TS貴族令嬢が魔王討伐して殺されるまでの狂軌 作:モヘンジョダロ
山奥の訓練場で走って、騎士達の訓練の相手をして、コントロールの鍛錬をして、不味い脂と肉の塊と野菜を食わされて、寝て、また走らされる。その繰り返しが一週間程続いた。
栄養バランス自体は良く考えられているが、絶対にうら若き美少女に食わせる物とはとてもではないが思い難い不味さであった。何の脂使ってるんだろうねこれ。喉越し最悪だし。
……………結局十週遅れて騎士達の訓練ノルマを終わらせた後の晩御飯で表情を無にして食糧を雑に噛んで嚥下する。我儘を言ってもどうにもならぬ事くらいは理解しているし、寧ろ筋肉を付けられるのであればそれはそれで歓迎すべき事なのだ。
現状で僕に足りないのは本体のフィジカルだ。お父様みたいな【魔術】と戦技を高水準で両立させる敵と戦闘した際に、まだ10歳に過ぎないこの躰は著しく不利と断言出来る。
水銀使役は遠中近距離に対応してるからこそ、体力と持久力があれば相手の得意とする距離から逃げ出して此方の有利を押し付けるという戦術も取れる様になる。
とは言え、流石に突然皇族に連れられてやってきた上に身体能力雑魚の貴族令嬢なので些か現地の騎士達からは遠巻きにされているのだが。
然もありなん。僕だっていきなり会社の社長が子供を連れてきて、その子供が無能なら多少は綺麗とは言い難い感情が湧こう。
実際今も周囲の騎士達が僕を観ながらひそひそと耳と口を寄せて囁き合っていた。
「“虚無”ってるな………」「何で定食を注文せずにあんな飯を……?」「ストイックなんだろ。今日もずっと走っていたのに訓練に付き合ってくれていたからな」「俺達も見習わないとな……!」
「待って待って待ってこの不味い飯以外にも普通に定食とかありますの!?いっつも遅れてたので一緒に食事する機会が無かったけれどアナタ達はそれ食べてましたの!?」
「あっ、はい。その栄養食、罰ゲーム以外で食べられてるの見た事ありませんよ」
嘘でしょ?縋り付く様にガタリと音を立てて椅子から立ち上がって凝視すれば先程まで噂していた騎士達も当惑した様子であったが、確かに首を縦に振った。
情弱だったせいで罰ゲームになる様な飯を一週間の間ずっとむしゃむしゃ食べ続けてた………ってコト!?
「はっ、お前は華奢だからな。シェフも毎日疲弊して帰ってくるお前の為に態々早く大きくなれる様に調理してくれたのだろうさ」
「本音は?」
「誰も注文せんので材料が余ってしまい、どうせ捨てる位ならばと
「…………そっかぁ………」
いつの間にか眼前の席に座ってニヤニヤしながら種明かしをしてくれるエルシオン様の言葉に項垂れながらも複雑な気分になる。
不味いのはそうなんだが、僕の躰作りに大いに貢献する事も間違いないので怒るに怒れないしそもそも微妙な立場で此処に来ている以上文句を言うのも憚られてしまう。
「というか、仮にも皇女様が何で其処ら辺の詳しい事情にまで精通しておりますの?」
「おや?護衛の食事情も把握するのが主の業務の一環だと思っていたのだが……………そんな怪訝を顔をするでない。無論ジョークよ、妾の護衛が何を食べているのか気になっただけだ」
「罰ゲームにしか使われない料理」
「知っておる。だから少しメニューに物申してきたわ、安心せい」
「ありがとうございますわ〜〜〜!!!!」
思わず立ち上がって、その勢いのまま前のめりになってテーブルに身を乗り出し握手しながら土下座する勢いで額を擦り付ける。
『玉音騎士』の監視も付けられている上に護衛任務すらまだ果たせていない僕の様な部下にすら優しく接してくれる所か態々自分の時間まで割いてくれるとか最高の上司では?
数秒程その姿勢を保ち、エルシオン様の御側に控える『玉音騎士』にちょっとだけ引かれながら引き剥がされてから漸く平伏している間に俯いていた主人の頬が微かに赤く染まっているのに気付いてしまった。
(…………いや、今の不敬罪なのでは?)
