冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第32話

 

ハッコウシティで人気のカフェ。

その中でボタンを待つ。

結局昨日はアオイに着せ替え人形にされてあれよあれよという間に服を買って今日に至る。

なんだかドキドキして頼んだカフェオレの味がよくわからない。

スマホロトムを見て、時間を確認。

もうそろそろ来てもいい時間だけど。

 

「お、お待たせ」

 

ボタンが来たようだ。

声のした方向に目線を向けると

 

「へぇ?お、え?」

 

上はオープンショルダーのスウェット。

下はパンツ姿でいつものスニーカー。

顔は化粧をして、年相応とはかけ離れた雰囲気の...ボタン?がいた。

どなたですかという言葉を飲み込み、脳を落ち着かせる。

 

マジボス、がんばれ!

 

声でけえよ!

 

「?」

 

知り合いだろうか。

 

「ねえ、なんか言ってほしいんやけど」

 

「え?は?あの、あと、めんこいで...す」

 

アオイから言われている。

もしボタンがいつもと違う服装できたときは素直に褒めろって。

オーバーヒートしそうな脳を必死に冷まし、なんとか言葉を導き出せた。

 

「めんこい?化粧濃いってこと?」

 

「あ、ち、違う。めんこいっていうのはキタカミ弁で、かわいいって意味!」

 

否定しようとして思わず声が大きくなってしまった。

店内なので、ほかの人に見られてしまう。

 

「声でかすぎ。うっさいし」

 

「ご、ごめん。でも、めんこ...じゃなくてかわいいのは本当だべ」

 

「そう。あ、ありがと」

 

いつもと違うお互いにどぎまぎしている。

おかしい、絶対機材か何かを買うための荷物持ちだと思ったのに。

一応どこに行くかとかのプランは考えてきてはいるけど。

 

「えと、なんか飲む?」

 

「うん。ス、スグはさ、頼まなくていいの?」

 

「スグ!?今スグって...。おれはもう頼んだから。...えと、どこいきたいとかある?」

 

「モール行って色々見たいんだけど、いい?」

 

「おれもそこ行きたいと思ってた。いいよ」

 

女の子の行きたい場所は肯定してあげよう。

アオイとの約束その2である。

ちゃんと理由も添えてあげるとなおよしとのこと。

 

「...なんか買いたいものとかあった感じ?」

 

「ううん、色々二人で見て回れるから」

 

「わかった。あとでいこっか。あ、すみません、ホットココア1つお願いします」

 

「かしこまりましたー」

 

店員が注文を受け、厨房に入っていった。

朝のゆったりとした空気とは違い、このテーブル席はサウナかのような熱気がある。

俺もボタンも顔を真っ赤にしながら、次に何を言うかを考えている。

先に切り出したのは、俺だった。

 

「あの、ボタン?」

 

「ん!?な、なに?」

 

「えと、ありがとう。リーグのこととか、テラスタルのこととか」

 

「唐突やん。...別にいいよ、気にせんで」

 

「でも、ボタンがいなかったらチャンピオンになれてない。だから、うん、これからも...仲良くしてください」

 

「取引相手か。...ちゃんと連絡とってくれるならいいよ」

 

「う、うん!毎日でもする!」

 

テンションがおかしなことになって、意味不明なことを口走ってしまった。

毎日ってそれはもう恋人じゃないか。

 

「言質とったから。ちゃんと毎日しろな?」

 

「え?あ、えと、はい」

 

なぜ本当に毎日する流れになっているんだろう。

さっぱり意味が分からないが、今はおいておこう。

 

「おまたせいたしましたー、ホットココアです」

 

「あ、どうも。...おいし」

 

カップのココアをずいずいと飲んでいき、二人で談笑する。

いつもと違う空気感に最初は気まずかったが、だんだんと慣れてきた。

今はいつもと同じような心地よさだ。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

なんやかんや談笑しているうちにいい時間になった。

ボタンとカフェを出て、ショッピングモールへと向かう。(会計は当然俺持ち)

 

「こっからモールだけど、どうする?」

 

「はい」

 

「意見どうぞ」

 

色んなものみたいけど、アオイに教えてもらった行った方がいい場所を優先しよう。

それに、旅してるとなかなかいくこととかないし。

 

「映画行こう。おれ見たいものあるんだ」

 

「...いいよ。何見るの?」

 

実はもう予約してあって席をとっていたりする。

これに関しては昨夜、突然電話してきたペパーから猛烈におすすめされたやつだ。

 

「えと、恋愛映画。これだ」

 

ボタンにスマホトムの画面を見せる。

曰く、マフィティフのトレーナー同士が、運命の出会いから結ばれていく話らしい。

事前情報を少ししか仕入れていないので、面白いかどうかはペパー頼み。

 

