特級仮想過呪怨霊『座敷童』 作:烏山 日月
これはまだ『私達』が最強だった頃の思い出――
遅かった。そう思った。
東北地方某所。ある呪霊の目撃情報に加え、山林の集落地帯で行方不明者の増加ありという知らせ。ぼくが出るのは、決まって
木々についた残穢をたどって半日。そこに居たのは、既に血の色に染まった古井戸で体を汚さぬ様丁寧に
「まったく、人間サマは随分とテキトーな物差しで呪いを見ているのね。あんな埃の付いた年増のアバズレが特級?目が腐ってるわね……目がメガ腐ってるわ」
目の前の凄惨な状況が見えているのかいないのか、
「
「あらまあ、信心深いこと――とでも言うと思って?随分と見上げた浮気性ね。私という者がありながら、神や仏を信じるなんて」
ある意味で的を射た、ある意味で的外れな絢の言にぼくは「違うよ」と返す。
「神も仏も結局は創作、人の想いの
「そうなの?祓える呪いは多い方が良くない?」
「だから
「いやん情熱的」
「そういう意味じゃない。そして何故ノリノリなんだ」
「何か問題でも?男女の仲なんて一時のノリでどうとでも発展する物。結局は伸るか反るか、この場合どちらに転んでも役得なのだから、むしろ乗ってしまった方が後腐れなくて済むわよ?」
「変な言い回しをするな。問題というなら、その発言の方がよっぽど問題だ」
「つれないわね。乗るより乗られる方がお好み?」
「殴るぞ」
「いやん」
ちなみに絢の見かけは十歳の少女である。身も心も十七のぼくからすれば問題というか大問題というか、あらゆる意味で問題外だ。
ノリノリじゃねーよ。ロリロリしてるよ。
閑話休題。
「絢。"弱きを助け、強きを挫く"――これはそういう
「ふうん……まるで大人サマみたいな事を言うのね」
「みたいな、じゃないよ。ぼく達はもう『奥座敷』の住人じゃない。子供じゃないし、子供じゃいられない」
「
少し恨めしそうに言う絢にぼくは閉口した。
絢は深窓の令嬢と呼ぶのすら恐れ多いような少女だ。
雪の様な肌をなお引き立てる白い十二単に、冬の夜空よりも鮮やかに光る黒髪をさっぱりと切り揃えた装いの美と、風雅を着飾った様な所作の数々。それらは見る者全ての目を奪い、会う者全ての心を奪う。軽く紅をさせば色香さえ纏い、人を魅了し、人がひとたび彼女に魅入られれば、宝石と路傍の石の区別がつかなくなるまで骨抜きにされる。現にぼくがそうである様に。
人間的というよりは人形的であり、そしてなにより異形の"美"。
人なら誰しもあるような、変化も、劣化も、悪化も、老化も。絢にはない。
「とにかく」と、ぼくは言葉を濁す。
「簡単に人を軽んじる様な事は言ったら駄目。今回だって、ぼくは冥さんに頼んで探して貰わなきゃ『
「一度スルーした物を無理に拾わないで……。それで?いくら積んだの?」
「ざっと八ケタ」
「守銭奴ね」
「お金は大事だろ?」
「
『玉』と呼ばれ――先程からご馳走を堪能していた
通り名である玉藻前は呪霊としての仮名に過ぎない。反対に『玉』は玉藻前を"縛る"真名。呪いとしての彼女を、仮想怨霊――
呪霊は唸り、領域を展開する。そこに巣食うは、主への恐怖か、怨恨か。
「はたまたエキノコックスかしらね」
「――撤退だ!」
ぼくが一生懸命に拵えた報告書ではご不満の様子で夜蛾先生は怒髪天だった。見た目はちょうど大晦日に見た特番で演者をビンタしていた
「いいか」と夜蛾先生は繰り返す。
「
「はい。呪術師、の概要ですね。人間の負の感情により生じる呪霊を"
「よく解っているじゃないか……故に決して、断じて!"帳"を内側から打ち破り!山林を縦横無尽に使った大捕物を演じた挙げ句!そこ一帯を買い取って有耶無耶に事を収める様なやり方が!まかり!通る!訳!ないだろうがッ!!お前本っ当に解っているのか!?解っているんだよな!?」