喜びの余りに忘れてしまっていたが、皇帝の権威と権力と武力が至上のこの“帝国”において皇族の身に許可なく触れる行為。
此れでエルシオン様が気を損ねていれば僕は簡単に断頭台送りになるだろう。そして羞恥心からか怒りからかは計れないものの、既に顔が赤くなっている。
(スゥーーー……………………落ち着こう、落ち着くんだ僕。お茶会の時の判断力と言いくるめ力を思い出すんだ。まだ慌てる時間じゃない)
神経と集中を研ぎ澄ませる。目の前の少女の唇の震えから次に発する言葉を、表情筋の力みから何を考えているのか読み取って最適な言い訳を…………作れないッ!!!表情で感情を読むなんてそんな事出来るかァ!心理学とか全く学んでないッ!!!
自分でも顔が青褪めて冷や汗が流れているのが分かる。だが僕自身の心配に反して、発された言葉は幸い比較的穏やかな物で済んだ。
「そ、そうか?本当に少し修正を加えさせただけだからな………まさかそんなに喜ぶとは………」
「イッイエ…………僕への御配慮。未だ護衛の一つも熟せておらぬ我が身からすれば格別の慈悲なれば………喜びの余り御無礼を、以後は本当に注意するので申し訳ありませんわ…………」
「いや、うん。悪意がないのは分かるから其処まで気を落とさずとも処罰などせんとも…………喜んで貰えて妾も嬉しいぞ。うむ」
顔を赤くして目を逸らしながら頬を掻く姿に一瞬心臓が跳ね上がった。仕草の一つ一つが洗練されている。少しでも僕の糧にせんと視線を向けて見詰める。
こうして見るとやはり美人だ。白雪の様な白くきめ細やかな肌に、白銀に艶めく髪は雪の中での隠密行動に適しており、太陽光の反射で狙撃も難しいと感じる。
真紅に煌めく瞳は言語化し難い圧を秘めていて、視線を交わすだけでも動悸が激しくなり、緊張でほんのり肌の表層に赤みを帯びる程の潜在的な格の差を感覚として突き刺してくる。
率直に言って芸術品染みた脅威を見ている気分だ。高度に洗練され、機能性に特化した兵器の形は我々に感銘を与える事すらあるのだが、彼女の立ち姿はそれに近い。
戦艦の主砲、要塞の機関銃、列車砲。前世で見た絡繰り仕掛けが漂わせていた様な、死の匂いを色濃く漂わせるのだ。
その脅威が怖くもあり、同時に其処までのチカラに対する憧れもある。
「ところで一体どんなレシピに変えさせたんですの?いえ、アレより味が酷くなる事はないと思いますのでどんな改変でも嬉しいのですが………」
「うむ、味覚を麻痺させる茸を十数分機能する様に計算して刻んだ物をお好みのトッピングに加えさせた」
「成程。味を失くしてメンタルへの影響を抑え、トッピングとして付け加える事によって選択権を与えておりますのね。コストの面でも優れている様に感じますわ!」
「いや少し修正って言って本当に少しな事あります???」
野太い声だった。雄々しさと重ねた歳が同居したかの様な低く、大きな声が思わずと言った様子で漏れた方向に振り向けば唖然とした様子で立っている男が一人。
湯気を立てている白湯だけをトレーに載せる30代と思われる歳の、茶色い髪のガイゼル髭がチャーミングな小父さん。引き締まった身体付きが多少離れていても分かる程に鍛えられており、僕にとっての理想的な筋肉だ。
"白銀"を拝する『玉音騎士』の美麗な全身鎧とは違い、然れども此処で訓練している騎士達の軽鎧ともまた違う灰色の鎧はその人物の身分を端的に示していた。部隊の常任統制者、教官と指揮官を一纏めにした部隊の監督者。
「マトム卿。貴殿がこの時間に食堂に顔を出すとは珍しいな、何か急用でもあるのか?」
「あ、あぁ…………エルシオン殿下、私はイリア殿に用があって参ったのです。どうにも最近鍛錬に熱を入れられておられる様ですから当初の時間割を変えようかと打診をしに」
「御親切にありがとうございますわ。個人的には時間割は今の通りでも構わないのですが………通常の業務に支障は来しておりませんし、態々御迷惑をお掛けするのも憚られてしまって。ですが何か問題があるのならば勿論お応えしますわ」
