冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
深緑という色に相応しいといえるほど、自然あふれる場所キタカミの里。
里帰り...というわけではなく、合同で行われる林間学校がたまたま地元であっただけ。
訪れるのは2年ぶり。
「変わってないでしょ?」
「うん、全然変わってねえ」
2年しかたってしないのだからそれもそうか。
玄関の戸を叩き、久しぶりの帰宅。
「「ただいまー」」
戸を開け、そのまま中に入る。
中からは俺の祖父母が出てきた。
前より少し老けたかも。
「お帰り、二人とも。スグリ、大きくなったなあ。...チャンピオンになったそうじゃないか。おめでとう」
「スグちゃん、ゼイユちゃん、よく帰ってきたわね。ゆっくり羽を伸ばしてちょうだい」
電話越しの近況を伝えあったりしているせいか、そこまで大きな感動などはない。
ゆっくりしたいのはやまやまだが、こっちもやることがある。
「ありがとう。でも、この後公民館で待ち合わせだから。顔見せに来ただけなんだ。それが終わったらまた来る」
「そうかそうか。なら行ってきなさい。道は...覚えとるか?」
「覚えてなくても私がいるし大丈夫よ。行きましょ?」
二人で何も変わっていない風景を歩く。
側溝にいるイトマルも、田んぼを飛ぶヤンヤンマも。
景色を楽しみながら歩いているうちに、いつの間にか公民館についていた。
楽しいというわけじゃないけど、なんだかすごく懐かしい。
「何も変わってなくて安心した」
「まあ2年だしね。公民館の近くで待てばいいんだったかしら」
「うん。元気にしてっかなあ、アオイ」
「アンタが言ってたチャンピオンの子ね。腕試ししてやろうじゃないの」
十中八九ボコボコにされて終わりだろうけど黙っておこう。
公民館の近くで待っていると見慣れた人が見えてきた。
アオイとその傍らにいるのは...。
その人を認識した瞬間、足が動いてしまっていた。
ドキドキと鼓動が早くなり、頬が熱くなる。
姉ちゃんが後ろで俺を呼ぶが気にしない。
その人たちの元に駆けていく。
「ひ、久しぶり!」
「お久。なんも変わっとらんね」
「スグリ、久しぶりー。キタカミの里って聞いてたけどやっぱり来てたかー」
「...ボタンも来たのか。なんでまた」
「なんなん?嫌だったん?」
「ち、違う、わや嬉しい!ほんとに!」
「知ってる、からかっただけだし。オモダカさんがね、気利かせてくれてね」
これは思わぬサプライズ。
オモダカさんも意外とお茶目なところがあるんだな。
早速スイリョクタウンの案内でもしようか。
「公民館はこの先だから」
3人でこれまでのことを軽く話し、公民館まで移動する。
どうやら体調不良の生徒がいるらしい。
公民館のじいさんにでも頼もう。
もっともっと話していたいな。
これがいつまでも続いたらいいのにな。
なんて思ってしまった。
「スグ、急に飛び出して。どうし...」
と姉ちゃんが言いかけた時、隣のボタンを凝視して固まった。
歯をガチガチと鳴らし、髪を逆立て威嚇してくる。
怖い、こんな人だったっけ。
「スグ、隣のそいつから離れて!そいつは良くない存在よ!」
「...もしかして知り合いだった?」
村の祟りみたいな言い方でボタンを指さす。
失礼な姉だなあ。
隣のボタンに尋ねてみる。
「知り合いだけどそうじゃないっていうか、複雑な間柄なんよ」
「ふーん。あ、あれが公民館ね。なんもないけどゆっくりしてって」
「なんもないがあるね」
「無視してんじゃないわよ!うちの弟をよくも誑かしたわね、離れなさい!」
「嫌だよ、せっかく久しぶりにか、彼女と会ったのに」
「弟さんこう言ってますけど。ほれ」
とボタンがからかい目的で抱き着いてきた。
前は意識していなかった女性的な柔らかさや温かさを意識してしまう。
俺も手を回し、軽くハグする。
「か、お、ア””!!!」
白目をむき、汚い断末魔を上げた。
このまえ壊れた部室のノートPCみたいだ。
処理が追い付かず、そのままクラッシュしたみたいな。
「壊れたやん。どする?」
「ほっといて先行こう。最近こんなんだから。アオイも気にしなくていいべ」
「スグリの家族って面白いね」
面白いかどうかは正直微妙。
ちょっと怖い。
公民館の中へと入り、管理人を呼び出す。
カウンターのすぐ近くにいたので、そのまま声をかけよう。
「管理人さん、アカデミーの生徒さ来たべ」
「お、そうかそうか。これは長旅ご苦労様です。...ほかの生徒さんは?」
「それが、」
とアオイが体調不良の生徒の話を伝えると、薬をもって管理人さんが行ってしまった。
しばらく3人で雑談しながら待っていると、アカデミーの生徒と連れ添いのブライア先生がやってきた。
あれよあれよとしているうちに向こうの学校の説明が始まり、俺とはおさらばとなった。
もういい時刻なので、今日は特に交流などはないらしい。
俺も家に帰ってやすもう。
...