「ほーん、これ映画レビュー、そんな高くないね」

 

そういえば最近の人はレビューを参考にして映画を見るんだったか。

この映画は星3。よくも悪くも普通といったところ。

 

「そうなんだ。別のやつにする?」

 

「い、今のは行きたくないとかそういうんじゃないし。それ、いこ」

 

「ほかのやつじゃなくていいべ?」

 

「いい。...それが見たくなったから」

 

気が変わったらしい。

なんだかしがらみをなくしたかのような表情だ。

温和だけど、力強さを感じる。

とりあえずポップコーンだけ買っておこう。

 

 

...

.....

.......

 

 

映画を見終わり、モールの中のファミレスで昼食をとる。

映画の感想としては、めっちゃ泣けた。

途中のマフィティフが老体にムチうってトレーナーのプロポーズの場所まで行く様は涙なしでは語れなかった。

遠くの席に座っていた背の高いお姉さんも同じのようで、終盤はずっと涙をすする声が聞こえてきた。

 

「思っていたよりも泣けたんだが」

 

「なー、ハンカチもってきといてよかった」

 

「レビューも案外あてにならんね」

 

「...こっからどうする?今はおれの行きたい場所行ったし、次はボタンの行きたい場所さ行くべ?」

 

「うちの行きたい場所...なら、あそこかな」

 

そう行って移動した先は。

 

「眼鏡屋か」

 

「そう。うちのもそろそろ古いからさ」

 

「おれも買おっかなあ」

 

「目悪くないやん。買うなら伊達のにしときな」

 

「えー、でもボタンと同じやつほしい」

 

頭よさそうだし、と言いかけた。

しかし、続きに詰まる。

目と鼻の先には、耳まで真っ赤にしたボタン。

自分の発言をどう捉えるとこができるかに気が付く。

 

「ち、違うべ。ボタンの丸メガネ、頭よさそうだから。おそろにしたいとかそういうんじゃねえ」

 

「そう。まあ、別にいいけど」

 

なんだか残念そうだ。

ここでアオイの助言その3。

女の子が残念そうにしていたら、その前の選択肢に遡ろう。

 

「ううん、やっぱ...一緒のやつ、欲しい」

 

「急に意見変えるやん。...ならこれね」

 

置いてあった眼鏡を俺の顔にはめてきた。

度は入っていないので目が回るような不快感はない。

なんだかこれだけで頭が良くなった気がする。

 

「ふむ、ボタン氏。計算によると99割の確率で私の勝ちですよ」

 

「割りか%かどっちかにしろし。っていうかその喋り方キモイ」

 

なんてこというんだ。俺の中の天才博士が膝をついて涙している。

裸眼のボタンというレアな姿を拝みながら、適当な眼鏡をお互いにはめ。

 

「...それ似合ってなさすぎ。どこのオタクだよ」

 

「そっちこそ、あくタイプが強くなりそう」

 

けらけらとくだらないことでお互いを笑う。

一通り終わったあと、俺は伊達を。

ボタンは前と変わらないものを買っていった。

 

「ほんとに前と一緒でいいべ?」

 

「おそろ、なんでしょ?」

 

「...そっか。そういやそうだった」

 

 

その後はゲーセンに行ったり

 

「これどうやって動かすの?」

 

「レバーずっと持ってなきゃダメな奴だから!」

 

 

靴屋に行ったり

 

「これ、エーフィ柄のやつ、どう?」

 

「エーフィ踏むのか」

 

「うるさい」

 

 

二人でいろんなところを遊びまわった。

今はハッコウシティ外れの場所でピクニック中である。

しかし、もう日が落ち夜空が顔を出し始めた。

 

「そろそろ、お開きにするか」

 

「...うん」

 

「?」

 

ボタンが深呼吸し、俺の方をまっすぐ向く。

鞄からボールを取り出し、俺に渡してきた。

 

「...こいつは?」

 

「出してみたら、わかる」

 

顔を真っ赤にして、どこか落ち着いていない。

恐る恐るボールを受け取り、中にいるポケモンを出す。

りんごの中で一生を過ごすこともあるといわれているドラゴンポケモン。

 

「カジッチュ」

 

「そう」

 

そういえばガラルを旅しているときに何かを聞いたような...思い出した。

それと同時に心臓がバクバクと痛くなるほど鼓動し始める。

体全体が沸騰しそうになって、思考がまとまらない。

 

「ガラル、いたなら知ってるよね?」

 

「お、え、あ、ぅん」

 

「受け取る...の?」

 

俺は、

 








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