まあ、つまりは本来の任務───【魔術】によって仮想敵を務める特別教官という役割の僕が、勝手に並行して此処の設備を使って鍛錬をし始めたので予定を変更しに来たのだろう。
少しだけ言い訳させて貰うなら、本当に任務に支障は来たしていないのだ。単に僕自身の肉体面の性能の低さに気付いたのでそれをカバーする為に鍛錬していただけだし、そもそも水銀と生身の疲労は必ずしも一致しない。
何時間か筆を動かし続けて手がこれ以上動かなくなったとして歩けなくなるという事にはならないだろう。だから訓練への協力は変わらず出来ているのだが、それでも気遣いをしてくれる辺り紳士的だ。
或いは僕の精神面のパフォーマンスが落ちて部隊の訓練の効率が落ちない様にする為なのかもしれないが。
「流石に娘程の年齢の少女が疲労困憊になるのを見るのも胸が痛みますからな」
「マトム卿。貴殿は独身だろう。イマジナリーファミリーでも居たか?」
「例えですよ、例え。私の年齢を鑑みれば本来は娘が居ても可笑しくはないでしょう?年を取ると若い子を可愛がりたくなるんですよ」
「俺らだって充分若いけどスパルタじゃーん」「気持ちは分からんでもないけどネ」「やっぱ野郎よりもロリか………」
「
「あはは…………お気遣い、感謝致しますわ」
穏やかに微笑むマトム卿から日々のスケジュール表を受け取って、内容を確かめる。今までは隙間時間に騎士達の訓練に合わせていただけだったのだが流石は本職と言うべきなのか。バランス良く配分された予定と一目で理解出来る出来栄えだ。
持久力・体力に伸ばす為の走り込みから各部位の筋トレに剣の型の習得まで、使える施設と備品と共にリストアップされ休憩時間も細かく挟まれたスケジュールは圧巻の一言だ。
訓練所の殆ど全権を委任され、騎士達の訓練計画の立案も一人で熟しているからこそ。どの時間帯に何処が使われているかを把握しており、その情報を活かせるのだろう。
実際僕が躰を鍛える為の予定としては上出来だ。とは云え、逆に言えば僕自身には大きく関わりのない部分では少しばかりの違和感がある。
口を出すべきか。だがあくまでも本質的には部外者の身で、僕よりも余程此処の人々について熟知している者の判断に口を出すのは如何な物なのかと躊躇って。
遠慮も葛藤もなく、
「騎士の特殊訓練の密度が低くなっているな。何を考えて削った?元より魔術師、それもこれ以上なく次の作戦目標に対する事前訓練に適した者を投入しているのだぞ」
「殿下がお連れになったイリア殿の性格が分かって来ましたので、計画に修正を加えたのです。当初は参加しない事を前提に部隊を仕上げる心積もりでしたが、貪欲に強さを求めるイリア殿ならば今回の作戦にも参加を希望するだろうと思いまして」
「当事者を置き去りにしてギスギスするのやめてくれません???」
思わずお嬢様にあるまじき苦虫を噛み潰した様な顔になってしまったが許して欲しい。だって皇女様が剣呑な目付きになっているしマトム卿も微笑んでいるのに目だけ笑ってないのだ。
巻き込まれたくないのに、僕の予定表が発端になっているから逃げる事も出来ない。というか此処から離れられるなら僕も現在進行形で気まずそうな顔をしてスタコラサッサと立ち去っている他の騎士達と同じ様に動くだろう。
「イリアは妾の護衛であり、それを其方に貸してやっている形なのを忘れたのか?作戦行動に妾の許可もなく参加させようとするのは明確な越権行為であろうが」
「無論、私としても殿下に申請はするつもりでしたよ。ですが今回の特殊作戦自体が高難易度な上、“王圏”や“連邦”に察知されてはならない為に幾つも制限がありまして…………正直な所、イリア殿が参加してくれれば有難いのですよ」
