冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら) 作:すぺしうむ
現在、テーブルシティから少し離れた南5番エリア。
町からの喧騒から数歩離れた場所にあるため、意外とのどかで落ち着いている。
「お昼にすっか」
リュックから料理に必要なセットを取り出し、簡易的なテーブルの上にまとめる。
枯れ木や自前のウッドチップで簡易的な料理場を作成。
思えばずいぶんと手際が良くなったもんだ。
「先達様様だべ」
食材は、米が5回分とテーブルシティで購入した野菜が数個と卵が1パック。
「安かったからたくさん買っちまった」
イキリンコタクシーで交通の便も豊かなので、これから数日はここら辺をキャンプ地にしたほうがいいかもしれない。
鍋に水を入れ、ぐつぐつと沸騰するまでしばらく放置。
沸騰するまでに具材を切っておく。
使用する具材は、たまねぎ、人参、キャベツ、もやし。
玉ねぎを冷蔵する時間はなかったので、我慢しながらカット。
すべてきり終わるころには涙で前が見えねえっな状態になってしまった。
ふと足元からキュイっとオオタチの鳴き声が。
「お、鍋煮立ったか。あんがと」
オオタチには尻尾で風を起こしてもらったり、火加減を見てもらったりと色々と助かってばかりだ。
若干火を弱め味付けのために、醬油、みりんとかつお節を適量入れて、沸騰しすぎないように煮込む。
体感で数分経ったら、米と先ほどきった野菜を投入し、ほぐす。
最後に火加減を少し弱めて2個投入。
ここからお玉でじっくりかき混ぜれば。
「雑炊、完成」
自分の分は器によそい、みんなの分はそれぞれの大きさの皿にフーズを入れる。
「みんな、ごはんじゃ」
ボールから、ルカリオ、ヌメルゴン、ブラッキーを繰り出す。
自分も席に着き、手を合わせ
「いただきます」
スプーンであつあつの雑炊をすくい、頬張る。
「んぐ、んぐ、あっふい」
熱いことに変わりはないが、それでもおいしい。
あっという間に1杯目を食べ終わってしまった。
お代わりでもいただこうと席を立ったとき
アギャッスっと鳴く知らない機械的なポケモンがいた。
みんなも思わず二度見している。
「わ、わやじゃ」
見たこともないポケモンだ。
体の形はモトトカゲのようにも見えるが、こんな姿じゃない。
「ご、ごめーん!」
遅れてトレーナーの女の子が来た。
グレープアカデミーの制服を着ている。
「この子、おなかが空いたのか勝手に一人で行っちゃって。こら、ダメでしょ、ミライドン!」
「いや、おれはべつに」
「ちょ、やめ、鍋に頭を突っ込もうとしない!」
これ以上となるとさすがに荒らされてしまいそうなので、空いている器に盛りつけ、ミライドン?に差し出す。
ガツガツとむさぼり、食べた後は満面の笑みを見せる。
『アギャッス』
「喜んでもらえたみてえで、よかったべ」
「うわー、ありがとう!お昼邪魔してごめんなさい」
ここだ、俺!勇気を出せ!
「えっと、よければ、君も、その、食べてく?」
「いいの?助かるー。お昼食べようと思ったらサンドイッチ爆発しちゃったの」
「サンドイッチ?爆発?」
聞き間違えではないだろうが、意味が分からない。
ドガースにでも襲われたんだろうな。
「パルデアの人の口に合うかわかんねえけども。どうぞ」
予備でおいておいた器に盛りつけ、スプーンと共に女の子に渡す。
「おいしそー!いただきまーす」
ミライドン?みたいにガツガツ頬張り、一気に平らげる。
早送りを見ていた気分だった。
鍋をチラチラとみていたためおかわりが欲しいのかも。
「おかわり、いる?」
「い、いります」
いくら肉類は入れていないとはいえ、女の子なのによく食べるなあ。
っていうか女の子の食べる姿とかあんまりじっと見るものじゃないな。
二杯目もあっというまに平らげ、
「ごちそうさまでした!」
「お、おう」
「いやー、本当にありがとう。名前教えてよ」
「え?えっ、あ、ス、スグリ」
「スグリ、よろしくね。あ、私はアオイ。春からグレープアカデミーに通い始めたんだ!この子はミライドン」
『アギャッス』
っとミライドンに舐められそうになったが、ヌメルゴンがミライドンの顔を抑える。
「また今度お礼させてよ。番号交換しよ!」
「おれレンタルのしか持ってねえけど、それでもいいなら」
っと画面を見てみるが、交換とはどうやるのだろうか。
???あれ、ここのアプリじゃないし...
「ごめん、交換の仕方わかんね。どうやればいいの?」
「えっとね、ここのアプリ開いて...」
まさか録画デッキの使い方がわからなかったじいちゃんみたいになる日が来るとは。
「いままで人と交換したことなくってさ」
「へー、今時珍しい」
とアオイにポチポチと操作してもらい、なんとか交換までこぎつけた。
「あ、ありがとう」
「こちらこそだよ。絶対いつかお礼するから!」
「わ、わかった。えと、おれ、明日も明後日もここいるから。バ、バトルでも全然いいし、きっ、来てく、来っ」
「うん、明日は無理だけど、明後日は絶対来る!それじゃあね!」
ミライドンに乗って走り去ってしまった。
余韻だけが残るこの空間。
ポケモンたちはずっと静観していてくれた。
「...どもりすぎじゃ。絶対キモいって思われた」
アプリに表示されたアオイの文字にもう一度目をやる。
「女の子と連絡先交換しちゃった...」
アオイの顔を思い出す。
天真爛漫な笑顔が素敵な子だ。
「なんかいい匂いし」
と言いかけてやめた。
「いや意識しすぎ!マジで気持ち悪い!!」
でもアプリに表示された名前で思わずニヤけてしまう。
異性がどうのではなく、単純に連絡先を交換したのが初めてだったから。
「...里に帰る前に、もっと話す!そんで仲良くなる!」
ここから、俺の奇妙な数日が始まった。
アオイ:容姿はデフォルトから変化なし。
性格はだいぶと明るめ。