に胸を躍らせるというのは、こういう気持ちなのかな』

 

博士がペパーの方を向く。

 

『ペパー、今まで真実を言えずに、すまなかった。オリジナルの感情をそのまま受け継いだボクならわかる。キミの父親はキミのことを本当に愛していたよ』

 

「そんなの、今さら、ずりいよ...!」

 

『そうだな、すまない』

 

俺の父さんは、こんなときなんて言うんだろうか。

 

『ペパー、ミライドン、アオイ、少しさみしいがお別れだ』

 

「...父ちゃん!!」

 

『さらばだ、自由な冒険者たちよ!ボン・ボヤージュ!!』

 

博士がタイムマシンへと吸い込まれていき、未来の世界へと旅立った。

一抹の寂しさが胸を刺す。

タイムマシンが光を失い、完全に静止する。

 

「ペパー、大丈夫?」

 

「なんとなく、わかってた。アイツ、偽物だったけど、あの顔と声で俺の名前呼んでた。偽物でも、その気持ちは本物で。だから、俺さ、なんか...悪い、よくわかんねえ」

 

複雑な心境を吐露する。

当たり前だ、今の感情が言葉で片付くわけがない。

 

「...そっか」

 

「ミライドンも、悲しいよね」

 

「っていうかバトルフォルム、強かった。かっこいい!」

 

「この巨体でじゃれつかれたらやばいよね」

 

「アオイとミライドンが頑張ってくれたおかげで、パルデアは救われたな」

 

「うん、凄かった。ありだとうアオイ」

 

「アオイ...さすがだよな」

 

「えへへ、でしょ?」

 

「ペパー、博士いなくなっちゃったけど、未来で楽しく冒険してるよ」

 

「...ああ、そう違いねえ」

 

「...サンキュな、ボタン、スグ」

 

「それで、これからどうしよっか、アオイ」

 

「...帰ろう!」

 

「そうだね、帰ろっか!私たちの家に!」

 

 

 

...

.....

.......

 

 

大穴を出て、全員で帰路についている。

あんなこともあったせいか空気は少し沈んでいる。

そんな空気をネモが掃う。

 

「はーい、はーい!」

 

「ん?どしたん?」

 

「せっかくだから、寄り道して帰ろ!」

 

「賛成、買い食いに一票」

 

「おれもお腹すきすぎて力でねえ...。ペパーは?」

 

「いや、おれは...」

 

とミライドンに背中を小突かれる。

 

「あー、もうわかったって!!」

 

碧い草花の中を5人と一匹が進んでいく。

エリアゼロの冒険はひとまず終幕。

 

 





もちもの『思い出の写真』を入手しました。
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