「“神領”の司祭を入れていない件か?今から劇的に練度を増強せよとは此方も要求していないのだ、あくまでも陣形訓練と技術面の向上が主眼。というか何故許可が取れると思っている………ッ!」
「僕は普通に参加したいのだけれど…………ほら、『獣王』と戦闘する機会なんて稀でしょう?少し興味がありますの」
「イリアッ!?」
裏切られたかの様にエルシオン様が顔を青くする。少し大袈裟過ぎやしないだろうか?個人的な観点からすれば会って数日の生意気な小娘なぞに其処まで気を遣わなくとも、或いは眼中に入れなくても良いはするがやはり僕には及ばない考えがあるのだろう。
「ちょっと!?今の遣り取りを見た上でそれか!?もっと妾を大事にしろ!してくれ!」
「護衛に取り立ててくれた事への恩義は一時も忘れた事はありませんわよ?ですが、現実問題として僕は弱いでしょう。『玉音騎士』にも劣る力量では御身の護衛を務めるには余りにも力不足………えぇ。この一戦でより
「ぐっ……だが妹との去り際の時から強くなりたいとか言ってたであろうが………しかし妾の為か………いや、だが待て…………」
「殿下はイリア殿に甘いですからなあ」
したり顔でマトム卿が頷く。僕も声には出さないが同意だ。この数日で目の前の皇女殿下が意外と子供らしい純粋さも残しているのは誰だって理解出来る。それこそ下級騎士でさえも分かってしまうに違いない。
語った内容に嘘はないとは誓って言えるが、許可を得る為に“ツボ”を突く言い方をしていないとは言い切れない。何で貴き御方がこんな性格なのかは分からなくとも、その性格を使えないとイコールではないのだ。
まあ僕だってこんな事を何回を繰り返すつもりはない。そんな事をすれば粛清されかねない。皇女殿下が僕を赦してくれても『雷帝』や皇太子に皇女にとっての肝臣と見做されれば忽ち殺されるのがオチだ。
お
マトム卿の言葉にさっきまで顔を赤らめていた殿下が頬を膨らませて不服そうにしながらもそれを噛み潰す様に抑えてちろりと艶やかな舌が死蝋の如く白い歯と歯の隙間から覗かせて──背筋が冷える。微かな殺意だけなのに本人の持ってる力のせいで戦慄と恐怖が全身を駆け抜けた。
「………貴殿の思惑に乗ってやろうではないか。だが明日はイリアとの特殊訓練を午前に集中させておけ、午後は妾がショッピングに連れて行くからな」
「スケジュールを今から組み直せと?!?」
「組み直せ。イリア、お前もそろそろ寝ると良い。明日は早くなるだろうからな」
「了解致しましたわー!マトム卿も頑張って下さいませ〜」
「他人事だなぁ……………これが管理職の悲哀って奴かァ………」
権力者に逆らった代償を全力で支払わされているイケオジを尻目に軽く食堂の扉を開けて宿舎への道を進む。管理職の悲哀かどうかはよく分からないが、悲哀である事は確かだろう。
閉まりゆく扉から漏れ出てくる無慈悲に食堂のおばちゃんに退かされる騎士の声をバックグラウンドミュージックにしながら軽く欠伸をして、肩と腕をほぐして筋肉痛と格闘しながら横に目を向けた。
「何で着いて来ていますの、殿下?」
「此処の宿舎は夜襲対策に門の近くに配置されているからな。妾とて此処を通る必要があるのだ」
要は夜番の交代をし易くする為、及び万が一夜襲された時にぞろぞろと騎士を対応に向かわせる為に態と防壁よりも防衛を緩めた門の近くに宿舎を置いていると。
考え方が誘い込んでの逆襲・反撃と殲滅に偏っていてちょっと引いたがまあ秘匿されている訓練所だし生きて帰さぬのを重視するのも一理あろう。
二人並んで、背後に一人控えて先の見えない夜闇を進む。甲冑の掠れる音すらせず、静謐な黒を前にして眠くなる頭を何とか歩く事を意識して覚醒させながらふと思った事を雑談の種にしようと隣の皇女に告げた。
「“王圏”や“連邦”に察知されない為に司祭を入れていないと仰っていたと記憶しておりますわ」
「あぁ、そんな事も言ったな。それがどうした?」
「でしたらエルシオン様が来るのは目立ち過ぎませんかしら?