.....
.......
林間学校2日目。
正確には今日からスタートといった方がいいんだろうか。
全員が集まり、指定の時間が来たので管理人さんとブライア先生が説明を始めた。
「本日からブルーベリー学園の生徒も一緒に行動させてもらうよ。自己紹介をお願いできるかな」
「はじめましてゼイユです!よそも...泥棒ね...アカデミーのみなさん、仲良くしてくださいね!」
露骨に拳に力が入っている。
このままこちらに振りかぶってきそうだ。
「スグリです、よろしくお願いします」
「二人はこの村の出身なので、何かあれば助けてもらってください。...ちゃんと助けてあげなさいよ」
俺はともかく姉ちゃんは心配だ。
「はぁい」
「はい」
それから課題の内容が説明される。
要約すると2人1組になり設置されている3つの看板でそれぞれツーショット写真を撮るというもの。
「それでは以上でオリエンテーリングを終了します。みんなケガの無いようにね」
一通り説明し終わりここから先は自由になった。
取る人なんていないはずなのに、一目散に声をかけてしまった。
「ボタン、一緒に看板さ回りたい。いい?」
「来ると思った。いいよ、一緒に回ろか」
「スグ、お姉ちゃんと回りましょう?いいわよね」
「別々って説明されてたじゃん。...アオイ、姉ちゃんと組んでもらっていい?悪い人じゃないからさ」
「うん、いいよー。ゼイユさんだっけ、よろしくね」
「ええ、よろしく」
姉ちゃんとボタンがお互いにらみを利かせている。
間に入ったら死ぬという恐ろしさがあった。
「うちもよろしく」
「だーれがよろしくするもんですか!!」
「めっちゃ威嚇されてるやん、うける」
「うけない!言った通り、敷地内は絶対跨がせないから」
「挨拶もさせないとか姉としてそれでいいの?」
「会わせたらよくないと思ってるから会わせないだけだけどー?」
バチバチと火花が散っている。心なしか熱い。
ここで時間を食っていてもしょうがないので、とっととボタンと行ってしまおう。
「ボタン、早く看板さ行こう」
「...わかった。行こ。その前に商店でなんか買ってく?」
「LP使えないけどそれでいいなら」
「は?LP使えんの?...って前に言ってたか。しゃーない」
「必要なんがあればおれに言ってくんろ。彼氏だから、そ、それぐらい用意するからさ」
「ありがと、ちゃんと現金も持って来とるよ」
ポンポンと頭撫でられる。
なんか気持ちいい。
「ニヘヘ。久しぶりに会ったから、わやドキドキしてる」
「...うちも」
「え?」
「さて、買い物してから行こうか」
「い、今のもう一回言って...!」
「うるさいよ」
...
.....
.......