「……おそらく?」
「ふざけるな!!」
「これで何卒」
「小切手を出すな!!」
「焼き肉にでも」
「買収するな!!」
「センセェ」とここで口を挟むグラサンが一人。ぼくの学友であり、ぼくをここに編入させた、この学園きっての超健康優良不良麒麟児である。
「領域内の術者の攻撃は、常に必中効果が乗りますよね?」
「……何だ、五条。何がいいたい」
「やっぱ怖いじゃないッスかー。
「お前には臨時任務を言い渡す。来い。今すぐ」
「ッハァー!?」
間の抜けた悟の顔に野次馬が吹き出す。ぶうたれながら連行される悟を見て、ぼくの胸中は複雑だった。
仮想怨霊としての座敷童。その「厄を除け福を招く」という能力は……いや、正式には術式というらしいそれは、過呪対象のぼくだけに享受される。何が幸福で何が不幸かは、全て絢の独断で決まる――決まってしまう。
「いやー傑作だったよ。あの時の悟の顔ときたら」
実技訓練、普通科高校なら体育に該当する時間に、ぼく達はよくキャッチボールをする。悟がいないので少し寂しい人数だ。
紹介が遅れてしまった。
ぼく達、つまりぼくの学友は3人いる。
五条悟。夏油傑。家入硝子。二人の超健康優良不良麒麟児と紅一点。以上だ。その他にも「他人をナメてかかってる」とか「変な前髪」とか「高校生なのに煙草吸ってる」とか色々あるけれど、概ねさっきの認識があれば問題ない様に思う。
かくあるべき姿からかけ離れた学生達の詳細など書くべきではない。
金が絡んだ
実際、全人類をナメるような仁義無き腹黒も、高校で煙草を飲むような倫理無き
失敬。
社会だ倫理だとまるで普通の高校生の様に(あるいは普通ではない高校生の様に)あれこれ語ってしまった所で、義務教育にすら進学していないぼくにとっては実際、社会がなんたるかなんて少しも理解できていない。ぼくの学歴は保育園に落ちた所で打ち止めだ。
この事を硝子に話したら随分と笑われた。普通は保育園に落ちる事なんてないらしい。
しょうがないだろう、『前任』が死んだんだから。
まあ実際には『前任』の死は単なる口実で、『奥座敷』の人間達は最初からぼくを外に連れ出す気はなかったらしいけれど。彼らからすれば『前任』の死のタイミングはこの上なく僥倖だったに違いない。
まるで誰かが仕組んだ様に。
当時の事について絢は一向に話してくれない。今となってはどこまで
あるいは悟なら――まあ、これは蛇足なんだけど。
後述するかもしれないかくかくしかじかで今は社会貢献する高専生をしているが、社会に対する理解度なんて並の中学生にも負けている。
具体的に言うなら、ギリギリで海外に出てビックになろうと思わないレベル。世間知らずにすら劣るのだ。
つまりはどんなに学が無くても身を粉にすれば働けるというのが今の社会の構造らしい。能力主義万歳。ただし離職率を殉職率が上回るような、ぼくの職場においてのみだが。
「しかしまあ、幸汰」
そういえばぼくの名前は
「山一つ買うって、一体どんな気分なんだ?一般家庭上がりの私としては、馴染みのない感覚なんだが。俄然興味が湧く」
「どうって……いや、一般家庭上がりなのはぼくも同じだよ」
「いやいや。名だたる資本家、企業、財閥。その原初の投資者たる"裏財閥"稲生家……まことしやかに囁かれる噂の、君は生き証人なんだろう?」
「……生き証人、か。とは言っても、家の事については殆ど知らないんだよね。ここに来るまでは呪霊とか幽霊ってのも信じてなかったし。それまで普通に生活してたのがある日突然『お前は旧呪術師の家系だ』『今は超がつく資産家階級だ』『お前が幼馴染と思っていたのは実は特級呪霊だ』なんて言われて……実感もてないよ」
