シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「すみませーーん、これの買取って出来たりしますーー?」
「あ?誰がこんなゴミ買い取るんだよ」
「ごもっともがすぎる」
カテゴリ的には武器なんだが価値はちゃんとゴミらしいゴブリンの手斧は買い取ってもらえなかった。まぁしゃあないか、使い捨ての武器と考えれば良いわけだし。
「んじゃあ武器のラインナップって見せてもらえます?」
「おらよ」
防具屋と同じ様に示された羊皮紙もといウィンドウを確認していく。あれ、双剣の欄がない……あぁ、よくよく考えれば俺二刀流使いなんだから双剣である必要がないのか。戦士の双刃が双剣だったから完全にそういうものだと考えていた。
じゃあ俺が見るべきなのは短剣の欄なんだが…………
「うーん、微妙」
「何が微妙だコラ」
おっとつい本音が。
「いや――――……このスペックの武器だと致命の包丁の方が全然良いといいますか」
「そりゃ致命の包丁はそこそこレアな武器だからな、当然だろ」
やっぱりレア武器か。20羽近く解体したのに落としたの3本だもんな。
「…………はぁ、しゃあねぇな。作り置きで気にいるのがねぇんならほれ、「四駆八駆の沼荒野」に行って素材でも取ってこいよ、新しく作ってやるから」
「え、ほんと?」
マジか、そういうシステムもあるのかいいこと聞いた気がする。
◇◇◇◇
「はーーーー、ここが「四駆八駆の沼荒野」かぁ……」
セカンディルから次の街、「サードレマ」に辿り着く為の道に広がる沼地が点在した荒野たるここはどうやら鉱石アイテムがよくドロップするらしい。
行けばわかるなんてとても不親切なお答えを頂いてきてみたわけなんだが、確かにこれは分かりやすいわ。
何せ沼のど真ん中に岩の塊が鎮座していやがる、所々見える明らかに石のそれとは違う質感のそれを見るに間違いなくこれをぶっ叩けば鉱石が出てくるんだろうな。
そしてその横には。
「ゲゴゴゴッ、ゲゴッ」
「あれ何だ蛙か何かか?」
本来の蛙はもっとこう……将棋の駒に手足をくっつけた上にゲコゲコ鳴らすシステムを搭載してるはず。
それだと言うのに何だおめーは、直方体に生物感を足して蛙っぽくした(実際蛙)のか?随分ユニークしてますね。
「つーかでけぇなオイ……」
大型犬並みのサイズあるじゃねぇか、まぁどんなモンスターなのか知らんが取り敢えずものは試し、ゴブリンの手斧を振りかぶって……
「ほーーーいすぁぁあ!!」
「ゲギョッッ!!?」
馬鹿が、この沼地大方動きを鈍らせるとかそんなあたりのギミックだろう?残念、ここからでも普通に迎撃可能だ。
投げた斧に直撃して無事にひっくり返る蛙をみて勝機を感じた俺は即座に沼にダイブ……したところ走れない。あーー、これ移動制限系かぁ…
「はっはっはっ……ようやっと辿り着いたぞこの野郎……」
ひっくり返ったままだったので許してやろう、オラ死ねーーーーーーッ!!
ガインッ!!
「…………ん?刃が弾かれた?」
ガインッ!ガインッ!
「…………」
「グゲェーーッグゲェーーッ」
…………あれぇ?効かないぞぉ〜?
嘘だろ、こいつまさかの攻撃無効か?そんなことあるか?あってたまるのか……あ。そういえば。
・隔て刃の皮ベスト
四駆八駆の沼荒野に生息するマッドフロッグの皮から作られたベスト。一定以下の切れ味の斬撃に対して抵抗を持つ。
肌に吸い付く感触は賛否両論。
「もしかしてこいつがマッドフロック?」
いや、多分そうだよな?見た目蛙だし。
一定以下の斬撃耐性……なるほど、どれほどのもんかは知らんがこいつには致命の包丁をものともしないだけの耐性が備わってるらしいな、
ならこうするだけだ。
「持ってて良かったゴブリンの手斧……!オラッ!今度こそ死ねぇ!」
フルパワーで振り下ろしたゴブリンの手斧、驚いた事に切れ味が終わりすぎてて打撃属性がついてやがる。スキル使うとほぼ確定で粉々に砕け散る事について目を瞑れば打撃斬撃を併せ持つ有能武器だろう。
「ふーーー……取り敢えずケリはついたな、鉱石採掘するか……」
ヒョイっとドロップアイテムの皮を拾い上げる。まぁ大したレア物では恐らくないだろうなぁNPCが鎧に加工して販売してるくらいなんだし。腹が弱点だと思うんだがその腹ですら致命の包丁を弾いたんだ、恐らく背中の皮は更に硬いんだろう……となるとレアドロップは背中側の皮かな?
「ほーーーいっ、せっ!!」
買ってみたところ道具としてだけでなく武器としても使えるらしい地味な強武器、ツルハシを石柱に振り下ろし叩きつける。
大昔俺にしては珍しく遊んでいたサバイバルゲームでは確か「そこら辺の剣とか斧とか槍とかよりこっちのが使い勝手いい」とか言ってツルハシをメインに据えて遊んでる人がいた。「斬る」と「突く」の二つのモーションを両立するツルハシは普通に怖かった。
「っていうかこれっ……おっも……!!」
ガンガンとツルハシを岩の柱に叩きつけていくのだがやはり重い。現時点のSTRでは取り回しに難があるということなんだろう。振れないわけではないんだがワンスイングでスタミナの3分の2は持っていかれる。
ツルハシを振り回し続けて数十分、かなりの鉱石を集められた気がする。
・石ころ
何の変哲もない石の礫。
鉱石としての価値は皆無であるが、礫玉としての利用価値はある。
・灰色鉄鉱
灰色の鉄鉱石。
特殊な効果こそないものの様々な用途に加工することができる。
磨いても光沢を放たないため装飾品としては下の下。
・銀色鉄鉱
銀色の鉄鉱石。
これを用いた装備は「魔力強靭」の効果を持つ。
銀だけど鉄。
・沼棺の長牙
恐らく何か巨大なモンスターの一部であろう牙。
四駆八駆の沼荒野に乱立する沼棺は遥かな太古に在った生物の記憶を内包していることがある。
掘り当てたそれが何を噛み砕いていたのか、はたまたそれ以外の用途があったのかは定かではない。
数十分ひたすらカンカンカンカンやっているのは中々音ゲーの耐久じみていて好きだった訳だが、結果はそこそこと言って良いのだろうか。
特になんかポロッと出てきたこの沼棺の長牙なるアイテムはなんかこう……凄さを感じる。
「……取り敢えず持ち帰って武器屋に見せるか、多分これから先は大変な事になるだろうし」
ウチの高校がそれなりに早い夏休み入りをしたお陰で今のところ大した実害は出ていないが夏休みシーズンということもありシャンフロ新規プレイヤーが俺の様に流れ込んでくるだろう。
となれば待ち受けているのは各種施設のパンクに素材の乱獲、あとは狩場の独占とかその辺だな。
言い方は凄まじく悪いがイナゴの群れよろしく新規が押し寄せてエリア中のアイテムやモンスターを狩り尽くし、宿屋が埋まり……まぁ確実に大変な事になる。対策は取られていると聞いたがそこら中にプレイヤーがいる光景を想像すると間違いなく鬱陶しさが勝つな。
「…………さっさと帰ろ」
俺はイナゴの群れに巻き込まれとうないぞ、遅くても明後日、早くて明日の朝には次の街に行っておきたい。