冒険に脳を焼かれたスグリ(旧題もしも幼スグリがアデクと出会っていたら)   作:すぺしうむ

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第7話

 

「んんー。やっぱりピクニックは気持ちがいいね」

 

昼下がりのパルデア、南5番エリア。

レジャーシートと机を広げ、二人で何気ない話を続ける。

 

「そうだね」

 

アオイと明後日に会うという約束から2日。

昨日は今日のことが心配であんまり記憶がない。

ミライドンが寝そべりながら、ボールで戯れている。

 

「そういえば、スグリって学校とかいかなくていいの?」

 

「おれ、旅してて。だから今は学校さ行ってなないんだ」

 

「今は?」

 

「2年前、旅に出る前にじいちゃんと約束してさ。期日までは旅していいってことになってる。でも、一週間後には実家に帰って、イッシュ地方のブルーベリー学園に通うことになってんだ」

 

「それじゃ、あえなくなっちゃうね」

 

「うっ、確かに」

 

そうだ。

どのみちあと数日の出会いなんだ。

向こうはパルデアでこっちはイッシュ。

会う機会もほとんどないといえるだろう。

 

「いいなー。私も旅、したいなー」

 

「すればいいべ。最初は大変だけど、すっごく楽しいしさ」

 

「テント立てたり、お料理したりってこと?」

 

「うん、それも含めてわや大変。時には自分のポケモンの何倍も強い野生のポケモンと出会ったりってのもある」

 

「...なんか、余計私には無理かも。料理できないし、手先不器用だし。バトルはできるんだけどね」

 

「あはは、確かに。お昼作る時、すっごいぎこちなかったね」

 

「ちょっと、笑わないでよ」

 

「ごめんごめん。お詫びにいいものあげる」

 

「え、なに?」

 

ごそごそと鞄をあさり、使い古したノートを取り出す。

内容自体は全部頭に叩き込んであるので特に問題はない。

2年間、こいつにはお世話になりっぱなしだけど、もう手放すことになるとは。

 

「これ」

 

「ずいぶんと古いノート」

 

「おれが旅さ出て、ずっとお世話になってきたノート。旅の極意とかが詰まってる。中身は全部覚えてるから、アオイにあげる」

 

「...いいの貰っちゃって?」

 

「うん。ちょっと泥とかついてるけど、旅に出るっていうなら、内容は絶対役に立つから」

 

「...ごめん、お礼するって言ったのに私何もしてあげれてない」

 

「いいよ別に。おれがしたくてやったことじゃ」

 

寝息を立てるミライドン。

こうやってのどかな時間を過ごせるのも、あとどれぐらいなんだろうか。

イキリンコたちが群れを成し、空を飛ぶ。

そんな平穏な時間は次の一言で破壊された。

 

「...話変わっちゃうんだけど。このまえナンジャモの配信に出てなかった?」

 

「なっ!?」

 

心臓をにぎりつぶされたような気分だ。

顔がだんだん青くなっていくのを感じる。

そういえばそんなこともあったなと自分で思い出したぐらいの記憶。

 

「あ、あれは忘れてほしいべ」

 

「確かに。あの服はちょっとね...」

 

「服...。やっぱしダサかった?」

 

「うん」

 

「あぐぐ。旅ばっかしててあんまり服選らんだことなぐてさ」

 

「じゃあ、私がいいの見繕ってあげようか?」

 

「そ、それは、なんていうか、恥ずかしいし」

 

「そっか」

 

アオイの残念そうな顔を一瞥する。

代わりに何か提案できるものは何かないだろうか。

 

「そんかわりさ、おれが実家かえるまででいいからさ。おれと、とっともだ...ちでいてほしい」

 

「帰るまでじゃなくて、帰ってからも友達でしょ?」

 

「...!!ニヘヘ」

 

14年生きてきて、初めて里の人じゃない友達ができた。

すっごくうれしくて、つい微笑んでしまう。

 

「じゃあ、友達ついでに、服を選んであげよう」

 

「なんでそこに着地するべ?」

 

「いいからいいから。ミライドン行くよー!」

 

『アギャッス』

 

椅子やレジャーシートをてきぱきと片付け、ミライドンの背中に押し込まれる。

え、本当に行くの?

 

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

「うーん、こっちのシャツも捨てがたいなあ」

 

テーブルシティのブティックまで担ぎ込まれ、またしても着せ替え人形になってしまう。

 

「下はラインが出やすいパンツにしといてー」

 

いやいや

 

「スニーカーは黒白が無難かなあ」

 

「あ、あの」

 

「動きやすいほうがいい?」

 

「う、うん」

 

あっという間に

 

「これで、だいぶ印象変わるんじゃないかな?」

 

上はフォーマルなシャツとその上からカジュアルなコート、下は黒のパンツ。

スニーカーは動きやすさも重点に置いたものに。

じめじめとしていた自分がいつの間にかそれなりに勉強ができそうな人、ぐらいに進化している。

 

「うん。バッチリ。スグリも、これでいい?」

 

「...はい」

 

「せっかくだから、そのまま着てかえろっか」

 

「こ、これで歩くべ!?」

 

「もしかして嫌だった」

 

首を高速で横にふる

 

「い、いやじゃねえけど。恥ずかしい。変な奴っておもわれねえ?」

 

「思われない」

 

アオイがけらけらと笑いながら答える。

 

 

 

...

.....

.......

 

 

 

「ほ、ほんとに洋服代、払ってもらってよかった?」

 

「だからそうだって言ってるじゃん。お礼も含めてるんだしさ」

 

出店で買ったシェイクを飲みながら、二人でテーブルシティを歩く。

 

「あれ、アオイ?」

 

後ろから声がする。

振り返ると目元にソバカスのある、アオイと年齢の変わらなさそうな女の子がいた。

 

「ん?あ、ネモ!」

 

「知り合い?」

 

「うん。アカデミーの生徒会長。バトル、すっごく強いの」

 

「初めまして、ネモです」

 

「こ、こちらこそ初めまして。スグリです」

 

ネモさんは俺とアオイを何度か見た後

 

「あ、もしかしてデートだった?」

 

「ででででデー、あばば」

 

デートってことは俺とアオイは付き合って。

いや付き合ってなくてもデートはするし、いやでもそういう関係に見えたってこと!?

思考がマヒし、出力が追い付かない。

顔が真っ赤になっていることが自分でもわかる。

 

「そんなんじゃないよー」

 

アオイの言葉で一瞬で現実に引き戻された。

 

「そ、そう。おれたち友達だから」

 

「へー」

 

ネモさんは、おれをつま先から頭の先までジロジロと見た後、

 

「キミ、バトルって強い?」

 

顔をこちらに寄せてくる。

思わずシェイクでガードし

 

「ち、近い」

 

「一回バトルしてみたら?私もスグリの実力見てみたい」

 

「え?」

 

「...どうする?」

 

「2匹だけなら、いい」

 

「いいねー!コートまで行こっか」

 

両脇を女の子に囲まれてしまい身動きが取れない。

俺はこのままどうなってしまうんだろうか。

 

 

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