「そうか……なら質問は『なぜ山一つ買おうと思えたのか』に変更しよう。大金を持ったって即断できる買い物じゃないだろうに。どうしてだい?」
ボールを受け取って、言い淀む。ぼくの術式はあまり口外するとマズい。傑、そして硝子に聞かれても良い範囲を慎重に値踏みする。
「
「「"縛り"?」」
二人の言が重なる。
「うん。ぼくの術式は言わば"仮想怨霊限定の呪霊操術"――特徴は"土地にかける調伏"だ。仮想怨霊は怪談によって生じる呪霊だから、祓っても怪談が生きている限り負のエネルギーは蓄積される。だから怨霊と怨霊ゆかりの土地を結びつけて調伏すると、怨霊が破壊されても一定周期で土地にエネルギーが貯まって復活する。……土地を買うのは、調伏した土地に貯まるエネルギーから民間人を守りつつ術式の強度を上げる為の"縛り"……みたいな」
五秒で考えた説明に十秒の沈黙が返って来たので、ぼくは言葉を続けた。
「例えば『口裂け女』が『七丁目の路地には口裂け女が出る』という怪談で生じた呪霊なら、呪術師がいくら呪霊を祓った所で『七丁目の路地』に対する負のイメージが第二第三の『口裂け女』を形成する。『口裂け女』は全国的にメジャーな怪談だから、多少の地域差はあっても全国の『七丁目の路地』には膨大なエネルギーが堆積して同系統の呪霊を発生させてる事になるね。ぼくの術式はその全国の『七丁目の路地』に遍在する
「すると……幸汰がその土地の所有権を有する限り、呪霊は何度破壊されても直るし、使える。そういう事かい?」
「うん」
ぼくの返答に、傑はただ「ほう」と言い、硝子は潰れた蛙の声で鳴いた。
「なにそれー。つっよー。きっしょー」
「その反応がなにそれ?」
「はは。たしかに硝子のいう事も一理ある。キッショ……キッショ」
「だから何なのその言い方?傑にいたっては顔がゲスいよ。顔がゲスい傑、略してゲスぐるだよ」
「適当言うな。……でもなぜだろう、なんだか妙に口に馴染む気がした」
「なんで解るんだよ。いつもそんな事言わないだろ、傑」
「お前だれだよー、傑じゃねーよー。まじウケる」
「お前らなあ……」
もはや単なる雑談に興じるぼく達に終止符を打ったのは遅れて来た悟の鶴の一声だった。
「傑。幸汰。時間ある?」
「「何?」」
「臨時任務なんだけど……少し面倒くさそうだ」
「「切り裂き
ぼく達は悟の言葉を繰り返した。呪霊の直近の犯行現場まで向かう道中、補助監督が運転するセダンの後部座席で揺られていた時である。
何気にぼくと傑が共同であたる
「そ。切り裂き
そこから先は
まず、被害者は十二人。彼らに共通点はない。犯行は決まって昏倒から裂傷の順に行われ、出血は少ない。後の犯行になるほど呪霊の出没範囲と被害が大きくなっており、呪霊どうしの連携の可能性や、対特級を見据えた立ち回りが求められる。
悟に両サイドから鉄拳が入ったのは言うまでもない。
「この規模、この被害者数……三人もあてがわれた訳だ。どんな手練れでも一人ではどうしようもないな、これは」
「そうだね。まずは現場を見てから、傑の術式で索敵。祓うのは三人で、だ」
「……」
「本当に居るか?
「残念だけど、これで火力は一番あるからね、このタンポポ頭」
「……」
「その必要はないわ!」
瞬間、ぼくの影から忽然と現れた絢のせいで、セダンはあわや横転の危機となった。
余談だが、この時の事を絢は後に「言外にエビ固めを食らう男子高校生というのも乙な物ね」と語っている。
さていくら車が日本の発明品だとしてもその状況で後部座席四人乗りは危険だ。絢はぼくの膝の上に置くとして、お行儀よく3人乗りの体制で仕切り直しとなった。先程の「その」がどこまでを指す代名詞なのか判断が難しい所ではあったが、聞けば「現場を見に行く必要すらない」そうだ。絢は結論から言った。