二人で桃沢商店で買い物を済ませ、ともっこプラザの方から看板を回っていく。
本当はもっと時間をかけたいけど、空いた時間を別のことに使いたい。
課題をさっさと終わらせよう。
「手、熱くない?」
「それ、何回目だし。いいよ、繋いでこ」
俺が恥ずかしりながら手繋いでいいか聞いたところ、了承してくれた。
ドキドキしているせいか、念じても汗が止まってくれない。
そのことばかり考えていたせいか、いつの間にか看板の前についていた。
「これ、一個目の看板」
「...なんか古くない?」
「確かに、前に見た時よりボロくなってるかも」
看板の内容としては
むかしのキタカミの里の話。恐れられていた鬼をイイネイヌ、キチキギス、マシマシラが命を賭して追っ払った。感謝した村人は彼らの亡骸を丁寧に埋葬し、その上にともっこの像をたてたというもの。
「よくある昔話やね。...この右下の人は誰なん?」
「わっかんね。村の人に聞いても知らねえって言ってた」
鬼様の話を見て、昔をしみじみと思い出す。
「そういや昔、何度も夜の山の中入ったっけな。姉ちゃんと大人にわや怒られて。結局会えずじまいだべ」
「うける、今とやってること変わって無くない?」
「そうかも」
二人で写真を撮り、今後はキタカミセンターを目指す。
今までのことを振り返りながら、ボタンとこれまでの話をする。
スマホロトムで毎日連絡とりあってたけど、やっぱり実際にあって話したい。
「ここがキタカミセンター。んで、あれが看板。わかりづらいよな」
「田舎の不便さ全開ってかんじ」
「パルデアが羨ましいべ」
「言質取ったよ」
なんのことかよくわからにけど、これで看板2つ目。
内容としては鬼様の持つ不思議な輝く仮面の話。
「おれもいつか鬼様みたいにかっこよくなりてえ」
「チャンピオンはかっこいいでしょ」
「それもそうだった」
っとこんな具合で他愛もない会話をしつつ、2枚目の看板の前で写真を撮る。
これで課題の2/3が達成。
しかし、時間はあっという間に過ぎ去ってしまい、もう夕暮れ時である。
これ以上は危険なので二人で山を下りていく。
「残り1つは明日にしよう。お疲れさん」
「ほんと、久しぶりに歩いたから疲れたよ」
「...あのさ、姉ちゃんはあんなこと言ってたけどやっぱりじいちゃんとばあちゃんに会わせたい。えと、ボタンがいいならだから、嫌だったら断ってくれても全然いい」
「そのつもりはないとはいえ、この前はそっちが挨拶してくれたし。いいよ」
「ありがと。足元気を付けてな」
手を繋ぎながら二人で下山し、実家まで歩いていく。
今になってなんだか緊張してきた。
色んな不安が頭を飛び交ったせいでいつの間にか実家の前まできてしまっている。
「た、ただいま」
縁側で涼んでいるじいちゃんに声をかける。
ボタンも心なしか緊張しているようだ。
「おう、お帰りスグリ。...その子はお友達かな?」
「えと、お、おれの彼女です。付き合い始めたのは最近なんだけど」
「はじめまして、ボタンです。よろしくお願いします」
「おお、スグリに彼女!?ばあさん、一大事じゃ!」
じいちゃんが大慌てでばあちゃんを呼ぶ。
っと後ろから騒がしい声が聞こえてきた。
アオイと姉ちゃんである。
「な、なんであんたがここにいるよ!」
「うわ」
「うわって言うな!スグ!」
「彼女なんだから挨拶はしといた方がいいかと思って」
ドタドタと家の方から騒がしい音が聞こえてくる。
「こ、この子がスグリちゃんの?初めましてスグリの祖母です。あら、後ろの子はゼイユちゃんのおともだち?」
「はい、アオイです。よろしくお願いします」
「ほっほっほ、二人ともえらく別嬪さんじゃ」
「友達は兎も角、私はこいつが彼女なんて認めてないけど!」
「これこれ、そんなことを言うでない」
騒がしすぎる。
なんだか申し訳なくなってきた。
「ごめんなボタン、騒がしい家族で」
「いいよ、うちも似たようなもんだから」
そんな騒がしさをかき消すように、祭囃子が聞こえてくる。
「ああら、オモテ祭り、今日からだったわねえ」
「そういえばもうそんな時期なのね」
キタカミの里でこの時期に行われているオモテ祭り。
出店や屋台が立ち並び、いつもとは違う村の様子が見れる。
ボタンには祭りのことは説明してあるため、二人で回ることになっている。
アオイ、おれ、姉ちゃんの3人はじんべえに着替え、ボタンはそのまま。
こっちの方が快適らしい。
ボタンのじんべえが見たいって言ったら、『いつかね』って言われた。少し残念。
「お面どうする?2つしかないのよね」
「おれはいいよ」
こっちの方が顔が見れていい。
「なら私とアオイね」
「ナチュラルにうちを省くな。いらないけどさ」
っとお互いお面なしで行くこととなった。
まあ、お祭りでイーブイのお面があるからそれを買うだろうな。
姉ちゃんとアオイがじんべえ姿で勝負を始めたので、放っておいて先に行くことにした。
...