人の口に戸は立てられないものですし、此処の騎士が黙っていたとしても街道にスパイが潜んでいる可能性は十分ありますでしょうし」
「あくまで本命は皇帝陛下による“王圏”遠征だ。今回の作戦はそれに伴う“連邦”戦線の固定の下準備に過ぎん」
「あぁ、つまり今回の案件が何処にどれだけ漏れているかで国内に潜む工作員の程度を推し量れるという訳ですのね。明日の外出についてもその一環という事かしら?」
街道に監視者を配置しているなら、皇女が査察する様なナニカが辺境の砂漠に隣接する此の地にあるという所まで。
訓練所の存在まで掴んでいるのならそれなりの精鋭部隊が“遠征”の演習にも付き合わずに前線から程遠い地域に潜伏していると。
そして部隊の内部まで把握出来ているのなら砂漠の『獣王』を討伐する予定という目的まで。
無論敵の情報部の長官か部長の頭が冴えているなら限られた情報から作戦の趣旨を読み取ってしまうのかもしれないが、その場合でも確かな証拠を掴めていないなら動かせる駒も相応のものになるだろう。
(あのレベルの部隊を囮に使える程度には余裕があるの、大分ヤバいですわねー)
殆どの部隊が帝室直属となっている歪な組織構造であるが、だからこそ身分差に応じた出力増加を有耶無耶に出来る帝国軍の兵士の特性を考慮すれば、水銀の操作可能質量限界もあってこの訓練所の騎士達は僕でも単騎で勝てるかは怪しい。
己の弱さを噛み締めて、故に一層『獣王』との対決に期待を燃やす。
ポツリと隣を歩く少女が呟いた。
「……………作戦の基本構想についてはその認識で構わないが、明日の外出はあくまでも妾個人の我儘だ」
「そうですの?てっきり僕も囮に使われるのかと思っておりましたが」
「妾も折角手に入れた護衛を使い捨てにしたくはない。存外お前の事は気に入ってるからな………っと、此処でお別れか。さようなら、また明日」
「えぇ、また明日逢いましょう。エルシオン様」
手を振って別れを告げる少女に手を振り返してから、宿舎の扉を開けて中に入る。小まめに掃除された床と壁の清潔感が実家を思い出して心地良い。宛てがわれた私室に直行しようとして、思いの外騎士達に隔意を持たれていなかった事に気付いて談話室の方に目を向けた。
まだ灯りが絶えておらず、更に中でわいわいがやがやと騒ぐ熱気が扉越しでも伝わってきて僕の中の好奇心が首をもたげた。やや駆け足で談話室との扉を開き中へと足を踏み入れる。
半裸の男達がトランプ片手に騒いでいた。
「やっべ嘘でしょ!?」「なる早く服持ってこい此処は俺が時間を稼ぐッ!!」「御嬢サマこれには本当にもうそれは深い訳があってですね」「ああああああ!!!!!」「五月蝿え!!!」「叫んで誤魔化すとか無理だから取り敢えず服ゥ!」
「何してますの?」
「だ、脱衣ババ抜きを………………嗜んでいた次第でして………申し訳ない事をしました………」
体格の良いむさ苦しい男達がパニックになる中でまだ比較的服を着ている方に分類される男が前に進み出て後ろを隠す様に僕の前に立ってだらだらと汗を流してしどろもどろになりながら弁解を始めたのを無言で静止して投げ捨てられたトランプを拾い上げる。
「へー、最下位が一枚脱ぐ感じかしら?」
「そ、そうですが…………」
ニッコリと笑う。屈強な男達が揃い揃って震えるのを大袈裟だなあと軽く笑いながら僕は意気揚々とショットガンシャッフルを終わらせてカードを配り始めた。
「ふっ、僕も参加致しますわ。これでも微笑みフェイスを維持する事にについては自信がありますの」
この後メチャクチャ勝ってメチャクチャ剥いた。
感想・評価お待ちしております