「これは『
準二級仮想怨霊『
別名『鎌風』とも呼ばれ、地方伝承は数多くあるが、呪霊としては三位一体の形式を取る。
一匹目の鼬が人を転ばせ、二匹目の鼬が人を切り、三匹目の鼬が薬を塗る。三匹目の鼬が薬を塗るので傷は血を吐かず、対人的な危険性は低いとされる。
「『座敷童』、一つ質問がある」
「却下よ『前髪』、質問は幸汰からしか受け付けてないわ」
絢はぼく以外にそう呼ばれるのを嫌う。かといって誰に対しても絢以外の呼び名を使う事を嫌うので、単純にぼく以外の人間に心を許していないだけらしい。
「今は
「嫌よ。私は私のしたい事しかしたくないもの。したい事は死ぬまでするし、したくない事は死んでもしないわ。良きにはからいなさい。幸汰でもあるまいし、他人サマの言う事を聞くなんてまっぴらよ」
「出た、お嬢様気質」
「私の事は女王様とお呼び」
「違った、お嬢様退室」
「それでいいわ。幸汰はそうして永遠に私の機嫌を取って、私に言う事だけ聞かせてれば良いのよ。おーほっほっほっほ」
「そんな女王様は居ない」
満足気に笑う絢を見て、会話のバトンが傑に戻る。話の枕が長いのは
「仮想呪霊の呪力は怪談によって生じると聞いたが、『鎌鼬』は随分と衰退した怪談じゃないのか?今や『鎌鼬』という会談の正体は、科学的には竜巻で出来た真空刃や風に飛ばされた砂による物理現象という事になっている。未だに伝承の『鎌鼬』を恐れている人はかなり少数派だ。犠牲者の数も行動範囲も、切り裂き
「……ふん。ズレてるわね『前髪』。仮想怨霊という呪いを全く解ってない。というか、甘く見過ぎている」
「何……!?」
「『前髪』、貴方落語は好きかしら?」
「……何?」
「私はそこそこ聞くのだけれど、あれはやっぱり寄席が一番ね。昨今テレビやラジオで楽しむ人も増えて来たけれど、やっぱり機械を通す所が気に食わないわね。人が話してこその落語でしょうに。まあそれでも噺に臨場感や迫力を感じさせてくれる所は、やっぱり噺家なのかしら」
「だから何を言っているんだ、『座敷童』?」
「貴方は知るべき、という話よ『前髪』。貴方が落語を聞いた所でその前髪のギャグセンは終わったままなのでしょうけど、それ以外にも学ぶ所は沢山あるわ」
「急な前髪ディス」
「落語はね、
怪談。怪異。鎌鼬。
機械を通して、寄席から――ラジオ、テレビへと。
聞く媒体が変わっただけで。
むしろ機会は拡大している。
むしろ被害は拡大している。
「貴方はさっき『科学的には』と言ったけれど、科学が怪談に対して向かい風だと思っているなら、間違いね。今の社会のどこに
「……」
「だから、
車内に電撃が走る。今までずっと愚痴をもごもごしていた悟すら顔つきが変わった。思わぬ強敵の予感に食指が動いたらしい。
「それじゃ、モタモタしてる訳にはいかないね。『座敷童』の言う事が正しければ、任務の難易度は青天井。なるはやで索敵頼むよ、傑」
「……は?アンタなに聞いてたのよ『若白髪』、全然解ってないじゃない。馬鹿なの?ボケるのはそのセンスの終わってるサングラスだけにしときなさいよ」
「幸汰?こいつ祓って良い?」
「まあ待って。解るけど。絢?何が違ったんだい?」
「だから、こっちから出向く必要はないんだって。
次の瞬間、もうすぐという言葉の意味を考える暇もなく、セダンは派手な音と共に大破、横転していた。
「現場に行く必要はない」と言うのと「こっちから出向く必要はない」と言うのとではかなり意味が違うと思うのだが、はたしてそんな愚痴を披露する間もなく、新生仮想怨霊『鎌鼬』は何の前触れもなく顕現した。
いや、前触れは確かにあった。
仮想怨霊『鎌鼬』は、等級付けが全く意味を為さない呪霊として知られる。