.....
.......
ドンドンと鳴り響く笛と太鼓の音。
ガヤガヤとにぎわう人込み。
制服?のボタンとじんべえのおれがそのなかを歩いていく。
「ボタン、りんごあめ買ってくか?」
「ちょうど小腹が空いとったし、ええね」
屋台でりんごあめを二つ購入し、片方をボタンに渡す。
「リンゴ見るとさ、なんか、フフ」
「今絶対カジッチュの事思い出してるでしょ」
「それもあるけど、カジッチュくれた時のボタンの顔も、これみたいに赤くて、綺麗だったなって」
「...そう」
「今もめんこい、です」
「おいうちしなくていいから!」
「ボタン顔真っ赤だ。っておれもか、ニヘヘ」
二人で祭りの中を練り歩いていく。
お面屋さんとか
「ブイブイのお面、欲しい」
「絶対言うと思った」
射的とか
「へへ、ここでお陀仏さ」
「スパイ映画好きすぎっしょ」
そうやって二人で歩いていくうちに、ボタンがある一点に視線を向けた。
「どした?」
「あれ、アオイとスグのお姉ちゃんが誰かを追いかけてった。...行ったほうがいいのかな」
「いいかも。なんか困ったことになってるかもしんねえ」
二人でアオイと姉ちゃんの元に向かう。
「二人とも、なんかあったべ?」
「いや、ここらへんで見ない子がいて」
と石造りの階段の上にいる子を指さす。
暖かそうな頭巾をかぶり、大きなお面を身に着けている。
階段を駆け上がる時、バランスを崩したのか、お面を落としていった。
アオイの足元に転がっていったそれは、俺たちがつけているサイズよりは2周りほど大きい。
それに、なんだか不思議な感じがする。
うまく言葉にできないけど、普通のお面とは違うような。
「おーい、夜の山は危ないよー」
お面を落としたこの方を向いてみると、人とは違った肌の色。
よく見れば足の形や骨格にも少し違和感がある。
こっちを見たのち、恥ずかしそうに駆けていった。
「行っちゃった。あの子、パルデアの子?」
「いや、あんな子林間学校のメンツにいないし」
「...多分ポケモンだ。色々とうまく説明できないけど、なんとなくそんな気がする」
「...ってことはあの子が伝説の鬼さま?」
アオイが大きな面を顔はめパネルのようにしてつける。
見れば見るほどサイズがおかしいな。
「かもな。だとしたらちゃんとお面返してあげねえと」
「ス、スグ、鬼さま...え?その...鬼さまよ?」
姉ちゃんが何かに動揺している。
俺がまだ鬼さま大好きっ子だと思っているんだろうか。
「そうだね。まだ決まったわけじゃねえけど」
「なんか反応薄くない?」
「まあ、色んなもん見てきたからな。それこそ喋って探偵やってるピカチュウとか」
「まだ言ってるし」
「ボタンこういう話全然信じてくんねえよな」
「とりあえず、これは明日にでも届けに行こうか。今日はもう暗いしね」
「だな。もうちょっとボタンと、その、一緒にいたいし」
「カ”ハ”ッ!!」
また姉ちゃんが白目をむいた。
無視してボタンと二人で祭りの続きを楽しみ、公民館まで送った。
二人で撮った写真を待ち受けにし、床に就く。
また明日も二人でいろんなところに行きたい。
あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えません!
理由はもちろんお分かりですね?
あなたが感想を書き、私を嬉しくさせたからです!
覚悟の準備をしておいて下さい。
ちかいうちに祝います。グッドも押します。
パーティにも問答無用できてもらいます。
次の感想の準備もしておいて下さい!貴方は読者です!
次回が投稿される楽しみにしておいて下さい!いいですね!
Ps.ボタスグなんて書いてるの全国でワイぐらいやと思う