〇級術士は〇級呪霊を祓える、を基本とする等級は呪霊と術士が一対一なのを前提にしている。無理もない。呪霊は基本群れない。群れの統率を取れる呪霊も稀だ。故に、こういった例外には弱い。
しかし、それを差し引いた上で『準二級』という格付けには一定の合理性も存在する。
それは『そこにいる者を倒す』『倒れた者を斬る』『斬った者を治す』という動作の単純性。
『鎌鼬』は決してそのサイクルを乱す事はない。
即ち『倒れなければ』絶対に斬られず、『斬られても』絶対に治して貰えるという事であり、反対に『倒される前に伏せる』だけで絶対に回避できる相手という事でもある。
本来なら何て事はない呪霊なのだ。
盲点だった――『
「傑!!悟!!」
「「やってる!!」」
知己の仲だ。こうなった時の対応は皆心得ていた。
傑は補助監督の保護を優先し、悟には"
ここは既にぼくの戦場となった。
では、
呪力でガードしながら、伏せてる傑と補助監督の対角線上に着地する。
さして広くもない公園内を縦横無尽に動き回る『鎌鼬』の一匹目。形態こそ鼬そのものだが、四足を使わずに高速で空を切る姿はむしろ戦闘機やミサイルに近い。
呪霊というよりはどこか無機質で機械的な――絢の言ってたのはこういう事か。
あるいはこの『認識』によりーー『鎌鼬』は加速した。
急旋回。呪霊の行動目標は巡回から殲滅へと塗り替わる。もちろん標的はぼくだ。
自身の体を用いた突進行為による物理的な転倒作用。その威力。
車体重量だけで1.5トンを超えるセダンを軽々と破壊したトマホーク。
冥さんの
ぼくは猛進する『鎌鼬』に対して、大仰に拳を構える。打ち抜くスピード、
打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に生じる物理
「――――黒閃――――!!」
砕けた一匹目の鼬に対し、ぼくは片膝をつく。『倒れた』が故に発生するのは、二回目の攻撃。斬撃の術式を持つ、鎌状の尻尾を備えた二匹目の鼬。
「――――黒閃――――!!」
黒閃はしかし、一転突破の打撃である。例え二匹目の鼬が粉々になろうとも、発動しかけの術式はぼくの肌に少々の裂傷を刻む。即ち、三匹目の鼬が顕現する。
「――――黒閃――――!!」
今度の黒閃は、
これで、良い。これで安全に"調伏の儀"が始められる。
「――彁――」
その呪詞で、稲生家の調伏の儀は開始される。
調伏の儀には本来、時間的、空間的な制約はない。いつでも、どこでも始められる代わりに、儀式を開始するとすぐに全国の
平たく言うなら、儀式中は呪霊が凶暴化するのだ。だから"調伏の儀"の前には呪霊を限界まで弱らせるのがしきたりである。
そして稲生家の"調伏の儀"には、もう一つ他の呪術師にはない特徴が存在する。それは呪詞。
稲生家だけに伝わる、
「――彁�オ�繝繝��?�ハ�ヨ�縺ゅ彁>縺�∴縺��撰托抵�繧繝象眼――」
存在しない、故に
そもそも、呪霊という存在は世界に対する"バグ"の様な物だ。
近代化し、科学化された社会だからこそ産まれた"バグ"――"前時代的"あるいは"非科学的"として排斥された物達であり、近代そのもの、科学そのものに対する特異点的な存在。それこそが呪霊や呪術の本質。
呪術師は、そういったバグをバグ技でデバッグしているに過ぎない。
何にせよ、ぼくのご先祖様達は誰より呪いの核心に迫っていた。『個』ではなく『一族』として呪いに向き合って来た所には多少の敬服を抱くけれど、『
まことに運命とは『命を運ぶ物』でありながら『命に運ばれる物』でもある。全く以て失笑モノだ。
……本当に今日は話がそれるな?
この前の"調伏の儀"から、あまりインターバルが無かったからか?
まあそんな事はどうでもいいか。考えたって損な事だ。
儀式は佳境。最後に仮想怨霊の真名を口にして、呼び寄せた呪力が霧散する前にこの土地を買い取れば晴れてぼくが使役する事になる。
「『
仮想怨霊『鎌鼬』改め『切り裂き
ぼくは悟と傑の方に向き直って、笑う。
「帰ろうか!高専へ!」
「悟。今日の幸汰の戦闘、
その日の夕方。二人だけの教室で夏油傑は、日中からずっと脳裏にあった疑問を五条へと投げかけていた。
黒閃は単なる物理現象であり、狙って出す事は不可能である。呪術師特有のゾーンに入った状態ならば『出る』瞬間を直観的に把握する事はあるが、それが意図的に『出す』事とどれだけの格差があるかは自明である。
それは例えるなら、居酒屋のテレビに流れる野球中継を見て「それ打つぞ!打った!打った!」と大騒ぎする野球ファンを球場に連れて行き、実際に画面の向こう側でホームランを打ったプロ野球選と戦わせる様な物。
故に『三連続の黒閃』、あまつさえ『打撃技でない黒閃』を放ち、
黒閃が、チャチなカラクリで起こせる現象でない事を知りつつも。
その異能、もとい稲生自身に聞かなかったのは、『きっとはぐらかされるだろう』という確信と、『悟なら何か知っているに違いない』という確信があったからである。
はたして、それは両者とも正解であった。
「黒閃はね」と、五条は語る。
「打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間に生じる、単なる物理現象。難易度とは裏腹に、原理的にはデコピンだろうがフェザータッチだろうが、接触時には必ず発生しうる現象でもある……言うは易し。多くの呪術師は経験する間もなく死に絶える。実際にはどれだけ鍛錬した呪術師でも誰一人狙って出す事の出来ない、レア中のレア技……
夏油は絶句する。
「知ってた?幸汰の
「ズルいだろ、そんなの!」
夏油は叫ぶ。普段なら考えもしない事を、心のままに。
「あいつは!幸汰は!『座敷童』は!あいつらは何なんだ!?」
五条は頭を掻いた。
「それが上層部が色々と手を回してるっぽくてね。詳しい所は俺もさっぱり」
「上層部への秘匿特権……!?そんな事ができるのは御三家クラスだけだろう?稲生家は旧い家系だとは聞いたが、なぜ上層部はそこまでひた隠しにする!?」
取り乱す夏油に、しかし五条は端的に事実だけを伝えていく。二人の関係を知らぬ者からすれば、ともすれば五条が夏油を追い詰めるかの様に見えたであろう。しかし実状は異なる。
五条にとっての夏油とは、おそらくは唯一、どんなに感情的になろうとも呪術師として正しき判断をする人物であり、夏油に『物事の正しさ』を値踏みさせる所がある。そして夏油もまた、五条がその様に自身を見ている上、殊更に感情的なフォローをしない事を承知している。
つまりこの状況は『それだけの何かがある』という事の証明なのだ。
そしてやはり端的に、五条は言った。
「確かな事は稲生の歴史。稲生家が旧いのは正しい。でも、それは決して御三家クラスじゃない」
それが今や何で"裏財閥"なんてやっているのかは知らないけどね。
そもそも"裏財閥"がどこまで本当かすら解らない状況だ。
実際に上層部は秘匿してるしね。
そして稲生家は、
その稲生家様の『最高傑作』こそ、あの『座敷童』……って話だ。
これも本当に、どこまで本当か解らない与太話でしかない。
ただし本当だった場合、
悪いのは幸汰じゃない。偶々『座敷童』に選ばれたのが幸汰だったってだけだ。
でも『座敷童』にとって幸汰の命令は絶対。そこは見てて解るでしょ?
幸汰の気まぐれで呪術界全体が傾く
それを聞いて
俺はまだ様子見するつもりだ。
不確定な情報が多すぎる。
それに何より、幸汰はどんな事があろうと『座敷童』を悪用する奴じゃないからね。
だってそうだろ?
俺達
五条と夏油は二人で最強だった。
稲生が来てからは、いつの間にか三人で最強と呼ばれる様になった。
肩書きを気にする夏油ではない。夏油は、共に最強と謳われる五条と稲生だけではなく、学友の家入も、呪いの見えない自身の親族も、そして守るべき一般大衆に至るまで等しく好意を持つ博愛主義者だ。
だから肩書きは問題ではない。
問題は、自身の非力さだ。
共に最強と呼ばれながら、しかし夏油は悩んでいた。
自分は、本当に五条や稲生に並ぶ存在なのか?
結局は二人が最強なのであって、自分は片落ちした存在なのではないか?
それは夏油自身も気付かぬ悩みであった。
実態の掴めない、意識的に気付こうとしなければ無いも同然の『違和感』。
それは、今後の夏油自身を揺るがす命題となっていく。
そして、その発露は明確に今回の事例であり。
その一助となったのが、この一週間後に決定される『稲生幸汰の秘匿死刑』である。
祝!!日間92位!!!!
ところで全く本編に関係ないですが、僕これ書いてる時に絢のcv能登麻美〇で考えてたんですけどうちの兄が「それ地獄少女じゃんw」とかぬかしやがりまして投票で僕の正しさを証明しようと思います。よろしくお願いします。
さあ皆さんも性癖の開示をして呪力の底上げと最適化を目指しましょう。よしなに。
絢のcv
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cv能登麻〇子(オススメ)
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cv〇澤詩織(兄案1)
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cv久野美〇(兄案2)
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cvその他(コメントお待ちしております)
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「キッショ。」